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複数パッケージ価格モデルとは?メリット・デメリット・導入企業例【SaaS価格体系】

SaaSで広く取り入れられている複数パッケージの価格モデルについて、メリット・デメリット・事例を中心に解説していきます。

複数パッケージ価格モデル(Tiered pricing model)とは

複数パッケージ価格モデルは、SaaSにおける主流な価格体系であり、提供するサービス内容の違いにより2つ以上の価格帯が提供されているもののことを指します。

複数の価格帯で提供することで、複数の顧客セグメントに対してのニーズを満たすことが可能です。例えば、個人向けのサービスであれば、ユーザーの利用頻度や利用量、法人向けのサービスであれば、大企業か中小企業かで、セグメントごとに価値と合う価格で提供することができます。

複数パッケージ価格モデルには、「段階的なユーザーモデル(Tired user)」「段階的なストレージモデル(Tired storage)」「機能別モデル(Feature-based pricing)」の3つがあげられます。

複数パッケージ価格モデルのメリット

複数パッケージ価格モデルのメリットは次の2つです。

幅広い顧客ニーズに対応できる

幅広い顧客セグメントが存在する場合、プロダクトの全ての機能を必要としない顧客セグメントは多数存在します。そういったセグメントの顧客は、全ての機能は必要ないからもっと安くして欲しいと考えるはずです。それが原因で、検討サービスから外れることも多々あります。

複数パッケージ価格モデルは、顧客が必要としている機能のみを提供し、それにもあった価格プランを用意することが可能なため、幅広い顧客ニーズに対応できます。

利益増につながる

質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、単一価格しか存在しない場合、利益を出すことができない可能性があります。

一方複数パッケージ価格モデルは、提供する価値に見合った金額を受け取ることができることから、利益を増加させることが可能です。

複数パッケージ価格モデルのデメリット

複数パッケージ価格モデルのデメリットは次の2つです。

価格設定が難しい

複数の顧客セグメント毎の必要としている機能や人数を正確に予測し、適切に機能する価格設定をすることは困難を極めます。パッケージごとの機能や利用量が料金に見合っていない場合、失注や解約につながる恐れが高まります。

顧客の混乱を招く可能性がある

機能が複雑でパッケージ数が多すぎると、何にお金を支払っているか、料金が適切なのかの判断がつきにくくなります。顧客が理解しやすい内容で、多すぎない数のパッケージを用意する必要があります。

複数パッケージ価格モデルの注意点

複数パッケージ価格モデルでの価格戦略は、以下の2点が重要です。

LTVの最大化を考慮する

SaaSにおいてLTV(顧客生涯価値)を最大化させることは、最も大切な指標のうちの1つです。

例えば、利用ユーザー数に比例した課金パッケージを作ると、従業員規模が大きい企業ほどLTVは向上します。一方でユーザー数に応じた課金モデルにしても、企業内で1アカウントだけの利用で誰もが完結できるプロダクトではLTVは最大化されません。

そのため、価格を決める際には、LTVが上がる要素を特定し、それに合わせて課金モデルを作ることが大切です。

ネガティブチャーンを可能にする

「ネガティブチャーン」とは、解約によって減少した収益より、既存顧客のアップセルやクロスセルによって増加した収益が上回っている状態のことを指します。

SaaS企業が成長するためには、ネガティブチャーンを実現が欠かせません。チャーンレートを下げつつ、既存顧客からの収益獲得を可能にする要素を持った複数パッケージのモデルを作ることが重要です。

段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは

段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは、利用できるユーザー数の違いによって、価格を複数設定するモデルです。利用機能に違いを作りにくいが、1社で利用する人数が多いサービスで設定される場合が多いです。

段階的なユーザーモデルを導入している企業例

・Google Workspace

Google Workspaceでは、Meet 音声会議とビデオ会議の同時接続数によりプランを選択することが可能です。

段階的なストレージモデル(Tiered storage model) とは

段階的なストレージモデル(Tiered storage model)とは、利用できるストレージの量にもとづき、価格を複数設定するモデルです。

段階的なストレージモデルを導入している企業例

DirectCloud-BOX

DirectCloud-BOXでは、「100GB」「500GB」「3TB」「10TB」「30TB」と段階的にストレージが設定されています。

機能別モデル(Feature based model)とは

機能別モデル(Feature based pricing)とは、顧客が利用可能な機能に応じて、複数の料金プランを設定するモデルです。「顧客のペルソナ」と「必要とされる機能」の把握ができていると設定しやすく、使用できる機能の数が多くなるほど価格は高くなります。

機能別モデルを導入している企業例

・Slack

顧客の規模の大きさごとのニーズに適した機能が追加されていく、4段階のプランを提供しています。「フリー」は無料プランでslackを無期限で試してみたいチーム向け、「スタンダード」は中小規模の企業向け、「プラス」は大規模な企業や高度な管理ニーズを持っている企業向け、「Enterprise Grid」は規制業界や、非常に大規模で複雑な組織を持つ企業向けとわかれています。

まとめ

複数パッケージ価格モデルは2つ以上の料金プランを提供する価格体系です。

段階的ユーザーモデルはユーザーの人数ごとに異なるプラン、段階的ストレージモデルはストレージ容量の大きさごとに分けられているプラン、機能別モデルは利用できる機能の量、内容で分けられているプランです。

複数パッケージ価格モデルは収益向上が見込みやすい反面、価格決定の難易度が上がるというデメリットもあります。ただ、この価格体系は幅広い層に対応でき、収益向上できるという面から、多くの主流なSaaS企業が導入しています。

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単一価格モデルとは?メリット・デメリット・導入企業例【SaaS価格体系】

サービスを利用する時に1つのプランがある場合と複数のプランがある場合があるかと思います。
ここではSaaSの価格体系の中でも1つのプランを提供する単一価格モデルをご紹介します。

単一価格モデル(Flat rate pricing model)とは

単一価格モデル(Flat rate pricing model)とは、サービスに対して料金体系が1つであるサブスクリプションモデルです。

全てのユーザーに対して単一の製品・機能・価格を提供するため、SaaSの価格体系の中でも最もシンプルなものになります。例えば、ターゲットセグメントが画一的であったり、機能や価値が単一化されているシンプルなサービスで利用されます。

また、事業ニーズがあるかを仮説検証しやすいという観点から、PMFが優先されるシード(新規事業フェーズを含む)・アーリーステージなどで利用されることが多いです。

一方で、幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、SaaSの価格体系としてあまり多くは見受けられません。

今回は、単一価格モデルのメリット・デメリット・導入企業例を解説していきます。

単一価格モデルのメリット

単一価格モデルの最大のメリットは1つのサービスに対して、1つの価格体系というシンプルさから「サービス価値を顧客に伝えやすく売りやすい」ということがあげられます。

サービスを購買する顧客は、複数のプランがある場合よりも意思決定が容易です。このことから、新規顧客の獲得の増加にも繋がりやすくなっています。

また、サービスを紹介するLPやWebページ作成も容易になります。複数の価格プランがある場合、価格帯により見栄えも複雑になり、見にくくなってしまうことがあります。

それに対して、単一価格モデルの場合、顧客に伝えたいことは1つであり明確なため、サイト自体もシンプルな構成にすることが可能です。これは企業側の負担削減に繋がると同時に、顧客にとってもそのサービスに対する理解がしやすいという点から両者にとっての利点となります。

単一価格モデルのデメリット

次に単一価格モデルのデメリットを3つ挙げます。

幅広いユーザーのニーズに応えることが困難

1つのプランしか用意されていないがため、幅広いユーザーのニーズに応えることが困難になる場合があります。それにより、顧客の層を狭めてしまい本来獲得できていたはずの収益を逃す可能性があります。

また、BtoBサービスの場合でも、価格とサービスともに大企業と中小企業に対して同一です。規模の違う企業のニーズは大きく異なるため、両者にとって魅力的な価格設定は難しくなります。

売上の向上が困難

幅広いニーズに応えられないことで、売上の向上が困難になります。SaaS業界では、顧客のニーズに合わせて戦略・価値・価格を変化させていくことが重要です。しかし、単一価格モデルでは実現不可能になります。

コストリソースが顧客ごとに変動する場合、それに応じて対応できないのは収益を上げる際に大きな欠点です。柔軟な対応と変化に迅速に適応する能力は、SaaS業界においては必須となります。プランごとに顧客を惹きつけるような違いを出したり、柔軟な料金展開ができないことは顧客獲得において大きな弊害です。

また、複数プランがないことは、顧客の単価を向上させるために、顧客に対し高額な上位モデルに乗り換えてもらうアップセルを行うことができません

顧客に心理的弊害をもたらす場合がある

単一価格モデルは、プランの選択肢がないため、一部の顧客にとって包括的な扱いをされていると感じる可能性があります。このように顧客が感じてしまった場合、顧客は企業の提供するサービスを享受することはなくなります。

幅広い顧客ニーズを満たせない場合、顧客に対して心理的に不満を感じさせてしまいます。

単一価格モデルを導入している企業例

現在、単一価格モデルを導入している企業はほとんどありません。幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、柔軟性の欠如、アップセルを期待できないため収益拡大が困難な点が主な理由と言えるでしょう。

その中でも成功例として挙げられるのはBasecampという企業です。

Basecampでは、複数のアプリケーションの機能を、1つに集約したサービスを展開しています。
例えば、リアルタイムチャットの機能を持つSlack、やることリストを管理するAsana Premium、ファイルストレージを管理するDropbox、ドキュメント・カレンダー機能のあるGsuiteなどの機能が搭載されています。

これらのアプリケーションサービスを全て別々に購入した場合莫大な月額料金となりますが、これら全ての機能を月額99ドルでサービスを受けることができるのがBasecampです。

この企業の有料プランは単一価格モデルに該当します。月額99ドルで固定料金なため、追加費用は一切かかりません。月額99ドルというのは一見高額に見えますが、ユーザー数が増えても追加料金が発生しないということは、多くのユーザーを持つ大企業などは結果的にお得になります。月額料金以上支払うことなく無制限の数のユーザーを招待できるという点はこの企業のセールスポイントです。

また、この企業が成功した要因として様々なサービスの工夫が設けられています。
・1年間前払いすると15%の割引が適用
・30日間の無料トライアル期間
・非営利団体は10%の割引が適用
・教育(幼稚園から大学までの高校と教師)は無料で利用可能

これらの要因から、Basecampは単一価格モデルでも成功した事例となります。

まとめ

価格体系の1つである単一価格モデルは1つの価格を提供するモデルです。シンプルであるため、サービス内容を顧客に伝えやすく売りやすいというメリットがある反面、幅広いユーザーのニーズにこたえることが困難売上の向上が困難顧客に心理的弊害をもたらす可能性があるなど3つのデメリットがあります。

単一価格単体を導入している企業は数少なくその他の価格体系追加導入したり移行する企業が多いです。その理由としては、単一価格モデルは柔軟性に欠ける、収益向上できないということが一番の要因としてあげられるでしょう。

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消費者心理を理解したプライシング・価格設定のコツ

消費者心理を理解した価格設定をすることで、顧客に対して自社の思惑に近い状態で商品を購入してもらうことが可能です。

人間の心理を用いると、消費者がモノを購入する際に行われる意思決定に影響を与えられます。

その結果、効率的に顧客の購買意欲を引き出すことができ、結果的に企業の利益向上を実現できます。

この記事では、消費者心理を利用したプライシング・価格設定について5つ紹介します。

価値効果

価値効果とは、サービス・製品の詳細を文章や写真などを用い明確に顧客に提示することで、サービス・製品を購入した際の具体的な利点をイメージしやすくすることです。

具体的なイメージが湧くことで、顧客の購買意欲は高まります。例えば、Netflixなどの動画ストリーミングサービスの無料期間があげられます。無料期間は、無料で使えるというお得感だけでなく、実際に動画を視聴することで具体的に購入した後の体験が得られるため、無料期間以降の購買意欲を促すことが可能です。

結果として、無料期間を利用してもらうことで、企業の売上があがり、より多くの利益向上に繋がります。

センターステージ

センターステージとは3つの選択肢を与えられた時に、真ん中の選択肢が平均的であると捉え、それを選択するのが最も妥当であると考える消費者心理です。

例えば、コース料理やうな重を選択のときに、松竹梅の3つの値段がある場合、「竹」コースを選んでしまいがちになることです。

そのため、企業は選択させたい真ん中のコースの価格を調整し、利益率を上げることが可能です。

抱き合わせ

抱き合わせとは、ある商品を単品で購入するより、複数の商品をセットで購入すると安くなるように設定された価格です。

セット価格の方が消費者がお得感を感じることができるため、結果として客単価をあげることができ企業の利益に繋がります。

これはMicrosoftなどを例とすると、word・powerpoint・excelをセットで買った方がそれぞれを単品で購入するよりお得であることから顧客はセット価格を購入する傾向にあります。

アンカリング

アンカリングとは価格比較をする際に、はじめに提示された条件を基準として判断してしまう心理です。

消費者は、1番はじめに最も高いプランを見た後にそれよりも安いプランの存在を知ると、実質よりも安価な値段だと錯覚します。これにより、購入を促すことができます。

これは電化製品の希望小売価格を最初に提示して大幅な値引きを行うことによって安く感じることが例に挙げられます。

端数効果

端数効果とはキリの良い価格ではなく、端数にすることで価格差以上に安いイメージを植え付けることができる心理を利用した価格戦略です。

ガソリンスタンドの給油やスーパーで500円などキリのいい数字を提示するよりも498円などという端数を提示することによって購買意欲が上がります。

人間は498円は400円台で500円は500円台というイメージが構成されます。実質は1、2円しか変わらなくても顧客の体感は値段以上のものがあります。

まとめ

今回は価格設定に関わる消費者心理について紹介しました。

価値効果…商品・サービスの価値を知ってもらうことで、価格への理解を促進する効果
センターステージ…3つの選択肢がある場合に真ん中を選んでしまう心理
抱き合わせ…単品で売るよりもセット価格の方がお得に感じる心理
アンカリング…一番初めに提示された価格を基準として考える心理
端数効果…端数を価格に用いることによって実質は1.2円しか変わらなくても安く感じる心理

消費者心理を理解した上で価格設定することで、購買意欲を刺激でき、自社の商品・サービスをより多くの人に購入してもらうことが可能になります。