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コストベースプライシングとは|原価から利益を計算する価格決定方法

ビジネスの基本的である「価格=生産にかかるコスト+利益」という考え方を実践しているコストベースプライシングの定義・代表的な業界・メリット・デメリットを解説します。


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コストベースプライシングとは

コストベースプライシングとは、名前のとおりコスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

利益をあげるために、商品やサービスを作ったときにかかった費用以上の金額で提供する点で、ビジネスをおこなうための基本的な考え方といえるでしょう。

多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。

コストベースプライシングの仕組み

コストベースプライシングの計算方法は、1製品単位あたりの総コスト(製造費・開発費・人件費・輸送費など)と、得たい利益を計算して、利益率を上乗せします。

この方法では、市場調査をする必要はなく、消費者の需要や競合他社の価格を考慮しなくてよいため、非常にシンプルに価格を決定できます。

コストベースプライシングで価格設定をおこなっている業界

コストベースプライシングを利用する場合、製品に関するコストが容易に定義しやすいことが重要です。

コストベースプライシングをおこなっている業界は様々ですが、代表例として製造業があげられます。

製造業は、コスト(原材料費・人件費・機械にかかる費用など)が比較的予測可能なため、ビジネスを維持するための利益率を上乗せすることが容易です。

さらに製造業の中でも、既存の顧客と契約を結び、一括で販売している業態のモノの価格は、値上げや値下げを必要としない場合が多く、長期的な収益予測を可能としています。

コストベースプライシングのメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のメリットがあります。

価格設定に時間や知識を必要としない

コストベースプライシングは、コスト(原価・人件費など)に対して一定の利益率を上乗せするだけであるため、コストの総数を把握すれば計算が簡単です。

また、市場調査や競合調査、顧客の支払意欲を考慮する必要もありません。そのため、市場に直接の競合他社がいない場合は特に役立ちます。

基本的に、価格を設定するために必要なデータは、コスト計算のみです。そのため、ほぼすべての商品・サービスに迅速に実装できます。

一貫した利益率をあげられる

商品・サービスの1単位あたりにかかるコスト計算が正しくおこなわれている限り、コストベースプライシングは、すべてのコストがカバーされているため損失を生むことはなく、一貫した利益率をあげられます。

しかし多くの場合、価格設定時には予期していなかった追加コストがあるため、その分利益率は当初の想定よりも減少します。

コストベースプライシングのデメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のデメリットがあります。

すべてのコストを把握するのは難しい

商品・サービスの開発・マーケティングなどにかかるすべてのコストの把握は非常に難しいです。

商品やサービスを改善していけばいくほど、コストは時間とともに変動するため、実際にサービス改善をおこなわなければ想定額を算出できません。

常に一定の利益率を確保しようとするならば、このような変化に応じて、価格を変動させなければいけません。コストをもととした価格変動は、購入する顧客にとってかなりストレスを与えるものになるでしょう。

顧客が商品・サービスに抱く価値と価格に乖離が起きやすい

コストベースプライシングでは、顧客の支払意欲(=サービスに対して価値を感じ支払いたいと考える価格)を価格に反映していません。顧客は商品・サービスに対してのコストを気にして購入している場合は少ないです。

必ずしも利益を最大化できるとは限らない

コストベースプライシングでは、顧客や市場の変化に合わせて価格を調整することは難しいです。そのため、顧客単価をあげる施策を取りづらく、必ずしも利益を最大化できるとは限りません。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値、顧客の支払意欲は高まります。コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

コストベースプライシングがおすすめな業界

コストベースプライシングは、物理的な製品を販売している業界に有効な手段です。

製品原価よりも人件費などの割合が高い商品・サービスを提供している企業には、コストベースプライシングは推奨しません。例えば、インターネットを経由したSaaSやサブスクリプションサービス、テーマパークなどのエンタメ産業などがこれにあたります。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値が高まっていきます。そのため、コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

そのような場合は、顧客価値に基づいた価格設定をおこなうバリューベースプライシングがおすすめです。

まとめ

コストベースプライシングは、コスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

商品・サービスを販売するのに必要なコストのみを計算し、利益を上乗せして価格設定ができるため非常に簡単というメリットを持つ反面、顧客価値に基づく価格設定ではないため収益を逃す可能性をもつというデメリットもあげられます。

自社がコストベースプライシングによる価格戦略が良いのか、他の価格戦略をとるべきか相談したい事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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ペネトレーションプライシング(市場浸透価格戦略)とは|低価格で市場シェアを高める価格戦略

ペネトレーションプライシングとは、低価格で製品を販売し、広く顧客を獲得するための価格戦略です。早期段階から高価格で販売するスキミングプライシングと対比されることが多いペネトレーションプライシングの戦略について、定義・流れ・メリット・デメリットを解説します。

ペネトレーションプライシングとは

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低価格に設定し、ある一定の期間でシェアを高める価格戦略です。

高所得者層をターゲットとしているスキミングプライシングに比べて、シェアを高めるために価格を低く設定するのがペネトレーションプライシングです。

ペネトレーションプライシングの流れ

ペネトレーションプライシングを行い、マーケットに浸透させるまでの流れの一例をステップごとに紹介します。

ステップ1:初期段階の価格を製造原価と同じかそれ以下に設定する

顧客の購買意欲を促進させるため、市場の競合よりもいかに低価格で提供できるかが重要であり、製造原価と同価格かそれ以下の価格に設定することが必要です。それにより、ターゲット層を広げられ、市場のシェアを高められます。

ステップ2:市場でのシェアが増えることで、製造量が増える

利用者数が増えることで、市場でのシェアが拡大します。製品のシェアを拡大できると、利用する人が増えるため販売量が増えます。販売量が増えることで、1単位あたりの生産コストを抑えることが可能になります。そのため、さらなる販売量増加と市場占有率の拡大を見込むことができます。

ステップ3:徐々に価格を上げる

低価格というブランドイメージとブランドの名前が浸透したことで、名前の知れた製品として信頼を得やすくなります。さらに市場シェアが高いので、利用者から製品への支持を受けやすく、一定の顧客からの利益を見込むことが可能です。この段階から徐々に価格を上げることで、利益を得ることができるようになります。

3つのステップをみても分かるように、ペネトレーションプライシングは、中・長期的に利益を上げていく価格戦略になっています。

ペネトレーションプライシングのメリット

初期段階での製品価格を低価格に設定しているため、活発な市場への参入がしやすいことがメリットです。

低い価格設定は、市場の大多数を占める低・中所得層の顧客にも購買を促すことができ、早期段階から市場におけるシェアを拡大させられます。市場の占有率が高くなると、知名度も顧客に知ってもらえることでブランドが浸透します。そうすることで、最終的には保守的で流行や世の中の動きへの関心が薄い層までにアプローチすることが可能です。

新しい市場に参入するにあたって、他の競合と比較してより顧客にとって魅了区的な条件を提示できる、つまり他の競合と常に差別化できることは、強みです。

ペネトレーションプライシングのデメリット

ペネトレーションプライシングのデメリットは以下の3つがあります。

利益を得るまでに時間がかかる

初期段階の価格を低く設定することで市場を拡大できる反面、利益を得るまでに時間がかかるというデメリットもあります。

ペネトレーションプライシングの初期段階では、投資額が利益より上回ってしまうことが予想されます。一連の流れがなければ、徐々に価格を上げて利益を得る段階まで到達出来ないことを考えると、中・長期的な視野が必要です。

そのため、ある程度の資金基盤がしっかりしている企業で行われることが推奨されます。

競合との価格競争に勝たなければならない

活発な市場でのシェアを狙うために、製品を低価格に設定するのがペネトレーションプライシングの意図です。

市場のシェアを狙うには、多くの人に受け入れられる価格設定である必要があります。市場の多くを占める低・中所得者層は一般的に、品質よりも価格に重きを置く傾向があるため、他の競合よりも低価格であることが求められます。

よって、常に競合との価格競争に勝つ必要があります。価格競争と同時に利益の獲得にも注目しなければならないため、初期段階での価格設定が非常に重要になります。

ブランドのイメージに影響する可能性も考えられる

低価格に設定することばかりを重視しすぎると、ブランドのイメージに影響する場合があります。

製品を購入する顧客は、価格と製品の質に一定の関係性があると感じる傾向にあります。そのため低価格に設定しすぎると、質が伴わないのではないかという懸念から顧客の信頼を失いかねません。

そうならないために、他競合よりも低価格かつ、製品に対する信頼を失わない価格設定にすることが必要です。

まとめ

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低く設定し、ある一定の期間で市場シェアを高める価格戦略です。初期段階で低い価格に設定し、顧客を獲得できるため、活発な市場で応用できる価格戦略です。

しかし、利益を得るには低価格から徐々に価格を上げていかなければなりません。「初期段階の製品を低価格に設定し、短期間で占有率を高める」という本来の目的だけでなく、その後どのように価格を上げて、どれくらいの利益を得るかという部分までの設計が必要になってきます。ペネトレーションプライシングは、十分な資金を調達できる基盤が整っていることが条件であり、長期的な視野を持つことが求められるでしょう。

価格戦略・プライシングに関してお悩みがある事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせ・相談してみてください。

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サブスクリプション

サブスクリプションモデル導入のメリット3選|売上向上に効果的な価格戦略を解説

私たちの日常にとって当たり前になりつつある、サブスクリプションモデルは、企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか?この記事は、サブスクリプションモデルの導入のメリットを解説します。


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サブスクリプションとは?定額制との違いは?リスクはある?

サブスクリプションとは、消費者が商品やサービスの使用権を定期購入するビジネスモデルです。

サブスクリプションは定額制のうちの一つですが、新聞や雑誌の定期購読のような定額制とは少し違います。

サブスクリプションは長期的に顧客に利用してもらうことで利益が発生する仕組みであるため、従来の定額制に比べて、顧客満足をより重視したサービスとなっているのです。

サブスクリプションでは、ある程度時間が経つと従来の定額制サービスよりも利益が上がります。そのため、近年このモデルが注目されているのですが、実際に導入する際には一時的な利益の低下や、ビジネスモデル変更による社内の混乱などのリスクも存在します。

サブスクリプションモデルに関する詳しい記事はこちら。

サブスクリプションモデルを導入する企業のメリット

サブスクリプションモデルを導入するメリットは多く近年注目されています。動画配信サービスのNetflixでは毎月同じ金額を支払うことで映画やアニメが見放題、というサービスを展開しています。

サブスクリプションモデルは、メリットを提示する上で、「売り切りモデル」と比較されます。売り切りモデルとは、一度商品やサービスを売ってしまえば終わりであるビジネスモデルのことです。

そんなサブスクリプションモデルは、売り切りモデルと比較して、次の3つのメリットがあります。

継続的な収益が見込める

サブスクリプションモデルは、顧客に定額かつ継続的に課金してもらうため、収益に持続性があるビジネスモデルです。新規顧客を獲得しながら、既存顧客から継続的に収益を上げるため収益が安定します。

一方、売り切りモデルでは、製品の販売活動を一度購入してもらった顧客に対しても行わなければいけません。そのため、顧客に購入してもらうための広告費が継続的に必要なことと、継続的な広告を行ったとしても、再購買に至らないこともあり、売上が増加するとは限りません。

サブスクリプションモデルでは継続的な課金が見込めるため、顧客獲得ができると安定的な収益構造が構築できます。

顧客との長期的な関係が構築されることでサービス改善をしやすい

顧客との関係性をサブスクリプションモデルと売り切りモデルで比較すると、サブスクリプションモデルの方が顧客との長期的な関係の構築が可能です。

売り切りモデルでは、1度自社製品を購入した顧客に再度購入して利用をしてもらえるとは限りませんが、サブスクリプションモデルでは、継続的な利用を前提としているため、基本的に2回目の利用をしてもらえます。

そのため、サブスクリプションモデルでは、顧客との長期的な関係を構築できるため、顧客のデータやフィードバックを多く得ることができ、顧客が求める製品・サービスに改善していくことができます。

結果として、顧客ニーズに沿ったサービス改善が進んでいきます。

新規顧客を獲得しやすい

サブスクリプションモデルの場合、将来的な売上を見越して価格設定するため、月あたりや年あたりの価格を安く抑えた価格設定が可能になります。

このためサブスクリプションモデルでは、1度の請求額が小さいことから、新規顧客は気軽に導入できるようになり、新規顧客に試してもらいやすくなります。

売り切りモデルでは商品購入のタイミングで全ての支払いが決まってしまうため、満足度に不安を感じた顧客が購入を避ける場合があり、これを避けられるサブスクリプションモデルは新規顧客を獲得しやすい側面があります。

サブスクリプションの顧客のメリット

サブスクリプションサービスは、顧客にとってもメリットが大きいビジネスモデルです。

「体験価値」を得られる

近年、消費者のニーズが「所有」から「体験」へと移行していると言われています。このニーズの移行は、モノを所有する価値の減少だけでなく、維持費や管理費などを避けたいというトレンドの影響もあります。

一方、サブスクリプションサービスを利用する場合、商品を購入せずに、商品の利用権を購入して体験のみを行うため、管理の手間を避けながら、多様なサービスの体験が可能です。

コストパフォーマンスが良い

サブスクリプションのメリットとして、売り切りモデルの商品を都度購入するよりもコストパフォーマンスが良いことがあげられます。

動画・音楽などのストリーミングであげられるようなUnlimited型のサブスクリプションサービスでは、月額料金を払うことで期間内にサービスを無制限に楽しむことができます。

一方、利用量や利用時間に応じて料金が変わる従量課金制だと、使いすぎてはいけないといった心理的負荷がかかります。

手厚いサポート

サブスクリプションサービスは、顧客の継続率が非常に重要であるため、顧客の課題を解決するための手厚いサポートが用意されている場合が多いです。

問題ごとにはすぐに対応してくれるケースが多いうえ、BtoBサービスでは、明確な問題点がなくてもサービスが効果をあげられるように、伴走してもらえることもあります。

サブスクリプション型モデルのおすすめサービス事例三つ

近年、インターネットの普及により様々なサービスを、オンライン上で提供できるようになりました。また消費者はものを所有する流れから、価値を利用する流れに変わってきています。

そのため、サブスクリプションを導入する企業は近年増えており世界の時価総額トップ30の企業のうち約半分はサブスクリプションのサービスを提供しています。

次は、そんな近年注目されているサブスクリプションの成功事例について紹介します。

音楽配信サービス

音楽配信サービスで成功している例としてSpotifyが有名です。Spotifyでは毎月定額を支払うことで数千万曲の音楽が聴き放題のサービスを提供しています。

価格帯は4種類あり、家族向けのプランや学生割プランなど、様々なプランがあります。

プラン 価格 特徴
Standard 980円 1アカウントまで
Duo 1,280円 2アカウントまで
Family 1,580円 6アカウントまで
Student(大学生学割) 480円 1アカウントまで

Spotifyの一番大きな特徴として、プレイリスト機能が充実していることが挙げられます。

Spotifyには世界中の人が作った30億以上ものプレイリストがあり、シーンにあったもので選ぶことができます。また過去にユーザーが聴いた曲をAIが分析し自動的にオススメしてくれるサービスも充実しています。

自動車レンタルサービス

自動車レンタルサービスで成功している例としてタイムズアーシェアが挙げられます。

月額料金を支払うことで、24時間いつでも車を借りることができるというサービスを提供しています。

使用する際の料金は、月額料金にカード発行料1,650円(初期費用)と、利用時間に伴った金額が上乗せされるという仕組みになっています。

プラン 価格 特徴(車種)
ベーシック 220円/15分 ソリオ(SUZUKI)、ノート(NISSAN)など
ミドル 330円/15分 シエンタ(TOYOTA)、フリード(Honda)など
プレミアム 440円/15分 セレナ(NISSAN)、MINI One CROSSOVER(BMW)など

タイムズカーシェアの大きな特徴として13,000箇所のステーションを保持しており、業界1位の数となっています。また、全国すべてのステーションを利用することができる上、時間は15分単位で利用することができます。

 

動画配信サービス

先述しましたが、動画配信サービスで成功している例としてNetflixが挙げられます。Netflixでは毎月一定の金額を支払うことで、映画やアニメが見放題というサービスを提供しています。

料金プランは次のようになっており、三つのプランに分かれています。

プラン 価格 特徴
ベーシック 990円 1台まで、標準画質(SD)
スタンダード 1,490円 2台まで、高画質 (HD)
プレミアム 1,980円 4台まで、超高画質(4K)

Netflixでは特に海外の映画やオリジナル作品が充実していることが挙げられます。英語字幕や英語音声に対応しており、英語の勉強としても利用することができます。また、Spotifyと同じように過去に見た作品をAIが分析し、オススメを提示してくれるというサービスも充実しています。

まとめ

サブスクリプションは、これからも多くの業界で導入が加速していくでしょう。それにあたり、サブスクリプションモデルの新事業を始める方や、既存事業をサブスクリプションモデルに移行する方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、サブスクリプションモデルの企業目線でのメリットとして、「継続的な収益が見込めること」「顧客との長期的な関係が構築されることでサービス改善をしやすい」「新規顧客を獲得しやすいこと」をあげました。

また、サブスクリプションは、企業にとってメリットがあるだけではなく、顧客にとっても高い満足度が期待できるモデルです。ぜひ、導入をご検討の際は、プライスハックにお問い合わせください。

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フリーミアムとは?メリット・デメリット・導入企業例【SaaS価格体系】

この記事ではSaaSの価格体系のうちの1つ、フリーミアムについて、無料トライアルとの違い、メリット・デメリット、事例などを解説します。


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フリーミアムとは

フリーミアムとは、無料プランと有料プランの2つの段階に分類し、運用する価格体系です。顧客は、基本的な機能を無料で利用できますが、機能や容量などを追加して利用する際に課金が必要になります。

フリーミアムを使うことで、顧客は無料でサービスを利用できることから、導入ハードルを大きく下げられます。フリーミアムを正しく運用することで、顧客獲得単価を下げ、大幅な顧客数増加のドライバーにすることが可能です。

フリーミアムと無料トライアルの違い

フリーミアムと無料トライアルの違いは、サービスを利用できる期間と機能です。

期間の面では、フリーミアムモデルでは無料プラン利用可能な期間に制限がないのに対して、無料トライアルでは期間が限定されます。

機能の面では、フリーミアムモデルの無料ユーザーは一部の機能しか利用できないのに対して、無料トライアルではほぼ全ての機能が利用可能です。

フリーミアムと無料トライアルのどちらが、どのサービスに向いているかは一概にはいえませんが、原価がかかり続けるサービスかが1つの重要な観点です。

サービスを利用するのに原価を必要とするサービスにおいて、フリーミアムを採用するとコストがかかり続けてしまうため、サービスの持続が困難になってしまいます。

フリーミアムの3つの制限の型

フリーミアムは、無料プランにどう制限をかけるかによって、大きく3つの型が存在しています。基本的には、この3つの型の中から選んだり、組み合わせたりすることで課金条件を設計することになります。

機能制限型

全ての機能を無料で提供せず、追加機能の実装や、既存機能の強化によって課金が発生する型です。

利用量制限型

ストレージの使用量、データの処理量に基準を設け、利用料がその基準を超えた場合に課金が発生する型です。

サポート制限型

無料プラン時に、カスタマーサポートを行わないなど、サポートリソースに制限をかける型です。

フリーミアムの注意点

フリーミアムでは先ほど述べた制限のかけ方を間違うと、顧客はいつまでも無料で利用することができてしまいます。一方、適切な制限を設けられれば、サービス利用開始から早い段階で有料化せずにはいられないという心理にさせることが可能です。

顧客がもっとサービスを利用したいと思うように設計しつつ、使えない機能が多すぎてサービスの価値が全く伝わらないということがおこらない適切なバランスの判断が重要です。

そのためには、顧客の支払意欲調査などを実施し、顧客ニーズと支払に対するモチベーションのバランスをしっかり把握することが大切になります。

フリーミアムのメリット

フリームアムのメリットは次の3点があげられます。

顧客獲得単価を下げられる

サービスが無料で始められる以上、有料のサービスと比べて、顧客のサービス導入に対する心理的ハードルは低くなります。結果的に、有料マーケティングや営業プロセスのコストを費やしすぎることがなくなります。

結果、プロダクトの品質向上により多くのリソースを投下することが可能になり、好循環が生まれやすくなります。

顧客のプロダクト理解が得られやすい

やはり資料やデモだけでは顧客のサービス理解は難しいものです。実際に、サービスを一定期間使ってもらうことで、サービス本来の価値を課金前に伝えることができるのはフリーミアム独自の魅力といえるでしょう。

共有してもらいやすい

サービスが無料で使えるため、上長の決裁承認を取る必要がなくサービスを利用できることになります。そのため、サービスを始める価値を感じたらすぐに利用するでしょう。結果、サービスの価値を確信した場合、会社全体での導入を推薦したり、知人に紹介したりする行動につながりやすくなります。

フリーミアムのデメリット

フリーミアムのデメリットは「収益化の難易度が高い」ことがあげられます。

無料プランにかける制限が甘かったり、あまり必要のない機能に制限をかけたりすると、顧客はいつまでも無料で利用することができ、本来、課金するポテンシャルがあった顧客の課金機会を逃すことになります。これではサービスの収益化をいつまでたってもすることができません。

一方で、制限がきつすぎると、サービスの価値を理解する前に解約されるリスクが高まります。これでは、収益化はおろか、事業を成長させる事は難しいでしょう。

フリーミアムを成功させるには

フリーミアムを成功させるには、顧客のニーズと支払意欲のバランスを正確に把握することが大切になります。

例えば、Chatworkのようなビジネスチャットアプリの場合、課金に対するモチベーションが寛容になるセグメントは、「従業員人数15名以上の会社だ」と把握することができれば、「従業員人数15名まで無料」という制限をかけられます。

この意思決定に必要なデータは、バリューベースプライシングを実践する過程で得ることが可能です。バリューベースプライシングに関しては、別記事で解説していますので、そちらをご覧ください。

顧客のニーズと支払意欲に対して、価値に見合った制限と適切な金額を設定すれば、低い獲得単価でリファラルが生まれやすいサイクルを構築することができるので、魅力を感じた方はぜひフリーミアムモデルを検討してみてください。

フリーミアムの事例

Slackはフリーミアムの最高の事例といえるでしょう。Slackは有料ユーザー数14万人を誇るビジネスチャットサービスです。

Slackの無料プランは、利用料制限型です。メッセージの閲覧と検索が10,000メッセージまで、ファイルストレージの容量が最大5GBまで、と制限を設けています。この上限に達すると有料プランに移行する必要があります。

導入時は、従業員規模に関わらず無料で導入できるため、大企業でも導入のハードルは限りなく低くなります。また、10,000メッセージを超える頃には、かなりのコミュニケーション履歴が蓄積されるため、相当のことがない限り、解約することを惜しまれるでしょう。かといって、メッセージコミュニケーションを突然やめる事は不可能なため、スムーズに有料化されるでしょう。

このようにいつまでも無料で使う事は不可能で、顧客にとって価値が高い条件で制限をかけることが大切になります。

余談ですがSlackでは、フリーミアム終了後、アクティブユーザー課金モデル(Per Active User Pricing)に切り替わります。

アクティブユーザー課金モデルは、「顧客にとってシンプルでわかりやすい」かつ、「顧客あたりの単価を上げやすい」モデルとされています。フリーミアムで獲得単価を下げながら、アクティブユーザー課金モデルによって1顧客あたりの単価を上げていく、長期的に莫大な利益が生まれやすいプライシングストーリーが描かれています。

このように自社の成長戦略に沿って最良のプライシングを設計する事は、事業成長において非常に大きな武器となります。ぜひベストなプライシングの実践を検討してみてください。

まとめ

フリーミアムを使うことで、顧客は無料でサービスを利用開始できることから、導入ハードルを大きく下げられます。フリーミアムを正しく運用することで、顧客獲得単価を下げ、大幅な顧客数増加のドライバーにすることが可能です。

一方、設計を間違うと、収益化の難易度が格段に上がるため、注意が必要です。