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サブスク事業を急成長に導くデータ活用とプライシング戦略

2021年7月1日、サブスクリプションビジネスの成長におけるデータ活用について、解約率(チャーンレート)を改善するための顧客データ活用方法や、適切な価格設定をするためのデータ収集方法について、様々な現場でデータ活用を支援してきた2社の代表と数々の企業を支援してきたベンチャーキャピタリストが、自らの体験をもとに解説をするオンラインセミナーが開催された。

前回開催されたプライシングセミナーの記事はこちら

本セミナーにはSTRIVEのベンチャーキャピタリスト古城巧氏や、プライシングSaaS「PricingSprint」を運営するプライシングスタジオの高橋嘉尋氏、カスタマーフィードバックを軸にしたディレクション事業とプラットフォーム「KiZUKAI」を運営する山田耕造氏が登壇した。

サブスクビジネスを成長させるには

1番手で登壇したSTRIVEの古城氏は、サブスクビジネスの急成長に必須な2つの要素について説明した。

この2つは、投資するときにも重視する尺度だという。

1.ネット新規MRRの成長

2.ユニットエコノミクスの成立

「1つ目の、新規MRRグロースには低チャーンが必須だと考えています。ネット新規MRRは次のように因数分解でき、この3つの足し算と引き算で成り立っています。

①新規MRR

②既存顧客のアップセル

③チャーン

ここで、 ①新規MRRと② 既存顧客のアップセルがいくら積みあがっても、③でチャーンしてしてしまっては、継続的な成長ができません。チャーンが鍵になると思っています。

2つ目は、ユニットエコノミクス(LTVをCACで割ったもの)が、3倍以上を保っていることです。うまく行っている会社とそうでない会社をみていると、目安として3倍以上が好ましいことがわかってきました。3倍以上を保ってくれるかどうかがサブスクビジネスが伸びる鍵になると思っています。」(古城氏)

サブスクリプション型の利益構造システム

続いて古城氏は、毎年同金額が積みあがる前提として、チャーンレートと売上高成長の関係について言及した。

そして、毎年同金額が積みあがることを前提として、チャーンレートを3%~35%の場合の売上高成長を可視化したグラフを説明した。

「グラフを見て分かる通り、チャーンが10%以上になると、継続的な成長が無いことがわかります。ここからも、いかにチャーンレートを下げることが、長期的成長のポイントとなるかがわかります。」(古城氏)

プライシングの見直し頻度とインパクト

最後に古城氏は、価格の見直し頻度と、見直し頻度ごとのユニットエコノミクスについて解説した。

米国のスタートアップでは、8割のスタートアップが年に1回以上の価格の見直を行っており、継続的に見直す企業のユニットエコノミクスは 11.1x に対して、見直さない企業は 1.7xと、価格の見直し頻度によってユニットエコノミクスに大きな差が生まれているという。適切な価格設計をすることがユニットエコノミクスをよくするための1つの鍵となっていると語った。

最後に、チャーンレートとプライシングの重要性を強調した上で、「チャーンレートとプライシングをより深ぼっていければとおもい、プライシングスタジオの高橋さんとKiZUKAIの山田さんからお話しいただければと思います。」と古城氏は自身の公演を締めくくった。

プライシング戦略、価格決定における価格分析方法

2番手で登場したのは、プライシングSaaS「Pricing Sprint」を開発・ 提供するプライシングスタジオのCEO、高橋氏だ。彼は、プライシング戦略 、価格決定するにあたり、どのように価格分析を行うべきかを解説した。

「価格を決める際に、既にある顧客データだけを分析して価格を決定するのはとても難しいことです。そこでプライシングスタジオでは、アンケートを用いた分析を行っています。本日は、どのようにアンケートを取り、その結果をどう分析すれば価格が決められるのか、お話したいと思います。」(高橋氏)

アンケートによるデータ収集

まず、アンケートによるデータ収集について、PSMを活用した価格感度設問と、支払意欲仮説を検証する属性設問を組み合わせることが大切だとした。

「価格感度設問はPSM(Price Sensitivity Measurementの略)という、4つの質問に答えてもらい、その結果から顧客の支払意欲がどの程度あるのか、分析を行う手法です。PSMを積極的に活用している価格のリテラシーが高い会社もありますが、PSMだけではなかなか価格を決め切ることができません。

例えば、PSMの結果 から、あるサービスを値上げした場合、20%の顧客が離脱するということが分かったとします。しかし、その20%が企業にとって切り捨てても良い顧客なのか、それともターゲットとして大切にしている顧客なのかによって、大きくリスクが異なります。

属性設問は、 ペルソナごとの支払意欲を特定するための設問で、BtoCのサービスの場合、例えば男性なら  許容 、女性は 離脱してしまうなど、ペルソナ毎に支払意欲がどのように違ってくるのかを特定するための設問です。」

また、  属性設問のポイントとして、プロダクトの価値を考え、支払意欲 との関係を検証 する設問作成を意識することが重要と高橋氏は語った。

価格決定におけるデータの活用方法

続いて、価格決定におけるデータの活用方法として具体的なシュミレーション手法について紹介した。左図の通り、価格感度設問を集計してグラフを作成します。一般的に、PSMでは高すぎて検討に乗らない金額と、安すぎて価格に乗らない金額が少なくなる金額の交点 になる価格を採用するとい言われていますが、実際はこれだけだと意思決定するには弱いです。

そこで、右図のように、いくらのときに何人が買ってくれて、売上はいくらになるかというシュミレーションを作成し、購買ポテンシャルを推計します。

また、お客様の中には従量課金などの課金体系を持つ企業もあります。その場合は、従量課金での利用量と支 払意欲の関係性をシュミレーションすることで、支払い意欲とペルソナの関係性が見られます。」(高橋氏)

価格決定に活用したデータから得られること

価格決定に活用したデータから得られることとして、以下の3つを挙げた。

1.カスタマーサクセスの向上

2.顧客起点の開発改善

3.マーケティングの施策実行

「1つ目のカスタマーサクセスの向上は、アンケートやインタビューを通してより深い関係構築につながり、継続的な関係が前提となるSaaS事業においては結果的にチャーン低下につながります。

2つ目の顧客起点 の開発改善は、機能Aを活用している顧客、導入目的が~な顧客は支払意欲が高い」といった観点 から 機能開発をすることができ、値上げの為に必要な機能を特定することができます。

3つ目はマーケティングの施策実行で、特定セグメントや、支払意欲が高いペルソナをターゲティングし、プロモーションができるようになります。」(高橋氏)

プライシングに感度の高い急成長企業の事例

最後に、プライシングに感度の高い急成長企業の事例としてNETFLIXやSmartHRなどを例に挙げ、優れた成長の売上成長の裏には定期的な価格の分析があることを強調した。

「企業の利益に億単位で影響 を与えた事例もあるので、プライシングの凄さを日々現場で感じている。」として、高橋氏は自身の公演を締めくくった。

解約率の差による成長曲線

最後に登壇したのは顧客ロイヤリティ改善ツール「KiZUKAI」を運営する、KiZUKAI代表 取締役の山田耕造氏だ。チャーンレートにフォーカスし、ユーザー獲得後にどのようにロイヤリティを高めていくか、またデータの活用について解説した。

はじめに、山田氏は以下の通り2つのグラフを示した。「先ほどSTRIVEの古城さんの方からもチャーンが高いとなかなかビジネスがグロースしないというお話がありましたが、いろいろな会社を見ていく中で、 実際 、本当に良く見る傾向です。」

左側のグラフは、毎月2%以下の解約率で健全な推移をしており、累計ユーザー数はあがっている。 一方で、右側のグラフはBtoCのサービスなどによくある例で、10%台から高い場合は20%の解約率があるので、成長曲線が描いてゆけない。

「こうしたデータを日々見ているので、解約率は非常に重要であると思っています。解約率の高い会社と低い会社の差は何かというと、社内データがきれいに管理 されていることや、データの活用度合いに比例しているので、機会があればまとめたいと思っています。」(山田氏)

顧客ステージ毎に解約率は見なければいけない

次に、BtoCのユーザー事例を紹介した。横軸が 契約期間で縦軸が 入会時期となっており、色の濃さが解約率の高さとなっている。1か月目の色が濃くなっており、契約期間が長くなれば長くなるほど解約率が下がることがわかる。

「解約率は一概に毎月のデータだけで追うだけでなく、顧客ステージごと、契約期間ごとなどいろいろな尺度からみなければいけません。」(山田氏)

全体最適のアクションをしようとしてもなかなかうまくいかないので、新規ユーザー、中堅ユーザー、ベテランユーザー等、ステージを定義し、各ステージごとの解約特性を把握してアクションを取ることが大事だとした。

運用面では、ステージごとのキーKPIを設定しており、分析していくとステージごとにキーKPIが全く異なるため、データを使って、解約しそうなユーザーに対して不足しているアクションを分析している。

活用すべきデータ

「よくどのようなデータを活用すべきかと聞かれるのですが、ユーザーによってまちまちです。冒頭 でお話しした、解約率の高い企業と低い企業の差として、社内で保有するデータのきれいさが関係あると話したのは、ここで活用することのできるデータの差のことです。」

よく使われるのは、契約情報データ、活用データ、行動データで、契約データはIDで紐づけられているかどうかが重要だ。ユーザーの活用データや行動データは変動 するデータなので、時系列でデータベース化していく。

もう一つ大事なのは、サクセスデータだ。サブスクはサービスを提 供しているので、顧客に対する貢献度( 例えば 英会話アプリなら英語の上達度など)時系列で獲得していくことも重要だと山田氏は語った。

KPI策定におけるデータ抽出の注意点

KPI策定におけるデータ抽出の注意点として、データの抽出条件をそろえることが非常に大事だという。例えば、5/15に解約したユーザーは4/15-5/15の期間、3/1に解約したユーザーはあ2/1-3/1の期間など、解約日を起点として、同じ条件の期間でKPIを分析する必要がある。

「データの抽出方法が間違っていたり、条件が揃っていないと、分析しても傾向が全くわからないことがよくあります。データの抽出を慎重に行うことがKPI策定においては非常 に大切です。」(山田氏)

解約への影響力を正確に把握

KiZUKAIでは新規ユーザー、中堅ユーザー、ベテランユーザーなどの顧客ステージとユーザー状態を管理して、適したコミュニケーションを行っている。

また、  機械学習や重回帰分析を行い、解約に影響する要因を特定するとともに、解約しそうな顧客のリストが算出されるので、今誰にアプローチするべきかを明確に知ることができるという。

データ活用によりサブスクを急成長に導いた事例として、年間解約率が31.2%改善し、年間1069万円の効果が上がった事例などをあげた。

「解約率を抑えると、解約率だけでもビジネスインパクトが出るのですが、ユニットエコノミクスが成立してくるので、マーケティングにや組織などに投資して、フォローアップを厚くするなど、さまざまな投資をできるようになるのが一番のメリットだと思います。」として、山田氏は自身の公演を締めくくった。

質疑応答

Q:アンケートを実際に行う際は何人くらいに行うのですか?

A:BtoBかBtoCによって異なりますが、BtoCは100サンプルくらいが理想です。BtoBは50サンプルくらいが理想です。BtoBは稟議 により意思決定プロセスの基準がしっかりと定まっているのでブレが少なく、少ないサンプル数でも大丈夫です。また、検証したい仮説の数が多い場合は、仮設の数×10くらいのサンプルを追加することをお勧めします。(プライシングスタジオ高橋氏)

Q: 価格改定の重要性は認識できたが、実行するには勇気がいります。値上げもしくは値下げの成功例、失敗例があれば教えてください。

A:おっしゃる通り、価格改定には相当な勇気がいると思います。失敗事例は、値下げしたら失敗した、という事例はよく聞きます。例えば、値段を25%下げたのに新規顧客が獲得できず、MRRが1/4減ってしまった、という事例です。

値上げの成功例は、月額を2倍にあげたら成約率が上がった事例があります。

成功要因は、価格を上げることにより、品質に対する安心感が高まったということと、製品を評価する人がかわったためです。

これまでは現場決済で済む金額だったために、現場の人しか向き合わなかった製品が、価格を上げることによって役員レベルが意思決定を行うようになり、役員レベルこそ、その価値を感じてもらいやすい製品だったために、成約率が上がったのです。

弊社の事例としても、お客様の値上げの要望に対し、顧客の離脱を防いで60%の値上げはが可能だという分析とシュミレーション結果をもとに値上げを行い、実際顧客が 離脱することなくシュミレーション通りの結果となっています。

意思決定が不安だからこそ、しっかりと分析してシュミレーションを行えば、安心して価格設定を行うことができます。(プライシングスタジオ高橋氏)

Q: プライシングの見直しは頻繁に行い続けるものという印象がないのですが、常にプライシングの 仮説は立て続けるべきなのでしょうか。もしくは、プライシングの仮説立て以外にプライシングスタジオを活用するケースがあればお聞きしたいです。

A: ディズニーランドは過去に14回値上げをしていて、昔は3800円くらいだった入場料が現在は8000円くらいになっています。ユーザーが離脱しない限界の金額までしっかり値上げしていくと、その分の収益をコンテンツに投資できます。そうすれば、コンテンツの魅力 とともにユーザー満足度も上がるので、支払い意欲も上ります。

グローバルで戦っている企業では、年に1-2回当たり前のように価格を見直しているので、日本にそういった文化がないだけです。そろそろそういう文化から脱却できればと思っています。

もう1つの質問、プライシングの仮説建て以外にプライシングスタジオを使う理由については、プライシングスタジオのお客様は、コンサルティング会社や事業会社でプライシングをやってきた方々が半数以上です。

彼らは、1つの仮説を検証するのに数か月から1年かかるという経験をしてきているのですが、プライシングスタジオのツールを利用することで、それが1~3か月くらいでできるようになり、 圧倒的な工数削減となります。そうしたプライシングの大変さを知っている方々に、多くの価値を感じてもらえているのだと思います。(プライシングスタジオ高橋氏)

まとめ

皆様のサブスクリプション事業が価格によって、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまでよろしくお願いします。

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価格調査方法まとめ|適切な方法を紹介

あなたは価格調査に最適な方法をご存知でしょうか。この記事では、様々な価格調査方法を紹介します。

価格調査に適切な方法

結論を先に言ってしまうと価格調査方法で最も効果的な方法はアンケートを使った方法です。

価格調査でアンケートを使用することに懐疑的な方もいるかもしれません。

しかし、業界内ではアンケートが価格調査の最も有力な分析手法として知られています。実際に、BCGやマッキンゼーなどのコンサル企業やディズニーなどプライスハックが調査する限り、国内外問わずプライシング戦略で成功している企業で調査時にアンケートを使用していないところは聞いたことがありません。

では実際、アンケートをどのようにおこなって、どうやって分析すればいいのでしょうか。次はアンケートを使った様々な分析手法を5種類紹介します。

PSM分析

価格調査の分析でプライスハックが最適だと思う分析はPSM分析です。PSM分析以前は単純質問と言われる方法が一般的な調査方法でした。

単純質問は、「この製品やサービスが〇〇円だとしたら、どれくらい買いたいと思いますか」や「この製品やサービスがいくらなら買いたいと思いますか」と言った質問を回答者にします。

そして、そのアンケート結果に基づいて企業は製品やサービスの価格決定をするというものです。

しかし、次第にアンケート回答者である消費者が価格に敏感になり製品やサービスが安くなるかもしれないと考えたり、自分が思っている価格よりも低く回答したり、建前で価格を高く答えることが多くなりました。

これにより価格に対する直接的な質問をしていく単純質問では正確な分析をすることが困難になってしまいました。こういった理由によりPSM分析という新たな手法が取り入れられるようになっていきました。

PSM分析とは

PSM分析とはバリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するため使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受けいられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。

PSM分析の方法・手順

一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。

まずは、アンケート調査を行います。PSM分析では、アンケートで4つの質問をすることで、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

次に、アンケートの結果を集計し、以下のようにグラフに回答を累積してプロットします

PSM分析説明1

グラフはX軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合を表します。
価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

このグラフから価格設定の参考となる4つの交点がわかります。

・最適価格
「高すぎて買えないと感じ始める価格」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点で顧客が望む理想的な価格

・妥協価格
「安く感じる」と「高く感じる」の交点で消費者に「このくらいの価格なら仕方ない」と感じてもらえる価格

・上限価格
「安く感じる」と「高すぎて買えないと感じ始める価格」の交点でこれ以上高くなると、消費者に購入されなくなるとみられる価格

・下限価格
「高く感じる」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点でこれ以上安くなると。消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる
」と感じる価格

交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。

PSM分析の不足点

PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。

最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。

交点の取り扱いがそのまま売り上げの最大化につながるわけではないので、売り上げの最大を目指すフェーズと顧客数拡大を目指すフェーズによってPSM分析の見方を変えなければいけません。

また、売り上げの最大化や顧客数を最大化することどちらの見方においても製品やサービスのターゲットセグメンテーションをすることが必要になります。ターゲットセグメンテーションをするときは製品やサービスに関するどの変数がターゲットの支払い意欲を変えているのかを調査し、適切にターゲットを切り分けなければいけません。

この辺りの作業は、専門的な知識やノウハウが必要となってくるため、正確に調査し実行するには外注することも選択肢になり得ます。

PSM分析に関する詳しい記事はこちら。

コンジョイント分析

コンジョイント分析の方法とは

コンジョイント分析はB2Cマーケティングでよく使われ、消費者が製品・サービスを選ぶ際の、購買主要因(KBF:Key Buying Factor)を数値化する分析手法です。

主にここで数値化されるのは、商品・サービスの構成要素(価格・機能・デザインなど)です。

コンジョイント分析の方法

分析方法としては、まず商品の属性と水準を組み合わせた複雑な条件のカードで好きな方を回答者に複数回選んでいただきます。そしてその結果を統計解析することでKBFを数値化します。

この分析によって、顧客が特定の製品構成にどのくらい支払うのかを定量化し、実際の販売数量の予測に変換することかできます。これは価格決定に有効な示唆を与えてくれます。また、対象のセグメントによって商品設計の際に優先すべき属性と水準も決定しやすくなります。

コレスポンデンス分析

コレスポンデンス分析とは

コレスポンデンス分析は、顧客の心の中の自社と競合ブランドの位置関係を知り、イメージの強みと欠けている要素を分析する手法です。散布図として結果を出すため、項目が多い時や一目で見たい時に用いられることが多いです。

コレスポンデンス分析の方法

分析方法としては、まず表側、表頭を用いてアンケートを行い、クロス集計をします。そしてその結果を用いて表側の要素と表頭の要素感の関係性をそれらの相関関係が最大になるように低次元空間のマップ上に散布図としてプロットして多変量解析を行います。その際に散布図の縦軸、横軸の意味を分析者が考える必要があります。

これによって企業のブランドイメージのポジショニングを明確化できます。

ポケットプライス分析

ポケットプライス分析とは

ポケットプライスは、本当の意味で企業がポケットに入れている価格と、内部コストまでも計算して本当にその取引からマージンが稼げているのかどうか、実態把握する分析手法です。

ポケットプライス分析の方法

分析方法としては、メーカーが商品をチャネルの多段階に渡って流通させている場合、まずそれぞれのステップで発生するリベート*やアローアンス**を商品ごと、顧客ごと、注文ごとに分析して実態を把握します。その後に不適切なプライシングをあぶり出してその発生理由を分析し、それを食い止めるための対策を講じます。

*リベート:メーカーや卸売業者などが商品の売上高や取引高など一定の条件をクリアした流通業者に対して支払う報酬

**アローアンス:販売店の販促活動を援護するために奨励金的な活動の総称

この分析によって収益改善と収益獲得を目標として、考えて売る仕組みと癖を営業に組み込むことができるようになります。

価格弾力性分析

価格弾力性の分析とは

価格弾力性分析は、価格の変化に対して需要量が変化する程度を経済的に測定した需要の価格弾力性(Price elasticity of demand、PED)を求める分析手法です。

価格弾力性とは、価格が変化した際に、どのくらい需要が変化するかを測定し、数値化したものです。

価格弾力性の分析方法

分析方法は2つあります。

1つ目は、アンケート調査やコンジョイント分析で価格弾力性を推察する方法です。

2つ目は、市場実験による方法です。メーカーであれば実際の店舗を数店実験的に経営することがあり、アンテナショップを経営している企業は数多くあります。いくつかのメーカーでは繋がりの強いチェーン店舗で価格変更による弾力性のテストや販売促進の実験させてもらい、小売りのFSPのデータを購入してリアルタイムでPDCAサイクルを回しています。また、ネットで実験的に顧客セグメント毎に異なる割引率を提示して反応を見ることも可能です。

需要の価格弾力性を知ることで、価格設定時や値下げ・割引戦略をとる際に活用できます。

まとめ

ここまで価格調査に関するいろいろな分析手法を紹介してきました。

しかし、分析者がアンケートをしてその結果から何を求めたいかによって使いたい分析は変わります。

目的によって分析を使い分けるのは難しさがありますので、価格調査に関してお悩みの事業者様は一度、プライシングスタジオにお問い合わせください。