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プライシング戦略とは?事業に適した価格設定の基本

この記事では、事業に適したプライシング戦略について解説します。

プライシング戦略として、値下げ戦略、値上げ戦略などの各論の戦略も重要ですが、この記事ではより包括的に事業に適した価格を決めるプライシング戦略についてご紹介します。

プライシング戦略とは?

事業にとっての価格と聞いて何を思いつくでしょうか?

「お客様からいただく対価」であったり、「マーケティングミックス(4P)の一つの重要な要素」であったり価格は様々な面で重要な要素ですが、私たちは価格を事業において最も重要な礎と考えています。

なぜなら、価格によって事業が収益化できるかが決まるからです。収益化できれば、より事業投資を加速させ、事業成長できますが、収益化の見込みがつかなければ投資ができず事業成長は鈍化していきます。

事業を通じて顧客へ価値提供を行う観点からも、事業に投資し、成長させることは必要不可欠であり、そのための収益化を決定づけるものこそが価格なのです。

そのため事業成長のためには、事業に合った適切な価格戦略が必要になります。

価格の3観点(3C)と事業特性に合わせたプライシング

事業に適した価格戦略を考えるために、まず価格決定で重要な3観点について説明します。
価格を決める際、考慮すべきことは、コスト(Cost)、競合(Competitor)、顧客(Customer)の3つの観点(3C)です。

コスト:販売するほど生まれるコストはいくらか、販売量によってコスト構造は変わるかを検討します。
競合:誰が競合なのか、競合はいくらで提供しているか、競合との価値の違いは何かを把握する必要があります。
顧客:顧客は誰か、顧客は自社の製品の何に価値を感じるか顧客セグメントによって支払意欲は変わるかを把握します。

どれか1つだけで価格を決めるわけでなく、3つの観点(3C)を考慮して複合的に価格決定することが理想的なプライシングになります。
一方、3観点のうち何を起点に考えるかに応じてプライシングの手法が変わります。

  • コスト⇒コストベースプライシング:コストを起点に一定の利益/利益率を乗せて価格設定する方法
  • 競合⇒競合ベースプライシング:競合価格を起点に価格設定する方法
  • 顧客⇒バリューベースプライシング:顧客の支払意欲を起点に価格設定する方法

顧客の購入起点で、売り手と買い手の関係は始まるので、一部の場合を除き顧客起点のバリュープライシングから始めることが、どのような事業においても有効となります。またバリューベースプライシングは他のプライシングと異なり、顧客の購入可否を予想できるため、理想的な状態での販売数、売上の推計を行うことができ、計画性をもった事業運営が可能になります。

では、バリューベースプライシングが有効でない一部の場合とはどのような時でしょうか、それは下記のようなケースです。

製品カテゴリに差別化要因がない
差別化要因のない製品カテゴリでは、廉価なものが顧客に選考されるため競合ベースの価格設定が有効となります。

商習慣により該当製品群の平均売価が顧客の知覚価値より高い
コストベースの価格設定を業界全体で行っており*、実際の売価が顧客の知覚価値より高い場合(売価>知覚価値)は、バリューベースの価格設定は単価の引き下げを生み、売上を毀損することが考えられます。
*業界内で競争回避のために意思の連絡を行い価格設定を行うことは、独占禁止法の不当な取引制限で禁止されています。

上記の場合には、バリュープライシング以外が起点の観点となるため、自社の事業内容を3つの観点(3C)で整理し、自社の事業に合ったプライシングの注力観点を見定める必要があります。

事業ステージに応じた価格戦略

注力すべきプライシング観点が把握できても、取り得る価格は複数存在します。売上/利益が最大化する価格、顧客が最も増える価格、もしくはブランド価値を高めるための価格という選択肢もあります。
現在の事業状態と事業目標に照らして合目的な価格設定を選択する必要があります。

ここでは事業ステージごとの価格の選択で最も基本的な売上/利益、顧客獲得のどちらを優先すべきかについてを、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)に沿って検討する方法をご紹介します。


プロダクトポートフォリオマネジメントは、「市場成長性」と「市場における相対シェア」の2つを軸にした4象限に事業をプロットする手法です。
各象限で取りうる価格戦略を判断することができます。

問題児:成長率高・シェア低

自社の事業が成長率高・シェア低の問題児の場合、この事業は成長市場なのでシェアをより獲得していくべきステージです。この場合、価格設定は顧客最大となる価格をつける戦略が有効です。

花形:成長率高・シェア高

自社の事業が成長率高・シェア高の花形の場合、この事業は参入障壁を作るステージです。
この場合、取り得る価格は顧客最大価格・利益最大価格の2つが考えられます。
まず、顧客最大となる価格を設定し、顧客数を囲い込み販売数をあげることで製品一つあたりのコスト効率を高め参入障壁を築く戦略です。
もしくは利益最大価格をつけることで得た収益を、製品投資し差別化要因を強化して参入障壁を築く戦略もあり得ます。花形事業は、自社の事業戦略上どちらで参入障壁を作るかを決定し、顧客最大か利益最大かを選択することができます。

金のなる木:成長率低・シェア高

自社の事業が成長率低・シェア高の金のなる木の場合、この事業は収益回収のステージです。利益最大の価格設定を行い、他事業に投資するための資金回収を行う戦略が有効です。

負け犬:成長率低・シェア低

自社の事業が成長率低・シェア低の負け犬の場合、この事業は撤退・放置のステージです。
価格変更インパクトが価格変更のリスクとコストに見合わないため、価格は現状維持が推奨されますが、自社の別の製品に対してシェアの奪い合い(カニバリズム)が発生している場合には、価格変更を行い他事業への負の影響をなくすことが推奨されます。

このように事業ステージに合わせて、価格設定を行うことで事業戦略と合目的の価格設定を行うことができます。価格決定でもちいる顧客最大価格、売上/利益最大価格については、仮説から試算することもできますが、バリュープライシングで顧客調査を行い、テスト実施することでより根拠をもった意思決定を行うことができるようになります。

事業による価格の変更サイクル

価格の変更サイクルは、日頃の値引き、値上げなどの短期サイクルのものと長期サイクルの基本価格の変更に分けられます。

短期サイクルの価格変更

短期サイクルの価格変更は、明示的には特に在庫がある業界で用いられます。在庫があまりそうな場合、値引きを行うなどが行われます。非明示的なものとしては、B2Bビジネスで顧客ごとに値引きを行う場合も、短期での価格変更と考えることができます。

どちらの場合も、値引き及び値上げのルールを作成しておき、ルールに沿った運用を行うことが大切です。在庫がある事業の短期の価格変更の運用を円滑に回すものとして価格監視ツールや、自動価格設定ツールや需要を予測して価格変更を自動で行うダイナミックプライシングがあるのでこういったものを利用することで設定されたルールを確実に遂行することができます。

長期サイクルの価格変更

長期サイクルの価格変更は、年間で1、2回の基本価格の見直しです。この際は、事業ステージの応じた価格戦略の選択を再度行います。事業ステージが変わらず現状価格維持が最も適している場合もありますが、定期的に支払意欲調査を行い、顧客最大価格、売上/利益最大価格に変化がないかを定点観測していくことで事業環境の変化から最適な価格戦略を実施できるようになり、価格がコントロールできるものになります。

まとめ

この記事では、事業に適した価格戦略を行うための方法についてご案内しました。

まず、プライシングにおいて重要な3観点(3C)を踏まえた上で、自社の事業に合わせたプライングを選択することが大切です。次に事業ステージに合わせた価格戦略を選択し、価格の運用ルールを定め実行していくことが推奨されます。最後に定点的に支払意欲を観測していくことで、価格改定をサイクルさせコントロールできるものにする方法についてご紹介しました。

皆様の事業が価格によって、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまでよろしくお願いします。

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顧客価値に基づいて価格を決めるバリューベースプライシングとは

顧客の価値にもとづいて価格を設定する、バリューベースプライシングについて、定義・採用すべき理由・気をつける点・実行方法を解説します。

バリューベースプライシングとは

バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定することです。

バリューベースプライシングにより、商品・サービスの価格を原価や競合の価格にとらわれずに、値段を決められます。

バリューベースプライシングをすべき企業

顧客の購入起点で、売り手と買い手の関係は始まるので、一部の場合を除き顧客起点のバリュープライシングから始めることが、どのような事業においても有効です。

また、バリューベースプライシングは他のプライシングと異なり、調査を行うことで顧客の購入可否を予想できるため、理想的な状態での販売数、売上の推計をおこなうことができ、計画性をもった事業運営が可能になります。

一方、バリューベースプライシングが有効でない一部の場合とはどのような時でしょうか、それは下記のようなケースです。

・製品カテゴリに差別化要因がない
差別化要因のない製品カテゴリでは、廉価なものが顧客に選考されるため競合ベースの価格設定が有効となります。

・商習慣により該当製品群の平均売価が顧客の知覚価値より高い
コストベースの価格設定を業界全体で行っており*、実際の売価が顧客の知覚価値より高い場合(売価>知覚価値)は、バリューベースの価格設定は単価の引き下げを生み、売上を毀損することが考えられます。

*業界内で「競争回避のための、意思の連絡」を行い価格設定を行うことは、独占禁止法の不当な取引制限で禁止されています。

バリューベースプライシングのを採用すべき理由

バリューベースプライシングの採用すべき理由は次の3点があげられます。

商品・サービスに対しての正しい利益を得られる

バリューベースプライシングでは、自社の顧客の支払意欲に基づいた価格設定を行うため、顧客にとって高すぎて検討に乗らない価格を設定することや、顧客にとって安すぎて品質が低いと感じる価格が設定されることが減り、商品・サービスに対しての適切な対価を得られるようになります。

また、商品・サービスの開発・改善を繰り替えし、顧客が感じている価値が上昇した場合、それに応じた値上げも可能です。

例として東京ディズニーランドは開園以来、顧客の価格に対する感度を参考に10回以上の価格改定を行っていますが、顧客価値が向上しているため値上げが可能になっている考えられます。

顧客価値起点の製品・サービスの改善

バリューベースプライシングは価格に顧客価値という観点が入るため、顧客価値を満たす製品・サービス開発をおこなえます。

顧客価値のある製品・サービス特性を把握することで、より強みを強化する製品・サービス改善が可能になるだけでなく、バリュープライシングの調査で明らかになった顧客の支払意欲と現在の製品にギャップがある場合においても、それを埋めるためのサービス改善を行うことが可能になります。

結果として顧客満足度をあげることができ、長期的な顧客との関係性を作ることが可能です。

効果的な価格戦略を構築できる

バリューベースプライシングの最大の利点は、顧客の支払意欲の把握により、価格変更による顧客数の変化を推定できることになります。

価格変更による顧客数の変化を推定することで、事業戦略上必要な顧客の離脱を起こす価格改定を避けることができ、戦略的な価格戦略を実行できます。

バリューベースプライシングで気をつけるべき点

バリューベースプライシングは、顧客の感じる価値に基づいて価格設定がおこなえますが、実行フェイズにおいては2点の注意が必要になります。

専門的な知識と十分なデータが必要になる

バリューベースプライシングを実際におこなうためには、それに対応した専門的な知識と十分なデータが必要になります。特に、顧客の価値を価格として表すために、顧客調査を行うには価格と調査に対する専門性と時間を要します。

このことから、多くの企業は原価に基づいた価格設定や競合他社ベースの価格設定を採択しているのが現状です。

継続的な実行の必要性

バリューベースプライシングによる価格設定は、顧客が感じている価値を価格として反映させたものになります。事業活動による改善、ターゲット・市場の変化で、顧客が感じる価値は変動します。

そのため、1度だけ設定したら終わりでなく、継続的に顧客の価値を調査し価格設定をし続けることで、継続的に顧客価値を反映した価格設定が重要になります。

バリューベースプライシングの実行方法

バリューベースプライシングは、価値を勘案して価格設定することですが、より確度の高い事業運営を行うために、顧客調査を行うバリュープライシングの実行方法をご紹介します。

顧客セグメントを定義する

製品・サービスに感じる価値は、顧客セグメントごとに異なります。

顧客調査を実行する前段階として自社の製品・サービスを利用する顧客セグメントを仮定することが必要です。

顧客価値を仮定する

自社の製品・サービスに対して、顧客セグメントごとに価値を感じているであろうポイントを仮定します。

調査の前段階として価値を仮定することで、顧客調査の段階で価値と支払意欲の関係性を把握することができるようになります。

顧客調査を実施する

顧客セグメントとセグメントごとの価値を仮定できたら、PSM分析などの支払意欲を調査する手法を用いて顧客調査を実施します。

調査段階では、誰に何を調査するかの調査設計が必要になります。

他の調査と比較してバリューベースプライシングの調査の特徴として、価値を定量化するために価値を想定できる状態の対象に調査をおこなう点があげられます。

自社の顧客に対して調査をおこなうか、自社製品・サービスを調査の前段階として伝えるなどの工夫が必要です。

価格を設定する

顧客セグメントに対して得られた支払意欲のデータをもとに価格を設定します。

顧客調査による支払意欲の把握により、価格変更によって生まれる顧客増減、売上増減を推計できるため、事業目的に合わせて顧客最大化、売上最大化の価格を選択します。

ここで、適切な調査が実施できている場合は、価格変更によりどういった属性の顧客が離脱するかもしくは増えるかといったこともわかるため、事業戦略と相反していないかの確認もここでおこない、事業戦略に適した価格設定を決定します。

事業戦略に適した価格設定については、こちらの記事もお読みください。

まとめ

バリューベースプライシングは、顧客の価値に基づいて価格を設定することです。

顧客価値に応じて価格を設定することは、よりよいサービス改善や効果的な価格戦略に繋がります。

バリューベースプライシングを行なった価格戦略が自社の商品・サービスに適しているか相談したい事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。

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PSM分析とは|適正価格を見つける調査方法と手順

PSM分析とはどのような分析手法なのでしょうか。この記事では、適正価格を見つける価格調査である、PSM分析について解説します。

PSM分析(価格感応度分析)とは

PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。1976年にオランダの経済学者VanWestendorpによって開発されたことから、PSM分析は「Van Westendorpモデル」と言われることもあります。

PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。

また弊社代表の高橋が執筆したnoteでは、日本国内向けサービスの料金変更を行ったネットフリックス(Netflix)の事例を取り上げて解説しています。こちらも合わせて参考にしてみてください。

なぜ支払い意欲を調査すべきなのか

顧客に対して支払い意欲を調査することで、根拠をもって価格設定ができるようになります。

価格設定は、事業成功のために重要な要因ですが、多くの事業で価格設定の確信を持つことができません。いくらなら顧客が購買するかの予測ができず、見当による価格設定となってしまうためです。特に自社の製品が他社の製品と類似でなく革新的な価値を持つ製品であればあるほど、価格設定は困難になります。

PSM分析と他の調査手法との比較

支払意欲の調査で最も一般的な方法は、潜在的な購入者に、製品に支払う金額を聞くことです。これは直接質問法と呼ばれ、簡単に実行することができますが、いくつかの欠点があり支払意欲調査として不足です。

購買可能な金額は点ではなくレンジであり、単一な価格を聞くことでは勘案しきれません。

また、直接質問では、潜在的な購入者が実際の支払意欲よりも低い価格で回答が集まると言われています。これは、基本的に購入者が企業に対して、価格を下げるように交渉したい心理が働くためです。

PSM分析では、直接質問と異なり、間接的な質問を複数おこなうため、間接的に支払意欲を測定し、バイアスの少ないレンジを持った支払意欲を測定することができます。

PSM分析の方法・手順

一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。

1.アンケート調査

2.可視化

ステップ1.アンケート調査

PSM分析では、アンケートを通じて、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

PSM分析で実際に使用されるアンケート項目は次の4つです。

PSM分析のアンケート項目

  • その製品・サービスについて、あなたが高いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたが安いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上高いと検討に乗らない金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額はいくらくらいですか?

直接的に購入したい価格を尋ねるのではなく、製品・サービスの価格に対する顧客の感覚を把握します。

ステップ2.可視化

次に、価格調査の結果を集計し、以下のようにグラフに回答者を累積してプロットします。
PSM分析
X軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合をあらわします。

価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

価格設定の参考となる4つの交点がわかります。

・最適価格
最も価格拒否感がないと見られる価格

・妥協価格
高い・安いの評価が分かれる価格

・上限価格
これ以上高くなると、消費者の購入されなくなると見られる価格

・下限価格
これ以上安くなると、消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる」と感じる価格さ

交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。

PSM分析の不足点

ここまで一般的なPSM分析について説明しましたが、実際の価格設定では、PSM分析だけだと不足な点もあります。

交点の取り扱い

PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。

最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。

PSMで収集したデータをプロットするだけでなく、集計して価格ごとの購買人数を推計した方が正確な結果となります。

Pricing Sprintとは?

プライシングスタジオでは、PSM分析をもとに価格戦略の策定を提供するサービス「Pricing Sprint」を提供しています。

Pricing Sprintでは、PSM分析で顧客の支払意欲を把握するだけでなく、支払意欲をもとに顧客数、売上のシミュレーションをおこなえます。価格決定で重要な価格戦略の策定や価格策定サイクルの定着も専属のコンサルタントが伴走しますので、価格に課題を抱える企業の皆様ごとに最適なサービスを提供します。

「Pricing Sprint」サービスページはこちら

まとめ

PSM分析は、製品・サービスの適正価格を導くために用いられる分析手法です。顧客のアンケートにもとづき適切な価格を導くため、顧客価値から価格を算出可能です。バリューベースの価格設定を実現したい事業者様は、まずはお気軽に、プライシングスタジオにお問い合わせください。

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SaaS・サブスク

SaaSの価格体系まとめ|代表例と共にメリット・デメリットを解説

SaaSにおける価格体系の特徴・メリット・デメリットを代表例を挙げながら、解説します。それぞれの価格体系の特徴を踏まえて、各事業者様が価格を設定する際に役に立てば幸いです。

今さら聞けないSaaSとは?

SaaS(Software as a Service)とは、電子メールやカレンダー、スケジュール管理、ドキュメント作成、人事・給与・勤怠・労務管理、プロジェクト管理などのアプリケーションをインターネット経由で提供するサービスです。完全無料のSaaSもありますが、多くの場合ユーザーは利用料を支払って利用します。

では、SaaSには実際にどのような価格体系が存在するのでしょうか。

SaaSの4つの代表的な価格体系

SaaSの価格体系は基本的にサブスクリプションになっており、中でも4種類の価格体系に分類されます。それは、

・単一価格モデル

・複数パッケージ価格モデル

・従量課金モデル

・フリーミアム

の4つです。

事業を成長させるためにも価格体系を把握しておくことはとても重要です。次はそれぞれの料金モデルについて詳しく解説していきます。

1. 単一価格モデル

単一価格モデル(Flat rate pricing model)は、サービスに対して料金体系が1つである価格体系です。

全てのユーザーに対して単一の製品・機能・価格を提供するため、SaaSの価格体系の中でも最もシンプルなものになります。

例えば、ターゲットセグメントが画一的であったり、機能や価値が単一化されているシンプルなサービスで利用されます。また、事業ニーズがあるかを仮説検証しやすいという観点から、PMFが優先されるシード(新規事業フェーズを含む)・アーリーステージなどで利用されることが多いです。

一方で、幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、SaaSの価格体系としてあまり多くは見受けられません。

メリット

  • シンプルでわかりやすい
  • 事業ニーズがあるかを仮説検証しやすい

デメリット

  • 幅広いユーザーのニーズに応えることが困難
  • 売上の向上が困難

2. 複数パッケージ価格モデル

複数のパッケージ(いわゆる「プラン」のこと)を提示する、SaaSで広く取り入れられている価格体系です。さまざまなニーズに対応でき、顧客ごとの売上最適化に近づきます。

また、質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、価値に見合った金額を受け取ることができることから、利益を増加させることが可能です。

一方で、選択肢が多すぎたり、プランの差が複雑だと顧客にとって検討事項が増えてしまい、購入障壁を高めることにつながるため、顧客ニーズに合致した選択肢を3つ程度に留めるように注意が必要です。

メリット

  • 幅広いニーズに対応できる
  • 利益増につながる

デメリット

  • 顧客ニーズに合致した価格設定のバランスが難しい

複数パッケージ価格モデルの種類を紹介します。

1.段階的なユーザーモデル(Tiered user model)

段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは、利用できるユーザー数の違いによって、価格を複数設定するモデルです。利用機能に違いを作りにくいが、1社で利用する人数が多いサービスで設定される場合が多いです。

2.段階的なストレージモデル(Tiered storage model)

段階的なストレージモデル(Tiered storage model)とは、利用できるストレージの量にもとづき、価格を複数設定するモデルです。ストレージサービスなど、使用可能な量に沿って利用価値が上がるサービスに多い価格体系です。

3.機能別モデル(Feature based model)

機能別モデル(Feature based model)とは、顧客が利用可能な機能に応じて、複数の料金プランを設定するモデルです。顧客のペルソナと必要とされる機能の把握ができていると設定しやすく、使用できる機能の数が多くなるほど価格は高くなります。

3. 従量課金制

従量課金制は、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客目線だと「使った分だけお金を払う」仕組みになります。

ユーザーの使用状況に応じて単価が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。

一方、サービス利用前に課金タイミングを設置できない点や、事前に収益予測をする難易度が上がる点が難点となります。

メリット

  • 顧客の納得を得やすい
  • 収益を最大化させやすい

デメリット

  • 前払いをしてもらえない
  • 事前に収益予測ができない
  • 利用を控えられる可能性がある


従量課金制の種類を紹介します。

1.使用量課金

使用量課金は、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金されるモデルです。

Datadog(データドッグ)

使用量課金型の従量課金モデルの代表例として、監視アプリケーションサービスを提供するデータドッグが挙げられます。

次の画像のようにデータドッグが提供するリアルユーザーモニタリングのサービスでは1マンセッションごとに課金される仕組みになっています。

(出典:Datadog)

2.成果報酬型

成果報酬型は、成果が発生した場合に課金されるモデルです。例えば、採用媒体で人材を獲得した場合に課金が発生する場合はこれに該当します。

月額利用料に加えて成果報酬が発生するサービスもあれば、月額利用料はなく成果報酬のみ発生するサービスもあります。

BIZREACH(ビズリーチ)

成果報酬型の従量課金モデルとして転職支援サービスを提供するビズリーチが挙げられます。

ビズリーチではシステム利用料に加えて、入社した際の成功報酬が発生します。

(出典:ビズリーチ)

3.ユーザー課金

ユーザー数課金は、顧客企業に付与したアカウントの数に応じて単価が上がるモデルです。顧客の利用アカウント数が増える度に、自動で単価が増加するため、追加営業やパッケージの変更なく売上を増加させることが可能になり、使い方次第では非常に強力な収益増加のドライバーになります。

Salesforce(セールスフォース)

ユーザー課金型の従量課金モデルを用いている企業の代表例として、顧客管理クラウドで有名なセールスフォースが挙げられます。

セールスフォースでは次の画像のように、価格表には1ユーザーごとの金額が表示されており、サービスを使う使うユーザーの数によって金額が変わるのです。(出典:Salesforce)

4.アクティブユーザー課金

ユーザー課金モデルの場合は、サービスの利用状況に関わらず料金が発生する一方、アクティブユーザー課金モデル(Per active user pricing)は、サービスを利用していないアカウントには料金が発生せず、過去のログイン履歴などを参照し、サービスを利用しているアカウント数のみに料金が発生するモデルです。

ユーザー課金よりも単価を抑えやすいぶん、顧客に好まれやすいというメリットがある反面、収益や業務内容、コスト面で様々な懸念点があるため、自社の状況をしっかりと鑑みて実施することが望ましくなります。

Slack(スラック)

アクティブユーザー課金型の従量課金モデルを用いているサービスとして、ビジネス用メッセージングアプリのスラックが挙げられます。

実際は次の画像のようにアクティブユーザーの数が全体の金額に換算されます。(出典:Slack)

スラックでは自社サイト上にて次のように表記しています。

「企業向けソフトウェアの料金プランではほとんどの場合、チームのユーザー数をもとに請求が行われ、ソフトウェアを実際に使用しているユーザー数は考慮されません。しかし、Slack では実際に利用した分のみの料金が請求されるので、Slack を使用していないメンバー分の料金を支払うことはありません。」

(出典:Slack help center)

4. フリーミアム

フリーミアムとは、無料プランと有料プランの2つの段階に分類し、運用する価格体系です。顧客は、基本的な機能を無料で利用できますが、機能や容量などを追加して利用する際に課金が必要になります。

フリーミアムを使うことで、顧客は無料でサービスを利用できることから、導入ハードルを大きく下げることが可能です。フリーミアムを正しく運用することで、顧客獲得単価を下げ、大幅な顧客数増加のドライバーにできます。

一方、設計を間違うと、収益化の難易度が格段に上がるため、注意が必要です。また、カスタマイズ性が高く、カスタマーサクセス工数が多くかかるようなサービスでは、採算が合わず、適応は難しくなります。

メリット

  • 顧客獲得が容易
  • サービス理解が促進されやすい
  • 有料化が必要なタイミングに、やめにくくなっている

デメリット

  • 収益化の難易度が高い
  • カスタマイズ性が高いサービスでは、採算が合わない

まとめ

SaaSの価格体系として、単一価格モデル・複数パッケージ価格・従量課金制・フリーミアムを紹介しました。

価格・プライシングに関してお悩みの事業者様は、一度プライシングにお問い合わせください。

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SaaS・サブスク

サブスクリプションとは?導入メリット・ビジネスの成功事例

サブスクリプションは、近年拡大しているビジネスモデルです。この記事では、サブスクリプションとは何かを売り切りモデルと比較し、メリット・代表企業を紹介します。

サブスクリプションとは

サブスクリプションとは、商品やサービスの使用権を定期購入するビジネスモデルです。単発的に購入してもらう「売り切りモデル」と比較されます。

売り切りモデルと比較すると、顧客との長期的な関係が築けるため、顧客データが集まりやすい、収益が安定するなどのメリットがあります。

有名なサブスクリプションの事例として、「Netflix」などの動画配信サービス、「Spotify」に代表される音楽配信サービスがあげられます。さらに近年は、お菓子やコーヒー、車などの実商品や、企業向けサービスにもサブスクリプションは適用されています。

サブスクリプションのメリット

サブスクリプションのメリットを顧客視点、企業視点から解説します。

顧客のメリット

サブスクリプションサービスを利用するメリットは次の3点です!

・消費の選択肢の増加
テクノロジーの発達とサブスクリプションの普及により、消費者はモノを所有・消費するという考え方だけでなく、体験を享受する「コト消費」という選択肢も持つようになりました。

契約期間内のみで「コト消費」のできるサブスクリプションは、消費者にとって合理的なビジネスモデルです。

 

・コストパフォーマンスが良い

動画・音楽などのストリーミングであげられるような使い放題型のサブスクリプションサービスでは、月額料金を払うことで期間内にサービスを無制限に楽しめます。そのため、売り切りモデルの商品を都度購入するよりもコストパフォーマンスが良いです。

・手厚いサポート

サブスクリプションサービスは、顧客の継続率が非常に重要であるため、顧客の課題を積極的に解決しようとします。売り切り型ビジネスの購入後のサポートに比べて、サブスクリプションサービスでのサポートは、問題対応のスピードや手厚さが優れていることが多いです。

企業のメリット

「長期契約をねらう」サブスクリプションの特性から生まれる、サブスクリプションのメリットは次の3点です。

・継続的な収益が見込める

サブスクリプションは、顧客に定額でかつ継続的に課金してもらうことで、収益に持続性があるビジネスモデルです。そのため、一度サービスが確立すると、安定的な収益構造を構築できます。

・顧客データやフィードバックにもとづく商品開発

サブスクリプションでは、売り切りモデルよりも、顧客との接点が多くなり、顧客データを多く得られます。そのため、顧客のニーズに沿ったサービス改善をおこなうことが可能です。

・新規顧客を獲得しやすい

サブスクリプションは、売り切りモデルと比較して、導入時のコストを安くすることが可能です。そのため、顧客は気軽に導入でき、新規顧客の獲得につながります。

サブスクリプションを取り入れて作られたサービス

サブスクリプションモデルを導入し、開始したサービスを紹介します。

Salesforce

Salesforceは、クラウド型のビジネスアプリケーションで、顧客管理(CRM)を中心に、目的に合わせて複数の製品を組み合わせて使えるプラットフォームです。

CEOのベニオフ氏は売り切りモデルのソフトウェアを販売していたオラクルで、「このサービスをオンデマンド(ソフトウェアを内製化するのではなく、外部のソフトウェアを好きな時に利用できる仕組み)化できないか」と考えて、SaaSとして、Salesforceを販売し始めました。

そのため、SalesforceのSaaSにおけるサブスクリプションモデルは、その後のソフトウェア事業のスタンダードになっていきました。

AWS(Amazon Web Service)

AWS(Amazon Web Service)は、従量課金モデルのサブスクリプションを採用しているサービスです。

IaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれる、企業向けにオンラインインフラを提供するサービスなのですが、その特徴として、サービス提供開始当初から従量課金モデルで展開していることがあげられます。

安く始めることができ、利用拡大したら課金し、使わなくなったら課金しない従量課金により、AWSはインフラとしてさまざまな企業や個人に利用されるようになりました。

air Closet

air Closetは2015年に開始された洋服レンタルサービスです。月額定額課金で、洋服レンタルに加えてプロのスタイリストのコーディネート提案を受けることができます。

また、サブスクリプションのメリットである「顧客データやフィードバックにもとづく商品開発」を実践している企業でもあり、コーディネート提案に対するコメントや感想を蓄積していき、それをもとに顧客が求めるコーディネートができるように改善しています。

タイムズカーシェア

タイムズカーシェアは、パーキング「Times」で有名なパーク24が手がけるカーシェアサービスです。課金モデルは、超過従量課金制モデルとなっており、月額880円を支払った上で、880円分は無料で使え、それ以上の利用は利用時間単位で支払います。

各地の駐車場などの「ステーション」から気軽に利用できることに加え、より日常の中での利用を促すという点から、既存のレンタカーとは差別化されています。

テーラードカフェ

カフェ業界にも、サブスクリプションは取り入れられ始めています。2020年開店のテイラードカフェはその1つで、開店当初から、月額3,800円で1杯400円のコーヒーが飲み放題になるというサブスクリプションモデルを取り入れています。

サブスクリプションに移行した事例

売り切りモデルからサブスクリプションへと移行した代表例を3社紹介します。

Apple

Appleは、2003年に発表された世界一の音楽販売プラットフォーム「iTunes」を展開していました。

サブスクリプションへの移行は、2015年に発表された「Apple Music」で行われています。Apple Musicは、音楽ストリーミングサービスで、7,000万もの曲が聴き放題です。現在は推定で前回5,600万人が利用していると言われています。

Adobe

「Photoshop」や「Illustrator」などのソフトウェアを提供するAdobeは、2011年に売り切りモデルの販売に加えて、年契約のサブスクリプションプランを開始しました。

売り切りモデルではヴァージョンをアップデートするのに数年の歳月がかかってしまうのに対し、サブスクリプションモデルを導入することで、短いスパンでのアップデートを可能にしました。

Adobeの場合は、いきなり売り切りモデルをやめてサブスクリプションにするのではなく、サブスクリプションプランをお得になるように設定し、自然に顧客をサブスクリプションモデルへと移行させることで成功しました。

Microsoft

Mirosoftは、WordやPowerPointなどの誰にも馴染み深いソフトウェアを、売り切りモデルで提供していました。しかし、2011年に、サブスクリプションモデルのMicrosoft365(企業向けサービスはOffice365)を提供し始めました。

まとめ

サブスクリプションは、近年拡大しており、特にオンラインサービスにおいては、中心的な課金モデルになっています。既存のサービスをサブスクリプション化させる企業もあれば、サブスクリプションモデルの事業を新しく始める企業もあります。

サブスクリプションサービスでは、バリューベースプライシングという価格戦略が有効です。価格設定・プライシングにお困りの事業者様は一度プライシングスタジオにお問い合わせください。

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SaaSプライシング戦略|SaaS事業に適した価格戦略

SaaS業界でプライシングが注目されているわけ

近年、SaaS業界におけるプライシングに対する注目度は、他の業界と比べ異常なほど高いです。理由は簡単で、海外VCを中心にプライシングの重要性、その効果、成功事例が共有されているからであると考えます。

例えばこんな情報。

「継続的に見直す企業のユニットエコノミクスは 11.1x に対して、見直さない企業は 1.7xと、大きな差が生まれている。」

「価格設定によるマネタイズを1%向上させると利益率は12%も改善する。これはリテンションの約2倍、顧客獲得の約4倍の利益率改善効果がある。」

この2つの情報だけをかいつまんでも、SaaS業界でプライシングが注目される理由がわかりますよね。

なぜバリューベースプライシングなのか

プライシングは多くの場合、自社視点・競合視点・顧客視点の3つの観点で考えます。

自社視点で考える方法を、「Cost-plus方式」といったりします。いわゆる、原価などのコストに対して、適切なマージンを乗せて販売するアプローチです。

競合視点で考える方法を、「Competitor-based方式」といったりします。これは、ベンチマークする競合企業群の価格水準から適切な価格を検討するアプローチと、自社の価格変更をすることで他社の価格変更を意図的に誘発し独自のポジショニングを築くアプローチがあります。

顧客視点で考える方法を、「Value-based方式」といったりします。俗にいうバリューベースプライシングです。これは、顧客が自社製品に感じている価値に基づいて価格を決める方法です。SaaSを中心に、サブスクリプション型のビジネスモデルとの親和性が高く近年注目されています。

バリューベースプライシングが親和性が高い理由としては、「収益の最大化」「TAMの拡大」が大きいでしょう。

収益の最大化
バリューベースプライシングでは、顧客の支払意欲に基づいた価格設定を行っているため、顧客の支払い意欲の上昇に合わせた値上げが可能になります。中長期的に見ると、Cost-plus方式、Competitor-based方式と比べて多くの収益を生むことができます。

TAMの拡大
TAM(Total Addressable Market)は、「マーケット全体の顧客数」 × 「取れる金額」で計算しますが、「取れる金額」のポテンシャルを引き上げることができます。例えば、バリューベースに基づいた従量課金を採用できると「取れる金額」のアッパーがなくなるため、TAMが拡大します。

実際、SlackやUnityといった企業では、Top 1%の顧客が40%以上を占めるケースも存在しています。

そのため、SaaSビジネスにおいて、この3つから選ぶとしたらバリューベースプライシング一択なのですが、そもそもこの中から選ぶという行為が正しい訳ではありません。プライシングは、自社視点、競合視点、顧客視点の三方よしで考える必要があります。

したがって、バリューベースプライシングのアプローチを採用し、適正価格レンジを特定→ 自社視点で適切な利益率を確保→ 競合視点で最終調整が理想の流れになります。

STEP0.体制を構築する

ここからプライシングを具体的に検討する流れについて解説していきますが、その前に必要なのが体制を構築することです。プライシングが事業に与える影響範囲はかなり広く(B2Bは尚更)、俯瞰的な視点、全社的なプロジェクトマネジメントが要求されます。そのため、1担当者に価格決定を任せるのは愚行です。100%失敗します。

ポイントは、価格決定の意思決定者を明確にし、チームを組成する事です。チームは3つのポジションで構成します。価格決定の意思決定者である「オーナー」、価格変更の実務を推進する「リーダー」、実際に実務を行う「プレイヤー」です。

オーナー
「値決めは経営」といわれるように、経営者や取締役レイヤーが担当するのが良いでしょう。このポジションでは「価格変更の目的設定」と「最終意思決定」を行なおます。価格変更の目的にどんなものがあるかは、後半の「価格を見直すタイミング」で解説しています。

リーダー
価格変更は関係者が多岐にわたるため(営業・マーケ・CS・販売代理店など)、連携しながら価格改定を実行する調整役が必須となります。オーナーは多くの場合、経営者や取締役ですので、時間的な制約からこのポジションになることは現実的ではありませんので、経営企画や事業責任者がこの役割を担います。

プレイヤー
価格決定に必要な顧客インタビュー、データ収集、データ分析などタスクが発生します。そういった実務を推進するポジションが必要になります。このポジションのアサインは、日常業務の延長線上で対応できる人材がオススメです。例えば、顧客インタビューにはCSチーム、データ分析には分析チームやマーケティングチーム、といった具合です。

STEP1.価格体系を考える(定額課金・従量課金・機能別料金)

ここから具体的にプライシングを検討していきます。SaaSプライシングは「価格体系」「金額」の2つを考えることで完成します。ここではまず価格体系にはどんなものがあるのか、どうやって設計するべきか解説します。

まず価格体系は次の4種類からなります。この4種類の価格体系を組み合わせるのとで、完成します。

・定額課金
・アカウント別従量課金
・利用従量課金
・機能別従量課金

定額課金
定額課金は一言で言うとシンプルです。シンプルがゆえに、売上向上には工夫をこらす必要がありますが、事業ニーズの検証がしやすく初期のサービスで有効な価格体系です。

特徴は、「期間毎の定額料金を設定する」「顧客が価格を理解しやすい」「幅広いニーズに応える工夫が必要」です。

アカウント別従量課金
アカウント別従量課金は、複数ユーザー前提かつ、アカウント別で保存される内容が異なるサービスに有効です。

特徴は、「アカウント数毎の料金を設定する」「利用ユーザーに比例して単価アップ」「複数ユーザー前提サービスに向いている」です。

利用従量課金
利用料従量課金は、良くも悪くも顧客に左右される特徴を持ち(利用されればされるほど単価が高く、利用を抑制されると単価が低くなるため)、粘着度が高いサービスで特に有効です。

特徴は、「利用量毎の料金を設定する」「利用に応じて自動で単価が増える
」「顧客が利用を控えるリスクあり」です。

機能別料金
機能別料金は、幅広い顧客に対応できる特徴を持ち、顧客ニーズが明確なサービスで特に有効です。

特徴は、「利用ニーズに合わせてプランを設計」「顧客分類に応じたプランが可能」「プラン変更でアップセルが望める」です。

この4種類の価格体系をベースに、自社のサービスの特性と照らし合わせて検討していきます。その際、「①顧客と価値(誰に何を届けるか)」「②個別の価格体系(何にいくら請求するか)」の観点から考えます。

「①顧客と価値(誰に何を届けるか)」では、顧客属性の整理(セグメンテーション)提供価値の整理双方で、検討が必要です。

顧客属性は、業界/業種・企業規模・部署・利用目的(課題)・提供価値性質などが参考になり、実際の顧客DBを分類できるような、顧客分類を作成することが重要になります。

こうやって整理した顧客分類からサービス価値を整理します。この際、既存顧客と長期的に獲得したい顧客でそれぞれ分類できると完璧です。

続いて、提供価値の整理をしていきます。顧客へのインタビューなどを通じて、顧客属性の整理(セグメンテーション)で行なった内容から、製品に対する顧客の認識を明確に把握し、使用事例を詳しく調査します。

また、画像のようにその提供価値が多くの顧客が感じている価値なのか、一部の顧客が感じている価値なのかまで整理します。

このプロセスを経ることで、提供しているサービスに対し、価値を受け取る顧客、その顧客が感じている価値(重視している機能も)が整理できます。

ここまで整理できたら、先ほどの4種類の価格体系から、その価値に最も即した価格体系を当てはめます。これが「②個別の価格体系(何にいくら請求するか)」の何に請求するか、の部分に該当します。

最後に、一つにドッキングしたら価格体系の完成です。

STEP2.適正価格を算定する(PSM分析・EVC Analysis・Split Testing Pricing)

続いて、適正価格(金額)を算定していきます。これが「②個別の価格体系(何にいくら請求するか)」のいくら請求するか、である具体的な金額を算定する方法です。考えうるアプローチは3種類です。「PSM分析」・「EVC Analysis」・「Split Testing Pricing」です。ここでは中立な観点から、それぞれの概要、強い点、弱い点等を解説していきますので、自社の状況を考慮し、最も適したアプローチを実施するといいでしょう。ポジショントークをすると、SaaSにおいては、PSM分析の活用が最も汎用的であり、精度が高くおすすめです(笑)

・PSM分析

PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。1976年にオランダの経済学者VanWestendorpによって開発されたことから、PSM分析は「Van Westendorpモデル」と言われることもあります。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます

支払意欲の調査で最も一般的な方法は、潜在的な購入者に製品に支払う金額を聞くことですが(これは直接質問法と呼ばれ、簡単に実行することができます)、いくつかの欠点があり支払意欲調査として不足です。購買可能な金額は点ではなくレンジであり、単一な価格を聞くことでは勘案しきれません。また、直接質問では、潜在的な購入者が実際の支払意欲よりも低い価格で回答が集まると言われています。これは、基本的に購入者が企業に対して、価格を下げるように交渉したい心理が働くためです。

PSM分析では、直接質問と異なり、間接的な質問を複数おこなうため、間接的に支払意欲を測定し、バイアスの少ないレンジを持った支払意欲を測定することができます

一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。

PSM分析では、アンケートを通じて、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

1.アンケート調査
2.可視化

PSM分析で実際に使用されるアンケート項目は次の4つです。

PSM分析のアンケート項目
・その製品・サービスについて、あなたが高いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
・その製品・サービスについて、あなたが安いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
・その製品・サービスについて、あなたがこれ以上高いと検討に乗らない金額はいくらくらいですか?
・その製品・サービスについて、あなたがこれ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額はいくらくらいですか?
*サービス特性に応じて多少の日本語調整が必要です

次に可視化です。価格調査の結果を集計し、以下のようにグラフに回答者を累積してプロットしきます。

X軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合をあらわします。一般的には、価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

一般的なPSM分析では、価格設定の参考となる4つの交点を見ていきますが、わかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。

参考までに紹介しますが、スルーしてください。

・最適価格
最も価格拒否感がないと見られる価格
・妥協価格
高い・安いの評価が分かれる価格
・上限価格
これ以上高くなると、消費者の購入されなくなると見られる価格
・下限価格
これ以上安くなると、消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる」と感じる価格さ
*上のグラフと照らし合わせてください

PSMで収集したデータをプロットするだけでなく、集計して価格ごとの購買人数を推計した方が正確な結果となります。購買人数の推計は、「高すぎて検討に乗らない価格」「安すぎて品質や効果に不安を感じる金額」の2つを見ていきます。

このように購買人数を推計した後は、それに単価をかけて売上を推計します。このグラフを見ながら、許容してくれる顧客数と売上の増加幅のバランスで金額の意思決定をしていきます。

またPSM分析を既存顧客に対し実施し、その顧客の利用状況などを合わせて分析することで、以下のような従量課金ベースでの推計ができることも強みです。

私たちはこの分析を行い、かなりの回数価格を変更していますが、シミュレーションの精度がかなり高いです。これが私たちがPSM分析を推奨する理由です。

・EVC Analysis

EVCとは、Economic Value to the Customerの略称で、競合商品にはない要素を持つ商品に対し、その要素の価値を勘案した上で、販売する商品の価格決めをするための指標を指します。価格付けの際には、EVCから数%割り引いた値を販売価格とします。そのため、競合商品にはない要素を持つ商品に対し、有効な値付けの手法となります。EVCを求める方法は2パターンあります。

EVCを求める方法①
方法①では、価格付けの際に参照にする競合商品(以下、参照商品)の価格に、販売しようとしている商品(以下、販売商品)の参照商品に対する追加的な価値を足すことでEVCを求めていきます。

プロセスは以下の4つです。

Step 1 付加価値の認識
参照商品にはない販売商品の要素のうち、顧客が長所あるいは短所だと認識する要素を列挙していきます。参照商品を使用する場合にはかかっていたコストを削減する要素、あるいはかかっていなかったコストがかかるようにする要素を列挙する方法もあります。

Step 2 付加価値の価格付け
Step 1で認識した要素について金銭的な価値を割り当て、その総和をTAV(total additional value)とします。

例: 現在販売しようとしている自動車の燃費は参照商品よりもよく(Step1で認識した付加価値)、その価値に割り当てる金銭的な価値は50万円だと見込んでいる。また、販売商品には参照商品にはない事故を防止する機能があり、その価値に割り当てる価値は30万円だと見込んでいる。この場合、TAVは80万円になる。

Step 3 EVCの算出
参照価格とTAVの総和をとってEVCを算出します。これが顧客が払える最大の価格になります。

例:TAVが80万円、参照商品の価格が300万円である時、EVCは380万円になる。

Step 4 販売価格の決定
TAVのある割合を割り引いて販売価格を決定します。この割引は、既存商品から販売商品に乗り換える際に顧客が認識するリスクを勘案したものになります。

例:今TAV80万円のうち30%を割引くとする。この場合、EVC(=380万円)からTAVの30%(80万円×30%=24万円)を差し引いた金額(=356万円)を販売価格とする。

整理すると以下の通りです。

参考までに、計算式もご紹介します。方法①の繰り返しになりますので、お急ぎの方は、方法②へお進みください。

EVCを求める方法②
方法①の場合、EVCは参照価格に合計追加価値を足したものと定義されますが、参照商品を利用する上でかかるトータルコストから販売商品を利用する上でかかる価格以外のコストを引き、参照商品に対する販売商品の利点を足して求める方法もあります。ただし、この方法で求められるEVCは、方法①のものと同じです。以下ではこの方法を説明します。

ここまでで、EVCによって製品の価格を決定する方法を説明しましたが、実はEVCからどれだけ割引くかを考えることが非常に難易度が高いです。実際、私もEVCはできたけど、価格は決められなかったというご相談を受けてます。

そもそも割引をする理由は、顧客が既に使っている製品から乗り換えるのをリスクに感じるため、その分を割り引いて埋め合わせをするためです。つまり、顧客が製品を信頼していればしているほど割引は少なくて済みますし、顧客が製品を信頼しているほど値段を変化させても販売量は減りにくくなります(=価格感度が低い)。この顧客の価格感度は、EVCで求めることができません。

そういった背景もあり、EVC Analysisは概念上バリューベースプライシングとしてあるべきアプローチですが、具体的な金額に落とし込む際は「勘と経験」で決めるのとあまり変わらないという弱点があります(データ、数字ベースで算定ができない)。

・Split Testing Pricing

まずSplit Testing Pricingを紹介する前に、その考え方の下にあるスプリットテストについて簡単に紹介します。

スプリットテストとは、商品に関する様々な変更内容に対し、顧客セグメントがどのような反応を示すのかを確認することで、顧客体験を効果的に最適化する方法を把握するための方法です。 スプリットテストは、プライシングの領域よりも、ホームページの設計などのために使われることが多いです。

スプリットテストの方法
1. A/Bテスト
顧客が体験する一つのセクション(ボタンの色やテキストの大きさ)に対して複数の選択肢を検討し、比較実験する。例えば、会社のウェブサイトのトップページに表示するボタンの色を変化させることによって、有料会員への登録ページへのアクセスを増やそうとする場合、顧客がトップページにアクセスするたびにその都度表示されるボタンの色を様々に変化させ、登録ページへのアクセスがボタンの色によってどのように変化するのかを調べる。

2. 多変量テスト
A/Bテストでは、一つのセクションを変化させることによってパフォーマンスが改善されるか調査するが、多変量テストでは複数のセクション(ボタンの色に加え、ボタンの大きさなど)をランダムに変化させ、パフォーマンスの変化を調査する。

3. フレキシブルLPテスト
上の二つの方法ではどのような顧客に対してもランダムにセクションを変化させていたが、本テストではどのような顧客がアクセスしてきたかも考慮して実験を行う。

このスプリットテストを応用したのが、Split Testing Pricingです。

Split Testing Pricingとは、スプリットテストをプライシングの領域に応用したものです。ただし、上述しましたが、これはスプリットテストの主要な活用方法ではありません。Split Testing Pricingでは、顧客に提示する価格を変化させることによって、価格の変化によって顧客の購入数と収益がどのように変化するのか検討します。つまり、料金表を公開しているSaaS企業(主にPLG型)に限定されたアプローチになります。

余談ですが、米国の時価総額上位50社のSaaS企業の料金ページを調べたところ、具体的な料金表を公開している企業は全体の34%で、残りの66%の企業は、具体的な料金表を公開していませんでした。また、料金表を公開している企業の90%以上が、PLG型ということがわかりました。

Split Testing Pricingの方法一覧
Split Testing Pricingでは、価格を変化させることによって購入数や収益がどのように変化するのか調査しますが、フロントエンドを変化させるよりも高い技術が必要になります。また、ページ上で誤って安い価格を表示し、その後高い価格を提示すると法律違反になる可能性があります。また、顧客によってランダムに請求する値段を変化させると、顧客との間のトラブルに発展しうるリスクがあるので注意が必要です。

1. Cosmetic Price Testing
実際の価格よりも高い範囲で複数の価格をランダムに表示し、購入を確認する直前に値引きを実施し、すべての顧客に実際の価格で販売する方法。これによって、バックエンドとの連携を行ったり顧客との信頼関係を失ったりするのを恐れることなく調査を実施することができる。この調査方法は、端数価格など微小な価格の変化が販売数に与える影響を調査するのに最適。なぜなら、顧客は購入後に払った値段が購入前に見た値段よりも安くなっていたとしても多くの場合気付かないため、顧客に気付かれずに調査を行えるからだ。

2. Anchoring in Action
異なる価格で製品を提供するのではなく、複数の価格で複数の製品を提示し、それぞれの価格設定が他のプランの価格に対してどのような相対的な意味を持つか調査する。これによって、複数価格設定の効果(複数の製品の中で最も高い製品と安い製品は購入されないなど)を実証し最適な価格設定の組み合わせ(例えば、最も購入させたい商品の価格を二番目に高く設定する)を構築するヒントを得ることができる。この調査では、販売したい製品より高い製品を販売することで販売したい製品の価格を安く見せたり、それより安い製品を値上げして販売したい商品との価格差を縮めることで販売したい製品のお得感を演出したりする効果があるか検討できる。

SaaSは多くの場合、単一での価格を設定しないため、この手法は非常に重宝します。

3. 価格表示
例えば年額ではなく、月額表示にした方が、登録者数が増加する効果が知られていますが、このように単純な価格表示によって販売数や利益がどのように変化するか判断することができる。この調査をする際には、地域性を考慮するべきである。例えば、家電でも月払いで購入することが一般的であったり、法律によって販売量が変化したりする可能性がある。

4. 時間によって価格を変化させる
普通スプリットテストでは同時に異なる顧客に対して異なる価格を提示するが、時間によってすべての顧客に対して提示する価格を変化させ、どのように販売数や利益が変化するかを調査する方法。この方法では、価格の表示を伴う広報活動への影響を抑えることができる。しかし、販売数を変化させる時間ベースの要因の影響を排除する必要がある。

5. 従量課金制の設定の判定
従量課金制では、量が多いプランでは顧客が商品の価格の高さゆえに購入を躊躇うため、コンバージョン率が比較的低い傾向がある。しかし、スプリットテストを実施した結果、量が多いプランと少ないプランでコンバージョン率が変わらない場合、顧客は商品が魅力的だと考えているがゆえに、価格はあまり考慮せずに量の方を注目している可能性がある。よって、購入量を全く減らさないか少ししか減らさないで、量の多いプランの価格を引き上げることができる。

ちなみに Split Testing Pricingを実施する際の被験者の選び方については、ページビュー数ではなくユニークユーザー数を計測する必要があります。コンバージョン率を計算する際はページビュー数ではなく、ユニークユーザー数を使用した方が有益であるため、計測の段階でもユニークユーザー数を計測しておく必要があります。

最後に注意点です。

・膨大なサンプル数が必要
スプリットテストには膨大なサンプル数が必要で、統計的に優位な結果を得るのがほとんど不可能になる可能性がある。またそのため、新興企業や顧客の少ない企業はスプリットテストから優位な結果が得られない。
・調査中は変数の変更ができない
価格変化以外の要因を統制するため、調査中は価格設定ページに変更を加えることができない。
・相対的な評価しかできない
A/Bテストでは、ある価格よりもある価格の方が好ましいこと分かるが、最適な価格設定がどうなるかはわからない。
・販売数を増やすことと利益を増やすことのどちらを優先すべきかは一考するべきである。
高い価格を設定したことによって販売数が少なくても利益が高くなることもあるが、高い価格を設定することで顧客離れが起き、長期的には利益が少なくなる可能性がある。
・同じ商品を異なる価格で販売すると、倫理的な問題に問われる可能性があり、最悪の場合法律違反になる可能性がある。

最後に、SaaSではないですが、課金体系がSaaSと比較的近いNetflixのSplit Testing Pricingを活用した事例をご紹介します。

2019年3月頃にNETFLIXはイギリスのユーザー向けサブスクリプション価格に対してスプリットテストにを行いました。具体的には、通常の価格よりも最大3ドル高い価格が表示されました。これは、複数のTwitterユーザーによって報告されており、以下のツイートでは、ユーザーがブラウザによって表示される価格が違ったと証言しているが、BBCによると再現はできなかったといいます。

NETFLIXによると異なる価格が表示された場合でも高い価格を支払わせていないとしており、上で紹介したCosmetic Price Testingが行われた可能性があります。NETFLIXは、「利用者がNETFLIXをどのように評価しているか理解するために、若干異なる価格をテストしています。」「すべてのユーザーがこのテストを受けるわけではなく、今後テストされた価格で実際のサービスが販売しないかもしれません。」「我々の目標は、NETFLIXがお金を支払う価値を持ち続けることを保証することです。」(以上拙訳)と証言しています。

ここまでで、3種類の適正価格を算出する方法について解説しました。

STEP3.顧客に対して連絡する

価格変更に対し、顧客が大なり小なりネガティブな印象を抱くことは避けて通れません。だからと言って、価格を変えることを避けるわけにもいきません。大切なことは、顧客の価格変更に対するネガティブな印象を最小化することです。ここでは、Evernote(エバーノート)の事例を交えつつ、顧客の価格変更に対するネガティブな印象を最小化する方法について考えていきます。

まずは、彼らがどのように「顧客の価格変更に対するネガティブな印象を最小化」したのか実際の告知内容(Evernote の価格プランの改定について)を見ていきましょう。

まず、冒頭で会社で1年間取り組んできたこと、ビジネスの透明性の宣言、価格改定におけるポリシーを説明しています。

”この 1 年の間に、色々な変化がありました。〜(中略:1年間のアップデートの内容)〜これらのアップデートで確実に前進していると考えていますが、私たちが目指す Evernote にはまだ近づいていません。”(引用)

“これから先も変わらないことが 2 つあります。みなさんの生産性を最大限高めるためのお手伝いをすることと、弊社のビジネスを可能な限り透明に運営していくことです。つまり、みなさんに広告を見せたり、みなさんに関するデータを売ったりすることはしません。あくまで、良い製品を適正価格で提供するだけです。従って価格調整を行う場合においても、その変更内容と理由、およびユーザのみなさんにどのような影響が生じるのかを具体的に説明させていただきます。”(引用)

ここまでは、珍しくないかもしれませんが、「次世代の Evernote を作るために」というタイトルで、値上げをする意図と、いいサービスにするため、しっかりサービスに投資をしていくと宣言しています。

“私たちは、価格プランの変更がみなさんに及ぼす影響をとても真剣に考えており、ユーザのみなさんへの感謝の気持ちを忘れることもありません。私たちの目標は、長期的に Evernote を改良し続けることです。ユーザのみなさんの要望に応える新機能も随時実装しながら、主要製品をよりパワフルに、直感的に使えるようにすることに引き続き投資してまいります。一方で、それを実行するためにはたくさんの労力と時間、そしてお金が必要になります。そこで、Evernote に大きな価値を見出してくださる方には、私たちが必要な投資を行えるよう、ぜひ力を貸していただきたいと考えております。ひいては、Evernote 製品の利用体験をさらに進化させていきたいのです。”(引用)

これです。大切なのは。

単に自社の利益を追求するのではなく、顧客のためにサービス開発に投資していく、中長期的にみると絶対に後悔させない。こんな熱い想いを正直に顧客に伝えるのが一番です。外部要因によるコスト増を言い訳にする企業が圧倒的に多いですが、顧客にとってサービス提供者側の都合は関係ありません。あくまでも自社にメリットがあるかどうかです。それを忘れず、丁寧に通知を行いましょう。

上記はあくまで一例ですが、

・既存顧客は価格を据え置き、新規顧客だけ価格改定を実施する
・既存顧客の価格改定は、一定期間を設けてから実施する
・CS/営業チームがしっかり説明に行く

などの、工夫も十分効果的です。あくまでも、顧客の納得のいく範囲内で価格を改定することが前提になりますが、このような工夫をすることで顧客の価格変更に対するネガティブな印象を最小化していきましょう。

価格を見直すタイミング

ここまでのSTEPで、価格体系の決め方、適正価格の算出方法について書きました。しかし、Pricing is never 100% doneであり、適正価格は移り変わっていきます。価格は、耐用年数が非常に低いのが特徴です。

実際、77%の米国SaaSスタートアップは年に1回以上価格を見直しています。

肌感覚ですが、SaaS事業は平均して1年に1回は価格を見直すべきタイミングがくるのですが、その背景となる要因を4つの観点から整理していきます。

・事業フェーズの変化

事業フェーズを立ち上げ期(プレシード〜シード)、成長期(シリーズA〜B)、安定期(シリーズC以降)で整理するとしたら、この3つのフェーズでもあるべきプライシングは異なります。*ファイナンスのステージはあくまでも目安です。

立ち上げ期(プレシード〜シード)
事業ニーズの検証が最も大切なこのフェーズで一番大切なことは、「価格が理由で売れないのではないかという仮説」をなくすことです。そもそも事業が成立するかすらわからないこのフェーズで、プライシングがテクニカルだと、価格が理由で売れなかったのではないか?と疑問を抱くはずです。それでは事業のニーズがなくて売れないのか、価格が理由で売れないのか判断ができません。その状態を最も避けるべきであり、そのために単一のシンプルな価格体系かつ、価格がネックにならず売り散らかせる最低限の価格にする必要があります。そのため、このフェーズでは価格に対してあまり注力する必要はありません。

成長期(シリーズA~B)
このフェーズがプライシングに初めて注力するフェーズになります。このフェーズでは、単一のシンプルな価格体系かつ、価格がネックにならず売り散らかせる最低限の価格が、大きな機会損失を生むことになります。このフェーズでは、顧客の事業規模や利用頻度、経済効果が多岐に渡りはじめます。そのため、例えば、SMBにも、エンタープライズ企業にも月額1万円で売っている、といったような高く取れるはずの人から取れない機会損失が生まれたり、SMBには売れていたのに、エンタープライズ(別セグメント)には安すぎてサービスを信頼してもらえない、といった状態に陥ることになります。この状態を回避するために、価格体系を見直し、幅広いセグメントのニーズに応えられるようプライシングの見直しをしなければならないのです。

安定期(シリーズC以降)
このフェーズになると、アップセルを狙った新しいプロダクトをリリースすることも多いでしょう。その場合、製品同士の協調価格を考え、自社製品によるカニバリゼーションや、不適切なバンドル設計により売れるはずのプロダクトですら売れない、などの状態を回避する必要があります。

・高い売上目標

T2D3という言葉があるように、多くのSaaS企業はスタートアップであり、特にスタートアップでは高い売上目標(や売上成長率)を達成する必要を求めらますよね。これまで順調に顧客を獲得できていたものの獲得ペースが鈍化してきた際や、獲得しても獲得しても売上目標に届かない際はプライシングの見直しが必要があります。

・価値の向上

新機能が追加され、提供価値が向上するにつれ、価格変更余地が生まれます。この場合に関してのみ、プライシングの見直しはnice to haveですが、長期的に見るとこのタイミングで都度都度プライシングを見直している企業とそうでない企業では大きな差になるでしょう。

・ターゲットの変更

SMBからエンプラなど、ターゲット変更に伴い適正な価格は変化します。上述した、SMBにも、エンタープライズ企業にも月額1万円で売っている、といったような高く取れるはずの人から取れない機会損失が生まれたり、SMBには売れていたのに、エンタープライズ(別セグメント)には安すぎてサービスを信頼してもらえない、といった状態に陥るため、プライシングの見直しが必要です。

プライシングの成功事例(SurveyMonkey)

これまでの復習も兼ねて、最後に成功事例を見ていきましょう。ここで紹介する事例は、言わずと知れた米国の大手SaaS企業であるSurveyMonkeyです。

まず価格変更を行なった背景は、以下のようです。

・競合他社の価格が変化しているにも関わらず、SurveyMonkeyでは価格を変えていなかった
プロダクトの開発速度が速く、顧客がついてこれていなかった(ユーザーに対し、「製品に追加してほしい機能」を尋ねたところ、大半の機能はすでに存在しているものだった。しかも、その機能に対し、もっとお金を払ってもいいと思っていたことがわかった。)
・顧客の80%が、個人的な目的や教育目的ではなく、ビジネスシーンで活用していることがわかった。

前述した、「価値の向上」、「ターゲットの変更」がこれに該当しますね。価格の耐用年数が低いことはお話ししましたが、その背景としてサービスの拡大に伴ってユーザーのニーズが多様化してくるといった観点があります。SurveyMonkeyのように開発スピードの早い企業はこの傾向が顕著にあわられます。

そして、価格改定を行なった結果以下の成果が出たようです。

・年間プランの利用者が、全体の77%から85%になった(チャーン防止にも結果繋がった)
ARPUが14%増加した($423→$483)
・個人利用から法人利用へのスムーズなアップセルに繋がった(企業向けの売上が128%増加し、総売上高の29%を占めた(前年同期は16%)。)

プライシングは、収益最大化にフォーカスが当たりがちですが(もちろん収益インパクトは絶大)、多セグメントのユーザーのニーズに応えたり、サービス提供側の意図に合わせて使ってもらう(法人利用の促進など)という観点においても大きく貢献することが見てとれます。

成功要因は大きく3つであると考えています。

①全社を巻き込んだプロジェクトにしたこと
②調査の手法が適切であったこと
③顧客対応を適切に行なったこと

一つ一つ説明していきます。

まず①「全社を巻き込んだプロジェクトにしたこと」についてです。今回の価格改定に関わった部門は以下のようです。「STEP0.体制を構築する」がしっかりできています。

・リサーチ(定量調査のため)
・プロダクト(技術的な観点でのパッケージング)
・エンジニア(新パッケージの実装)
・マーケティング(変更発表・対応)
・営業(リードジェネレーションに与える影響の検討)
・法務(規約の対応)
・財務(財務モデルとの整合性の判断)

B2Bは顕著ですが、上述の通り、関係者が非常に多く価格に対する認識や課題が異なります。どのポジションから見ても、納得のいく価格設定である必要があり(優先順位はありますが)、全社を巻き込むことが大切になります。そのため、ポジションによる先入観の少ない経営層、事業企画、外部企業(コンサル等)が、プロジェクトを推進することが一般的です。

実際、私たちも、B2B企業のプライシングに関わらせていただくときは、CS部門、営業部門、プロダクト部門、事業企画、開発部門などと必要に応じて連携しつつ、プロジェクトを実施しています。

続いて、②「調査の手法が適切であったこと」です。行なったアプローチは次の3つのようです。

・顧客セグメンテーション
・質的インタビュー
・PSM分析

「STEP1.価格体系を考える」手法として「顧客セグメンテーション」と「質的インタビュー」が、「STEP2.適正価格を算定する」手法としてPSM分析が採用されています。

最近では、PSM分析というワードが一人歩きをして、それだけをやろうとする人が増えていますが、PSM分析単独でざっくりした目安金額はわかりますが、価格を決めれるわけではありません。大切なのは、「顧客セグメンテーション」と「質的インタビュー」を組み合わせることです。

「顧客セグメンテーション」は、既存顧客と長期的に獲得したい顧客の2つを調べていきます。具体的には、どのようなペルソナで、どのようにプロダクトを活用しているか、を見ていったようです。

「質的インタビュー」では、セグメンテーションで行なった内容から、製品に対する顧客の認識を明確に把握し、使用事例を詳しく調査します。プライシングは、金額を決めて終わりでなく、顧客セグメント毎に提供するパッケージまで考えていきます。そのためには、これらの調査が必須ということです。

最後に、③「顧客対応を適切に行なったこと」です。
これはEvernoteの事例でもお話ししましたが、SurveyMonkeyでは、既存の顧客がショックを受けないように、段階的に新価格に移行し、包括的なコミュニケーションプランを実施したようです。この戦略により最終的には、解約はほとんどなかったようです。「STEP3.顧客に対して連絡する」も完璧ですね。

まとめ

今回はSaaSのプライシング戦略について紹介しました。プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。

価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。

(この記事は、プライシングスタジオ 高橋 嘉尋のnoteを再構成して転載しています)

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サブスクリプションにおける4つのビジネスモデル

サブスクリプションには、定期購入型モデル・頒布会(はんぷかい)モデル・利用権利型モデル・レコメンドモデルという4つのビジネスモデルがあります。この記事では、それぞれのモデルのメリット・代表例、また複数のモデルを組み合わせた事例を紹介します。

サブスクリプションとは

サブスクリプションとは、定額制で利用者に継続的に料金を支払ってもらい、商品・サービスを提供することです。

定額制ビジネスは歴史的に古く、従来は雑誌や新聞の定期購読などがありました。しかし、近年ではインターネットやITの進化や物流の進歩により、様々なサブスクリプションモデルが存在するようになりました。

サブスクリプションの4つのビジネスモデル

サブスクリプションの4つのビジネスモデルを紹介します。

定期購入型モデル

定期購入型モデルとは、顧客に対して特定の製品を販売するビジネスモデルです。扱われる商品は、飲料水やサプリメントなど、日常的に使用する商品になります。

例として、Amazonの定期お得便があります。Amazonの定期お得便は、洗剤や飲料水、カミソリの替刃など日常的に利用する商品の定期購入が可能です。全20カテゴリーの中から好きな商品の定期購入ができ、配送頻度や数量も「1ヶ月に1回」や「2ヶ月に3セット」など選択することができます。

定期購入型モデルのメリットとして、在庫商品の消費や売上に関する計画が立てやすいことがあります。定期的に買い足すのがめんどくさいという顧客の感じる課題に対して、定期的に配送するという手法を取ることで、在庫商品の消費や売上に関する目標を計画的に設定しやすくなります。

頒布会(はんぷかい)モデル

頒布会モデルとは、企業側が予めコース設定を行い、毎回異なる商材を販売するビジネスモデルです。扱われる商品は、日常的に利用するけれど、種類が多様な商品である、食品・酒などの飲料系、化粧品、雑貨などがあります。

例として、フランス発のMy Little Boxがあげられます。My Little Boxは、毎月コスメやメイクアップの詰め合わせが届くサービスです。専門家が厳選した商品であるということから信頼の高いサービスになっており、忙しい人や化粧品のサンプルを試したいという人が多く利用しています。

頒布会モデルを利用する顧客は、多種多様な商品の中から自分に合うものが選べないという人や新しい商品を試せる楽しみを求めている人が多いです。

そのため、頒布会モデルのメリットは、顧客側から商品の選択を任せてもらえるため、一般的なEコマースよりも在庫管理が容易になり、高い利益率を確保できることがあげられます。

利用権利型モデル(使い放題型モデル)

利用権利型モデルとは、企業がサービスやコンテンツの利用権利を顧客に貸与するビジネスモデルです。主に、ソフトフェアやデジタルコンテンツ、レンタルなどの、時間や金額に制限がかけられるものや場所になります。

例として、電子本の読み放題サービス「dマガジン」があります。月額400円を支払えば、dマガジンに掲載されている全ての本が読み放題になります。漫画からビジネス書まで幅広いジャンルの電子書籍が掲載されているため、幅広い層からの人気を得ています。他にもSpotify やLINE Musicなどもこのモデルです。

利用権利型モデルのメリットとして、リピーターを獲得しやすくなることがあげられます。会員登録した顧客でなければ、利用できないという条件を提示することや会員登録すれば、サービスが使い放題になるという手法を取ることによって、顧客は優遇されていると感じ、最大限にサービスを利用しようという消費者心理が働きます。その結果、顧客は利用できる権利に対しての満足感を得られ、リピーターの獲得につながります。

レコメンドモデル

レコメンドモデルとは、専門家や莫大な顧客データから顧客1人1人の好みや状況に合わせて商品を提供するビジネスモデルです。扱われる商品は、人によって好みが分かれやすい、ファッション・ヘルスケア・食品・デジタルコンテンツなどがあります。

例として、フィットネスアプリ「FiNC」があります。FiNCは、人工知能を搭載したパーソナルトレーナーが毎日の体重や睡眠、運動データを分析し、それをもとに顧客1人1人に合った美容や健康メニューを提案するサービスです。スマホのアプリで気軽に利用できる点や、個別の的確なアドバイスをもらえるという点で幅広い層から支持されています。

FiNCではAIを利用しており、レコメンドモデルはITやインターネットなどのデジタルコンテンツとの相性が良いビジネスモデルです。

レコメンドモデルのメリットとして、顧客からの信頼を得られることがあります。診断チャートや行動データなどをもとに、顧客の好みを効率的に集計し、専門家がその情報と自らの知見をいかして顧客にとって最適な商材やプログラムを選ぶという手順を踏んだ上で顧客にサービスを提供しています。

このような手順があることで、多種多様な選択肢かつ、正解がない分野においても、顧客にとって満足できる結果を導き出すことが可能です。

サブスクリプションのビジネスモデルの事例

サブスクリプションの4つのビジネスモデルは、それぞれで独立しているわけではなく、4つのモデルが交わりながら機能しているものも多く見受けられます。その中から、oisixとair Closetの2つのビジネスモデルを例に見ていきましょう。

oisix

oisixは、頒布会型を軸に他の3つのモデルを交えたサービスを展開しています。

oisixが提供しているおいしっくすくらぶでは、有機・無添加食品、ミールキットの会員制宅配サービスを主に行っており、「美味しいものセレクトコース」や「kit oisix献立コース」、「プレママ・ママコース」など用途に合わせて様々なタイプの定期宅配をおこなっています。この定期宅配の大きな特徴は、決まった食材の中で自分の食材を選ぶことができるという点です。

例えば、特定の食材にアレルギーがあるのなら、その食材の代わりに別の食材を選ぶことができます。こうすることで、「自分好みの商品が入っていない」や「当たり外れがある」という頒布会モデルのデメリットを解消しながら、さらに発展したサービスの提供を行っています。

oisixのビジネスモデルは、必要な商品を定期的に配送する定期購入型会員制のみ利用できる利用権利型・企業のコース設定のもとに定期配送する頒布会型・指定されたコースの中で自由に選ぶことができるレコメンド型と、全てのビジネスモデルを横断したサブスクリプションサービスサービスをおこなっています。

air Closet

air Closet とは、プロのスタイリストがそれぞれに合ったコーディネートを選び、配送してくれるファッションレンタルサービスです。会員として、一定額の料金を払うことで顧客の好みに合わせた「スタイルカルテ」をAIが作成してくれ、スタイリストがそれに基づいてコーディネートを選ぶという仕組みになっています。このようにair Closetでは、レコメンド型と利用権利型の2つのビジネスモデルのもとに展開されています。

まとめ

サブスクリプションモデルには、定期購入型モデル・頒布会(はんぷかい)モデル・利用権利型モデル・レコメンドモデルの4つがあります。古くから存在するサブスクリプションモデルも、ITやインターネットの発展により、多種多様なサービス形態を可能にしています。

例えば、定期購読の分野でも、紙媒体での雑誌や新聞の提供以外にオンライン上での定期購読という選択肢が追加されたり、割引だけでなくポイント加算精度を導入したりするなどがあげられます。

それだけでなく、oisixやair Closet の事例としてあげたように、4つのサブスクリプションモデルそれぞれが独立しているわけではなく、複数のモデルが組み合わさって成立しているサービスも数多く存在しています。サブスクリプションは、これからも4つのモデルの中で更に多様化していくサービスだということができるでしょう。

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Web接客ツールのプライシングまとめ|価格体系の調査と考察

Web接客ツール業界におけるプライシング・各社の価格調査および価格設定に関する考察をおこないます。

Web接客ツールとは

Web接客ツールは、Webサイト上で、まるで実店舗での店員の接客のように、ユーザーの質問に答えたり、おすすめの商品やサービス、お得な情報などをリアルタイムで紹介する、まさに「Web接客」と表現するのにふさわしいサービスです。

具体的には、チャットボットなどを用いたテキストでのコミュニケーションや、各ユーザーの状況や属性に合った情報を提供することで、購買活動の促進や、利用上の疑問解決などを目的としています。

Web接客ツールには、大きく2つのタイプに分かれます。

1つ目が、顧客獲得を目的とした、ポップアップを用いて営業・マーケティングを促進させる「ポップアップタイプ」です。ユーザーの属性・購買履歴・滞在時間などの行動データをもとに、キャンペーンやクーポンなど最適な情報を最適なタイミングで表示させられます。

2つ目は、既存顧客の満足度向上や対応の効率化を目的とし、チャットを用いてカスタマーサポートを効率化させる「チャットタイプ」です。Webサイトを訪問したユーザーとチャットを通じてリアルタイムにコミュニケーションを取れます。

ただはっきり2つに分かれるだけでなく、「ポップアップタイプ」と「チャットタイプ」どちらの機能も備えた「ハイブリッドタイプ」も存在します。

Web接客ツールの価格・料金体系の概要

現在、公開されているWeb接客ツールの価格一覧は以下の通りです。

タイプ サービス名 月額料金 価格体系 初期費用 無料
トライアル
ボリューム
ディスカウント
ポップアップ FLIPDESK 5,000円〜 従量課金モデル 150,000円
ecコンシェル 9,800円〜 複数パッケージ価格モデル
フリーミアム
30,000円
チャット Olark  $12〜 従量課金モデル  ー  ◯
zendesk chat $14〜 従量課金モデル×複数パッケージ価格モデル
フリーミアム
Intercom 1,500円〜 複数パッケージ価格モデル
Chat Plus 9,800円〜 複数パッケージ価格モデル
フリーミアム
Chamo 6,500円〜 従量課金モデル×複数パッケージ価格モデル
フリーミアム

(調査日:2021年1月24日)

Web接客ツールの「ポップアップタイプ」でよく使われている価格体系

従量課金モデルの概要

従量課金モデルは、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客目線だと「使った分だけお金を払う」仕組みになります。ユーザーの使用状況に応じて単価が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。

また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。一方、サービス利用前に課金タイミングを設置できない点や、事前に収益予測をする難易度が上がる点が難点となります。ユーザー課金モデルやアクティブユーザー課金モデルも、従量課金制の1つです。

従量課金モデルの考察

「ポップアップタイプ」では、キャンペーンやクーポンなど最適な情報を最適なタイミングで表示させることで、申し込み率や購入率の向上につながります。この場合、サイトのPVが大きければ大きいほど、申込数が増えやすくなります。

つまり、PV数が大きいサイトを持っていればいるほどサービス価値は増大し、支払意欲は増加します。そこで、ツールを利用するサイトのPV数に合わせて従量課金モデルを設定していると考えられます。

複数パッケージ価格モデルの概要

複数のパッケージ(いわゆる「プラン」のこと)を提示する、SaaSで広く取り入れられている価格体系です。さまざまなニーズに対応でき、顧客ごとの売上最適化に近づきます。

また、質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、価値に見合った金額を受け取れることから、利益を増加させられます。

一方で、選択肢が多すぎたり、プランの差が複雑だと顧客にとって検討事項が増えてしまい、購入障壁を高めることにつながるため、顧客ニーズに合致した選択肢を3つ程度に留めるよう注意が必要です。

複数パッケージ価格モデルの考察

提供する顧客のサイトのPVによりサービスに対する支払意欲(または支払可能額)が向上する場合、従量課金モデルだけでなく、複数パッケージ価格モデルも相性がいいです。

従量課金モデルの場合、事前に利用料を把握することが不可能なため、前払いによる資金回収ができません。これにより、キャッシュフローの悪化や、資金回収コストが積み上がることになります。一方、利用セグメント毎(10万PV以上のサイトと、それ以下のサイトなど)にある程度導入効果が均一化されるようであれば、利用セグメント毎の支払意欲(または支払可能額)に合わせた複数パッケージ価格モデルの設定をすることで、それをその課題を解決できます。

Web接客ツールの「チャットタイプ」でよく使われている価格体系

ユーザー課金モデルの概要

ユーザー課金モデル(Per User Pricing)とは、ユーザーの使用状況に応じて単価が決まる従量課金の一種の課金体系で、顧客に対し発行(付与)したアカウント数にもとづいて料金が発生します。

ユーザー課金モデルの考察

チャットタイプでは、チャットを利用する人(=カスタマーサポート)の数が多ければ多いほど価値が増大しますし、多くのカスタマーサポートが必要な企業ほど事業規模が大きくなる傾向にあります。そのため、チャットを利用する人(=カスタマーサポート)の数に合わせて課金額を増加させることができるユーザー課金モデルは相性がいいといえるでしょう。

これを応用して、一定ユーザー数毎にプランを設定する複数パッケージ価格モデルを採用している企業も見受けられました。

プライスハックが推奨する価格体系

「ポップアップタイプ」の場合、複数パッケージ価格モデルを推奨します。やはり、キャンペーンやクーポンなど最適な情報を最適なタイミングで表示させることによる、申し込み率や購入率の向上が最もわかりやすい価値であり、申し込み率向上の恩恵を受けやすいサイトはPV数が高い傾向にあります。当然、PV数が多くあるサイトをもつ企業ほど支払いに寛容になります。そのため、PV数の変化により支払意欲にどれだけ影響するのかを分析した上で、それに合わせたパッケージを複数作るのが最適といえます。また最上位のプランは用意せず、見積もりで対応すると、売上の機会損失を避けることができるでしょう。

「チャットタイプ」の場合、ユーザー課金モデルと複数パッケージ価格モデルを組み合わせることを推奨します。無人対応か有人対応か、チャットの量が多い業界か少ない業界か、など様々なユースケースが想定されます。そのため、複数パッケージモデルを採用することで多様なニーズに対応することができます。また、チャットを利用する人(=カスタマーサポート)の数が多ければ多いほど価値が増大するため、これにユーザー数による従量課金を設定することで、顧客あたりの単価を最大化することが可能になります。

プライシングを適正化するためには

これまでWeb接客ツールに最適な価格体系について考察してきました。

最適なプライシングは、大きく3つの要素から決まります。

①顧客:顧客は誰か、顧客は自社の製品の何に価値を感じるか(ある機能、ユーザー体験、外部ツール連携など)、顧客セグメント(SMB、エンタープライズなど)によって支払意欲は大きく変わります。どんな顧客の課題を解決するために生まれたプロダクトか、現在の顧客はどのような属性かといった内容をプライシングに反映させる必要があります。

②競合:誰が競合なのか、競合はいくらで提供しているか、競合との価値の違いは何かを把握する必要があります。SaaSにとっては、同じSaaSの競合の他、買い切りソフトウェアや代替サービスも競合となるので注意が必要です。

③コスト:販売するほど生まれるコストはいくらか、販売量によってコスト構造は変わるかを検討します。SaaSにとっては、開発コストの他、カスタマーサクセスのコストを検討する必要があります。

これらの要素は、絶えずおこなわれる機能アップデートや、大型ファイナンスによる積極的なマーケティング、組織拡大などから日々変化します。理想は四半期に一度、少なくとも半期に一度は、価格改定をするべきです。米国では約40%のSaaSスタートアップが少なくとも半期毎に価格を見直しているというデータもあります。

社内で画一化された分析手法を確立し、迅速な意思決定ができる体制を構築する必要があるでしょう。それには、プライシング分析の専任者を採用するか、プライシングの分析ツールを導入するのが最も効果的です。実際のところ、国内スタートアップでは、まだまだ価格分析におけるアプローチが浸透していないのが現状で、専任者の採用は困難を極めます。費用的にも圧倒的にお得な分析ツールの活用が最も手軽なアプローチといえるでしょう。

戦略的なSaaSプライシングを実践したい方は、プライシングスタジオまでお問い合わせください。

皆様のSaaS事業が価格によって、より加速することを願っております。

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競合ベースプライシングとは|価格設定方法・メリット・デメリット

価格を決める際に、競合他社と比較し、いくらにすべきかを考えることもあると思います。この記事では、競合ベースプライシングの定義・価格設定方法・メリット・デメリットを解説します。

競合ベースプライシングとは

競合ベースプライシングは、競合他社の価格をベンチマークとして、独自の商品・サービスに対して価格を設定する方法です。価格を市場の一般的な傾向に即して、商品・サービスに対して価格を調整します。

これは、顧客価値に基づくバリューベースプライシングや生産コストに基づくコストベースプライシングなどの他の価格戦略と比較されます。競合ベースプライシングは、顧客価値や生産コストではなく、競合他社の価格に関する公開情報のみに焦点を当てています。

競合ベースプライシングでの価格設定方法

競合ベースプライシングは、調査が重要になります。自社の価格設定をする際に、既に市場にある競合他社の商品・サービスの価格がどのように設定されているか、その価格が顧客に対してどのように影響しているかを理解しなければなりません。

競合ベースプライシングは、以下の流れで価格を決定します。

競合他社を特定する

市場調査でもおこなわれているかもしれませんが、まず同様の性質を持つ商品・サービスを提供する競合他社を選定することが重要です。

価格設定とポジショニングを調査する

競合他社を特定したら、ポジショニングを分類して、現在市場にある価格傾向のマップを作成します。この中で、自社ブランドに最も近い会社を最有力ベンチマーク企業とします。

また、単純な価格だけではなく、どのような見せ方をしているか、どのような価格体系を用いているか、価格に対しての差別化ポイントはどこか、などを確認することも重要です。

これにより、顧客が期待している価格と自社のポジショニングを理解することができます。

競合他社の平均価格を算出する

競合他社の個別の価格設定を理解することも重要ですが、競合他社の平均価格を算出することも重要です。

平均価格を知ることで、自社の価格を比較するために指標とするベンチマーク価格がわかります。

価格を決定する

競合他社の価格を調査した後、商品・サービスが市場のどこに適合するかを判断し、自社の価格を決定させます。

・平均より高い価格:潜在的な顧客に競合他社よりも豪華(多機能・高性能)であることを知らせたい場合
・平均よりも低い価格:競争を避けて顧客を迅速に獲得したい場合
・平均と一致した価格:価格戦略が競合他社と一致する場合

選択した価格は、市場に参入したばかりの場合や、現在の地位を固めている途中に問わず、顧客がブランドをどのように認識しているかを示します。

ただし、競合ベースプライシングは、会社が長期的に成長していくために最適な価格戦略ではないと考えられます。

競合ベースプライシングのメリット

競合ベースプライシングは、以下のようなメリットがあげられます。

価格設定が容易

競合ベースプライシングは、価格を決定する際の計算と算出方法が簡単です。競合相手を調査し、ポジショニングと平均価格を分析することで、既存市場に沿った価格を決められます。

リスクが低い

競合他社の価格に近づけることで、顧客が商品・サービスに対して支払う可能性が高くなります。

市場とともに変化する

競合ベースプライシングでは、価格を調整する際に当てずっぽうに決める必要はありません。競合他社の価格変動を常に追うことで、同じ割合で値上げ・値下げをすることが可能です。

競合ベースプライシングのデメリット

競合ベースプライシングは、以下のようなデメリットがあげられます。

独自の価格戦略を作れない

競合他社の価格変動を見ながら自社の価格を変更していては、独自のプライシング戦略をとれません。プライシングはビジネスの根幹であり、利益・売上・販売数・ブランディングなど全てに直結するものであるのにも関わらず、外部の価格変動に流され、コントロール下におけないのは危険です。

競合の設定を適切にできない場合がある

企業は競合としてみなしていない場合でも、顧客が購入する際に比較検討の対象になっているものがあります。顧客調査をしなければ、比較検討の対象を正確に捉え逃してしまう可能性が高いです。

意味のない値下げを強いてしまう場合がある

競合ベースプライシングは、競合他社よりも低い価格設定をする戦略をとる場合が多いです。その場合、常に自社の価格は「低い」状態をキープしなければならなく、また競合他社との値下げ合戦が起きてしまうと、業界全体で価格が低下してしまいます。

顧客がお金を払って商品・サービスを享受したいと考える価格よりも低くなってしまうと、結果として品質に疑問が生じ、販売数を下げてしまう恐れがあります。

まとめ

競合ベースプライシングは、競合他社の価格にもとづき、自社商品・サービスの価格を決定する方法です。

価格設定が容易・市場価格に基づくためリスクが低いなどのメリットがあげられる一方、自社としての価格戦略が行いづらいというデメリットもあります。

価格戦略・プライシングについてお悩みの事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせ・相談してください。

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コストベースプライシングとは|原価から利益を計算する価格決定方法

ビジネスの基本的である「価格=生産にかかるコスト+利益」という考え方を実践しているコストベースプライシングの定義・代表的な業界・メリット・デメリットを解説します。

コストベースプライシングとは

コストベースプライシングとは、名前のとおりコスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

利益をあげるために、商品やサービスを作ったときにかかった費用以上の金額で提供する点で、ビジネスをおこなうための基本的な考え方といえるでしょう。

多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。

コストベースプライシングの仕組み

コストベースプライシングの計算方法は、1製品単位あたりの総コスト(製造費・開発費・人件費・輸送費など)と、得たい利益を計算して、利益率を上乗せします。

この方法では、市場調査をする必要はなく、消費者の需要や競合他社の価格を考慮しなくてよいため、非常にシンプルに価格を決定できます。

コストベースプライシングで価格設定をおこなっている業界

コストベースプライシングを利用する場合、製品に関するコストが容易に定義しやすいことが重要です。

コストベースプライシングをおこなっている業界は様々ですが、代表例として製造業があげられます。

製造業は、コスト(原材料費・人件費・機械にかかる費用など)が比較的予測可能なため、ビジネスを維持するための利益率を上乗せすることが容易です。

さらに製造業の中でも、既存の顧客と契約を結び、一括で販売している業態のモノの価格は、値上げや値下げを必要としない場合が多く、長期的な収益予測を可能としています。

コストベースプライシングのメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のメリットがあります。

価格設定に時間や知識を必要としない

コストベースプライシングは、コスト(原価・人件費など)に対して一定の利益率を上乗せするだけであるため、コストの総数を把握すれば計算が簡単です。

また、市場調査や競合調査、顧客の支払意欲を考慮する必要もありません。そのため、市場に直接の競合他社がいない場合は特に役立ちます。

基本的に、価格を設定するために必要なデータは、コスト計算のみです。そのため、ほぼすべての商品・サービスに迅速に実装できます。

一貫した利益率をあげられる

商品・サービスの1単位あたりにかかるコスト計算が正しくおこなわれている限り、コストベースプライシングは、すべてのコストがカバーされているため損失を生むことはなく、一貫した利益率をあげられます。

しかし多くの場合、価格設定時には予期していなかった追加コストがあるため、その分利益率は当初の想定よりも減少します。

コストベースプライシングのデメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のデメリットがあります。

すべてのコストを把握するのは難しい

商品・サービスの開発・マーケティングなどにかかるすべてのコストの把握は非常に難しいです。

商品やサービスを改善していけばいくほど、コストは時間とともに変動するため、実際にサービス改善をおこなわなければ想定額を算出できません。

常に一定の利益率を確保しようとするならば、このような変化に応じて、価格を変動させなければいけません。コストをもととした価格変動は、購入する顧客にとってかなりストレスを与えるものになるでしょう。

顧客が商品・サービスに抱く価値と価格に乖離が起きやすい

コストベースプライシングでは、顧客の支払意欲(=サービスに対して価値を感じ支払いたいと考える価格)を価格に反映していません。顧客は商品・サービスに対してのコストを気にして購入している場合は少ないです。

必ずしも利益を最大化できるとは限らない

コストベースプライシングでは、顧客や市場の変化に合わせて価格を調整することは難しいです。そのため、顧客単価をあげる施策を取りづらく、必ずしも利益を最大化できるとは限りません。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値、顧客の支払意欲は高まります。コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

コストベースプライシングがおすすめな業界

コストベースプライシングは、物理的な製品を販売している業界に有効な手段です。

製品原価よりも人件費などの割合が高い商品・サービスを提供している企業には、コストベースプライシングは推奨しません。例えば、インターネットを経由したSaaSやサブスクリプションサービス、テーマパークなどのエンタメ産業などがこれにあたります。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値が高まっていきます。そのため、コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

そのような場合は、顧客価値に基づいた価格設定をおこなうバリューベースプライシングがおすすめです。

まとめ

コストベースプライシングは、コスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

商品・サービスを販売するのに必要なコストのみを計算し、利益を上乗せして価格設定ができるため非常に簡単というメリットを持つ反面、顧客価値に基づく価格設定ではないため収益を逃す可能性をもつというデメリットもあげられます。

自社がコストベースプライシングによる価格戦略が良いのか、他の価格戦略をとるべきか相談したい事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。