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今こそ見直すSaaSのプライシング戦略 価格調査分析から決め方まで徹底解説

SaaSプライシングの要点を解説したセミナーが開催

SaaS/サブスクビジネスにおける価格戦略は、事業成長に影響する非常に重要な要素である一方で、設定や適正化、タイミングが難しい。こうした問題に頭を悩ませるSaaS事業者は多いことだろう。

2021年5月13日に開催されたPricing Studio x Zuora 特別共催セミナー「今こそ見直す!SAASプライシング戦略」では、SaaS成長へ向けた「プライシング戦略」をテーマに、基本的な考え方から、変更、タイミングの捉え方まで解説された。

前回開催されたプライシングセミナーのレポート記事はこちら。

最初に登壇したのはZuora Japan サブスクリプションエバンジェリスト 島本 永樹 氏だ。

2007年に創業したZuoraは、プロダクト販売モデルからサブスクリプションモデルへのビジネスモデル変革における収益向上、コスト削減などを支援する企業。グローバル1,000社以上の顧客を支援しているサブスク支援業界のリーダーだ。

国内SaaS企業は生き残れるか?

島本氏は冒頭、SaaSビジネスにおける厳しい現実をデータで提示した。

Zuora Japan サブスクリプションエバンジェリスト 島本 永樹 氏

「国内のSaaS市場規模は2024年には1兆円を超えると予測されていますが、SaaS企業が生き残るのは甘くありません。マッキンゼーの調査によれば、年間成長率が20%未満のソフトウェア企業は92%企業の確率で消えていってしまうと言われています」

近年注目されているSaaS企業の多くはサブスクリプションモデルを採用しており、プライシングに取り組むことが重要であると島本氏は力説する。

「サブスクリプションビジネスは一本調子ではなく、トライアンドエラーを繰り返して成長していくものです。ユーザーであるサブスクライバーを中心に置き、常にユーザーとつながりを持たねばなりません。刻一刻と変わる彼らのニーズを的確に把握し、製品やサービスを永遠のβ版としてアップデートしていく必要があるのです」(島本氏)

サブスクリプションビジネスで考えるべきポイント

つづいて島本氏は、サブスクリプションビジネスにおいて考えなければいけないこととして次の5つを挙げる。

1. 全体デザインのオファーリング

2. サブスクライバーの体験

3. ファイナンシャルモデル

4. ビジネスオペレーション

5. エンタープライズ・アーキテクチャ

限られたセッションの中で島本氏は「1. 全体デザインのオファーリング」について言及した。

全体デザインのオファーリングとは、「持続的な成長を実現するには、どのようにサブスクリプションサービスを設計し、価格を設定し、パッケージ化すればよいか」を考えることだ。

ここで島本氏は、典型的なサブスクリプション契約の例を図示して挙げた。

この図は、Zuoraの顧客(SaaS/サブスク企業)が提供するサブスクリプションの典型的な契約の流れだ。

「ベーシックプラン(トライアル)への申込み、アップデート、従量課金の導入、プランの休止から再開、ときにはダウングレードを提案する場合もあります。

重要なのは横軸の時間軸をみることです。金額と価値のレベルをアジャストさせて、横軸の顧客生涯価値、つまりライフタイムバリュー(LTV)を最大化させていくのが、成功する企業のベストプラクティスです」

契約変更とサブスク成長率の相関関係

実際、企業の戦略と成長率は大きな相関関係がある。

Zuoraの調査では、ユーザーに対して契約プランを複数用意して頻繁に変更ができている企業とそうでない企業とでは、成長率やチャーンに大きな違いがあるという。

「年に数回サブスクリプションエコノミーインデックスと合わせて調査していますが、プランを複数用意している企業はARPA/APRUの成長率が高く、チャーンも防げます」(島本氏)

ZuoraソリューションはCRMやERP/会計システムなどと連携し、価格設定や契約管理、回収、レポート、会計仕訳といったサブスクリプションビジネスに必要な機能をSaaS形式で提供されている。

島本氏はZuoraのソリューションについて説明したうえで、「Zuoraの価値は、収益向上と効率化を同時に実現できることです。既存の仕組みに加えて、新規顧客獲得の加速や収益化を支援していきます」と締めくくって次のセッションにつなげた。

なぜプライシングを見直すべきか?

続いて登壇したのは、プライシングSaaS「Pricing Sprint」の提供やコンサルティング事業を行うプライシングスタジオの取締役COO 相関集 氏だ。

プライシングスタジオ 取締役 COO 相関 集 氏

相関氏はまず「なぜプライシングを見直すべきか?」という疑問を投げかけ、価格を継続的に見直している企業とそうでない企業のユニットエコノミクス(LTV/CAC)には大きな差があることを図を用いて解説した。

「なぜセミナーを開催してまでプライシングを見直すべきかといえば、ユニットエコノミクスに大きな差が出るからです。

価格改定頻度ごとのユニットエコノミクスを比較すると、継続的にレビューして価格を見直す企業は11.1倍となっているのに対し、見直さない企業は1.7倍にとどまっています」(相関氏)

島本氏のセッションでも言及された通り、SaaSは永遠にアップデートが繰り返される前提でサービスが提供される。

「特にSaaSは機能追加が多く、値上げのタイミングがあります。この機会を見逃さずに値上げを行いLTVを増加させることは重要です。

また、定期的に価格をモニタリスングする見直すことで安すぎて不安に思われる、高すぎて検討に乗らないといったことを避ければ、CAC効率化にもつながります」

プライシングを見直す頻度はどうすべきか

では、どの程度の頻度でプライシングを見直すべきか。

相関氏は「結論からいえば、年に1、2回は確実に見直すべき」と強調する。

「海外では、価格を継続的に見直すことが当たり前になっており、米国では役80%のスタートアップが年1ペース、40%が2回見直しを実施しています」

価格戦略の考え方

価格戦略の考え方としては、プライシングによって成し遂げたい結果を逆算、アプローチを考えて、短期間でやりきることが大切だと相関氏は強調する。

「まず、短期間でやりきることが非常に重要です。数年単位の長い期間をかけてじっくりプライシングを見直そうとする方もいるが、これは従来のように、製品の価値が変化しない『売り切り型ビジネス』では通用した考え方です。

しかし、プロダクトそのものの価値がアップデートしたり、競合サービスの数や価格が変わったりするSaaS・サブスクにおいては、同じ価格のままではいけません。すぐ見直し、実行するという意味では、価格を変更する際にはデータ収集から価格決定まで、3か月でやりきることをおすすめします」

具体的には、価格変更の目的によってアプローチを変えていく必要がある。たとえば、売上/利益の増加が目的だった場合ひとつをとっても、さまざまなアプローチが考えられる。

「価格変更そのものが目的ではありません。戦略上のゴールは何か。価格をつかってどうギャップを埋めるかを考えることが重要です」(相関氏)

具体的な価格の決め方

では、具体的にどのようにして価格を決めたらいいのか。行うべき調査は大きく2つある。1つは支払い意欲調査で、2つ目は属性別調査だ。

支払い意欲調査の方法

支払い意欲調査は、顧客がいくらまでなら支払えるのかを調査するものだ。ここでは、次の4つのアンケート設問から分析を行う「PSM分析」を応用したものを使う。

PSM分析のアンケート項目

  • その製品・サービスについて、あなたが高いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたが安いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上高いと検討に乗らない金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額はいくらくらいですか?

「SaaSは一般的なアンケート会社のパネル回答は得られない のでおすすめできません。パネルの方がイメージしづらいプロダクトではバイアスが強く出てしまい正確な回答が得られないので、SaaSは既存のユーザーからヒアリング調査するのがもっとも良い方法です。弊社の実績ベースでは、サンプルは50ほどあればある程度見えてきます」(相関氏)

一般的な価格感度分析では、アンケート結果をプロットした左図の交点を見ていくのだが、これだけでは不十分だという。

「大切なのは、安すぎて質が低いと考える顧客、高すぎて検討に乗らないと考える顧客を可視化することです。

これを実現するため、『顧客数を最大化させる価格』と『売上を最大化させる価格』を算出した『購買ポテンシャル』を推計する右図も作成していくことが重要です」(相関氏)

属性別調査の方法

ここまで説明してきた支払い意欲に加えて、さらに難易度が高いのが属性別調査だ。

これは「何が原因で支払い意欲が変わっているのか。支払い意欲の高い層、低い層がどんな属性なのか」を特定するための調査である。

ここでは、利用目的、機能、従業員規模などを設問として加えて質問していく。相関氏は「非常に難易度が高いが、どういう要素が支払い意欲に関わってくるのか仮説を立てて設問を追加していくのがポイント」と語る。

「ここで重要なのは、価格変更を許容する顧客の特徴と事業戦略上必要な顧客の属性が合致していることです。支払い意欲調査で売上が増える価格を決定するだけでなく、属性別調査で自分たちの戦略上ほしい顧客属性を確認していかねばなりません」

まとめ

そして相関氏は、価格を決める際に大切なこととして(1)短期間で決める、(2)的確に要件設計をする、(3)確実に実行するの3点を挙げて解説した。

「1つめに、価格変更プロジェクトは3か月以内と決めて実行すること。

2つめに、的確に要件設計することです。価格変更によって成し遂げたい目的を事業戦略ベースに考えましょう。

3つめに、確実に実行することです。たとえば、お客さまの中では、サービスの利用規約に定められている内容が原因で価格変更できないケースがたまに発生しています。

請求管理業務などのオペレーションに課題がある方は、Zuora社をはじめとしたサブスク管理システムを検討・導入するのをおすすめします」

最後に相関氏は、Pricing Sprintのソリューションや実績を紹介した。

Pricing Sprintは、成功企業のプライシングノウハウを体系化し、グローバルで活用されているバリューベースプライシングによるプライシングプロセスをSaaS化したものだ。

「ローンチから数か月ですが、SaaS/サブスク業界を中心にすでに多くの企業が導入してくださっています。目的の設計からアンケート調査、分析まで専門コンサルタントがサポートしますので、よろしければお気軽にご相談ください」

戦略的なSaaSプライシングを実践したい方は、こちらをご一読いただくか、プライスハックまでお問い合わせください。

皆様のSaaS事業が価格によって、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまでよろしくお願いします。

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コラム

価格の心理テクニック②(アンカー効果、松竹梅)

あなたは飲食店でワインを頼む時に、どの価格帯のワインを頼みますか?無意識に真ん中の価格帯の物を注文した経験がないでしょうか?

それは、実は「価格のアンカー効果」というものが働いているのです。

価格のアンカー効果とは、顧客が商品を選ぶ際に、商品の知識や価格帯に関する情報が不足していると、最初に目にした価格(アンカー)が判断に影響するという心理効果のことです。

アンカー効果は適切な分析を行うことで価格戦略に大きく役立てることができます。

この記事では、この理論を活用したプライシングのノウハウについて解説します。


プライシングスプリント

価格アンカー効果とは

冒頭でもお伝えしましたが、価格アンカー効果とは顧客が商品の品質について評価をする時に、アンカーという最初に目にした価格が購買判断に影響する心理効果のことです。

アンカーという言葉の語源は、船の錨(アンカー)から来ています。最初に錨(アンカー)を海底に下ろすと、鎖は伸びる制限があるため、船を動かせる範囲に影響するということから名付けられました。

現在アクセサリーなどによく使われている「黒真珠」は、実はアンカー効果によって宝石という認識になったのです。

1970年頃、黒真珠はほとんど需要がありませんでした。そこで、イタリアのサルバドールアセールという商人は、黒真珠を最高級の宝石として世間にアンカーを刷り込んだのです。すると、そのアンカーは浸透し、宝石として流通しました。そして彼らは莫大な利益を築き上げました。

アンカー効果の例

松竹梅は、竹が売れる

アンカー効果の例として、「松竹梅は、竹が売れる」ことが挙げられます。

「真ん中のマジック」と呼ばれることもあり、松竹梅のように複数の価格帯が存在する時、真ん中の価格帯が一番売れる傾向にあるようです。

例えばコーヒーショップなどではTallサイズが売れやすいということになるのです。

(出典:タリーズコーヒージャパン)

他にもレストランでワインを注文するときでも同じようなことが起こるようです。

レストランでワインを選ぶ時、ほとんどの顧客はワインリストを見て中間の価格帯のワインを注文します。そして最も高価なワインや、最も安価なワインを選ぶ人はごく少数になります。

(出典:photoAC)

買い手は商品を選ぶ時できるだけ最善の意思決定をしようとします。そこで中間の価格帯の商品を選ぶことで、品質が劣るものを購入するリスクや、多く払い過ぎてしまうリスクを同時に軽減しようという思考が働くようです。

その際、買い手にとって真ん中の価格帯は魅力的に見え、他の商品でも現象が見られるのです。

そのため売り手は、複数の適切な価格帯を揃えアンカーを設置することで、意図的に一定の価格に誘導することが可能になるのです。

誰も買わないのに収益に貢献する商品

アンカー効果の二つ目の例として、「誰も買わないのに収益に貢献する商品」が挙げられます。

次のような事例が紹介されています。

ある販売員が、新しいスーツケースを買うために来店した客に対して予算を聞いたところ、200ドルと言いました。

そこで販売員は取扱商品の全体像を伝えたいと言い、900ドルのスーツケースを取り出してきて、品質やデザイン、ブランド名の点で最高級モデルであることを強調しました。その後、顧客が希望する価格帯の商品の設営に戻るがその際に250ドルから300ドルの価格帯の商品に客の注意を促しました。

すると250ドルから300ドルの価格帯の商品を購入する可能性がかなり高くなることがわかりました。

この事例のように明らかに買わないとわかっていたとしても、高額商品をアンカーとして品揃えに加えることで、顧客の支払意欲を引き上げるというやり方があるのです。

アンカー効果を生かした価格戦略

アンカー効果を生かした価格戦略として、顧客に商品の情報や知識がなかったり、その価格帯に関する情報を持っていない場合に、適切なアンカーを設置するという戦略が有効です。

アンカーがうまく機能すると、顧客を一定の価格に誘導したり、一回あたりの支払意欲を上げることが可能になります。

しかし、アンカー効果を価格戦略に活用するには注意が必要です。

理想の価格に誘導することを意識しすぎて、極端に高い価格や極端に安い価格をアンカーとして設置してしまうと、うまく機能しない場合があるのです。また、最悪の場合、顧客に対し極端なイメージ(中間価格帯のサービスなのに、高価格帯と勘違いされるなど)を植え付けることになってしまいます。

それは顧客が商品やサービスを購入する際、購入したいと思う価格のレンジが存在するからなのです。その為、アンカー効果を活用するためには、その価格レンジを理解しておく必要があります。

その際のアプローチとして使われるのが、PSM分析という分析手法です。詳しくは次の項目で紹介します。

PSM分析とは

PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。

PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握できます。

売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できるのですが、顧客が高いと感じる価格や安いと感じる価格も可視化することが可能なため、適切なアンカー価格を設定することに役立てることが可能になります。

PSM分析に関する詳しい記事はこちら。

まとめ

今回は、「価格のアンカー効果」という初期値が判断に影響する心理効果について紹介しました。

使い方次第では価格戦略に大きく役立てることができますが、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかという価格レンジを把握してから活用すると良いでしょう。

プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。

(参考:Confessions of the Pricing Man)

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サブスクリプション

サブスクリプションの成功事例解説|適した業界、成功要因は?

サブスクリプションは、近年さまざまな業界で段々と取り入れられています。目新しいもののように考えられることが多いですが、実は時価総額トップ企業30社のうち、14社がサブスクビジネスを事業の一部に導入しています。
今回はそのサブスクリプションで成功している企業の事例とその成功要因について解説します。

サブスクリプションビジネスの現状

世界トップ企業の約半分が導入

驚くべきことに時価総額トップ企業30社のうち、14社でサブスクビジネスが導入されています。(2021/5/6現在)

さらにトップ10社に絞れば8社が導入しており、今後は様々な業界で導入が進んでいくと予想されます。

事例紹介

Amazon

Amazonが導入しているサブスクサービスは、クラウド上にサーバーがあり、それをレンタルするAWSという企業向けのサービスと、書籍、動画が見放題、配送料が安くなるAmazon Primeという個人向けのサービスの2種類があります。

Apple

Appleの導入しているサブスクサービスは、音楽が聴き放題のApple Musicやゲームがプレイし放題のApple Arcadeのような個人に向けたサービスがメインになっています。

ネットフリックス

ネットフリックスは時価総額トップ30社の中に入ってはいませんが、サブスクリプションで成長し続けている企業です。こちらも動画見放題サービスを提供しています。

Google

Googleは企業向けにクラウド経由で共同作業がしやすい環境を構築するGoogle Workspaceやスマホアプリやwebサービスのサーバー、データベースを簡単に用意できるFarebaseの他に、個人向けに、広告なしでオフライン再生も可能になるYoutube Premiumや音楽聴き放題のGoogle Play Musicといった2種類のサービスを用意しています。

NVIDIA

NVIDIAは、クラウドを利用し、快適にゲームができるGeForce Nowというサブスクサービスを導入しています。ゲームに必要な処理をクラウド上でおこなうため、使用しているハードのスペックに依存せず、ゲームを楽しめるサービスです。

サブスク導入の多い業界

サブスクリプションは、ほとんどがデジタル系サービス(例:アマゾンプライムで音楽、映像、書籍の配信サービス)で導入されています。
デジタル系サービスでは、顧客が追加でサービスを得ようとする際に企業側にかかるコスト負担が低いため、導入がしやすいのです。例えばサブスクリプションの音楽配信サービスでは、顧客の購入時応じて製品を製作する必要がなく、需要に応じてコンテンツを配信するだけで良いので追加コストがほとんどかかりません。
このような背景があるため、デジタル系サービスでサブスクリプションが多く採用されています。

しかし、必ずしもデジタル系サービスでなければならない訳ではありません。国内ではキリンで生ビールのサブスクリプションがあるように、非デジタル系サービスでも導入が進んでいます。

成功要因

ここではネットフリックスを例にとって考えていきましょう。

ネットフリックスは元々ウェブサイトによるDVDレンタルサービスをやっている会社で、当初扱っていた作品数は925タイトルで、1週間レンタルにつき4ドル、送料・手数料として2ドル(追加でレンタルする場合はさらに1ドル)を支払う仕組みでした。月額15ドルでDVDを本数制限なしにレンタルできる定額制のレンタルサービス「マーキー・プログラム」を開始し、躍進しました。

サブスクリプションは、「顧客との継続的な付き合いから利益を拡大していこう」という考えを前提としているのはいうまでもなく、顧客との関係性強化がとても重要になります。

ネットフリックスは、この顧客との関係性強化のために、バリューベースプライシングを活用していると考えられます。

バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定する手法で、コストに対してマークアップを乗せる従来の価格設定に、顧客の知覚価値を上乗せさることで単価をアップすることができます。


ネットフリックスはこのバリューベースプライシングをうまく活用しています。下図をご覧ください。

出典:Statista

これは、企業努力で顧客の支払い意欲が上がったタイミングで値上げをし、それを新たなコンテンツに投資しています。コンテンツの追加によって、ユーザーの満足度が上がり、支払い意欲が上がる、そして値上げする。このようなことを繰り返しているのです。
これによって実際の売上も着実に伸びています。

出典:Dazeinfo

このように、継続的な支払い意欲調査と積極的な値上げ、増加収益の投資を繰り返し、顧客との関係性強化をはかることが成功要因の一つと言えるでしょう。

プライスハックを運営するプライシングスタジオでは、バリューベースプライシングなどの手法を活用した戦略的なサブスクリプションプライシングを提案可能です。プライシングについてお悩みの方は、プライスハックまでお問い合わせください。

まとめ

世界の時価総額トップ企業30社のうち、14社で導入されているサブスクビジネスの成功事例について解説しました。
サブスクビジネスで成功するには顧客との関係性強化が重要であり、定期的な調査と分析による価格の見直しがとても重要と言えます。

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プライシングニュース

AppleがPodcastをリニューアル  番組をサブスク化して放送可能に


プライシングスプリント

「Apple Podcastサブスクリプション」が5月から開始

大手電化製品製造会社のAppleは4月21日、「Apple Podcast」をニューアルし、「Apple Podcastサブスクリプション」を5月から開始すると発表した。
「Podcast」が刷新され、トップチャートとカテゴリーにアクセスしやすくなり、検索タブも改善された。クリエイターとリスナーとの絆の強化を目的に、サブスクリプション(サブスク)化を進めるという。

年額19.99ドルのApple Podcasters Programに加入したクリエイターは、番組を有償提供可能で、価格は各自で設定できる。デフォルトでは月額請求だが、年間請求も設定可能。リスナーは、無料の試用版や限定コンテンツなど、様々な特典にアクセスできる。

Apple Podcastの新たなUI(出典:apple 公式サイト)

価格の決め方

Apple Podcastサブスクリプションでは、クリエイターが各自で価格を設定する。
では、どのように価格を決めたらよいのだろうか。今回は、バリューベースプライシングというプライシング手法を紹介する。

バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定することだ。PSM分析などの支払意欲を実施して、抽出したデータを分析し価格を決定する。ここで、顧客をセグメントごとに分けて調査・分析することが重要となる。バリューベースプライシングの詳しい解説は、次の記事を見てほしい。

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プライシングニュース

サブスク新規事業立ち上げSaaS「Pocone」リリース 月額5万円から導入可能

事業創出特化型SaaS「Pocone」の提供が開始

インキュベーション事業を展開するオプトインキュベートは19日、プラットフォーム構築を最短1日で可能にする事業創出特化型SaaS「Pocone(ポコン)」の提供を開始した。

Poconeは、マッチング・シェアリング、およびサブスクリプション型の新規事業のプラットフォーム構築を、ノーコードで立ち上げることを可能にする。さらに、デジタル領域の事業創出の要素をテンプレート化することで新規事業の立ち上げが最短1日で可能。

Poconeの価格・料金プランまとめ

Poconeのプランは次の通りである。

Poconeプラン一覧(出典:オプトインキュベートプレスリリース)

SaaSで採用される複数パッケージ価格モデルとは

SaaSの価格体系の中で、Poconeのような複数のプランを用意しているものを複数パッケージ価格モデルという。

このモデルは、さまざまなニーズに対応でき、顧客ごとの売上最適化に近づけられる。また質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、価値に見合った金額を受け取れ、利益増が可能になるメリットがある。

一方で、選択肢が多すぎたり、プランの差が複雑だと顧客にとって検討事項が増えてしまい、購入障壁を高めることにつながるデメリットもあるため、顧客ニーズに合致した選択肢を3つ程度に留めるように注意が必要である。

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コラム

価格の心理テクニック①(品質指標、プラシーボ効果、威光価格)

一般的に、価格と需要量は反比例し、価格が高くなるにつれ需要は減っていくと考えられています。しかしその法則が通用しない場合があります。

経験則により、価格は高いと品質が良いと考え、逆に低価格であることは品質への懸念を抱くように、価格が消費者にとって商品の品質を評価する基準になることで、価格と需要量が比例している場合、このような現象が起こります。

そのため、価格を上げると単位あたりの売上高も増える可能性があるのです。

この記事では、この理論を活用したプライシングのノウハウについて解説します。


プライシングスプリント

価格が品質指標になる

価格が品質指標になる例として、家具、カーペット、シャンプー、歯磨き粉、コーヒーなどがあります。

中でも、まだ購入したことがない商品やほとんど購入しない商品を目の前にしている時などは、品質指標として見られることが多いです。

ある電気カミソリを当時マーケットリーダーであったブラウン製品の価格に近づけようと大幅に値上げしたところ、売り上げが4倍になった例も存在します。(出典:Confessions of the Pricing Man)

なぜ価格が品質指標になるのか

価格が商品指標となる要因は次の3つです。

・経験

・比較しやすさ

・コストプラス心理

経験

消費者が過去に高価格商品で好ましい経験をしていれば、価格が高い方が安いよりも品質の保証になりそうだと思うようになります。

例えば、普段より価格が高い電子レンジを購入したら、普通は2年で壊れてしまうところ4年壊れなかったというような経験です。

比較しやすさ

価格が固定されていて、他に交渉の余地のない状況だと価格を使えば、商品を客観的に比較ができます。

バザーなど価格交渉が行われる場では価格は品質指標になりません。

コストプラス心理

多くの顧客にはコストプラスのマインドセットがあり、コストに利益を上乗せして価格が設定されていると考えられることが多いです。

例えば飲食店で、商品の価格を見て、作るのにどのくらいのお金がかかっているのか推測する心理です。

顧客が価格のみによって商品を評価するタイミングは、初めての商品やほとんど買わない商品を目の前にしている時、代替品の価格が不透明な場合、時間的なプレッシャーがある時などが挙げられます。

そういった際に価格は品質指標として考えられやすいです。

価格のプラシーボ(偽薬)効果とは

本来、商品の品質がそこまで高くないが、価格の高さによって相応の品質があるように錯覚する効果のことです。

ある研究では、同じパワードリンクで価格が値引きされているものと正規価格のものを飲んだ際、正規価格のものの方が効果が現れたとされています。

価格の品質指標としての効果は時に認知レベルを超えることがあります。

(出典:イラストAC)

価格のプラシーボ効果の研究例

あるテストでは被験者に異なる価格の鎮痛剤を処方しました。そして一方にグループには高い値札を、もう片方のグループには安い値札を見せました。

高価格を見せられた被験者は例外なく、この鎮痛剤が非常に効果的だったと述べたのに対し、低価格を見せられた被験者のうちそう主張したのはわずか半数でした。

しかしどちらも処方された鎮痛剤は実際は偽薬であり客観的に痛みを軽減させる効能はありませんでした。

このようにして価格のプラシーボ効果が実証されました。

価格が生み出す威光効果

威光効果とは「一部の特徴によって全体が実際以上に良いと感じる現象」のことです。

価格という特徴はその商品や企業の全体の評価に影響を与えます。

例えばフェラーリのようなハイブランド商品は、価格が高いほうがむしろ需要上がりますが、その要因は価格が品質指標になっていること以外にもあります。

それは価格がステータスや社会的名声のシグナルになっていることです

このような高級ブランドでは商品を所有・サービスを享受すること自体がステータスとなります。

このように価格は買い手に付加的レベルの社会的心理効用を与えるため、価格戦略に役立てることができます。

威光効果を利用した例

Louis Vuitton(ルイヴィトン)

(出典:Louis Vuitton)

威光効果を利用した代表例に、Louis Vuittonの価格設定があげられます。

長年に渡って作り上げてきたブランドイメージにより、高値でも常に人気のあるファッションアイテムを販売しています。

Louis Vuittonがセールを行わない理由も、ステータスや社会的名声のシグナルを崩さないためだと考えられます。

威光効果を利用した価格戦略

威光効果を利用する場合、顧客に対して高品質な商品・サービスであることを示すために価格を高く設定する価格戦略が有効です。

その際、自社の需要曲線が右上がりになる箇所を把握しておく必要があります。そして最適価格は再び下降する部分に存在します。

逆に自社の需要曲線を把握していない企業は、特に高価格品やラグジュアリー品の場合、手探りで最適価格を探すことになってしまうため注意が必要です。

価格が競争上の武器にならない理由

価格が競争上の武器にならないことがあります。例えば、高い評判、品質、もしくはプラシーボ効果が存在する市場です。この場合、これらが価格に大きな影響を及ぼすため、それによって競争上の武器としてのとしての価格の力が弱まります。

このような市場で、サプライヤーが低価格攻勢をかけてシェアを伸ばそうとすると、低品質や評判の悪さを連想させてしまうため失敗に終わってしまいます。

また、ブランド力の低い状態で威光効果を狙って高く売る価格戦略は難しいです。

そのため、弊社ではバリューベースプライシングを推奨しています。

この手法を活用すると、後述しますが、ディズニーチケット価格のように、年1-2回価格を見直して、定期的に値上げすることが可能になります。そうすることで、多少時間はかかってしまいますがハイブランドにしていくことが可能になります。

バリューベースプライシングとは

バリューベースプライシングとは顧客が商品やサービスに感じている価値に基づいて価格を設定することです。

バリューベースプライシングにより、商品・サービスの価格を原価や競合の価格にとらわれずに、値段を決めることができます。

これはコストに利益を加えた価格にさらに、顧客の商品に対して感じている価値に相当する価格を上乗せするというものです。

顧客の購入起点で、売り手と買い手の関係は始まるため、一部の場合を除き顧客起点のバリュープライシングから始めることが、どのような事業においても有効です。

バリューベースプライシングのメリット

バリューベースプライシングのメリットは主に次の3つです。

・商品、サービスに対しての正しい利益が得られる

・顧客価値起点の商品、サービス改善ができる

・効果的な価格戦略を構築できる

商品、サービスに対しての正しい利益が得られる

バリューベースプライシングでは、自社の顧客の支払意欲に基づいた価格設定を行うため、顧客にとって高すぎて検討に乗らない価格を設定することや、顧客にとって安すぎて品質が低いと感じる価格が設定されることが減り、商品・サービスに対しての適切な対価を得られるようになります。

次の画像のように、顧客の商品に対する「知覚価値」分の価格を上乗せします。また、東京ディズニーランドは過去13回の値上げを成功させています。

(出典:個人投資家研究所)

このようにバリューベースプライシングを使うことで、商品・サービスの開発・改善を繰り替えし、顧客が感じている価値が上昇した場合、それに応じた値上げをすることができます。

顧客価値起点の商品、サービス改善ができる

顧客価値のある製品・サービス特性を把握することで、より強みを強化する製品・サービス改善が可能になるだけでなく、バリュープライシングの調査で明らかになった顧客の支払意欲と現在の製品にギャップがある場合においても、それを埋めるためのサービス改善を行うことが可能になります。

結果として顧客満足度をあげることができ、長期的な顧客との関係性を作ることが可能です。

効果的な価格戦略を構築できる

バリューベースプライシングの最大の利点は、顧客の支払意欲の把握により、価格変更による顧客数の変化を推定できることです。

価格変更による顧客数の変化を推定することで、事業戦略上必要な顧客の離脱を起こす価格改定を避けることができ、戦略的な価格戦略を実行できます。

プライシングスプリントとは

プライシングスタジオでは、PSM分析をもとに価格戦略の策定を提供するサービス「Pricing Sprint」を提供しています。

Pricing Sprintでは、分析で顧客の支払意欲を把握するだけでなく、支払意欲をもとに顧客数、売上のシミュレーションをおこなえます。価格決定で重要な価格戦略の策定や価格策定サイクルの定着も専属のコンサルタントが伴走しますので、価格に課題を抱える企業の皆様ごとに最適なサービスを提供します。

「Pricing Sprint」サービスページはこちら

まとめ

今回取り上げた品質指標、威光効果、プラシーボ効果はあえて価格を高く設定することによって売り上げを上げたい時に使える考え方です。この考え方を利用して価格改定を行う際には、自社商品の需要曲線を理解しておく必要があります。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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プライシングニュース

飲食店向け自動予約受付AI「トレタ予約番」、正式リリース

自動予約受付AI

飲食店向け予約/顧客台帳サービスを開発・販売するトレタCCは15日、飲食店の電話予約をAIで自動受付する「トレタ予約番」をリリースした。開発には共同でunirobotも参加している。

AIによる自動応答サービス「unirobot cloud」を組み込み、感情解析、音声認識などを含む、コミュニケーションを豊かにする各種インテリジェンス機能をサブスクリプションサービスとして提供している。業務オペレーションの音声入力化や電話の自動応答化、ロボット等ハードウェア制御やIoT連携などの実現に必要となる技術を、クラウド経由で機能単位で利用可能である。

トレタ予約番のイメージ

トレタ予約番のシステムとは

この「トレタ予約番」は、飲食店にかかってくる電話にAIが自動で24時間365日対応するサービスだ。新規予約を自動で受付し、自動配席・登録までを完了する。また、予約確定時に予約者に、SMS配信も可能である。また、この「トレタ予約番」経由で受付した予約であれば日時変更やキャンセル対応もできる。

時間帯ごとに店舗への転送もオン・オフの切り替えが可能であり、営業時間内でも店舗の状況に合わせ臨機応変な運用ができる。また、予約者が店員への取次を希望した際も、予約者情報などを音声で共有するため、予約者に同じ質問を繰り返さずに済む。

「トレタ予約番」のビジネスモデル

「トレタ予約番」のビジネスモデルはサブスクリプションの中でも、オンラインサービス型であり、特定のサービス、機能をオンライン上で一定期間使用する権利得られる。こうしたサービスは事業者が常時アップデートするので利用者は常に最新の機能を使うことができる。