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キャプティブプライシングとは|ジレットのカミソリ事例からわかる価格戦略

カミソリ本体と替刃などの製品に用いられる主製品を低価格で、付属品を高価格で販売する価格戦略である「キャプティブプライシング」についてご紹介します。


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キャプティブプライシングとは

キャプティブプライシングとは、カミソリ本体と替刃のように「主製品を低価格に設定し、付属品を高価格に設定する価格戦略」のことです。

高い価格に設定した付属品を定期的に購入してもらうことで、長期的なスパンで収益を得られます。

キャプティブプライシングのメリット

キャプティブプライシングのメリットは、以下のことがあげられます。

購入してもらいやすい

キャプティブプライシングを行なっている製品は付属品で収益をあげるため、本体価格を安く抑えて購入してもらいやすくなります。

初期費用が安く、どんな人でも製品が手にとりやすいため、新規顧客を獲得することが可能です。

高いLTV(顧客生涯価値)を見込める

キャプティブプライシングのメリットとして、高いLTV(顧客生涯価値)を見込めることがあげられます。

LTV(顧客生涯価値)とは、顧客から一生のうちに得られる利益のことを指します。

キャプティブプライシングでは、セットとなる付属品を定期的に購入することを前提としているため、収益を長期的にあげられるようになり、結果として高いLTVが見込めます。

キャプティブプライシングのデメリット

キャプティブプライシングのデメリットは、以下のことがあげられます。

付属品の価格設定が困難

主製品と付属品とそれぞれの価格設定が必要となるだけでなく、付属品の継続的に購買につながる価格設定が必要です。

付属品が高価格すぎると継続的な購買にいたらず、売上の損失に繋がる可能性があります。

顧客の購買意識を維持させるのが困難

キャプティブプライシングは顧客がサービスを活用し付属品を長期的に購買し続けることで収益化に繋がります。そのため、継続的に購買をしている間に他社の類似製品と比較されがちです。付属品の商品価値を上げるなどの手段で顧客が価格に納得感を持ち続けるようにする必要があります。

キャプティンブプライシングの実際の例

カミソリ本体と替刃

カミソリ本体と替刃の関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

実際に、ジレットでは「消耗品モデル」という名前で、キャプティブプライシングを行っています。カミソリ本体の値段は抑え、付属品である替刃の部分の価格を高く設定するというビジネスモデルを確立したので、このようなモデルは「ジレットモデル」とも言われています。

プリンターとインク

プリンターとインクの関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

ここでは、エプソンのプリンターの例をご紹介します。エプソンのプリンター本体価格は、6,000円から20,000円の間が相場となっています。

印刷する際に必要なプリンターのインクは、純正のエプソンプリンター専用のインクを使用することが推奨されており、1セット6,000円で販売されています。

プリンター会社が作っていない互換インクだとより安く購入することができますが、エプソンのプリンター自体が専門のインクを指定しているので、インクから安定して収益を得ることが可能です。

コーヒーメーカーとカプセル

コーヒーメーカーとカプセルの関係もキャプティブプライシングの例としてあげられます。

主製品となるコーヒーメーカーは、比較的安い価格で販売している一方、コーヒーメーカーにいれるコーヒーカプセルを高い価格に設定することで利益を得られる仕組みになっています。

具体的な例として、ネスプレッソのコーヒーメーカーを見てみます。ネスプレッソのコーヒーメーカーは、12,000円から購入することができます。そこにいれるコーヒーカプセルは、1セット30カプセル約3,000円の値段がします。1日2回飲むとしたら、1ヶ月で6,000円12ヶ月で72,000円になります。付属のコーヒーカプセルを定期的に購入してもらうことでコーヒーメーカー以上の利益を出すことができます。

SaaS + a box

SaaS + a boxとは、近年話題になりつつある、最新のビジネスモデルです。ハードウェア製品に加えて、月額課金のオンラインサービス提供をすることで、満足度を高めることができるため、非常に注目が高まっています。

実は、このモデルは、キャプティブプライシングの例だと言えるのです。SaaS + a boxでは、ハードウェア製品を高い機能に対して比較的安く提供します。

lovotというサービスでは、ハードウェア自体は原価で販売する一方で、月額課金のオンラインサービスを提供し、収益をあげています。これは、キャプティブプライシングを利用しているといえるでしょう。

具体例としては、オンラインフィットネスのPelotonが挙げられます。現在アメリカで大流行しているサービスで、ランニングマシンやサイクリングマシンといったフィットネスマシンのハードウェアと、月額課金のレッスン動画などのフィットネスサービスを販売しています。

フィットネスマシンの効果を最大限発揮するには、月額課金のフィットネスサービスを利用する必要があるため、月額課金での安定した収益をあげられます。SaaS + a boxはキャプティブプライシングを使った画期的なビジネスモデルといえるでしょう。

まとめ

キャプティブプライシングとは、主製品を低価格に設定し、付属品を高価格に設定する価格戦略のことです。

主製品と付属品のビジネスモデルを確立した「ジレットモデル」を参考に、ネスカフェやネスプレッソなどのコーヒーメーカーの価格戦略が誕生したと言われています。このことから様々な製品に応用することができる価格戦略だということができるでしょう。

デメリットでも解説しましたが、主製品と付属品の価格の設定を適切に行うことが重要になってきます。キャプティブプライシングは、顧客の購買意欲を継続的に保つ価格で行うことが成功の鍵になってくるでしょう。

 

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効果的な割引戦略とは?セールによるマーケティングで失敗しない方法

企業が商品販売の促進のためのメジャーな手段として、割引の実施があげられます。アパレル店がシーズンオフに行うセールや、サブスクリプションサービスの導入に際しての特別割引プランもその1種です。この記事では、企業の割引戦略について解説します。


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企業が割引という戦略をとる意味

企業が、利益率をさげてまで割引を実行するのは、「顧客を動かすため」です。より商品を買ってもらいたい、より長くサービスに契約してもらいたい、などの思いから、割引を実行します。

そして、割引を実行することで、収益拡大や在庫消化などのメリットを得られるのです。

また、割引は活用次第で、安い価格で顧客にアプローチしできるうえに収益もキープしやすいという価値もあります。

値下げの場合、実施後にもとの価格に値上げすることが難しくなります。一方、割引の場合、期間が終われば、通常価格に自然と戻すことができるため、収益をキープさせやすいのです。

割引戦略のリスク

企業にとってメリットも大きい割引ですが、時にそれは企業にとって、以下のような悪い結果を及ぼすリスクがあります。

1.売上の低下

割引を行う際は、商品単位の利益を落としながらも、全体での売上増加を狙うことや、一時的に安くしてでも一度利用してもらい、そこから継続的な購買を狙うことが一般的です。

しかし、割引の度合いや対象を間違えると、販売数の増加などのメリットよりも、割引による利益率の低下が響いてしまい、収益に対して大きなダメージが与えられるリスクも持っています。

少なくとも短期的な利益率を犠牲にする割引戦略は、リスクをとる戦略であることは認識しないといけません。

2.ブランドに傷がつく

割引は、値下げにより価格帯を下げることなく安く販売する戦略ですが、それでもブランドに傷がつく可能性は存在します。

例えば、頻繁にセールを繰り返すアパレル店では、「こんなに値下げできるということは、原価から計算すると通常の価格で購入するのは損なのではないか」と思われることが考えられます。

このように、割引きをすることが、顧客に 「通常価格で買っては損になる」「売れない商品だから値引きされている」 といったマイナスなイメージを想起させてしまいます。

例えば、大手アパレル店では、40%割引を超えるセールを頻繁に打ち出した結果、インターネット上で「通常価格で購入するのは損なのではないか」「質が低いのではないか」というコメントが多く見られるようになることもありました。

実際に、ブランド毀損を恐れて、在庫を減らすために割引して売るということを避けている高級ブランドも多く存在します。

3.負担のみがかかる

割引戦略の中でも、一定期間のみ安くサービスを提供し、終了後通常価格での利用を開始する場合があります。この戦略は、割引期間で顧客をサービスのファンにすることで、顧客が通常価格でも支払うようになってもらうことが目標です。

しかし、それを達成することができなければ、企業に、無料期間の負担のみがかかることになります。特にサービスの原価が高いモデルの場合、低い利益率が大きな企業へのダメージとなり得ます。

また、割引によって購入行動を行ってくれる顧客は、機能に対してではなく価格によって選んだだけにすぎないため、競合企業の値下げによって簡単に目移りされやすく、サービスから離脱されやすい傾向にあるというデータも存在しています。

せっかく低い利益率で顧客を獲得しても、離脱されてしまっては収益に貢献されません。

割引を成功させるための戦略

割引を成功させるために活用できる戦略を6つ紹介いたします!

追加購入の経路設計

割引を用いることで、顧客の購入機会を作り、顧客との接点を持つことができます。その機会を活かすためには、他の商品の追加購入を促す経路を作ることが重要です。

例えば、キャプティブプライシングを用いて、他に必要な商品をセットで高価格で用意しておいてその購入につなげるなど、複数商品の購入につなげることができると割引の効果があったと言えるでしょう。

※キャプティブプライシング:主製品を低価格に設定し、必要な付属製品を高価格に設定する価格戦略。カミソリの本体を安く設定し、付け替え用の刃を高い価格設定する「ジレッドモデル」がその代表。
詳しくは

ボリュームディスカウントの設計

単純に割引をするのではなく、複数点商品を買った場合や、購入金額が一定の金額に達した場合に割引を適用するのがボリュームディスカウントです。

この場合、割引が適用される際に、利益が低くなるだけで終わらず、確実に高い売上を得ることができます。

長期契約割引

サブスクリプションビジネスでメジャーな割引戦略がこちらの長期契約割引です。

サブスクリプションビジネスでは、導入の際の金銭及び心理的なコストを削減するために、長期的な契約ではなく、月単位など短い期間での契約が多いです。しかし、長期間の契約を結べることは、確実な収益につながるため大きな価値があるため、積極的に長期間の契約は狙うべきなのです。

そこでよく取られている手法が、長期契約割引です。
「1年契約すると、2ヶ月分お得になる」などの、長期契約に対するお得な割引プランを用意することで、長期的な導入に顧客を誘導することができるのです。

実質割引

値段を引かずに割引で目指す効果を得る手法として、実質割引を紹介します。

実質割引とは、「今サービスを契約すると、3ヶ月間付属サービスが無料になる」のようなかたちで、値段を下げずに価値を無料で上乗せして、サービスを顧客にお得に提供する手法です。

実質割引は顧客にお得感を与え、今すぐの購入を促すうえに、付属サービスの契約更新も狙うことができます。また、単価が低くなってしまう割引と異なり、実質割引では、単価を一定確保したうえでの追加サービス提供となりますので、比較的にリスクの低い手法だと言えます。

割引数値の適正化

割引を行うにあたって、顧客の商品に対する支払意欲を把握することは欠かせません。当然、割引をしようと思う際は通常価格が、多くのターゲット顧客の支払意欲を下回っていることがほとんどです。

しかし、一体いくらなら購入してもらうのかを把握しないと、割引をしても販売数が増えなくなったり、無駄に安く販売することになったり、割引の効果が小さくなってしまいます。

そのため、顧客の支払意欲がどれほどなのか、いくら割引すると効果があるかを事前に予測しておくことが必要なのです。支払意欲を把握することには、「PSM分析」を行うことがオススメです。

ただ、小売店などで一斉割引をする際は、商品への支払意欲に応じた割引はできません。その際は、割引自体が顧客に「お得」だと認識させるような割引の数値設計が重要です。例えば、1000円前後の商品が多い店では、300円引きキャンペーンと広告するより、30%OFFと広告した方が、実際の割引額が変わらなくても顧客にお得な印象を与えられると思われます。

ブランドを低下させない打ち出し方

ブランドを低下させないように割引を打ち出すには、理由と紐づけることが重要です。アパレル店の年末セールや、SaaS企業が行っていた「新型コロナ支援キャンペーン」などがこれにあたります。

これらのように、不自然に感じないように、理由に紐づいた割引が行えると、ブランドを保った上で、安い価格で顧客にアプローチすることができます。

さらに、このように理由に基づいたキャンペーンの場合、ブランド低下を心配せずに思い切り広報することができるため、顧客にセールの情報を伝えやすく、セールが効果を発揮しやすいです。

まとめ

割引は、戦略次第で、ブランドを低下させず収益の拡大に繋げることができます。しかし、失敗するとブランドの低下と収益減退を引き起こす危険性も持ち合わせています。

ここで解説したような戦略を活用して、割引を効果的に行うことが重要です。

 

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複数パッケージ価格モデルとは?メリット・デメリット・導入企業例【SaaS価格体系】

SaaSで広く取り入れられている複数パッケージの価格モデルについて、メリット・デメリット・事例を中心に解説していきます。


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複数パッケージ価格モデル(Tiered pricing model)とは

複数パッケージ価格モデルは、SaaSにおける主流な価格体系であり、提供するサービス内容の違いにより2つ以上の価格帯が提供されているもののことを指します。

複数の価格帯で提供することで、複数の顧客セグメントに対してのニーズを満たすことが可能です。例えば、個人向けのサービスであれば、ユーザーの利用頻度や利用量、法人向けのサービスであれば、大企業か中小企業かで、セグメントごとに価値と合う価格で提供することができます。

複数パッケージ価格モデルには、「段階的なユーザーモデル(Tired user)」「段階的なストレージモデル(Tired storage)」「機能別モデル(Feature-based pricing)」の3つがあげられます。

複数パッケージ価格モデルのメリット

複数パッケージ価格モデルのメリットは次の2つです。

幅広い顧客ニーズに対応できる

幅広い顧客セグメントが存在する場合、プロダクトの全ての機能を必要としない顧客セグメントは多数存在します。そういったセグメントの顧客は、全ての機能は必要ないからもっと安くして欲しいと考えるはずです。それが原因で、検討サービスから外れることも多々あります。

複数パッケージ価格モデルは、顧客が必要としている機能のみを提供し、それにもあった価格プランを用意することが可能なため、幅広い顧客ニーズに対応できます。

利益増につながる

質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、単一価格しか存在しない場合、利益を出すことができない可能性があります。

一方複数パッケージ価格モデルは、提供する価値に見合った金額を受け取ることができることから、利益を増加させることが可能です。

複数パッケージ価格モデルのデメリット

複数パッケージ価格モデルのデメリットは次の2つです。

価格設定が難しい

複数の顧客セグメント毎の必要としている機能や人数を正確に予測し、適切に機能する価格設定をすることは困難を極めます。パッケージごとの機能や利用量が料金に見合っていない場合、失注や解約につながる恐れが高まります。

顧客の混乱を招く可能性がある

機能が複雑でパッケージ数が多すぎると、何にお金を支払っているか、料金が適切なのかの判断がつきにくくなります。顧客が理解しやすい内容で、多すぎない数のパッケージを用意する必要があります。

複数パッケージ価格モデルの注意点

複数パッケージ価格モデルでの価格戦略は、以下の2点が重要です。

LTVの最大化を考慮する

SaaSにおいてLTV(顧客生涯価値)を最大化させることは、最も大切な指標のうちの1つです。

例えば、利用ユーザー数に比例した課金パッケージを作ると、従業員規模が大きい企業ほどLTVは向上します。一方でユーザー数に応じた課金モデルにしても、企業内で1アカウントだけの利用で誰もが完結できるプロダクトではLTVは最大化されません。

そのため、価格を決める際には、LTVが上がる要素を特定し、それに合わせて課金モデルを作ることが大切です。

ネガティブチャーンを可能にする

「ネガティブチャーン」とは、解約によって減少した収益より、既存顧客のアップセルやクロスセルによって増加した収益が上回っている状態のことを指します。

SaaS企業が成長するためには、ネガティブチャーンを実現が欠かせません。チャーンレートを下げつつ、既存顧客からの収益獲得を可能にする要素を持った複数パッケージのモデルを作ることが重要です。

段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは

段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは、利用できるユーザー数の違いによって、価格を複数設定するモデルです。利用機能に違いを作りにくいが、1社で利用する人数が多いサービスで設定される場合が多いです。

段階的なユーザーモデルを導入している企業例

・Google Workspace

Google Workspaceでは、Meet 音声会議とビデオ会議の同時接続数によりプランを選択することが可能です。

段階的なストレージモデル(Tiered storage model) とは

段階的なストレージモデル(Tiered storage model)とは、利用できるストレージの量にもとづき、価格を複数設定するモデルです。

段階的なストレージモデルを導入している企業例

DirectCloud-BOX

DirectCloud-BOXでは、「100GB」「500GB」「3TB」「10TB」「30TB」と段階的にストレージが設定されています。

機能別モデル(Feature based model)とは

機能別モデル(Feature based pricing)とは、顧客が利用可能な機能に応じて、複数の料金プランを設定するモデルです。「顧客のペルソナ」と「必要とされる機能」の把握ができていると設定しやすく、使用できる機能の数が多くなるほど価格は高くなります。

機能別モデルを導入している企業例

・Slack

顧客の規模の大きさごとのニーズに適した機能が追加されていく、4段階のプランを提供しています。「フリー」は無料プランでslackを無期限で試してみたいチーム向け、「スタンダード」は中小規模の企業向け、「プラス」は大規模な企業や高度な管理ニーズを持っている企業向け、「Enterprise Grid」は規制業界や、非常に大規模で複雑な組織を持つ企業向けとわかれています。

まとめ

複数パッケージ価格モデルは2つ以上の料金プランを提供する価格体系です。

段階的ユーザーモデルはユーザーの人数ごとに異なるプラン、段階的ストレージモデルはストレージ容量の大きさごとに分けられているプラン、機能別モデルは利用できる機能の量、内容で分けられているプランです。

複数パッケージ価格モデルは収益向上が見込みやすい反面、価格決定の難易度が上がるというデメリットもあります。ただ、この価格体系は幅広い層に対応でき、収益向上できるという面から、多くの主流なSaaS企業が導入しています。

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単一価格モデルとは?メリット・デメリット・導入企業例【SaaS価格体系】

サービスを利用する時に1つのプランがある場合と複数のプランがある場合があるかと思います。
ここではSaaSの価格体系の中でも1つのプランを提供する単一価格モデルをご紹介します。


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単一価格モデル(Flat rate pricing model)とは

単一価格モデル(Flat rate pricing model)とは、サービスに対して料金体系が1つであるサブスクリプションモデルです。

全てのユーザーに対して単一の製品・機能・価格を提供するため、SaaSの価格体系の中でも最もシンプルなものになります。例えば、ターゲットセグメントが画一的であったり、機能や価値が単一化されているシンプルなサービスで利用されます。

また、事業ニーズがあるかを仮説検証しやすいという観点から、PMFが優先されるシード(新規事業フェーズを含む)・アーリーステージなどで利用されることが多いです。

一方で、幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、SaaSの価格体系としてあまり多くは見受けられません。

今回は、単一価格モデルのメリット・デメリット・導入企業例を解説していきます。

単一価格モデルのメリット

単一価格モデルの最大のメリットは1つのサービスに対して、1つの価格体系というシンプルさから「サービス価値を顧客に伝えやすく売りやすい」ということがあげられます。

サービスを購買する顧客は、複数のプランがある場合よりも意思決定が容易です。このことから、新規顧客の獲得の増加にも繋がりやすくなっています。

また、サービスを紹介するLPやWebページ作成も容易になります。複数の価格プランがある場合、価格帯により見栄えも複雑になり、見にくくなってしまうことがあります。

それに対して、単一価格モデルの場合、顧客に伝えたいことは1つであり明確なため、サイト自体もシンプルな構成にすることが可能です。これは企業側の負担削減に繋がると同時に、顧客にとってもそのサービスに対する理解がしやすいという点から両者にとっての利点となります。

単一価格モデルのデメリット

次に単一価格モデルのデメリットを3つ挙げます。

幅広いユーザーのニーズに応えることが困難

1つのプランしか用意されていないがため、幅広いユーザーのニーズに応えることが困難になる場合があります。それにより、顧客の層を狭めてしまい本来獲得できていたはずの収益を逃す可能性があります。

また、BtoBサービスの場合でも、価格とサービスともに大企業と中小企業に対して同一です。規模の違う企業のニーズは大きく異なるため、両者にとって魅力的な価格設定は難しくなります。

売上の向上が困難

幅広いニーズに応えられないことで、売上の向上が困難になります。SaaS業界では、顧客のニーズに合わせて戦略・価値・価格を変化させていくことが重要です。しかし、単一価格モデルでは実現不可能になります。

コストリソースが顧客ごとに変動する場合、それに応じて対応できないのは収益を上げる際に大きな欠点です。柔軟な対応と変化に迅速に適応する能力は、SaaS業界においては必須となります。プランごとに顧客を惹きつけるような違いを出したり、柔軟な料金展開ができないことは顧客獲得において大きな弊害です。

また、複数プランがないことは、顧客の単価を向上させるために、顧客に対し高額な上位モデルに乗り換えてもらうアップセルを行うことができません

顧客に心理的弊害をもたらす場合がある

単一価格モデルは、プランの選択肢がないため、一部の顧客にとって包括的な扱いをされていると感じる可能性があります。このように顧客が感じてしまった場合、顧客は企業の提供するサービスを享受することはなくなります。

幅広い顧客ニーズを満たせない場合、顧客に対して心理的に不満を感じさせてしまいます。

単一価格モデルを導入している企業例

現在、単一価格モデルを導入している企業はほとんどありません。幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、柔軟性の欠如、アップセルを期待できないため収益拡大が困難な点が主な理由と言えるでしょう。

その中でも成功例として挙げられるのはBasecampという企業です。

Basecampでは、複数のアプリケーションの機能を、1つに集約したサービスを展開しています。
例えば、リアルタイムチャットの機能を持つSlack、やることリストを管理するAsana Premium、ファイルストレージを管理するDropbox、ドキュメント・カレンダー機能のあるGsuiteなどの機能が搭載されています。

これらのアプリケーションサービスを全て別々に購入した場合莫大な月額料金となりますが、これら全ての機能を月額99ドルでサービスを受けることができるのがBasecampです。

この企業の有料プランは単一価格モデルに該当します。月額99ドルで固定料金なため、追加費用は一切かかりません。月額99ドルというのは一見高額に見えますが、ユーザー数が増えても追加料金が発生しないということは、多くのユーザーを持つ大企業などは結果的にお得になります。月額料金以上支払うことなく無制限の数のユーザーを招待できるという点はこの企業のセールスポイントです。

また、この企業が成功した要因として様々なサービスの工夫が設けられています。
・1年間前払いすると15%の割引が適用
・30日間の無料トライアル期間
・非営利団体は10%の割引が適用
・教育(幼稚園から大学までの高校と教師)は無料で利用可能

これらの要因から、Basecampは単一価格モデルでも成功した事例となります。

まとめ

価格体系の1つである単一価格モデルは1つの価格を提供するモデルです。シンプルであるため、サービス内容を顧客に伝えやすく売りやすいというメリットがある反面、幅広いユーザーのニーズにこたえることが困難売上の向上が困難顧客に心理的弊害をもたらす可能性があるなど3つのデメリットがあります。

単一価格単体を導入している企業は数少なくその他の価格体系追加導入したり移行する企業が多いです。その理由としては、単一価格モデルは柔軟性に欠ける、収益向上できないということが一番の要因としてあげられるでしょう。

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消費者心理を理解したプライシング・価格設定のコツ

消費者心理を理解した価格設定をすることで、顧客に対して自社の思惑に近い状態で商品を購入してもらうことが可能です。

人間の心理を用いると、消費者がモノを購入する際に行われる意思決定に影響を与えられます。

その結果、効率的に顧客の購買意欲を引き出すことができ、結果的に企業の利益向上を実現できます。

この記事では、消費者心理を利用したプライシング・価格設定について5つ紹介します。


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価値効果

価値効果とは、サービス・製品の詳細を文章や写真などを用い明確に顧客に提示することで、サービス・製品を購入した際の具体的な利点をイメージしやすくすることです。

具体的なイメージが湧くことで、顧客の購買意欲は高まります。例えば、Netflixなどの動画ストリーミングサービスの無料期間があげられます。無料期間は、無料で使えるというお得感だけでなく、実際に動画を視聴することで具体的に購入した後の体験が得られるため、無料期間以降の購買意欲を促すことが可能です。

結果として、無料期間を利用してもらうことで、企業の売上があがり、より多くの利益向上に繋がります。

センターステージ

センターステージとは3つの選択肢を与えられた時に、真ん中の選択肢が平均的であると捉え、それを選択するのが最も妥当であると考える消費者心理です。

例えば、コース料理やうな重を選択のときに、松竹梅の3つの値段がある場合、「竹」コースを選んでしまいがちになることです。

そのため、企業は選択させたい真ん中のコースの価格を調整し、利益率を上げることが可能です。

抱き合わせ

抱き合わせとは、ある商品を単品で購入するより、複数の商品をセットで購入すると安くなるように設定された価格です。

セット価格の方が消費者がお得感を感じることができるため、結果として客単価をあげることができ企業の利益に繋がります。

これはMicrosoftなどを例とすると、word・powerpoint・excelをセットで買った方がそれぞれを単品で購入するよりお得であることから顧客はセット価格を購入する傾向にあります。

アンカリング

アンカリングとは価格比較をする際に、はじめに提示された条件を基準として判断してしまう心理です。

消費者は、1番はじめに最も高いプランを見た後にそれよりも安いプランの存在を知ると、実質よりも安価な値段だと錯覚します。これにより、購入を促すことができます。

これは電化製品の希望小売価格を最初に提示して大幅な値引きを行うことによって安く感じることが例に挙げられます。

端数効果

端数効果とはキリの良い価格ではなく、端数にすることで価格差以上に安いイメージを植え付けることができる心理を利用した価格戦略です。

ガソリンスタンドの給油やスーパーで500円などキリのいい数字を提示するよりも498円などという端数を提示することによって購買意欲が上がります。

人間は498円は400円台で500円は500円台というイメージが構成されます。実質は1、2円しか変わらなくても顧客の体感は値段以上のものがあります。

まとめ

今回は価格設定に関わる消費者心理について紹介しました。

価値効果…商品・サービスの価値を知ってもらうことで、価格への理解を促進する効果
センターステージ…3つの選択肢がある場合に真ん中を選んでしまう心理
抱き合わせ…単品で売るよりもセット価格の方がお得に感じる心理
アンカリング…一番初めに提示された価格を基準として考える心理
端数効果…端数を価格に用いることによって実質は1.2円しか変わらなくても安く感じる心理

消費者心理を理解した上で価格設定することで、購買意欲を刺激でき、自社の商品・サービスをより多くの人に購入してもらうことが可能になります。

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値上げを成功させるプライシング戦略|事例から学ぶ効果的に売上を伸ばす考え方

事業者の皆様は普段値上げにどのように取り組まれているでしょうか?

値上げはうまく行えれば大きな効果をあげられますが、一歩間違えると大きな損失を巻き起こす可能性の高い諸刃の剣のようなものです。

この記事では「値上げ」を様々な方面から解説します。


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値上げ戦略の重要性

値上げ戦略を成功させた場合、想像以上のインパクトをもたらします。
1%の値上げを行い、顧客離れが起きなかった場合、最大12.8%の収益改善効果があると言われているのです。

しかし、値上げにはメリットがあることを承知でも、事業者にとって実際に実行するのは怖いものです。

単純に購買数が減るかもしれない…。
もしかしたら値上げの事実によって顧客からの印象が悪くなるかもしれない…。
なのに、どの商品を何円値上げすれば良いのかわかない…。

など様々な懸念点があげられると思います。

そんな値上げを成功させるためには、「顧客離れを防ぐ」ことが重要です。

そのため、企業は顧客離れを防ぐための値上げ戦略を考えなければいけません。

今回は値上げ戦略を3つ具体的なテクニック・事例とともに紹介します。

値上げを成功させる戦略1.支払意欲の把握

支払意欲の把握とは

消費者は、1つの製品に対して、「XX円までなら払える」という、いわゆる「支払意欲」を持っています。例えば、1つ牛丼があったとして、そこに対してターゲット顧客は390円までなら払って良いと思っている、のようなかたちです。

この支払意欲を理解することで、無駄に安く価格設定してしまうことや、高く設定しすぎて顧客が離れてしまうことを防げます。

「支払意欲の把握」の価格戦略

支払意欲を把握した場合、「支払意欲内での値付け」「安すぎる価格からの脱却」「価値の向上に応じた値上げ」という観点から、プライシングの決定が可能です。

1.支払意欲内での値付け

支払意欲を把握することで、適切な値上げが可能になります。
例として、10000人の顧客が牛丼を購入するときの支払意欲で解説します。

牛丼の価格(円) 支払意欲のある人数
(10,000人中)
合計売上(円)
case.1 350 9,200 3,220,000
case.2 390 9,000 3,510,000
case.3 400 7,000 2,800,000

上記の例の場合、支払意欲を把握することで、牛丼の価格が390円のときの「case2」が1番売上が最大になることがわかります。

仮に350円から390円という40円の値上げなら、ほとんど顧客離れが起きずに、100人あたりの売上も3000円近く上昇します。一方、400円まで値上げをすると、極端に支払意欲のある人数が減少するために、売上を下げてしまう恐れがあるのも事実です。「case2」と「case3」では10円の差しかないにも関わらず、売上が大幅に変わってしまいます。

値上げを実施する前に、顧客の支払意欲を事前に把握しておくことで、値上げ幅を確定させて大きな利益があげられます。

2.安すぎる価格からの脱却

顧客の支払意欲は、実は安ければ安いほど高まるわけではありません。実際に複数の分析結果から、顧客にとって「安すぎて買うのをためらう価格」があることがわかっています。

例えば、牛丼の料金が80円で販売されていたらどうでしょうか?もし、品質や業態が他で販売されているものと同じであったとしても、価格が安すぎて、怪しさを感じると思います。

そのため、価格を安くしすぎた結果、顧客の購買意欲を削がないようにしなければなりません。

3.価値の向上に応じた値上げ

商品が同じでも、顧客の支払意欲は不変ではなく、時間とともに変化することがあります。

例えば、SaaSなどのサブスクリプションサービスの場合、新しい機能やコンテンツの追加をした際に、顧客の支払意欲が変動します。

機能・コンテンツの追加が利用者にとって魅力的な改善だと、顧客の支払意欲は向上します。そのタイミングで支払意欲を分析し向上していれば値上げを成功させられるチャンスです。

「支払意欲の把握」事例:東京ディズニーランド

東京ディズニーランドのチケット価格は、なんと開園以来13回もの値上げがされてきました。しかし、ディズニーランドが値上がりしても、来場者数は減ることはなく、むしろ増加しています。

これは、ディズニーランドがその時々の来場者の支払意欲を把握し、それに応じて値上げをした結果です。度重なるコンテンツの追加や、人気の向上は、来場者の支払意欲を高め、そしてディズニーは顧客の支払意欲を把握して値上げを実施しています。

値上げを成功させる戦略2.安値と高値の共存

安値と高値の共存とは

安値と高値の共存とは、値下げと値上げをともに実施する価格戦略です。

値上げによる顧客離れは、単純に「高すぎて検討に乗らない」と感じさせてしまった時だけではなく、「手は出るが価格が不当に高い」と感じられた時にもおきます。つまり、支払う意欲があったとしても、値上げという行為自体が不誠実に捉えられる時があるのです。

ここで紹介する戦略が、そう感じさせないための「安値と高値の共存」です。

値上げをしても顧客のマイナスな感情を引き起こさないためには、値上げだけではなく、値下げも織り交ぜることで、顧客にとっての不利益を感じさせないことが重要なのです。

「安値と高値の共存」の価格戦略

1.顧客の気持ちに寄り添うプライシング

値上げを実施するときに、顧客のマイナスな感情を引き起こさないために、商品Aの値上げと商品Bの値下げを両方実施します。そうすることで、単純な値段引き上げではなく、「価格変更」という印象を顧客に与えることが可能です。

2.キャプティブプライシングの応用

キャプティブプライシングとは、メイン製品を低価格で、付属製品を高価格で販売する価格戦略です。この戦略を応用することで、一部の商品の値上げを成功させ、収益拡大が見込めます。

例えば、カミソリなどの商品は、本体の値段を下げ、何度も購入される刃の値段を上げる価格戦略が行われています。
長期的に買われる付属品を値上げしつつも、本体の値段を下げて購入を促進することで、通常の販売方法より長期的に高い収益が見込めます。さらに、この形式でも「安値と高値の共存」が実施できており、顧客が値上げを不当だと感じにくく、顧客離れが起きにくいのです。

3.ダイナミックプライシングの応用

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。主に需給の変動に合わせて価格変更を行うかたちで活用されており、企業の収益最大化や混雑緩和など、多くの価値を発揮しています。

ダイナミックプライシングを用いると、需要が高い時に価格を上げることで利益率をあげ、一方需要が低い時は価格を下げることで顧客の不信感は抑えられます。つまり、これは時による需要変動を利用した、「安値と高値の共存」です。

さらに、ダイナミックプライシングは、需要によって価格を変更するため、混雑緩和や在庫処分などの恩恵も受けられます。

ダイナミックプライシングについては詳しくこちらで解説しています。

「安値と高値の共存」事例:JR東日本

JR東日本は、コロナ禍によって収益に大きな打撃を受けた企業です。2020年の4月から6月の売り上げは、前年度比2640億円も落ちてしまっていました。

そんな中、収益改善のための値上げを実施しましたが、そこでJRはダイナミックプライシングを検討していることを発表しました。ラッシュ時の価格をあげるだけでなく、混雑しない時間帯の価格を下げることで、人々から反感を持たれずに値上げすることを可能にしています。

値上げを成功させる戦略3.適切な値上げのお知らせ

適切な値上げのお知らせとは

適切な値上げのお知らせとは、値上げの伝え方を工夫する戦略です。

ここまで解説してきた値上げ自体を工夫する方法もありますが、適切な値上げのお知らせも重要になります。

商品値上げをした際の取引先への文章や、世間に対しての説明を真摯に行うだけでも、値上げに対する印象は変わります。

適切なお知らせでの戦略

1.メールでの値上げのお知らせ

メールでの値上げのお知らせは、工夫次第で顧客の印象を高く保つことができます。

まず、心得として、早い通知を心がけましょう。出来る限り前もって通知することで、誠実な印象を与えられます。

ここに、値上げのお知らせの際に必要な項目をまとめました。ぜひご参考になさってください。

値上げ取引先をメールでメールで記載すべき項目

  • 値上げを実施する旨
  • 値上げの対象商品
  • 値上げ開始の日程
  • 値上げ前の価格と値上げ後の価格
  • 値上げに対する考え方の表明(必要に応じた謝罪)
  • 継続しての利用のお願い

2.営業チームへの値上げの浸透

値上げを直接対面で通知してやりとりをする営業チームとの協力は、「適切な値上げのお知らせ」のために重要です。

しかし、実際に販売数の増加が目的であることの多い営業チームは、値上げを嫌うこともあります。実際に売りにくくなる他、取引を行っている企業との関係悪化をもたらす危険性があるため、値上げに反感を持たれるかも知れません。

そのため、実際に営業を行う彼らに、値上げの必要性や、競合と比較した時の値段感、値上げの背景を強く理解しもらい、心から共感してもらうことが重要です。

「適切な値上げのお知らせ」事例:ともえ庵

ともえ庵は都内のたいやき屋です。

2018年1月に、定番商品のたいやきの価格を150円から180円に値上げを発表し、2月に実施したところ売り上げ増加を達成しました。

この価格変更の際にともえ庵は、ブログ上で、値上げの背景や値上げが必要な理由、値上げに関するお詫びなどを長文で行ったのです。顧客に対する真摯な態度が成功の秘訣の1つと言えます。このように値上げのお知らせを工夫することで、顧客離れを防ぐ方法もあります。

参考:エンタメウィークたいやき「ともえ庵」ブログ

まとめ

「値上げ」は大きなインパクトをもたらす一方、「顧客離れ」のリスクを持ちます。この記事では、そんなリスクを回避することで値上げを成功させる戦略を3つ紹介してきました。

しかし、値上げに関しては実際の実行に際して専門家の協力が必要になることは多くあります。値上げや価格に関してお悩みでしたら、ご気軽に一度プライスハックにご相談ください。

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スキミングプライシング(上層吸収価格)とは|iPhoneの事例からわかる価格戦略

この記事では、スキミングプライシングについてご紹介します。「スキミング」という言葉を聞くと、カードの情報を読み取って不正に使用することだと思っている人もいるかもしれません。

ですが、スキミングプライシングとは、価格設定における戦略の1つであり、不正利用とは全く別の概念になります。スキミングプライシングについて、メリットやデメリット、注意点などを分かりやすく解説します。


プライシングスプリント

スキミングプライシングとは

スキミングプライシングとは、「初期段階の製品を高価格に設定し、早期に投資資金を回収する価格戦略」です。

スキミングプライシングは、活用次第では製品をマーケットに浸透させることができます。スキミングプライシングを行い、マーケットに浸透させていくまでの流れの一例をご紹介します。

ステップ1:新しい製品を早期から受け入れてくれる顧客を探す。
ステップ2:顧客からフィードバックをもらい、製品の改善する。
ステップ3:徐々に価格を低下させ、ターゲットを拡大する。
ステップ4:ターゲットを全市場に拡大する。

ステップ1:新しい製品を早期から受け入れてくれる顧客を探す

ステップ1の顧客とは、高価格でも買ってくれる層のことを指します。新しい製品に早期の段階から興味を持ち、受け入れてくれる人をターゲットにすることがポイントです。

このような顧客は市場での割合は少ないですが、固定化することが出来れば早期に投資資金の回収が可能になります。

ステップ2:顧客からフィードバックをもらい、改善する

早い段階から受け入れてくれている顧客から評価を聞くことでより良い製品に改善することができます。

ステップ2では、価格と製品の質の満足度をあげた上で市場を拡大することを視野に入れて行動します。この段階をいかに効率的に進行できるかによって、競合の参入を防げます。

ステップ3:徐々に価格を低下させ、ターゲットを拡大する

より良い製品に改善した後、徐々に価格を低下させることで、ターゲットを拡大します。

ステップ3でターゲットとする顧客は、製品を購買するかの意思決定に関しては慎重でありながらも新しい製品への関心が高い層です。

このような顧客は、口コミを信頼材料としているケースが多いため、早期から自社の製品を使用している顧客の評価をより一層重視する必要があります。

ステップ4:ターゲットを全市場に拡大する

ターゲットを全市場に拡大するためには、製品が市場においてどの程度一般化されているかが重要になります。

全市場をターゲットにする場合、周囲を見て判断する顧客や保守的な顧客も入ってきます。信頼性の面でもステップ3の基盤を固められているかにかかっています。そのため、ターゲットを全市場に拡大する前に、ターゲットの中でどれだけ一般化できているかを確認する作業を行った方が良いでしょう。

スキミングプライシングのメリット

スキミングプライシングには、3つのメリットがあります。

1.資金の早期回収ができる

早期段階で顧客を獲得することで、顧客に企業側の希望する価格を提示することが可能です。そのため、早期の段階から高い収益をあげられ、研究費や宣伝費を早期に回収できます。さらに資金の早期回収をすることで、開発した製品の改善のための費用も確保できます。

2.ブランドイメージを確立することができる

顧客に初期段階で高価格な製品に興味を持ってもらうには、顧客側の立場になって考えてみることが必要です。高価格でも購入する製品は、分野において革新的な特性を持つことがあげられます。ステータスを求める顧客に対して、最先端の製品を高価格で提供することで、製品のブランディングに役立ちます。

3.ターゲットを拡大できる

早期の段階で新製品の顧客を獲得しておくことで、口コミによって実際に広い顧客層に対して宣伝することが可能になります。関心がある顧客だけでなく、興味を持っていない顧客層までを最終的に狙うことができるというのがスキミングプライシングの強みです。製品の機能や価格の面でどの層にも受け入れられる製品に仕上げることが必要になってきます。

スキミングプライシングのデメリット

一見、メリットが多い印象のスキミングプライシングですが、デメリットもあります。

競合が参入しやすい

スキミングプライシングにより、革新的な新製品を高価格で販売することに成功すると、競合が安い価格で参入してくる可能性が高いです。

スキミングプライシングの特徴として、初期段階からの支持層の評価にもとづいて、改善を行うことがあげられていました。より良い製品を提供できるようになる反面、より多くのターゲット層に浸透するまでに時間がかかるため、競合の参入を許してしまいがちになってしまいます。

代替商品が世に出回ると、顧客が選べる選択肢が増え、どうしても高い値段では買われにくくなってしまうことが問題点としてあげられます。そうならないために、類似品が出る前に独占的な利益を獲得する必要があります。

スキミングプライシングの注意点

メリットとデメリットを理解した所で、スキミングプライシングを導入する際に注意しなければいけないことについてご紹介したいと思います。

1.高い価格に見合う製品の質が求められる

スキミングプライシングでは、製品に高い価格を設定することになります。それにより独自のブランドを築くことができますが、それには初期段階での価格と製品の質が釣り合っていることが非常に重要です。

仮に製品の質が見合わないまま製品の価格だけを高く設定しても、顧客から信頼されるブランドは築けない上に、初期段階での顧客の集客は見込めません。そのため、まだ市場に競合がいない製品や分野において革新的な特性を持つ製品でないと、スキミングプライシングを行うのは難しいでしょう。

2.価格弾力性が大きい製品では難しい

スキミングプライシングを価格弾力性が大きい製品で活用することは非常に難しくなります。

価格弾力性とは、価格の変動によって製品の需要と供給が変化する度合いのことを言います。価格弾力性が小さい製品では、商品価格の差が購買意欲にあまり影響をおよぼしません。製品の価格を高く設定しても、高い製品価値を生み出すことができれば顧客に選んでもらえます。一方で、価格弾力性が大きい製品を高い価格に設定してしまうと、低価格で提供する競合に勝つことは難しいです。

スキミングプライシングと事業領域

スキミングプライシングの応用をしているのが、アップル社のiPhoneです。アップル社は、iPhoneを売り出す際にブランドイメージを重要視しました。

ブランドイメージを確立するため価格を高価格に設定することで、確固たるブランドイメージを植え付けるだけでなく、高価格の製品を早い段階から受け入れてくれる顧客の興味を引くことに成功しました。

それと同時に発売前からiPhoneの宣伝を積極的に行なうことで発売予定日が決まる頃には、顧客のiPhoneに対する関心を最大限まで高めました。当時の携帯電話よりiPhoneがどれだけ優れているかを比較するという手段を使うことで、価格と質の釣り合いも証明することが出来ました。

アップルの応用例をみても、スキミングプライシングは、特にハイテク産業と相性が良いと言えます。常に最先端を追求され、そのために莫大な資金を必要とする事業が向いていると考えられます。

まとめ

スキミングプライシングとは、初期段階の製品を高価格に設定し、早期に事業の投資資金を回収する価格戦略です。

主に初期段階の価格戦略であるため、導入後の戦略は様々です。スキミングプライシングの例として取り上げたアップル社は、その後も価格を変えずに市場を伸ばしています。

一方で、スキミングプライシングの流れの中で紹介した様にターゲット層を広げるために低価格にしていく価格戦略も考えられます。

「初期段階の製品を高価格に設定し、早期に投資資金を回収する」という本来の目的を達成するためには、初期段階での顧客の存在なしにはなし得ません。初期段階での顧客によって、その後の市場のターゲット層や価格が変わってくると考えられます。企業ごとにターゲットとしたい層を確認しながら、市場を広めることが必要になってくるでしょう。