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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングの国内外の10の事例を解説

ダイナミックプライシングは、近年様々な業界で導入されています。この記事では、導入事例のある10の業界を取り上げ解説します。

【ダイナミックプライシング ニュース(2020年12月22日更新)】
「東京ディズニーランド・ディズニーシー」を運営するオリエンタルランドは、入場チケットのダイナミックプライシングを導入することを発表しました。2021年3月20日以降の入園チケットが対象です。入場チケットのダイナミックプライシングの導入は、時期による入園者数の変化などに対応するため、混雑緩和などを狙いとした導入と公表されています。

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。価格変更させることで、企業の収益を最大化させることや混雑を緩和させることが可能になります。

人々の需要が増加している商品や、供給不足な商品に対しては、価格を上げて利益を最大化します。一方、人々の需要が縮小している商品や、供給過多な商品に対しては、価格を下げることで、販売数を増やします

そんなダイナミックプライシングは、近年ますます多くの業界で導入されており、私たちの日常生活にも影響を与えています。この記事では、国内外の企業がダイナミックプライシングを導入した事例やその業界におけるダイナミックプライシングのサービスの提供事例をまとめています。

事例1.スキー場

スキー ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングを導入しているヨーロッパのスキー場の数は、2018年から2020年にかけて3倍に増加しています。導入した狙いは、

(1)収益の最大化、(2)早期予約する利用者の増加、(3)長期利用の顧客増加の3つです。

(1)収益の最大化
需要が集中する期間に値上げをして利益を増加させ、一方需要がない時間に値下げをして顧客を増加させることで、収益の最大化を図っています。

(2)早期予約数の増加
チケット価格を左右する変数として「実際にスキー場を訪れる日付」だけではなく「予約を行うタイミング」も取り入れて、早期予約の価格を低くする手法を取ることで達成を目指しています。

(3)長期利用の顧客増加突発的な予約で来場する人も早期予約の方が滞在日数が長い傾向にあります。そのため早期予約者数が増加すると長期利用の顧客が増加する結果となり得ます。

また、スキー場で扱われているプライシングモデルは3つのパターンがあります。

①天気に応じた割引モデル
天気予報に基づいて段階的な割引を顧客に提供することで、需要の減退が予測される天気の悪い日の集客を増やす施策です。

②予約時期に応じた割引モデル
予約が早ければ早いほどチケットが安くなる仕組みです。

③複合的な需要予測に基づく価格調整モデル
履歴データ、予約時間、季節、休暇期間をもとに需要予測を行い、それに合わせて値段を変動させる仕組みです。

現在はヨーロッパでのケースが主ですが、今後国内のスキー場でも導入されていくと考えられます。

事例2.配車サービス

配車サービス ダイナミックプライシング

移動手段として、個人の車やタクシーをその場に呼ぶことができる配車サービスでもダイナミックプライシングは広がっています。

アメリカの配車サービスUberは、個人がタクシーとして乗客を乗せることができるサービスです。乗客は行き先をアプリで入力し、近くにいるドライバーとマッチングする仕組みなのですが、マッチング時に提示される運賃がダイナミックプライシングによって調整されています。

需要が高い地域に適切に即座にドライバーを派遣するため、需要が高い地域の価格(=ドライバーにとっての収入)を高く設定することで、ドライバーが該当する地域に赴くインセンティブを作ることが可能です。それにより高い需要に応える供給を提供することができ、Uberの利益の最大化にも繋がります。

一方、乗客視点から見ると、需要が高い地域では値段も高いため、需要が低い(=ドライバーの供給が足りている)地域に移動して配車を行います。そのため需要過多の地域での需要が抑えられ、供給とのバランスが取れるのです。

ちなみに、Uberのダイナミックプライシングは、「surge pricing」という名称で、価格変更は需要が多くなった場合のみ(=値上げのみ)です。Uberはサービス供給者であるドライバーが自社社員ではなく第三者であるために、強制力を持って需要の多い地域に向かわせることができません。

そのため、それでもドライバーを動かそうと思うと、金銭的な報酬が上がるという動機付けが必要になってきます。Uberのダイナミックプライシングは値上げのみですが、自社の営利目的だけでなく、乗客のもとに十分な数のドライバーを届けるという、顧客利益もあるため、一定の納得感が得られています。

事例3.民泊サービス

民泊サービス ダイナミックプライシング

個人が所有する物件などをを宿泊施設として貸し出す民泊サービスでも、ダイナミックプライシングの導入は進んでいます。例として、ここ数年日本でも盛んに利用されているAirbnbが挙げられます。

Airbnbでは、宿泊施設のホストが自分で部屋の値段を決めることが可能です。しかし、宿泊施設の経営については素人であろうホストが、適切なプライシングを行うことは簡単ではありません。

そのためAirbnbでは、以下のような条件をもとに、最適価格を推奨するサービスが用意されています。

最適価格の提案の変数

  • 残り時間: チェックイン日が近づくにつれ、料金は安くなります
  • エリアの人気度: エリア全体の検索数が増えるにつれ、料金は高くなります
  • シーズン: 繁忙期や閑散期によって、料金が変わります
  • リスティングの人気度: ビュー数と予約が増えるにつれ、料金は高くなります
  • リスティングの記載情報: Wi-Fiなどのアメニティ·設備を増やすと、料金は高くなります
  • 予約履歴: 予約が入ると、成約段階の料金もその後の料金に影響を与えます。たとえばスマートプライシングの推奨料金より高い料金を手動で設定し、それで予約が入った場合には、アルゴリズムはそこから学習し、推奨料金に反映していきます。
  • レビュー履歴: 高評価レビューが増えるにつれ、料金は高くなります

参考:Airbnb「スマートプライシング」のメカニズム

事例4.駐車場

駐車場 ダイナミックプライシング

駐車場のダイナミックプライシングは、現在日本でも、海外でも導入が進んでいます。

PerfectPriceという企業では、空港駐車場におけるダイナミックプライシングが行われています。空港向けにのaaS「PerfectPrice」のサービスと空港の自社のデータを活用し、駐車場の需要の変化を予測し最適価格を導くことが可能です。

国内のCtoC駐車場予約サービスakippaでは、駐車場の近くでのイベントの有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定されています。

事例5.レンタカー

レンタカー ダイナミックプライシング

レンタカーのダイナミックプライシングは、ここ数年、大きな盛り上がりを見せた業界です。ダイナミックプライシングを利用するレンタカー業者や、ダイナミックプライシングを搭載したレンタカー管理プラットフォームが、国内外で生まれています。さらに、海外ではレンタカーのダイナミックプライシングを監視し、安くなったタイミングで消費者に知らせるウェブサイトが存在するほど広がっているのです。

ダイナミックプライシング導入以前から収益向上化のために、国外を中心にレンタカー業者は価格調査と徹底的な分析が行われていましたが、コストの高さが目立っていました。ただ近年におけるビックデータやAIの発達により、その時々の需要を予測し、リアルタイムに価格を設定し直すダイナミックプライシングが可能になったため、価格調査を行っていた頃よりも低いコストで高い収益拡大を実現することができるようになりました。

レンタカーのダイナミックプライシングは、企業が持つ販売実績などのデータや、時間・天気・周辺地域でのイベントの有無などの、商品の需要予測に扱える外部データをもとにその時の需要の大きさを予測します。また、そこに競合他社の情報を加えて、最大の収益が期待できる値段になるように常時価格を変動させる仕組みも使われています。

事例6.映画館

映画館 ダイナミックプライシング

映画館では昔から、需要が少なくなる曜日の値段を安くする取り組みが行われていたが、近年ダイナミックプライシングというかたちで価格変動を実施する企業が海外で増えてきています。その背景として、Netflixなどのビデオストリーミングサービスが普及したことで、映画館は価格戦略の再考を求められている点が挙げられます。

映画館は、座席数(=1度にサービスを供給できる量)が決まっている上、需要の変動が時間に応じて起きるため、ダイナミックプライシングとの親和性が高い領域と言えます。飛行機などに活用されるアルゴリズムを転用しやすいのです。

映画館がダイナミックプライシングを導入する場合は、ビックデータを元に需要予測を行い、予測される需要と映画館の容量に応じた値段に設定する、アルゴリズムが導入されている場合がほとんどです。

しかし、映画の料金に合わせてドリンクなどの値段も値上げしたところ、ダイナミックプライシングの名を借りた値上げだと批判を受けた映画館もあるようです。ダイナミックプライシングを導入する際は、その導入理由や変動要因を顧客に伝える、透明性の高さが求められるでしょう。

導入企業が気をつけるべきことについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。


参考:『ダイヤモンドオンライン』映画やライブの「価格変動制」が話題

事例7.ライブ

ライブ ダイナミックプライシング

音楽ライブでのダイナミックプライシングは、昨年11月の音楽イベント「Yahoo!チケット EXPERIENCE VOL.1」にて日本で国内で初めて導入され、国内で話題になりました。

導入の最大の目的は、収益の最大化です。需要が多い場合、高価格で販売し利益を最大化し、一方需要が少ない場合、値下げして販売数を促進し、客数を最大化することを、AIを用いて行います。

同じ条件のライブが定期的に開催されることは少ないため、機械学習を導入する際に準備データが不十分となるリスクがあるものの、アーティストの収益改善に必要な施策として今後も導入は拡大していくと考えられます。

今後のライブ業界でのダイナミックプライシングは、大規模会場での活用から導入が拡大していくと予測できます。当然のことながら、アーティストによる大規模なライブイベントでないと導入は金銭的に難しいことも理由としては挙げられます。

ライブでのプライシングは、値上げ以上に値下げとの相性が良くなります。なぜなら、スポーツチケットや航空券の場合と同じく、在庫が余るリスクがあり値下げしてでも会場を満席にすることが利益につながりやすいためです。また、安くしてでも客数を増やすことは、それによって参加した顧客をファンにすることができる可能性があるうえ、アーティストのブランディングにおいて重要な、動員数ブランドの獲得につながります。また、顧客から不満が出るのは値上げのタイミングなので、業界内で利用されてまもないダイナミックプライシングは、値下げメインの方が受け入れられやすいです。そのため、その値下げを有効活用できる大規模会場を中心に導入は拡大していくでしょう。

事例8.オフライン小売

家電量販店 ダイナミックプライシング

EC小売業界もダイナミックプライシングが早くに導入された業界です。ここ数年はオフライン小売でも導入が拡大しております。電子タグとも呼ばれる、電子棚札の利用拡大により、日本国内でも大手家電量販店のノジマやビックカメラがダイナミックプライシングでの値付けを始めました。また、コンビニエンスストアのローソンでも、商品の賞味期限を基準に価格を変動させるダイナミックプライシングの導入実験が行われています。

もともとオフライン小売業界は、Amazonなどオンライン小売店やオフライン小売店同士の激しい競争環境のため、価格変更を頻繁に行う必要がありました。しかし、値札の張り替えを手動で行うことは、扱う商品点数が多い大手小売店において、非常にコストがかかるものでした。そこで電子棚札の実用化に伴い、ダイナミックプライシングの導入が拡大し、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストに行えるようになりました。

参考:『mbaSwitch』小売店でも始まるダイナミックプライシング

オフライン小売のダイナミック事例として、こちらでビックカメラの事例を紹介しています。

事例9.遊園地

遊園地 ダイナミックプライシング

国内でダイナミックプライシングを導入した遊園地の事例として、ユニバーサルスタジオジャパンが挙げられます。ユニバーサルスタジオジャパンでは、2019年1月から3種類の価格を、時期や曜日によって分けて提供する価格体系を始めました。現在はまだ細かい価格変更は行っていませんが、徐々にさらにダイナミックに価格を変えるようにすることも検討しているようです。

遊園地は繁忙期と閑散期の需要差が大きいため、繁忙期のチケットは高い値段で販売し利益を上げ、閑散期のチケットは安い値段で販売することで販売量を増やし、収益を最大化することができます。遊園地は基本的に同じサービスを顧客に提供する業態であり、繁忙期と閑散期という形で需要の変動を予測することができるため、適正価格の算出が比較的容易なのです。

しかし、今後さらに細かく動的なダイナミックプライシングを行っていくのならば、天気や近隣のイベントの有無など、需要を予測する変数を増やしていくことも必要になると考えられます。実際に、海外の遊園地向けダイナミックプライシングを提供しているSMART PRICERは、天気などの変数も加味してプライシングを行っているようです。

参考:『日経トレンド』USJが始めた「価格変動制」の裏側

こちらの記事では、ダイナミックプライシングによる混雑緩和の例として、遊園地業界を解説しています。

事例10.化学工業

化学工業 ダイナミックプライシング

様々な製品の原料を作る化学工業でもダイナミックプライシングが導入されているケースがあります。化学工業で作成する商品の原料のもととなる化学品の価格は、基礎となる原油価格や需給バランスの変化によって変動することが多いです。
そのため、それらを自動で行えるダイナミックプライシングの導入が近年一部の会社で行われ始めています。化学工業は、あまりプライシングを工夫してこなかった業界であるため、収益性を高める有用な手段として注目されています。

ダイナミックプライシング化学工業データ

「ベイン・アンド・カンパニー」の調査によると、非常に高いパフォーマンスをあげている化学工業会社の50%がダイナミックプライシングを導入しています。80%は競合他社の価格の監視を行っているようで、化学工業におけるダイナミックプライシングの有用性がわかります。

参考:『ベイン・アンド・カンパニー』The Formula for Better Pricing in Chemicals

メジャーな業界事例

この記事では、貴重なダイナミックプライシングの事例をまとめました。
よりメジャーな事例である、EC小売、スポーツ、飲食店といった業界でのダイナミックプライシング導入事例は、以下の記事に専門的にまとめてあります。ぜひご覧ください!

EC小売

スポーツ

飲食店

高速道路、遊園地、銭湯

まとめ

ダイナミックプライシングは近年様々な業界で導入され始めています。イールドマネジメントという形で適用できる、映画館やライブなどの供給に限りのある業界が代表的ですが、化学工業などのBtoB業界や、airbnbやUberといったCtoCサービスでも導入は進んでいます。これからも導入される業界は増えていくでしょう。まさに、どこにでもダイナミックプライシングがある時代が近づいているのかもしれません。自社では導入は難しいと思っていたとしても、開発企業やツール提供企業にお声をかけてみますと、導入の実現につながる可能性は十分にあります。

ダイナミックプライシングを導入すべき企業の特徴をこちらの記事で解説しております。導入をお考えの方は、ぜひご覧ください!

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コラム

値下げは危険?安易な値引きがデメリット・リスクである理由

販売戦略として「値下げ」は時には有効な戦略になりえる場合もありますが、リスクをともなう場合が多くあります。この記事では3つの観点から値下げの危険性を解説します!


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値下げを検討する前に

商品・サービスの値下げを検討するとき、販売数の増加・新規顧客の獲得などの意図があるかもしれません。

しかし、値下げは「長期的に収益をあげにくなる」リスクがあります。次の3項目から、その理由を解説していきます!

  • ①利益率が低下する
  • ②価格競争につながる
  • ③ブランド価値が落ちる

値下げによるリスク・危険性

利益率が低下する

値下げをすると、商品・サービスの1単位あたりの利益率は低下します。一時的には販売数が増加して全体としての利益は増大するかもしれません。

しかし、一度値下げをしてしまうと、もとの価格に戻した場合でも、顧客に「値上げ」だと捉えられてしまう危険性があります。その結果、利益率が低い状態から脱するのが難しくなります。

価格競争につながる

値下げによって購入してくれるようになった顧客の多くは、「価格の安さ」が購入時のポイントです。そのため、競合価格が自社よりも下回った場合、他社商品・サービスに乗り換える危険性があります。

そして、そのような顧客を獲得しようと、複数の会社が対抗して値下げしてしまうと、価格競争に突入しかねません。互いに価格の安さで顧客を引き付け合う価格競争は、無駄な利益率の低下などの大きなリスクを抱えています。

ブランド価値がおちる

値下げには、顧客の感じる価値を下落させてしまい、むしろ購入を妨げるリスクがあります。

価格には価値を暗示的に伝える効果があります。普通のセーターでも、50,000円のセーターと言われると、「良質なセーター」と感じると思います。一方、1,000円のセーターだと「質の悪そうなセーターだな」と思ってしまうでしょう。このように、値下げをして安く販売しようとすると、価値が低い商品だと思われてしまうことがあります。

そのため、値下げをしてでも販売量を増やしても、あまり販売量が増えない、もしくは「質が悪い」と思われてむしろ販売量が減ってしまうリスクがあります。

また、高級ブランドの商品の場合、手が届きにくいこと自体が価値の一部になっていますが、値下げによってブランドが落ちてしまうと、長期的に価格が高くても買ってくれるはずだった顧客を逃してしまう危険性もあります。

まとめ

値下げは、企業が販売量を増やそうと思った際に検討される価格戦略・販売戦略です。

しかし、解説してきたように、安易な値下げは大きなリスクを抱えています。値下げは、利益率の低下をもたらすうえ、仮に顧客を得られても、競合との価格競争につながる危険性があります。さらに、ブランド価値の低下も長期的な収益減少につながります。

もちろん効果を発揮する場合もありますが、リスクを知っておく必要があるでしょう。

また、値下げをせずに消費者に安い価格で販売する戦略として、割引戦略が挙げられます。詳しくはこちらの記事で解説しています。


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インタビュー

SaaSのプライシングを成功させるには?ノーコードでアプリ化Appifyが価格決定を科学する理由

Appify Technologies 代表取締役CEO 福田 涼介 様

導入前の課題

  • 製品価値に対し適切な価格設定ができていない
  • 無料で提供しているお試し期間を設定するべきかわからない
  • プライシングを科学的に分析できていない

導入後の効果

  • ユーザーの利用動体にあわせた価格改定ができた
  • 1ヶ月無料で提供しているお試し期間を設置するべきなのが分かった
  • ユーザーの支払意欲を数値化してプライシングができた

ノーコードでアプリを開発できるという独自のSaaS事業を展開するAppify Technologies。2020年9月にCampfire社サービスと連携を開始したほか、同年10月には資金調達を実施しています。そんな同社は、2020年8月より「Pricing Sprint」の導入を開始。弊社の分析を通じプライシング戦略の変更から価格改定まで、実現しています。現在の活用状況や、SaaS事業におけるプライシング戦略の展望を伺いました。

ノーコードでアプリ化を実現するSaaS「Appify Technologies」

――貴社の事業を教えてください
Appify Technologiesは、エンジニアがいない企業でもプログラミングコードを書かなくてもアプリ作成が可能になる独自のSaaS「Appify」を展開しています。現在はEコマースプラットフォーム「BASE」と連携し、ネットショップを出店している事業会社が各々のネットショップのアプリを作成可能です。「BASE」では個人・法人を問わず様々なユーザーにAppifyをご利用いただいています。

月額1万円未満のサブスクリプション型でアプリを簡単にノーコードで作成できる「Appify(アッピファイ)」

Appify Technologiesが直面したプライシングの課題

――今までのプライシングに関する取り組み・課題を教えてください

これまではユーザーヒアリングやBASEと共同調査の上で価格を決定してきました。しかし、「どのタイミングで有料プランへ移行してもらうべきなのか?」「どの機能を利用すると有料プランに納得感を持って利用してくれるのか?」「外的な要因がユーザーの利用モチベーションを左右しているのではないか?」などの疑問を払拭し確信を持ったプライシングをするに至っていませんでした。

――プライシングに対する課題をどのように解決しようとしましたか?

我々が普段から考えていた価格に対する疑問を払拭し、製品の価値に見合った値段を導き出すには科学的なプライシングが必要だと感じていました。

そんな中、プライシングサービスとしてPricing Sprintを紹介いただきました。導入前の説明を聞き、自社の価格に対してプライシングの専門家の意見を聞けるということや、価格に紐付き自社のどの機能に関してユーザーが価値を感じているかを知ることができるという点に魅力を感じました。

Pricing Sprintの分析方法であれば、プライシングに科学的アプローチが可能だとわかり導入を決定しました。

Pricing Sprintを導入し、SaaSの価格改定に取り組んでわかったこと

――Pricing Sprintの分析でわかったことを教えてください

Pricing Sprintを導入したことで、今までは定量化することが困難であったユーザーの支払意欲の変容を定量化できたほか、現在設定している無料トライアル期間が適切であると再認識できました。

そして、データ収集の設計だけでなく分析レポートの精度の高さから、科学的にプライシングにアプローチするには自社のリソースや知見だけでは難しいということが改めて分かりました。

Appify社が導入したPricing Sprintの分析結果

Appify Technologiesが価格改定に踏み切れた理由

――Appifyが価格改定を実施できた理由を教えてください

Pricing Sprintの分析を通して「ユーザーにとってどの機能がどれだけ重要なのか?」を数値で把握することできたため、確信を持って価格改定に踏み切りました。SaaS提供会社として、正しいプライシングのアプローチができたと感じています。

個人的には「プライシングは科学的根拠をもって行うべきだ」と考えているSaaS企業にこそPricing Sprintの導入がおすすめです。

SaaSのプライシング課題に取り組む重要性を認識

――貴社の今後の展望を教えてください

今後は開発中のオプション機能について分析し、ユーザーがさらに製品を利用しやすい価格設定を行っていきたいです。“プライシング”という概念が日本ではまだ浸透していませんが、SaaS業界だけにとどまらず、プライシング課題に取り組むことの重要性が認識されることを期待しています。

会社概要

社名:株式会社Appify Technologies

事業内容:株式会社Appify Technologiesは、月額1万円未満のサブスクリプション型でアプリを簡単にノーコードで作成できる『Appify(アッピファイ)』を提供しているスタートアップ企業です。コロナ禍で需要が拡大するBASEや日本での導入が加速しているShopify、サブスクリプション型モデルで支援を募ることができるCAMPFIRE Communityといったプラットフォームと連携し、様々なネイティブアプリの作成を可能にしています

設立:2018年
URL:https://appify-inc.com/

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従量課金制とは?料金モデルの仕組み・メリット・デメリット【SaaS価格体系】

SaaSの課金体系のうちの1つ、従量課金制について、メリットとデメリット、事例も交えながら解説いたします。


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従量課金制とは

従量課金制は、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系の1つです。顧客目線だと「使った分だけお金を支払う」仕組みといえます。

ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。

超過従量課金

従量課金のシステムを部分的に取り入れる価格体系として、超過従量課金があげられます。

超過従量課金では、基本料金が設定されており、超過利用分に応じて料金が追加されます。そのため、特定のプランの制限から超過利用した場合にプランをアップグレードするのではなく、超過した分に従量課金をかけるモデルだといえます。

ただの従量課金では、多くの顧客が著しく利用を控えた場合、企業の収益が不安定になるリスクを孕んでいますが、超過従量課金を採用することで、最低限の収益は保証され、収益の拡大も見込めることから、非常に使い勝手がいいモデルです。

従量課金のメリット

従量課金制導入のメリットは次の2点あります。

金額に対する顧客の納得を得やすい

ユーザーが使えば使った分に応じて利用金額が確定されるため、顧客の納得を得やすくなります。また、機能制限がある課金モデルと異なり、全機能をとりあえず利用できたり、単価が上がる要因を事前に把握できているため、顧客にとっては非常にわかりやすいモデルとなります。

他にも、「サービスの価値は半信半疑なので、まずは安く使ってみたい」と考えている顧客は、利用頻度を抑えつつ低単価で、「サービスに対して、非常に価値を感じているためたくさん使いたい」と考えている顧客は、利用頻度が高く高単価になることから、購買のハードルを下げつつ、収益を最大化することが可能になります。

解約を回避できる場合がある

サービスによっては、利用する期間が一定期間に集中し、月ごとに利用量が大きく異なる場合があります。導入業績の業績によってもその傾向はあるでしょう。

そのようなサービスは、利用量が少ない期間にコストカットの対象と判断され、解約されてしまう可能性があります。しかし、従量課金制を採用していれば、利用量の少ない期間は低単価になるため、解約されにくくなります。

従量課金のデメリット

従量課金は、以下のようなデメリットも合わせ持ちます。

利用を控えられる

利用量やユーザー数が多ければ多いほど料金が高くなる従量課金制では、顧客が単価を抑えるために利用を控えてしまう可能性があります。そうなると、本来なら解決できた課題を解決できずに、顧客の満足度が低下してしまうかもしれません。

前払いしてもらえない

サブスクリプションビジネスでは、欠点である「顧客獲得コストの回収に時間がかかる」ことを解決するために、年間一括前払いなど事前に決裁を促す工夫がなされています。

収益予測ができない

多くのSaaSビジネスにおいて、サブスクリプションによる収益予測が容易な点は、非常に大きな強みとなりますが、単価が確定できない従量課金制ではそれができません。

収益の予測がしっかりできていればいるほど、顧客獲得などに投資できるため、中長期的に大きな差が生まれる可能性も孕んでしまいます。

従量課金制の種類

従量課金制は、主に「使用量による課金」「ユーザー数による課金」の2つがあげられます。

使用量課金

使用量課金とは、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金される仕組みです。

・使用量課金の事例
WAN-Sign pricing電子契約サービス「WAN-Sign」があげられます。このサービスは企業間の契約を行うごとに料金が発生する使用量課金となっています。

参考:「WAN-Sign

ユーザー数課金

ユーザー数課金とは、企業内でアカウントを持つユーザーの数に応じて価格が上がるモデルです。難点として、企業がなるべく登録ユーザー数を増やさないようにする結果、サービス満足度が低下してしまうことがあげられます。

この問題点を解決できる、ユーザー数課金を応用した「アクティブユーザー課金」モデルも存在しています。

このモデルでは、アカウント自体は好きな数登録できて、アクティブユーザーの数に応じて請求を行います。これにより、気軽に多くの社員にサービスを導入してもらい、サービス満足度の低下を防ぐことが可能です。

・ユーザー数課金の事例

ユーザ数課金を行っているSaaSサービスとして、株式会社ディー・エヌ・エーが運営するRPA(コンピューター上の業務用ロボット)サービス「Coopel」があげられます。1アカウントあたり5,400円で利用可能で、気軽に導入できることをサービスの強みにしており、価格の高さからRPAサービスを利用していなかった企業にもアプローチすることを可能にしています。

まとめ

従量課金制は、ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすい価格体系です。

しかし、利用を抑制したり、キャッシュフローの鈍化、収益予測の難化など、多くのリスクを孕んでいます。

超過従量課金など応用的なモデルを組み合わせたりなどと様々な工夫をすることで、メリットを最大限活かすことが望ましいでしょう。

 

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キャプティブプライシングとは|ジレットのカミソリ事例からわかる価格戦略

カミソリ本体と替刃などの製品に用いられる主製品を低価格で、付属品を高価格で販売する価格戦略である「キャプティブプライシング」についてご紹介します。


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キャプティブプライシングとは

キャプティブプライシングとは、カミソリ本体と替刃のように「主製品を低価格に設定し、付属品を高価格に設定する価格戦略」のことです。

高い価格に設定した付属品を定期的に購入してもらうことで、長期的なスパンで収益を得られます。

キャプティブプライシングのメリット

キャプティブプライシングのメリットは、以下のことがあげられます。

購入してもらいやすい

キャプティブプライシングを行なっている製品は付属品で収益をあげるため、本体価格を安く抑えて購入してもらいやすくなります。

初期費用が安く、どんな人でも製品が手にとりやすいため、新規顧客を獲得することが可能です。

高いLTV(顧客生涯価値)を見込める

キャプティブプライシングのメリットとして、高いLTV(顧客生涯価値)を見込めることがあげられます。

LTV(顧客生涯価値)とは、顧客から一生のうちに得られる利益のことを指します。

キャプティブプライシングでは、セットとなる付属品を定期的に購入することを前提としているため、収益を長期的にあげられるようになり、結果として高いLTVが見込めます。

キャプティブプライシングのデメリット

キャプティブプライシングのデメリットは、以下のことがあげられます。

付属品の価格設定が困難

主製品と付属品とそれぞれの価格設定が必要となるだけでなく、付属品の継続的に購買につながる価格設定が必要です。

付属品が高価格すぎると継続的な購買にいたらず、売上の損失に繋がる可能性があります。

顧客の購買意識を維持させるのが困難

キャプティブプライシングは顧客がサービスを活用し付属品を長期的に購買し続けることで収益化に繋がります。そのため、継続的に購買をしている間に他社の類似製品と比較されがちです。付属品の商品価値を上げるなどの手段で顧客が価格に納得感を持ち続けるようにする必要があります。

キャプティンブプライシングの実際の例

カミソリ本体と替刃

カミソリ本体と替刃の関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

実際に、ジレットでは「消耗品モデル」という名前で、キャプティブプライシングを行っています。カミソリ本体の値段は抑え、付属品である替刃の部分の価格を高く設定するというビジネスモデルを確立したので、このようなモデルは「ジレットモデル」とも言われています。

プリンターとインク

プリンターとインクの関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

ここでは、エプソンのプリンターの例をご紹介します。エプソンのプリンター本体価格は、6,000円から20,000円の間が相場となっています。

印刷する際に必要なプリンターのインクは、純正のエプソンプリンター専用のインクを使用することが推奨されており、1セット6,000円で販売されています。

プリンター会社が作っていない互換インクだとより安く購入することができますが、エプソンのプリンター自体が専門のインクを指定しているので、インクから安定して収益を得ることが可能です。

コーヒーメーカーとカプセル

コーヒーメーカーとカプセルの関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

主製品となるコーヒーメーカーは、比較的安い価格で販売している一方、コーヒーメーカーにいれるコーヒーカプセルを高い価格に設定することで利益を得られる仕組みになっています。

具体的な例として、ネスプレッソのコーヒーメーカーを見てみます。ネスプレッソのコーヒーメーカーは、12,000円から購入することができます。そこにいれるコーヒーカプセルは、1セット30カプセル約3,000円の値段がします。1日2回飲むとしたら、1ヶ月で6,000円12ヶ月で72,000円になります。付属のコーヒーカプセルを定期的に購入してもらうことでコーヒーメーカー以上の利益を出すことができます。

SaaS + a box

SaaS + a boxとは、近年話題になりつつある、最新のビジネスモデルです。ハードウェア製品に加えて、月額課金のオンラインサービス提供をすることで、満足度を高めることができるため、非常に注目が高まっています。

実は、このモデルは、キャプティブプライシングの例だと言えるのです。SaaS + a boxでは、ハードウェア製品を高い機能に対して比較的安く提供します。

lovotというサービスでは、ハードウェア自体は原価で販売する一方で、月額課金のオンラインサービスを提供し、収益をあげています。これは、キャプティブプライシングを利用しているといえるでしょう。

具体例としては、オンラインフィットネスのPelotonが挙げられます。現在アメリカで大流行しているサービスで、ランニングマシンやサイクリングマシンといったフィットネスマシンのハードウェアと、月額課金のレッスン動画などのフィットネスサービスを販売しています。

フィットネスマシンの効果を最大限発揮するには、月額課金のフィットネスサービスを利用する必要があるため、月額課金での安定した収益をあげられます。SaaS + a boxはキャプティブプライシングを使った画期的なビジネスモデルといえるでしょう。

まとめ

キャプティブプライシングとは、主製品を低価格に設定し、付属品を高価格に設定する価格戦略のことです。

主製品と付属品のビジネスモデルを確立した「ジレットモデル」を参考に、ネスカフェやネスプレッソなどのコーヒーメーカーの価格戦略が誕生したと言われています。このことから様々な製品に応用することができる価格戦略だということができるでしょう。

デメリットでも解説しましたが、主製品と付属品の価格の設定を適切に行うことが重要になってきます。キャプティブプライシングは、顧客の購買意欲を継続的に保つ価格で行うことが成功の鍵になってくるでしょう。

 

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは?仕組み・事例をわかりやすく解説

近年注目を浴びているダイナミックプライシング(価格変動制)とはなにかについて、この記事では、定義・メリット・アルゴリズム・歴史・事例・導入方法など、様々な角度から解説します。


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ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)とは、高頻度で価格を変更する仕組みです。

言葉を分解し理解すると、「ダイナミック」とは英和辞典で「動的」と訳され、何かが時間とともに変動する状態を指します。一方、「プライシング」とは、商品やサービスの値付けのことを指し、マーケティングでは重要とされる「4P」のうちの1つの概念です。

日常生活で私たちは多くの場合、商品・サービスの価格は発売時当初から一定であるもの(一定価格制)を享受しています。一方、ダイナミックプライシングでは、ITやAIなどのツールを用い、高頻度での価格変更を実現させています。

ダイナミックプライシングの概念的理解

ダイナミックプライシングの概念を理解するには、そもそものプライシングの基本を知る必要があります。

商品・サービスの売上は、「価格」と「販売量」の2つが組み合わさり、決定される(売上曲線)のに対し、販売量は価格に応じて、反比例“的”に決まります(価格曲線)

この、価格曲線に価格を掛け合わせた「売上曲線」の最大化の実現がプライシングの基本です。

ダイナミックプライシングは、このプライシングの基本に需要と供給を組み合わせて、機会損失の最小化を実現を目的としています。

数量と価格による需要曲線を仮定したとき、一定価格での販売では機会損失(上図水色部分)が多く生まれます。

一方、ダイナミックプライシングの実現は、需要により価格を変動できるため、機会損失を減らせます。

ダイナミックプライシングでは、需要が多く、供給が間に合わない場合は、価格を高くし、それでも購入する顧客を絞りつつ、収益を最大化する。一方、供給が多く、在庫処分または機会損失が発生する場合は、価格を低くし、購入者数を増加し、売上向上を図る。といった戦略が可能です。

ダイナミックプライシングのメリット

ダイナミックプライシングの最大のメリットは、「収益最大化」です。先ほど紹介した図は、価格とその価格で販売できる数量を示した図です。この図を用い、改めて収益最大化のポイントを解説します。

左図が通常の価格設定、つまり一定価格での販売です。価格はA円に固定され、この価格での販売数の最大はaになります。そのため、最大売上はA円×a個で、売上は紺色の部分が該当します。

全ての状態において、予測する最大の販売数aが販売できるのであれば、問題はありません。しかし、実際に商品・サービスの需要は一定ではなく、変動するものです。

需要が大きいとき
→実際に得られたはずの収益を逃す。在庫不足が発生する。
需要が小さいとき
→販売数が減少する。在庫が余る。

つまり、通常の一定価格では、需要が大きい時には収益を、需要が小さい時には価格を下げれば獲得できたであろう顧客を逃してしまいます。一方、ダイナミックプライシングによる価格設定(右図)では、価格をA円だけでなく、B・C点のような値上げ、D・E点のような値下げを実施できるため、需要の変動や供給の状況に応じた収益最大化が可能になります。

需要が大きい、または供給不足と判断されるとき
→価格を上げ、その値段でも購入する層からより多くの利益を得られます。また、飛行機など供給が限られる場合は、需要の集中を抑え、需要が小さい時に購入するようにうながすことになり、全体の収益を最大化します。需要が小さい、または供給過多と判断されるとき
→値下げをおこない、新規顧客・見込み顧客を流入させ、販売数を増やせます。これには収益が増える、在庫処理をスピーディーにできるというメリットだけではなく、一定価格制では価格が高いゆえに商品に見向きもしなかった顧客に、自社製品を知ってもらえるというマーケティング的価値もあります。

ダイナミックプライシングでは、一定価格制のもとでは失っていた、本来需要変動により生まれる
「定価より高価での販売機会」
「販売する価格を下げれば獲得できたであろう販売機会」
を逃さず掴み、収益を最大化を実現しています。

他にもメリットとして、より深い顧客の理解・工数削減・安全な価格管理などがあります。

ダイナミックプライシングのデメリット

ダイナミックプライシングは、収益の最大化につながる一方、導入による顧客離れの危険性があります。ダイナミックプライシング導入への不信や高騰した価格による顧客離れが起こりえます。

ダイナミックプライシング導入への不信による顧客離れ

ダイナミックプライシングの導入は消費者からの不信を買うリスクがあります。

顧客は値上げに対して敏感であり、ダイナミックプライシングによる大幅な値上げは「この企業は、自社の儲けだけを追求している」と感じさせてしまいます。

また、値下げをする前に高値で購入した顧客は、損をした気分になり不満を抱いてしまうかもしれません。例えば、飛行機のチケットを7,000円で購入した顧客が、翌日に6,000円に値下げされたチケットを見た場合、1,000円分の損をした感覚になるとっいった感じです。

ダイナミックプライシングによる価格変動は、顧客の不信感を募らせ、それを理由に商品・サービスを購入しなくなるという、長期的な利益を失うというリスクがあります。

そのため、ダイナミックプライシングを導入するときは、顧客に適切な導入理由や価格変動の要因を納得感のあるかたちで顧客に伝えなければいけません。

高騰した価格による顧客離れ

ダイナミックプライシングによる値上げは、商品・サービスに対して価格が見合っているかに対して、顧客が不信感を抱く危険性もあります。

例えば、繁盛期のホテルでは、宿泊料が通常価格の何倍にもなることはよくありますが、提供されるサービスの質は変わらないので、消費者からすれば、値段に対してサービスの質が低いと判断されかねません。

ダイナミックプライシングを導入した事実を顧客が知らないとしても、値上げされた価格に対してサービスが見合っていないと判断し、顧客がサービスから離れてしまうリスクも持ちます。

顧客離反を生まないためにも、ダイナミックプライシングを導入する際には、導入理由や仕組みについて、顧客に詳しく説明することが重要です。

ダイナミックプライシングのアルゴリズム

ダイナミックプライシングの「需給に合わせた最適な価格決定」のアルゴリズムは、利用する技術ベースで次の3つに大別できます。

1.自動化
2.機械学習による予測
3.強化学習

1.自動化

自動化によるダイナミックプライシングは、既存の値付けルールをシステムで実現させたもので、一般的にルールベースと呼ばれます。

完全手動で作成したルール・機械学習を活用して作成したルールをシステムに置き換え、実装するというダイナミックプライシングです。

この仕組みはの利点は、実装に必要な技術の難易度がそこまで高くなく、実装が容易なことです。

通例業界としては、従来からの変動価格を利用していた航空・ホテル業界や競合価格のみを参照した価格変更をおこなうEC小売業界があります。

2.機械学習による予測

機械学習によるダイナミックプライシングは、需要を仮定し、需要予測から最適な値付けをおこなうものです。需要予測には、頻度論的回帰モデルやベイズ回帰モデルといった手法が使われます。

日付や曜日、天候や近隣イベントの有無など様々な変数をもとに、時々の需要予測を実施したプライシングが行われ、現在のダイナミックプライシングの主流と呼べるものです。

需要変動に売上が大きく影響を受けるテーマパーク業界やスポーツ観戦・コンサート・ライブなどといったエンタメ業界など、需要予測が必要な業界で多く採用されています。

3.強化学習

強化学習によるダイナミックプライシングは、特定の状態(天気など、需要と価格に関わる変数の特定の値)で、最も収益最大化につながる選択肢を、AIの経験から導き出す仕組みです。

強化学習によるダイナミックプライシングは、需要を仮定しないため、より収益最大化につながる可能性があるとされていますが、実装事例は、特に国内ではほとんど見受けられません。

原因としては、次のものが考えられます。

1.データ不足
2.精度に欠けている
3.AIの判断がブラックボックス化される恐れがある

現在、機械学習によるダイナミックプライシングは、論文レベルでは進行中であるが、プライシング領域での実用例はほぼなく、実用化は先の話になるでしょう。

ダイナミックプライシングの歴史

原始的なプライシング

歴史的に見ると、価格が一定だった期間は、値札が開発された1870年代からで、むしろ価格は変動的な方が主流だったと言っても過言ではありません。

値札が使われる以前は、消費者と店主の価格交渉で決定されることが当たり前でした。

19世紀後半(1870年代〜)

19世紀からの企業の大規模化の中で、この作業コストを軽減するために、値札を使い、一定価格で商品を販売するようになりました。

この後に続く大量生産の時代では一定価格制が一層社会に浸透していき、20世紀以降にに登場するサービス業などの新しい業態でも、一定価格でサービスを販売することが当然のようになりました。

20世紀後半(1980年代〜)

1980年代を皮切りに現代版ダイナミックプライシングがアメリカの航空産業で始まりました。

アメリカの航空会社は数百万ドルを投資して、季節などの座席需要に影響を与える要素にもとづいて価格を自動調整するコンピュータープログラムを開発したそうです。これが情報技術を使った初めてのダイナミックプライシングだと言われています。

その後、航空業界に続く形で、ホテルやクルーズなど、その他の旅行業界のプレイヤーもダイナミックプライシングを導入していきました。

2000年代〜

EC小売市場では同じ商品が乱立した結果、消費者にとって”価格”が主要な商品の選択要因となり、価格調整を自動化するソリューションとして、小売企業にもダイナミックプライシングツールが普及しました。

現在

現在では、商品・サービスごとの需要の変動や供給量の変化を予測できるEC小売向けSaaSや、需要変動が予測しにくいスポーツ業界での開発企業が登場しています。

この背景にはAIの発達があります。AIを用いることで、自社のデータだけではなく、大量のビッグデータを収集し、分析し、これまでには扱えなかった複雑な条件を需要予測に加味できるようになりました。

需要予測の可能性が広がり、多くの業界でダイナミックプライシングを活用できるようになった今、わたしたちの暮らしに影響を与えています。

ダイナミックプライシングが導入されている業界

ダイナミックプライシングは近年多くの業界に導入されています。AI、ビッグデータ、電子棚札といったテクノロジーの発展と共に活用できる業界は広がりました。その例をいくつか紹介していきます。

遊園地

遊園地 ダイナミックプライシング

「東京ディズニーランド・ディズニーシー」や「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」などを代表する遊園地で、入場チケットのダイナミックプライシングが導入されています。

入場チケットのダイナミックプライシングの導入は、時期による入園者数の変化などに対応するため、混雑緩和などを狙いとした導入と公表されています。

USJでは2019年1月より、ディズニーでは2021年3月より、土日・祝日・長期休暇期間・ゴールデンウイークなど、混雑時にチケット価格が基本料金より値上げされるダイナミックプライシングがおこなわれています。

参照
日経新聞「USJ、入場券に変動価格制 大手テーマパークで初」
東京ディズニーランド®/東京ディズニーシー® チケットの変動価格制導入について

駐車場

駐車場 ダイナミックプライシング
駐車場は、現在日本でも、海外でもダイナミックプライシングの導入が進んでいる領域です。需要予測をもとに、駐車場の値段を最適価格に変更します。

国内の駐車場予約サービスakippaでは、ダイナミックプライシングが適用されています。駐車場の近くでのイベントの有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定しているようです。

EC業界

消費者が特定の商品を購入する際、同じものを複数のサイトで販売しているEC業界では、商品そのものの価値より、販売価格が重視されます。

そのため、競合の価格や変動する需要に応じて価格を変動させることで収益を最大化できます。

オフライン小売業界

家電量販店 ダイナミックプライシング

ここ数年でオフライン小売でも導入が拡大しております。電子棚札の利用拡大により、日本国内でも大手家電量販店のノジマやビックカメラがダイナミックプライシングでの値付けを始めました。

また、コンビニエンスストアのローソンでも、商品の賞味期限を基準に価格を変動させるダイナミックプライシングの導入実験が行われています。

もともとオフライン小売業界は、Amazonなどオンライン小売店やオフライン小売店同士の激しい競争環境のため、価格変更を頻繁に行う必要がありました。しかし、値札の張り替えを手動でおこなうのは、扱う商品点数が多い大手小売店において、非常にコストがかかるものでした。

電子棚札の登場は、ダイナミックプライシングの導入を拡大させ、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストにできるのを実現させました。

スポーツ業界

スポーツのチケットの需要は、試合ごとに大きく異なり、その需要はあらかじめ予測できるものではなく、試合状況や、天候などの環境要因に左右されます。

スポーツ業界でのダイナミックプライシングは、時間と共に変化する需要をAIを用いた機械学習で予測し、さらにスタジアムの残り席数という供給(在庫)状態も加味して、価格決定をしています。

ホテル業界

ホテルでは古くから使われてきた「レベニューマネジメント」という手法があり、予約状況をもとにした価格変更を手動で実施していました。

現在では、ダイナミックプライシングを自動化しおこなうことで、効率よく収益最大化を図っています。

飲食業界

コロナ禍における「3密」を回避するために、飲食店でダイナミックプライシングを導入されたのが、ネット上で話題となっていました。

コロナ禍でのダイナミックプライシング

コロナ禍の状況によりダイナミックプライシング導入が促進されています。
今回紹介した業界以外にも、電車・高速道路・旅行産業でもダイナミックプライシングが進んでいます。

ダイナミックプライシングの導入方法

ダイナミックプライシングの導入方法としては、自社開発・ツール利用・受託開発があげられます。
3つのパターンを検討する際に役に立つ、フローチャートを作成しました。

ダイナミックプライシング 導入方法フローチャート

導入を検討されている企業様は、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

ダイナミックプライシングに関するツール販売業者・受託開発業者を比較検討を考えている企業様は、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

高頻度で価格を変動させる仕組みであるダイナミックプライシングは、需給に応じた価格に商品価格を変更し続けることによって、導入企業の収益最大化に貢献します。

しかし、導入には顧客離れにつながるリスクもあるため、導入を顧客に納得いただけるように、「導入理由」及び「価格変動要因」をしっかりと顧客に伝えることが重要です。

そして、このようなダイナミックプライシングは、技術の進歩とともに、様々な仕組みでの収益の最大化を目指せるようになり、様々な業界に適用されるようになりました。

この記事ではダイナミックプライシングについて、定義・メリット・デメリット・仕組み・導入事例など様々な観点から解説しました。この記事を通じてダイナミックプライシングとは何かを理解できたのならば幸いです。

プライスハックとは

プライスハックとは、「プライシングで事業成長を加速させる」をミッションとして掲げるプライシングスタジオ株式会社が運営する、プライシングメディアです。

価格を1%あげたことで、「12.8%」営業利益が改善されると言われているほど、企業・事業の成長にとってプライシングは重要なものになってきます。

しかし、実際にいくらで売ればいいのか、値上げしたら離反顧客が出てしまうのではないかという懸念から、自社での価格決定・価格変更を実施するのが難しいのが現状です。

私たちは、プライシングのプロフェッショナル集団として、企業のプライシングに関する課題を全力で解決したいと思っております。

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サブスクリプション

サブスクリプションが流行した理由・背景とは?「所有」から「利用」へと変わる消費者意識

私たちの生活では当たり前になっているサブスクリプションサービスですが、実は時代の流れと共に流行り始めたビジネスモデルです。

この記事では、サブスクリプションサービスの時代背景について解説します。


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サブスクリプションとは

サブスクリプションとは、「定額制で製品やサービスを利用者に提供するビジネスモデルのこと」です。通称「サブスク」という名で、2018年前後から世界中で注目されています。

サブスクという名前は真新しく感じられますが、ビジネスモデル自体は昔から存在していました。例えば、雑誌や新聞などを定期購読したり、保険料金やガス、電気などの公共料金などを定期的に支払ったりしているのもサブスクリプションの1つです。

一方で現代のサブスクリプションは、従来のものと違い、インターネットやITを活用したビジネスモデルのことを言います。
なぜ近年になって、サブスクリプションが注目を集めているのでしょうか。今回は、サブスクリプションの流行背景について解説します。

サブスクリプションの流行背景

現在、サブスクリプションが流行している背景は以下の3つのことがあげられます。

1.インターネットの普及

サブスクリプションの流行背景の理由の1つ目は、ITやインターネットの進化があげられます。

インターネットが普及する前、ソフトウェアはパッケージ販売されていました。そのため、バージョンアップや修正したソフトウェアを発売するのに1年半や2年といった長い期間が必要でした。

ですがITやインターネットが普及してくると、インターネットを使って大きなデータをやりとりすることができるようになり、ソフトウェアをインターネット上でダウンロードして直接購入することが可能になりました。インストールされたソフトウェアをインターネット上で修理できるようになったため、パッケージ化するためのコストが低減し、ソフトウェアの流通スピードが増加しました。

頻繁に改善したソフトウェアを消費者に提供するための手段として、手軽に契約できるサブスクリプションが導入されるようになりました。

2.消費者の意識の変化

サブスクリプションの流行背景の理由の2つ目は、消費者の意識の変化があげられます。

少子高齢化が進み、ターゲットとしていた若年層が減少していることはもちろんのこと、若者を中心として「消費離れ」「所有欲離れ」という意識の変化が見られます。

「消費者離れ」や「所有欲離れ」は、将来への不安や手取り収入の低下が原因だと言われています。
消費者は、物を所有することを評価するというお金の消費に対する考え方から体験や人間関係に価値を見出し、評価の対象とする考え方に移行しているのです。

この結果、旅行やレジャー、芸術鑑賞、習い事などのサービスにお金を使うようになりました。従来のように個人として所有するという形で商品が売れなくなってしまった今、契約期間でのみ商品やサービスを提供するビジネスモデルであるサブスクリプションは、非常に合理的だと言えます。

3.物流の進歩

サブスクリプションの流行背景の理由の3つ目は、物流の発達があげられます。

インターネットが発達したことによって、ネットショッピングなど電子上の取引が普及しました。その際、重要になってくるのが宅配便の存在です。配送した翌日には商品が届くスピーディーさだけでなく、複雑な宅配便にも適応できるという強みが、日本におけるサブスクリプションサービスの拡大に大きく貢献しました。

例えば、衣服をレンタル形式で提供するサブスク「airCloset」では、衣服を保管している倉庫から会員それぞれの衣服を送り、返送があれば修善やクリーニングに出し、一連の流れが終了したら保管場所に送るというような作業を繰り返し行っています。

このようなサブスクリプションサービスを展開するには、複雑な物流の仕組みを可能にできる物流の発達が必要不可欠です。

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけ

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけの事例を2つご紹介します。

最初に現代サブスクリプションサービスが日本で流行したきっかけは、NTTドコモの「パケホーダイ」。パケホーダイは、携帯電話が爆発的に普及した2004年6月に開始されたサービスです。

当時、携帯電話向けのコンテンツがインターネット上に次々と登場し、1人当たりが使用する通信量が増加傾向にありました。
ただし価格体系は、通信量を使用した分だけ料金が請求される従量課金制であったため、利用者の中には高額な料金に頭を抱える人も少なくありませんでした。

NTTドコモは、1ヶ月に決められた通信量が定額で使い放題になるサービスとして「パケホーダイ」を提供しました。高額な通信量の請求がこないという安心感から多くの利用者を獲得することに成功しました。

次にご紹介するのは、Spotifyの例です。
日本だけでなく、世界中でサブスクリプションサービスの火付け役となったSpotifyは、2008年から開始された音楽の定額聴き放題サービスです。約4000万曲以上の音楽が聴き放題だけでなく、大半の機能を無料会員でも利用できるといった点が他にはないサービスです。

通常、トライアル期間が過ぎると有料になることが多いですが、Spotifyは無料かつプレイリスト機能も無料で使用することができます。無料でも便利だが、有料会員になると更に便利という謙虚さが人気の理由と言えます。今では有料会員数が1億3000万人を超えるまでに拡大しています。

まとめ

サブスクリプションサービスは、これまでのIT産業の発展や物流の発展、経済状況の変化に大きく影響されているサービスであることが分かりました。

サブスクリプションは、ものを所有するのではなく、利用するという消費者意識の変化を表しています。
最近では、車のサブスクリプションや料理のサブスクリプションなど多種多様なサブスクリプションサービスが増えています。車を持っていることがステータスという概念や料理をするのが当然という従来の考え方も塗り替えられつつあります。

そう意味では、サブスクリプションサービスは時代を表す鏡のようなビジネスモデルだということができるでしょう。
消費者意識に対して合理的なビジネスモデルであるサブスクリプションサービスの背景を知った今、これからの発展も見逃せません!

 

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コラム

効果的な割引戦略とは?セールによるマーケティングで失敗しない方法

企業が商品販売の促進のためのメジャーな手段として、割引の実施があげられます。アパレル店がシーズンオフに行うセールや、サブスクリプションサービスの導入に際しての特別割引プランもその1種です。この記事では、企業の割引戦略について解説します。


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企業が割引という戦略をとる意味

企業が、利益率をさげてまで割引を実行するのは、「顧客を動かすため」です。より商品を買ってもらいたい、より長くサービスに契約してもらいたい、などの思いから、割引を実行します。

そして、割引を実行することで、収益拡大や在庫消化などのメリットを得られるのです。

また、割引は活用次第で、安い価格で顧客にアプローチしできるうえに収益もキープしやすいという価値もあります。

値下げの場合、実施後にもとの価格に値上げすることが難しくなります。一方、割引の場合、期間が終われば、通常価格に自然と戻すことができるため、収益をキープさせやすいのです。

割引戦略のリスク

企業にとってメリットも大きい割引ですが、時にそれは企業にとって、以下のような悪い結果を及ぼすリスクがあります。

1.売上の低下

割引を行う際は、商品単位の利益を落としながらも、全体での売上増加を狙うことや、一時的に安くしてでも一度利用してもらい、そこから継続的な購買を狙うことが一般的です。

しかし、割引の度合いや対象を間違えると、販売数の増加などのメリットよりも、割引による利益率の低下が響いてしまい、収益に対して大きなダメージが与えられるリスクも持っています。

少なくとも短期的な利益率を犠牲にする割引戦略は、リスクをとる戦略であることは認識しないといけません。

2.ブランドに傷がつく

割引は、値下げにより価格帯を下げることなく安く販売する戦略ですが、それでもブランドに傷がつく可能性は存在します。

例えば、頻繁にセールを繰り返すアパレル店では、「こんなに値下げできるということは、原価から計算すると通常の価格で購入するのは損なのではないか」と思われることが考えられます。

このように、割引きをすることが、顧客に 「通常価格で買っては損になる」「売れない商品だから値引きされている」 といったマイナスなイメージを想起させてしまいます。

例えば、大手アパレル店では、40%割引を超えるセールを頻繁に打ち出した結果、インターネット上で「通常価格で購入するのは損なのではないか」「質が低いのではないか」というコメントが多く見られるようになることもありました。

実際に、ブランド毀損を恐れて、在庫を減らすために割引して売るということを避けている高級ブランドも多く存在します。

3.負担のみがかかる

割引戦略の中でも、一定期間のみ安くサービスを提供し、終了後通常価格での利用を開始する場合があります。この戦略は、割引期間で顧客をサービスのファンにすることで、顧客が通常価格でも支払うようになってもらうことが目標です。

しかし、それを達成することができなければ、企業に、無料期間の負担のみがかかることになります。特にサービスの原価が高いモデルの場合、低い利益率が大きな企業へのダメージとなり得ます。

また、割引によって購入行動を行ってくれる顧客は、機能に対してではなく価格によって選んだだけにすぎないため、競合企業の値下げによって簡単に目移りされやすく、サービスから離脱されやすい傾向にあるというデータも存在しています。

せっかく低い利益率で顧客を獲得しても、離脱されてしまっては収益に貢献されません。

割引を成功させるための戦略

割引を成功させるために活用できる戦略を6つ紹介いたします!

追加購入の経路設計

割引を用いることで、顧客の購入機会を作り、顧客との接点を持つことができます。その機会を活かすためには、他の商品の追加購入を促す経路を作ることが重要です。

例えば、キャプティブプライシングを用いて、他に必要な商品をセットで高価格で用意しておいてその購入につなげるなど、複数商品の購入につなげることができると割引の効果があったと言えるでしょう。

※キャプティブプライシング:主製品を低価格に設定し、必要な付属製品を高価格に設定する価格戦略。カミソリの本体を安く設定し、付け替え用の刃を高い価格設定する「ジレッドモデル」がその代表。
詳しくは

ボリュームディスカウントの設計

単純に割引をするのではなく、複数点商品を買った場合や、購入金額が一定の金額に達した場合に割引を適用するのがボリュームディスカウントです。

この場合、割引が適用される際に、利益が低くなるだけで終わらず、確実に高い売上を得ることができます。

長期契約割引

サブスクリプションビジネスでメジャーな割引戦略がこちらの長期契約割引です。

サブスクリプションビジネスでは、導入の際の金銭及び心理的なコストを削減するために、長期的な契約ではなく、月単位など短い期間での契約が多いです。しかし、長期間の契約を結べることは、確実な収益につながるため大きな価値があるため、積極的に長期間の契約は狙うべきなのです。

そこでよく取られている手法が、長期契約割引です。
「1年契約すると、2ヶ月分お得になる」などの、長期契約に対するお得な割引プランを用意することで、長期的な導入に顧客を誘導することができるのです。

実質割引

値段を引かずに割引で目指す効果を得る手法として、実質割引を紹介します。

実質割引とは、「今サービスを契約すると、3ヶ月間付属サービスが無料になる」のようなかたちで、値段を下げずに価値を無料で上乗せして、サービスを顧客にお得に提供する手法です。

実質割引は顧客にお得感を与え、今すぐの購入を促すうえに、付属サービスの契約更新も狙うことができます。また、単価が低くなってしまう割引と異なり、実質割引では、単価を一定確保したうえでの追加サービス提供となりますので、比較的にリスクの低い手法だと言えます。

割引数値の適正化

割引を行うにあたって、顧客の商品に対する支払意欲を把握することは欠かせません。当然、割引をしようと思う際は通常価格が、多くのターゲット顧客の支払意欲を下回っていることがほとんどです。

しかし、一体いくらなら購入してもらうのかを把握しないと、割引をしても販売数が増えなくなったり、無駄に安く販売することになったり、割引の効果が小さくなってしまいます。

そのため、顧客の支払意欲がどれほどなのか、いくら割引すると効果があるかを事前に予測しておくことが必要なのです。支払意欲を把握することには、「PSM分析」を行うことがオススメです。

ただ、小売店などで一斉割引をする際は、商品への支払意欲に応じた割引はできません。その際は、割引自体が顧客に「お得」だと認識させるような割引の数値設計が重要です。例えば、1000円前後の商品が多い店では、300円引きキャンペーンと広告するより、30%OFFと広告した方が、実際の割引額が変わらなくても顧客にお得な印象を与えられると思われます。

ブランドを低下させない打ち出し方

ブランドを低下させないように割引を打ち出すには、理由と紐づけることが重要です。アパレル店の年末セールや、SaaS企業が行っていた「新型コロナ支援キャンペーン」などがこれにあたります。

これらのように、不自然に感じないように、理由に紐づいた割引が行えると、ブランドを保った上で、安い価格で顧客にアプローチすることができます。

さらに、このように理由に基づいたキャンペーンの場合、ブランド低下を心配せずに思い切り広報することができるため、顧客にセールの情報を伝えやすく、セールが効果を発揮しやすいです。

まとめ

割引は、戦略次第で、ブランドを低下させず収益の拡大に繋げることができます。しかし、失敗するとブランドの低下と収益減退を引き起こす危険性も持ち合わせています。

ここで解説したような戦略を活用して、割引を効果的に行うことが重要です。

 

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングのアルゴリズム3種類を簡単に解説

ダイナミックプライシングは、変動する需給に合わせた最適な価格で商品/サービスをで販売することを可能にします。それでは、どのように需給に合わせた最適価格を導いているのでしょうか?

この記事では、ダイナミックプライシングのアルゴリズムについて簡潔に解説します。ダイナミックプライシングとは何かについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。


プライシングスプリント

はじめに

ダイナミックプライシングは、需給に合わせてその時の最適な価格に価格を変更することで収益を最大化します。この「需給に合わせた最適な価格決定」の仕組みは、利用する技術ベースで3つに大別できます。それではその仕組みについて解説していきます。

ダイナミックプライシングのアルゴリズム解説

1.自動化

ダッシュボード
第1のパターンは、既に定まっている価格決定のルールに基づき、人の手で行っている価格変更作業を、自動化する仕組みです。ダイナミックプライシングでは「収益の最大化を目指す際に把握したい需要の変動」をツールを用いて予測し、価格を決定するのが主流ですが(後述)、このパターンはツールを用いた需要の予測を行わない点で特徴的です。

その例として、

  1. 競合価格を監視し、競合価格に応じて価格を自動変更するツール
  2. 在庫数に応じて価格を自動変更するツール

が挙げられます。

1の場合、監視する競合価格から100円安くするなど、競合価格をもとに価格変更するルールを定め、自動で価格を変更します。
2の場合、現在の自社の供給(在庫)状況をもとに、できるだけ高い値段で売り切れるように、予め定めたルールに沿って段階的に商品価格を自動変更します。

これらのツール・手法は、実装に必要な技術の難易度がそこまで高くないため、実装が容易だという利点があるものの、価格決定がルール化されていないと適用できないという難点もあります。

このパターンはホテルや飛行機のチケットなどの業界で古くから利用されてきたアルゴリズムになります。

2.機械学習による予測

需要予測

ダイナミックプライシングの主流と呼べるものが、機械学習をもとに需要予測を行うパターンです。これは、天気や近隣のイベントの有無、曜日などの様々な変数をもとにその時々で需要予測を行い、それをもとにプライシングを行う仕組みとなります。この機械学習に分類されるダイナミックプライシングでは、需要予測をルールベースではなく機械学習といわれる手法で行い、プライシングをします。機械学習とは数理・統計による予測をコンピューターで行うアルゴリズムです。

例えば、EC小売ツールでも、競合価格に反応するだけではなく、過去の売れ行きからこれからの需要を予測する時系列分析という機械学習を利用して、需給に応じた価格決定を実現しています。機械学習を用いたダイナミックプライシングは、スポーツの試合やアーティストのライブのチケットや駐車場など、需要変動が頻繁に起こる業界で効果を発揮しやすい手法だと言えます。

このアルゴリズムが可能になってから、ダイナミックプライシングはホテルや飛行機などの特別な業界のソリューションではなく、一般的な収益最大化のツールとして検討されるようになったといえます。

3.強化学習

強化学習

このパターンは、上記の2つのパターンとは考え方が異なります。この仕組みでは、予測した需要をもとに価格変更を行うのではなく、特定の状態(天気など、需要と価格に関わる変数の特定の値)で、最も収益最大化につながる選択肢を、AIが経験から導き出します。価格を動かしていると、収益や利益への影響が発生します。この時の収益・利益の変動具合を”報酬”としてAIに与えると、より最適な価格を導き出す学習を行います。与えられる報酬を最大化するように、最適な価格の提案ができるように学習するのです。

強化学習は、AIが最適な価格を学習するまでに大量のデータと思考錯誤の期間が必要という特徴があります。また、どういう理屈で価格を変動させたかが不明瞭になってしまい、ブラックボックス化してしまうというリスクも抱えています。

また、この強化学習を利用したダイナミックプライシングを提供している企業はほとんどないのが現状です。理論上は可能なはずですが、データが足りていない精度にかけている顧客離れのリスクからブラックボックス化を避けている、などの理由から、このモデルの社会実装は進んでいないと考えられます。

顧客に不信をもたれるというリスクについてはこちらで詳しく解説しております。

まとめ

ダイナミックプライシングは、技術の発展とともに今回3つに分類したような仕組みが生まれました。現在の主流は、2番目に紹介した需要予測ベースの機械学習となりますが、他の2つの仕組みも活用できれば高い効果を発揮します。

この記事では、これらについて解説してまいりました。

ただし、今回の記事では、仕組みの大枠は説明しましたが、実際に必要となる数式やアルゴリズムの詳細までは言及しておりません。そのため、実際に導入を考えている場合は、アルゴリズムに関して豊富な知識を持つ、ダイナミックプライシングの開発企業へ相談することも選択肢の一つとして考えられます。ダイナミックプライシングを企業で導入しようと思った際に、その実現の仕方までは検討されないかもしれませんが、活用する仕組みを把握して導入することができると、失敗も少なくなるかと思います。

導入をお考えの方はこちらの記事をご覧ください。