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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングの国内外の10の事例を解説

ダイナミックプライシングは、近年様々な業界で導入されています。この記事では、導入事例のある10の業界を取り上げ解説します。

【ダイナミックプライシング ニュース(2020年12月22日更新)】
「東京ディズニーランド・ディズニーシー」を運営するオリエンタルランドは、入場チケットのダイナミックプライシングを導入することを発表しました。2021年3月20日以降の入園チケットが対象です。入場チケットのダイナミックプライシングの導入は、時期による入園者数の変化などに対応するため、混雑緩和などを狙いとした導入と公表されています。

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。価格変更させることで、企業の収益を最大化させることや混雑を緩和させることが可能になります。

人々の需要が増加している商品や、供給不足な商品に対しては、価格を上げて利益を最大化します。一方、人々の需要が縮小している商品や、供給過多な商品に対しては、価格を下げることで、販売数を増やします

そんなダイナミックプライシングは、近年ますます多くの業界で導入されており、私たちの日常生活にも影響を与えています。この記事では、国内外の企業がダイナミックプライシングを導入した事例やその業界におけるダイナミックプライシングのサービスの提供事例をまとめています。

事例1.スキー場

スキー ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングを導入しているヨーロッパのスキー場の数は、2018年から2020年にかけて3倍に増加しています。導入した狙いは、

(1)収益の最大化、(2)早期予約する利用者の増加、(3)長期利用の顧客増加の3つです。

(1)収益の最大化
需要が集中する期間に値上げをして利益を増加させ、一方需要がない時間に値下げをして顧客を増加させることで、収益の最大化を図っています。

(2)早期予約数の増加
チケット価格を左右する変数として「実際にスキー場を訪れる日付」だけではなく「予約を行うタイミング」も取り入れて、早期予約の価格を低くする手法を取ることで達成を目指しています。

(3)長期利用の顧客増加突発的な予約で来場する人も早期予約の方が滞在日数が長い傾向にあります。そのため早期予約者数が増加すると長期利用の顧客が増加する結果となり得ます。

また、スキー場で扱われているプライシングモデルは3つのパターンがあります。

①天気に応じた割引モデル
天気予報に基づいて段階的な割引を顧客に提供することで、需要の減退が予測される天気の悪い日の集客を増やす施策です。

②予約時期に応じた割引モデル
予約が早ければ早いほどチケットが安くなる仕組みです。

③複合的な需要予測に基づく価格調整モデル
履歴データ、予約時間、季節、休暇期間をもとに需要予測を行い、それに合わせて値段を変動させる仕組みです。

現在はヨーロッパでのケースが主ですが、今後国内のスキー場でも導入されていくと考えられます。

事例2.配車サービス

配車サービス ダイナミックプライシング

移動手段として、個人の車やタクシーをその場に呼ぶことができる配車サービスでもダイナミックプライシングは広がっています。

アメリカの配車サービスUberは、個人がタクシーとして乗客を乗せることができるサービスです。乗客は行き先をアプリで入力し、近くにいるドライバーとマッチングする仕組みなのですが、マッチング時に提示される運賃がダイナミックプライシングによって調整されています。

需要が高い地域に適切に即座にドライバーを派遣するため、需要が高い地域の価格(=ドライバーにとっての収入)を高く設定することで、ドライバーが該当する地域に赴くインセンティブを作ることが可能です。それにより高い需要に応える供給を提供することができ、Uberの利益の最大化にも繋がります。

一方、乗客視点から見ると、需要が高い地域では値段も高いため、需要が低い(=ドライバーの供給が足りている)地域に移動して配車を行います。そのため需要過多の地域での需要が抑えられ、供給とのバランスが取れるのです。

ちなみに、Uberのダイナミックプライシングは、「surge pricing」という名称で、価格変更は需要が多くなった場合のみ(=値上げのみ)です。Uberはサービス供給者であるドライバーが自社社員ではなく第三者であるために、強制力を持って需要の多い地域に向かわせることができません。

そのため、それでもドライバーを動かそうと思うと、金銭的な報酬が上がるという動機付けが必要になってきます。Uberのダイナミックプライシングは値上げのみですが、自社の営利目的だけでなく、乗客のもとに十分な数のドライバーを届けるという、顧客利益もあるため、一定の納得感が得られています。

事例3.民泊サービス

民泊サービス ダイナミックプライシング

個人が所有する物件などをを宿泊施設として貸し出す民泊サービスでも、ダイナミックプライシングの導入は進んでいます。例として、ここ数年日本でも盛んに利用されているAirbnbが挙げられます。

Airbnbでは、宿泊施設のホストが自分で部屋の値段を決めることが可能です。しかし、宿泊施設の経営については素人であろうホストが、適切なプライシングを行うことは簡単ではありません。

そのためAirbnbでは、以下のような条件をもとに、最適価格を推奨するサービスが用意されています。

最適価格の提案の変数

  • 残り時間: チェックイン日が近づくにつれ、料金は安くなります
  • エリアの人気度: エリア全体の検索数が増えるにつれ、料金は高くなります
  • シーズン: 繁忙期や閑散期によって、料金が変わります
  • リスティングの人気度: ビュー数と予約が増えるにつれ、料金は高くなります
  • リスティングの記載情報: Wi-Fiなどのアメニティ·設備を増やすと、料金は高くなります
  • 予約履歴: 予約が入ると、成約段階の料金もその後の料金に影響を与えます。たとえばスマートプライシングの推奨料金より高い料金を手動で設定し、それで予約が入った場合には、アルゴリズムはそこから学習し、推奨料金に反映していきます。
  • レビュー履歴: 高評価レビューが増えるにつれ、料金は高くなります

参考:Airbnb「スマートプライシング」のメカニズム

事例4.駐車場

駐車場 ダイナミックプライシング

駐車場のダイナミックプライシングは、現在日本でも、海外でも導入が進んでいます。

PerfectPriceという企業では、空港駐車場におけるダイナミックプライシングが行われています。空港向けにのaaS「PerfectPrice」のサービスと空港の自社のデータを活用し、駐車場の需要の変化を予測し最適価格を導くことが可能です。

国内のCtoC駐車場予約サービスakippaでは、駐車場の近くでのイベントの有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定されています。

事例5.レンタカー

レンタカー ダイナミックプライシング

レンタカーのダイナミックプライシングは、ここ数年、大きな盛り上がりを見せた業界です。ダイナミックプライシングを利用するレンタカー業者や、ダイナミックプライシングを搭載したレンタカー管理プラットフォームが、国内外で生まれています。さらに、海外ではレンタカーのダイナミックプライシングを監視し、安くなったタイミングで消費者に知らせるウェブサイトが存在するほど広がっているのです。

ダイナミックプライシング導入以前から収益向上化のために、国外を中心にレンタカー業者は価格調査と徹底的な分析が行われていましたが、コストの高さが目立っていました。ただ近年におけるビックデータやAIの発達により、その時々の需要を予測し、リアルタイムに価格を設定し直すダイナミックプライシングが可能になったため、価格調査を行っていた頃よりも低いコストで高い収益拡大を実現することができるようになりました。

レンタカーのダイナミックプライシングは、企業が持つ販売実績などのデータや、時間・天気・周辺地域でのイベントの有無などの、商品の需要予測に扱える外部データをもとにその時の需要の大きさを予測します。また、そこに競合他社の情報を加えて、最大の収益が期待できる値段になるように常時価格を変動させる仕組みも使われています。

事例6.映画館

映画館 ダイナミックプライシング

映画館では昔から、需要が少なくなる曜日の値段を安くする取り組みが行われていたが、近年ダイナミックプライシングというかたちで価格変動を実施する企業が海外で増えてきています。その背景として、Netflixなどのビデオストリーミングサービスが普及したことで、映画館は価格戦略の再考を求められている点が挙げられます。

映画館は、座席数(=1度にサービスを供給できる量)が決まっている上、需要の変動が時間に応じて起きるため、ダイナミックプライシングとの親和性が高い領域と言えます。飛行機などに活用されるアルゴリズムを転用しやすいのです。

映画館がダイナミックプライシングを導入する場合は、ビックデータを元に需要予測を行い、予測される需要と映画館の容量に応じた値段に設定する、アルゴリズムが導入されている場合がほとんどです。

しかし、映画の料金に合わせてドリンクなどの値段も値上げしたところ、ダイナミックプライシングの名を借りた値上げだと批判を受けた映画館もあるようです。ダイナミックプライシングを導入する際は、その導入理由や変動要因を顧客に伝える、透明性の高さが求められるでしょう。

導入企業が気をつけるべきことについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。


参考:『ダイヤモンドオンライン』映画やライブの「価格変動制」が話題

事例7.ライブ

ライブ ダイナミックプライシング

音楽ライブでのダイナミックプライシングは、昨年11月の音楽イベント「Yahoo!チケット EXPERIENCE VOL.1」にて日本で国内で初めて導入され、国内で話題になりました。

導入の最大の目的は、収益の最大化です。需要が多い場合、高価格で販売し利益を最大化し、一方需要が少ない場合、値下げして販売数を促進し、客数を最大化することを、AIを用いて行います。

同じ条件のライブが定期的に開催されることは少ないため、機械学習を導入する際に準備データが不十分となるリスクがあるものの、アーティストの収益改善に必要な施策として今後も導入は拡大していくと考えられます。

今後のライブ業界でのダイナミックプライシングは、大規模会場での活用から導入が拡大していくと予測できます。当然のことながら、アーティストによる大規模なライブイベントでないと導入は金銭的に難しいことも理由としては挙げられます。

ライブでのプライシングは、値上げ以上に値下げとの相性が良くなります。なぜなら、スポーツチケットや航空券の場合と同じく、在庫が余るリスクがあり値下げしてでも会場を満席にすることが利益につながりやすいためです。また、安くしてでも客数を増やすことは、それによって参加した顧客をファンにすることができる可能性があるうえ、アーティストのブランディングにおいて重要な、動員数ブランドの獲得につながります。また、顧客から不満が出るのは値上げのタイミングなので、業界内で利用されてまもないダイナミックプライシングは、値下げメインの方が受け入れられやすいです。そのため、その値下げを有効活用できる大規模会場を中心に導入は拡大していくでしょう。

事例8.オフライン小売

家電量販店 ダイナミックプライシング

EC小売業界もダイナミックプライシングが早くに導入された業界です。ここ数年はオフライン小売でも導入が拡大しております。電子タグとも呼ばれる、電子棚札の利用拡大により、日本国内でも大手家電量販店のノジマやビックカメラがダイナミックプライシングでの値付けを始めました。また、コンビニエンスストアのローソンでも、商品の賞味期限を基準に価格を変動させるダイナミックプライシングの導入実験が行われています。

もともとオフライン小売業界は、Amazonなどオンライン小売店やオフライン小売店同士の激しい競争環境のため、価格変更を頻繁に行う必要がありました。しかし、値札の張り替えを手動で行うことは、扱う商品点数が多い大手小売店において、非常にコストがかかるものでした。そこで電子棚札の実用化に伴い、ダイナミックプライシングの導入が拡大し、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストに行えるようになりました。

参考:『mbaSwitch』小売店でも始まるダイナミックプライシング

オフライン小売のダイナミック事例として、こちらでビックカメラの事例を紹介しています。

事例9.遊園地

遊園地 ダイナミックプライシング

国内でダイナミックプライシングを導入した遊園地の事例として、ユニバーサルスタジオジャパンが挙げられます。ユニバーサルスタジオジャパンでは、2019年1月から3種類の価格を、時期や曜日によって分けて提供する価格体系を始めました。現在はまだ細かい価格変更は行っていませんが、徐々にさらにダイナミックに価格を変えるようにすることも検討しているようです。

遊園地は繁忙期と閑散期の需要差が大きいため、繁忙期のチケットは高い値段で販売し利益を上げ、閑散期のチケットは安い値段で販売することで販売量を増やし、収益を最大化することができます。遊園地は基本的に同じサービスを顧客に提供する業態であり、繁忙期と閑散期という形で需要の変動を予測することができるため、適正価格の算出が比較的容易なのです。

しかし、今後さらに細かく動的なダイナミックプライシングを行っていくのならば、天気や近隣のイベントの有無など、需要を予測する変数を増やしていくことも必要になると考えられます。実際に、海外の遊園地向けダイナミックプライシングを提供しているSMART PRICERは、天気などの変数も加味してプライシングを行っているようです。

参考:『日経トレンド』USJが始めた「価格変動制」の裏側

こちらの記事では、ダイナミックプライシングによる混雑緩和の例として、遊園地業界を解説しています。

事例10.化学工業

化学工業 ダイナミックプライシング

様々な製品の原料を作る化学工業でもダイナミックプライシングが導入されているケースがあります。化学工業で作成する商品の原料のもととなる化学品の価格は、基礎となる原油価格や需給バランスの変化によって変動することが多いです。
そのため、それらを自動で行えるダイナミックプライシングの導入が近年一部の会社で行われ始めています。化学工業は、あまりプライシングを工夫してこなかった業界であるため、収益性を高める有用な手段として注目されています。

ダイナミックプライシング化学工業データ

「ベイン・アンド・カンパニー」の調査によると、非常に高いパフォーマンスをあげている化学工業会社の50%がダイナミックプライシングを導入しています。80%は競合他社の価格の監視を行っているようで、化学工業におけるダイナミックプライシングの有用性がわかります。

参考:『ベイン・アンド・カンパニー』The Formula for Better Pricing in Chemicals

メジャーな業界事例

この記事では、貴重なダイナミックプライシングの事例をまとめました。
よりメジャーな事例である、EC小売、スポーツ、飲食店といった業界でのダイナミックプライシング導入事例は、以下の記事に専門的にまとめてあります。ぜひご覧ください!

EC小売

スポーツ

飲食店

高速道路、遊園地、銭湯

まとめ

ダイナミックプライシングは近年様々な業界で導入され始めています。イールドマネジメントという形で適用できる、映画館やライブなどの供給に限りのある業界が代表的ですが、化学工業などのBtoB業界や、airbnbやUberといったCtoCサービスでも導入は進んでいます。これからも導入される業界は増えていくでしょう。まさに、どこにでもダイナミックプライシングがある時代が近づいているのかもしれません。自社では導入は難しいと思っていたとしても、開発企業やツール提供企業にお声をかけてみますと、導入の実現につながる可能性は十分にあります。

ダイナミックプライシングを導入すべき企業の特徴をこちらの記事で解説しております。導入をお考えの方は、ぜひご覧ください!

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは?仕組み・事例をわかりやすく解説

近年注目を浴びているダイナミックプライシング(価格変動制)とはなにかについて、この記事では、定義・メリット・アルゴリズム・歴史・事例・導入方法など、様々な角度から解説します。


プライシングスプリント

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)とは、高頻度で価格を変更する仕組みです。

言葉を分解し理解すると、「ダイナミック」とは英和辞典で「動的」と訳され、何かが時間とともに変動する状態を指します。一方、「プライシング」とは、商品やサービスの値付けのことを指し、マーケティングでは重要とされる「4P」のうちの1つの概念です。

日常生活で私たちは多くの場合、商品・サービスの価格は発売時当初から一定であるもの(一定価格制)を享受しています。一方、ダイナミックプライシングでは、ITやAIなどのツールを用い、高頻度での価格変更を実現させています。

ダイナミックプライシングの概念的理解

ダイナミックプライシングの概念を理解するには、そもそものプライシングの基本を知る必要があります。

商品・サービスの売上は、「価格」と「販売量」の2つが組み合わさり、決定される(売上曲線)のに対し、販売量は価格に応じて、反比例“的”に決まります(価格曲線)

この、価格曲線に価格を掛け合わせた「売上曲線」の最大化の実現がプライシングの基本です。

ダイナミックプライシングは、このプライシングの基本に需要と供給を組み合わせて、機会損失の最小化を実現を目的としています。

数量と価格による需要曲線を仮定したとき、一定価格での販売では機会損失(上図水色部分)が多く生まれます。

一方、ダイナミックプライシングの実現は、需要により価格を変動できるため、機会損失を減らせます。

ダイナミックプライシングでは、需要が多く、供給が間に合わない場合は、価格を高くし、それでも購入する顧客を絞りつつ、収益を最大化する。一方、供給が多く、在庫処分または機会損失が発生する場合は、価格を低くし、購入者数を増加し、売上向上を図る。といった戦略が可能です。

ダイナミックプライシングのメリット

ダイナミックプライシングの最大のメリットは、「収益最大化」です。先ほど紹介した図は、価格とその価格で販売できる数量を示した図です。この図を用い、改めて収益最大化のポイントを解説します。

左図が通常の価格設定、つまり一定価格での販売です。価格はA円に固定され、この価格での販売数の最大はaになります。そのため、最大売上はA円×a個で、売上は紺色の部分が該当します。

全ての状態において、予測する最大の販売数aが販売できるのであれば、問題はありません。しかし、実際に商品・サービスの需要は一定ではなく、変動するものです。

需要が大きいとき
→実際に得られたはずの収益を逃す。在庫不足が発生する。
需要が小さいとき
→販売数が減少する。在庫が余る。

つまり、通常の一定価格では、需要が大きい時には収益を、需要が小さい時には価格を下げれば獲得できたであろう顧客を逃してしまいます。一方、ダイナミックプライシングによる価格設定(右図)では、価格をA円だけでなく、B・C点のような値上げ、D・E点のような値下げを実施できるため、需要の変動や供給の状況に応じた収益最大化が可能になります。

需要が大きい、または供給不足と判断されるとき
→価格を上げ、その値段でも購入する層からより多くの利益を得られます。また、飛行機など供給が限られる場合は、需要の集中を抑え、需要が小さい時に購入するようにうながすことになり、全体の収益を最大化します。需要が小さい、または供給過多と判断されるとき
→値下げをおこない、新規顧客・見込み顧客を流入させ、販売数を増やせます。これには収益が増える、在庫処理をスピーディーにできるというメリットだけではなく、一定価格制では価格が高いゆえに商品に見向きもしなかった顧客に、自社製品を知ってもらえるというマーケティング的価値もあります。

ダイナミックプライシングでは、一定価格制のもとでは失っていた、本来需要変動により生まれる
「定価より高価での販売機会」
「販売する価格を下げれば獲得できたであろう販売機会」
を逃さず掴み、収益を最大化を実現しています。

他にもメリットとして、より深い顧客の理解・工数削減・安全な価格管理などがあります。

ダイナミックプライシングのデメリット

ダイナミックプライシングは、収益の最大化につながる一方、導入による顧客離れの危険性があります。ダイナミックプライシング導入への不信や高騰した価格による顧客離れが起こりえます。

ダイナミックプライシング導入への不信による顧客離れ

ダイナミックプライシングの導入は消費者からの不信を買うリスクがあります。

顧客は値上げに対して敏感であり、ダイナミックプライシングによる大幅な値上げは「この企業は、自社の儲けだけを追求している」と感じさせてしまいます。

また、値下げをする前に高値で購入した顧客は、損をした気分になり不満を抱いてしまうかもしれません。例えば、飛行機のチケットを7,000円で購入した顧客が、翌日に6,000円に値下げされたチケットを見た場合、1,000円分の損をした感覚になるとっいった感じです。

ダイナミックプライシングによる価格変動は、顧客の不信感を募らせ、それを理由に商品・サービスを購入しなくなるという、長期的な利益を失うというリスクがあります。

そのため、ダイナミックプライシングを導入するときは、顧客に適切な導入理由や価格変動の要因を納得感のあるかたちで顧客に伝えなければいけません。

高騰した価格による顧客離れ

ダイナミックプライシングによる値上げは、商品・サービスに対して価格が見合っているかに対して、顧客が不信感を抱く危険性もあります。

例えば、繁盛期のホテルでは、宿泊料が通常価格の何倍にもなることはよくありますが、提供されるサービスの質は変わらないので、消費者からすれば、値段に対してサービスの質が低いと判断されかねません。

ダイナミックプライシングを導入した事実を顧客が知らないとしても、値上げされた価格に対してサービスが見合っていないと判断し、顧客がサービスから離れてしまうリスクも持ちます。

顧客離反を生まないためにも、ダイナミックプライシングを導入する際には、導入理由や仕組みについて、顧客に詳しく説明することが重要です。

ダイナミックプライシングのアルゴリズム

ダイナミックプライシングの「需給に合わせた最適な価格決定」のアルゴリズムは、利用する技術ベースで次の3つに大別できます。

1.自動化
2.機械学習による予測
3.強化学習

1.自動化

自動化によるダイナミックプライシングは、既存の値付けルールをシステムで実現させたもので、一般的にルールベースと呼ばれます。

完全手動で作成したルール・機械学習を活用して作成したルールをシステムに置き換え、実装するというダイナミックプライシングです。

この仕組みはの利点は、実装に必要な技術の難易度がそこまで高くなく、実装が容易なことです。

通例業界としては、従来からの変動価格を利用していた航空・ホテル業界や競合価格のみを参照した価格変更をおこなうEC小売業界があります。

2.機械学習による予測

機械学習によるダイナミックプライシングは、需要を仮定し、需要予測から最適な値付けをおこなうものです。需要予測には、頻度論的回帰モデルやベイズ回帰モデルといった手法が使われます。

日付や曜日、天候や近隣イベントの有無など様々な変数をもとに、時々の需要予測を実施したプライシングが行われ、現在のダイナミックプライシングの主流と呼べるものです。

需要変動に売上が大きく影響を受けるテーマパーク業界やスポーツ観戦・コンサート・ライブなどといったエンタメ業界など、需要予測が必要な業界で多く採用されています。

3.強化学習

強化学習によるダイナミックプライシングは、特定の状態(天気など、需要と価格に関わる変数の特定の値)で、最も収益最大化につながる選択肢を、AIの経験から導き出す仕組みです。

強化学習によるダイナミックプライシングは、需要を仮定しないため、より収益最大化につながる可能性があるとされていますが、実装事例は、特に国内ではほとんど見受けられません。

原因としては、次のものが考えられます。

1.データ不足
2.精度に欠けている
3.AIの判断がブラックボックス化される恐れがある

現在、機械学習によるダイナミックプライシングは、論文レベルでは進行中であるが、プライシング領域での実用例はほぼなく、実用化は先の話になるでしょう。

ダイナミックプライシングの歴史

原始的なプライシング

歴史的に見ると、価格が一定だった期間は、値札が開発された1870年代からで、むしろ価格は変動的な方が主流だったと言っても過言ではありません。

値札が使われる以前は、消費者と店主の価格交渉で決定されることが当たり前でした。

19世紀後半(1870年代〜)

19世紀からの企業の大規模化の中で、この作業コストを軽減するために、値札を使い、一定価格で商品を販売するようになりました。

この後に続く大量生産の時代では一定価格制が一層社会に浸透していき、20世紀以降にに登場するサービス業などの新しい業態でも、一定価格でサービスを販売することが当然のようになりました。

20世紀後半(1980年代〜)

1980年代を皮切りに現代版ダイナミックプライシングがアメリカの航空産業で始まりました。

アメリカの航空会社は数百万ドルを投資して、季節などの座席需要に影響を与える要素にもとづいて価格を自動調整するコンピュータープログラムを開発したそうです。これが情報技術を使った初めてのダイナミックプライシングだと言われています。

その後、航空業界に続く形で、ホテルやクルーズなど、その他の旅行業界のプレイヤーもダイナミックプライシングを導入していきました。

2000年代〜

EC小売市場では同じ商品が乱立した結果、消費者にとって”価格”が主要な商品の選択要因となり、価格調整を自動化するソリューションとして、小売企業にもダイナミックプライシングツールが普及しました。

現在

現在では、商品・サービスごとの需要の変動や供給量の変化を予測できるEC小売向けSaaSや、需要変動が予測しにくいスポーツ業界での開発企業が登場しています。

この背景にはAIの発達があります。AIを用いることで、自社のデータだけではなく、大量のビッグデータを収集し、分析し、これまでには扱えなかった複雑な条件を需要予測に加味できるようになりました。

需要予測の可能性が広がり、多くの業界でダイナミックプライシングを活用できるようになった今、わたしたちの暮らしに影響を与えています。

ダイナミックプライシングが導入されている業界

ダイナミックプライシングは近年多くの業界に導入されています。AI、ビッグデータ、電子棚札といったテクノロジーの発展と共に活用できる業界は広がりました。その例をいくつか紹介していきます。

遊園地

遊園地 ダイナミックプライシング

「東京ディズニーランド・ディズニーシー」や「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」などを代表する遊園地で、入場チケットのダイナミックプライシングが導入されています。

入場チケットのダイナミックプライシングの導入は、時期による入園者数の変化などに対応するため、混雑緩和などを狙いとした導入と公表されています。

USJでは2019年1月より、ディズニーでは2021年3月より、土日・祝日・長期休暇期間・ゴールデンウイークなど、混雑時にチケット価格が基本料金より値上げされるダイナミックプライシングがおこなわれています。

参照
日経新聞「USJ、入場券に変動価格制 大手テーマパークで初」
東京ディズニーランド®/東京ディズニーシー® チケットの変動価格制導入について

駐車場

駐車場 ダイナミックプライシング
駐車場は、現在日本でも、海外でもダイナミックプライシングの導入が進んでいる領域です。需要予測をもとに、駐車場の値段を最適価格に変更します。

国内の駐車場予約サービスakippaでは、ダイナミックプライシングが適用されています。駐車場の近くでのイベントの有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定しているようです。

EC業界

消費者が特定の商品を購入する際、同じものを複数のサイトで販売しているEC業界では、商品そのものの価値より、販売価格が重視されます。

そのため、競合の価格や変動する需要に応じて価格を変動させることで収益を最大化できます。

オフライン小売業界

家電量販店 ダイナミックプライシング

ここ数年でオフライン小売でも導入が拡大しております。電子棚札の利用拡大により、日本国内でも大手家電量販店のノジマやビックカメラがダイナミックプライシングでの値付けを始めました。

また、コンビニエンスストアのローソンでも、商品の賞味期限を基準に価格を変動させるダイナミックプライシングの導入実験が行われています。

もともとオフライン小売業界は、Amazonなどオンライン小売店やオフライン小売店同士の激しい競争環境のため、価格変更を頻繁に行う必要がありました。しかし、値札の張り替えを手動でおこなうのは、扱う商品点数が多い大手小売店において、非常にコストがかかるものでした。

電子棚札の登場は、ダイナミックプライシングの導入を拡大させ、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストにできるのを実現させました。

スポーツ業界

スポーツのチケットの需要は、試合ごとに大きく異なり、その需要はあらかじめ予測できるものではなく、試合状況や、天候などの環境要因に左右されます。

スポーツ業界でのダイナミックプライシングは、時間と共に変化する需要をAIを用いた機械学習で予測し、さらにスタジアムの残り席数という供給(在庫)状態も加味して、価格決定をしています。

ホテル業界

ホテルでは古くから使われてきた「レベニューマネジメント」という手法があり、予約状況をもとにした価格変更を手動で実施していました。

現在では、ダイナミックプライシングを自動化しおこなうことで、効率よく収益最大化を図っています。

飲食業界

コロナ禍における「3密」を回避するために、飲食店でダイナミックプライシングを導入されたのが、ネット上で話題となっていました。

コロナ禍でのダイナミックプライシング

コロナ禍の状況によりダイナミックプライシング導入が促進されています。
今回紹介した業界以外にも、電車・高速道路・旅行産業でもダイナミックプライシングが進んでいます。

ダイナミックプライシングの導入方法

ダイナミックプライシングの導入方法としては、自社開発・ツール利用・受託開発があげられます。
3つのパターンを検討する際に役に立つ、フローチャートを作成しました。

ダイナミックプライシング 導入方法フローチャート

導入を検討されている企業様は、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

ダイナミックプライシングに関するツール販売業者・受託開発業者を比較検討を考えている企業様は、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

高頻度で価格を変動させる仕組みであるダイナミックプライシングは、需給に応じた価格に商品価格を変更し続けることによって、導入企業の収益最大化に貢献します。

しかし、導入には顧客離れにつながるリスクもあるため、導入を顧客に納得いただけるように、「導入理由」及び「価格変動要因」をしっかりと顧客に伝えることが重要です。

そして、このようなダイナミックプライシングは、技術の進歩とともに、様々な仕組みでの収益の最大化を目指せるようになり、様々な業界に適用されるようになりました。

この記事ではダイナミックプライシングについて、定義・メリット・デメリット・仕組み・導入事例など様々な観点から解説しました。この記事を通じてダイナミックプライシングとは何かを理解できたのならば幸いです。

プライスハックとは

プライスハックとは、「プライシングで事業成長を加速させる」をミッションとして掲げるプライシングスタジオ株式会社が運営する、プライシングメディアです。

価格を1%あげたことで、「12.8%」営業利益が改善されると言われているほど、企業・事業の成長にとってプライシングは重要なものになってきます。

しかし、実際にいくらで売ればいいのか、値上げしたら離反顧客が出てしまうのではないかという懸念から、自社での価格決定・価格変更を実施するのが難しいのが現状です。

私たちは、プライシングのプロフェッショナル集団として、企業のプライシングに関する課題を全力で解決したいと思っております。

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングのアルゴリズム3種類を簡単に解説

ダイナミックプライシングは、変動する需給に合わせた最適な価格で商品/サービスをで販売することを可能にします。それでは、どのように需給に合わせた最適価格を導いているのでしょうか?

この記事では、ダイナミックプライシングのアルゴリズムについて簡潔に解説します。ダイナミックプライシングとは何かについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。


プライシングスプリント

はじめに

ダイナミックプライシングは、需給に合わせてその時の最適な価格に価格を変更することで収益を最大化します。この「需給に合わせた最適な価格決定」の仕組みは、利用する技術ベースで3つに大別できます。それではその仕組みについて解説していきます。

ダイナミックプライシングのアルゴリズム解説

1.自動化

ダッシュボード
第1のパターンは、既に定まっている価格決定のルールに基づき、人の手で行っている価格変更作業を、自動化する仕組みです。ダイナミックプライシングでは「収益の最大化を目指す際に把握したい需要の変動」をツールを用いて予測し、価格を決定するのが主流ですが(後述)、このパターンはツールを用いた需要の予測を行わない点で特徴的です。

その例として、

  1. 競合価格を監視し、競合価格に応じて価格を自動変更するツール
  2. 在庫数に応じて価格を自動変更するツール

が挙げられます。

1の場合、監視する競合価格から100円安くするなど、競合価格をもとに価格変更するルールを定め、自動で価格を変更します。
2の場合、現在の自社の供給(在庫)状況をもとに、できるだけ高い値段で売り切れるように、予め定めたルールに沿って段階的に商品価格を自動変更します。

これらのツール・手法は、実装に必要な技術の難易度がそこまで高くないため、実装が容易だという利点があるものの、価格決定がルール化されていないと適用できないという難点もあります。

このパターンはホテルや飛行機のチケットなどの業界で古くから利用されてきたアルゴリズムになります。

2.機械学習による予測

需要予測

ダイナミックプライシングの主流と呼べるものが、機械学習をもとに需要予測を行うパターンです。これは、天気や近隣のイベントの有無、曜日などの様々な変数をもとにその時々で需要予測を行い、それをもとにプライシングを行う仕組みとなります。この機械学習に分類されるダイナミックプライシングでは、需要予測をルールベースではなく機械学習といわれる手法で行い、プライシングをします。機械学習とは数理・統計による予測をコンピューターで行うアルゴリズムです。

例えば、EC小売ツールでも、競合価格に反応するだけではなく、過去の売れ行きからこれからの需要を予測する時系列分析という機械学習を利用して、需給に応じた価格決定を実現しています。機械学習を用いたダイナミックプライシングは、スポーツの試合やアーティストのライブのチケットや駐車場など、需要変動が頻繁に起こる業界で効果を発揮しやすい手法だと言えます。

このアルゴリズムが可能になってから、ダイナミックプライシングはホテルや飛行機などの特別な業界のソリューションではなく、一般的な収益最大化のツールとして検討されるようになったといえます。

3.強化学習

強化学習

このパターンは、上記の2つのパターンとは考え方が異なります。この仕組みでは、予測した需要をもとに価格変更を行うのではなく、特定の状態(天気など、需要と価格に関わる変数の特定の値)で、最も収益最大化につながる選択肢を、AIが経験から導き出します。価格を動かしていると、収益や利益への影響が発生します。この時の収益・利益の変動具合を”報酬”としてAIに与えると、より最適な価格を導き出す学習を行います。与えられる報酬を最大化するように、最適な価格の提案ができるように学習するのです。

強化学習は、AIが最適な価格を学習するまでに大量のデータと思考錯誤の期間が必要という特徴があります。また、どういう理屈で価格を変動させたかが不明瞭になってしまい、ブラックボックス化してしまうというリスクも抱えています。

また、この強化学習を利用したダイナミックプライシングを提供している企業はほとんどないのが現状です。理論上は可能なはずですが、データが足りていない精度にかけている顧客離れのリスクからブラックボックス化を避けている、などの理由から、このモデルの社会実装は進んでいないと考えられます。

顧客に不信をもたれるというリスクについてはこちらで詳しく解説しております。

まとめ

ダイナミックプライシングは、技術の発展とともに今回3つに分類したような仕組みが生まれました。現在の主流は、2番目に紹介した需要予測ベースの機械学習となりますが、他の2つの仕組みも活用できれば高い効果を発揮します。

この記事では、これらについて解説してまいりました。

ただし、今回の記事では、仕組みの大枠は説明しましたが、実際に必要となる数式やアルゴリズムの詳細までは言及しておりません。そのため、実際に導入を考えている場合は、アルゴリズムに関して豊富な知識を持つ、ダイナミックプライシングの開発企業へ相談することも選択肢の一つとして考えられます。ダイナミックプライシングを企業で導入しようと思った際に、その実現の仕方までは検討されないかもしれませんが、活用する仕組みを把握して導入することができると、失敗も少なくなるかと思います。

導入をお考えの方はこちらの記事をご覧ください。

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ダイナミックプライシングとは?

ホテル業界のダイナミックプライシング|客室稼働率を向上させる価格システムを解説

この記事では、ホテル業界でのダイナミックプライシングについて、事例を交えながら解説いたします。

ダイナミックプライシングについて詳しく知りたい方はこの記事をご覧ください。


プライシングスプリント

ホテル業界とダイナミックプライシングの歴史

ホテル業界は、ダイナミックプライシングがかなり早くに導入された業界です。

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」で、商品の需給に合わせて価格を変更させて適正価格で売ることに活用されています。

実は1980年代後半からアメリカでは、ホテルのダイナミックプライシングは価格変更の担当者により行われてきていました。しかし当時は、担当者の経験と勘に頼って需要を予測して、収益を高められるように価格を変動させてきていたのです。

それを近年では、自動化や機械学習をもとにした需要予測を用いて、ダイナミックプライシングが行われるようになっています。

ホテル業界におけるダイナミックプライシング導入のメリット

ホテル業界におけるダイナミックプライシング導入のメリットとして以下の2点があげられます。

1.収益拡大

ホテル業界のダイナミックプライシングでは、「できるだけ高い価格で全ての部屋を売り切る」という目標を達成するために価格を変動させます。
客室の需要が大きい場合…できるだけ高く売り切れるように「値上げ」をする

ex)予約状況が良い、当日イベントが近くで開催される、繁忙期、休日

客室の需要が小さい場合…売り切れるように「値下げ」をする

ex)予約状況が悪い、当日雨が降る、閑散期、平日

これらにより、稼働率と平均客室単価の双方が改善されるため、ホテルの収益は増加します。

2.自動化による業務効率化

ダイナミックプライシングは、従来は担当者の勘と経験を元に考えられ、手動で行われていた、価格決定や価格変更の膨大な作業を自動化できます。

「客室の種類が膨大」「様々なオンラインチャネルで価格を顧客に通知している」「価格変更の回数を増やしたい」などの場合に、価格決定・変更作業の業務コストはかなり大きなものになってしまいます。

そのため、ダイナミックプライシングによりそれらを自動化することは、業務効率化としての価値も大きいと言えるでしょう。

ホテルにおけるダイナミックプライシングの仕組み

ホテル業界では顧客が増えても、それに応じたスタッフの数などが変わらない場合が多いため、コストが上がりにくいという特徴があります。

そのため、「できるだけ高い価格で全ての部屋を売り切る」を目標に、ダイナミックプライシングが行われます。ステップは以下の2つです。

  1. 需要予測をもとに、部屋料金を日毎に異なる価格に設定
  2. 予約状況や、予測する需要の変動をもとに、予約日まで価格を変更し続ける

そんなホテルでのダイナミックプライシングを解説します。

ステップ1:需要予測をもとに価格設定

まず、曜日、季節、その日のイベントの有無などの、需要を左右する変数をもとに、その日のホテルの需要の大きさを予測します。そして、その予測から特定の予約日の価格を設定します。

ステップ2:状況に応じた価格変更

①レベニューマネジメントを活用した価格変更

さらに、1度設定した価格を、予約状況や新たなデータを元に変動させます。それには、主に、ホテルで以前から行われてきていた「レベニューマネジメント」という手法が活用されます。

レベニューマネジメントでは、その時点での予約状況をもとにした価格変更を行います。これにより、「できるだけ高い価格で売り切る」ことを目指します。

レベニューマネジメントの工程

まず特定の予約日の、部屋が埋まっていくペースを推定しておきます。これは、下の画像のように、ブッキングカーブ(予約曲線)として表されることも多いです。

ブッキングカーブ解説

そこで、レベニューマネジメントでは、予約のペースの、理想と現実のズレに合わせて価格変更するのです。

予定より早く部屋が埋まりそうな場合→値上げ

予定するように部屋が埋まらない場合→値下げ

このように価格を動かすことで、ブッキングカーブ通りに予約を埋め切ることを狙います。

②外部データを活用した価格変更

また現代のダイナミックプライシングは、内部のデータだけではなく、外部のデータから、需要を予測して価格変更します。

例①天候などの外部データを元にした需要予測

予約日が近づくにつれて明らかになる、需要予測に扱えるデータをもとに価格変更が行われます。

天気はその代表例です。例えば、台風が直撃するとわかると、その日の需要は落ち込みますよね。それがわかれば、売り切るためには客室料金を安く変更する必要があるとわかります。このように、天気が需要、ひいてはブッキングカーブに与える影響をAIや人間が定義したうえで、価格変更を行います。

例②競合ホテルの在庫に応じた価格変更

実施しているホテルとして、アパホテルがあげられます。例えば、エリアの競合ホテルに10,000円の部屋しか在庫がなくなった時に価格を11,000円に自動で値上げするように、競合価格をもとにダイナミックプライシングを行います。

ブランド力もあり、一等地にあるアパホテルは、「1,000円の差なら自社が選ばれるだろう」と考えているため、自動的に価格変更を行い、利益増を狙っているのです。このように、競合ホテルの在庫状況もダイナミックプライシングに使われます。

参考:現代ビジネス

ホテルのダイナミックプライシング導入企業事例

実際にダイナミックプライシングを導入しているホテルとして、インドのホテル「Hotel Windoer」 の導入事例を解説します。

Hotel Windoerの価格決定の状態と変化

Hotel Windoerは、インドのパトナの中心部に位置する77室の中規模ビジネスホテルです。市街地の中心に位置しており、常に低料金の多くの格安ホテルに囲まれています。

Hotel Windoerは、そんな状況でもホテルのブランドを薄れさせないために、値下げを避けていたのですが、価格競争を行っている周囲の競合に顧客を取られてしまっていました。また、価格変更の重要性は理解していたものの、様々なチャネルでの価格変更を手動で行っていたため、頻度は週に1度と少なかったようです。

Hotel Windoerのダイナミックプライシングの導入

Hotel Windoerは、2018年にaiosellという企業のダイナミックプライシングシステムを導入しました。

季節や予約時間、競合状況などの様々な要素から需要を予測するダイナミックプライシングにより、客室稼働率を高めながら、平均客室単価を高くキープできました。

また、安易な値下げを行わずに、売れないと判断した部屋の料金のみを予約直前に値下げすることで、ブランドイメージを保ちながら、売り切ることを可能にしました。

さらに、価格決定及び価格変更の自動化により、担当者はその仕事を省き、他の仕事に専念できるようになったそうです。

ダイナミックプライシング導入の結果

ダイナミックプライシング導入後、Hotel Windoerは「総宿泊日数(Total room nights)の向上」「総売上(Total Sales)の向上」のメリットを享受することができました。

ダイナミックプライシングにより、部屋の稼働率が増えたことが総宿泊日数の増加に繋がったようです。

さらに、稼働率に加え客室単価の改善ももたらされたことは、総売上の増加をもたらしたと考えられます。

参考:AIOSELL

まとめ

ホテル業界において、ダイナミックプライシングは馴染み深い側面を持ちながらも、今後もアップデートされていくであろう重要な価格決定手法です。

また、ホテル単体だけではなく、パッケージツアーとして飛行機代と合わせてダイナミックプライシングされるケースも出てきています。今後もホテル業界のダイナミックプライシングから目が離せません!

ホテル業界のダイナミックプライシング提供企業についてはこちらを参考にしてください。

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ダイナミックプライシングとは?

最新の飲食店のダイナミックプライシング事例【SNSで話題沸騰中】

現在、ある飲食店がダイナミックプライシングを導入したことが大きな反響を生んでいます。この記事では、その事例を元に、飲食店でのダイナミックプライシング活用の可能性を考察していきます。

ダイナミックプライシングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください



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ダイナミックプライシングと飲食店

飲食店はダイナミックプライシングが入りにくい業態だと言われています。実際、国内で飲食店向けダイナミックプライシングツールを提供している企業はまだ存在していません。

しかし、近頃ダイナミックプライシングが飲食店に導入されたと話題になっているのです。

その事例を紐解きながら、飲食店のダイナミックプライシングについて考えていきます。

ニュースになった飲食店のダイナミックプライシング

6月の頭に投稿されたこちらのツイートがソーシャルバズを生んでいます。Kohei Katada(@kkatada)さんの、行きつけの定食屋さんがダイナミックプライシングを導入したというツイートです。 asatteについてのツイート

こちらで紹介されているのはasatteという表参道に店を構えている飲食店です。「3密」を回避することが飲食店にも求められる中、席数を減らさずに密集を回避することを目指してダイナミックプライシングを導入したようです。

密集回避に新しい観点から取り組んでいるとして、ネット上で話題になりました。さらにニュース番組でも取り上げられるほど注目度が高まっています。

ダイナミックプライシングが混雑緩和に対して果たす役割に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

ダイナミックプライシングがうまく機能する理由

国内ではダイナミックプライシングが飲食店に導入されている事例はあまり見ません。飲食店との相性が悪いと考えられますが、なぜこの飲食店ではうまく機能しているのでしょうか?

asatteのダイナミックプライシングの特徴

まずはasatteさんの事例を考えるにあたり、店舗の特徴を把握しておく必要があります。asatteさんの最大の特徴はそのメニュー構成でしょう、なんとメニューは日替わり定食のみなのです。

また、ウェブサイトを持たず、3,000人ほどのフォロワーが閲覧するinstagram上で、その日のメニューを告知していることも珍しい点かと思います。

こんなasatteさんですが、新型コロナウイルスの拡大を受け、お弁当のみの販売のみを行ってきました。6月から店舗の営業を再開したものの、席数を減らすことで密集度を減らすことも、経営を成り立たせるためには難しい状況だったのです。

ここでasatteさんは、時間帯によって価格を変動させることで消費者の需要を分散させようと考えました。基本的な考え方は他業種で使われるダイナミックプライシングと同じです。

  • 需要の集中する時間帯→価格を上げることで、需要を抑える。
  • 需要が小さな時間帯⇨価格を下げることで、需要がピークの時間帯の顧客を呼び寄せる。

1つの商品の価格を、時間帯に応じて複数の値段に変動させることで、混雑状況をコントロールしようとしているのです。asatteさんでは、30分ごとに商品の価格が変わるようで、最も高い時間と、最も安い時間では700円もの価格差があるようです。これにより、導入を開始してまだ間もないですが、これまでのピーク時間にお客さんが集中することはなくなったそうです。

また、価格の変動幅は、目標とする売り上げから逆算して設定しているそうなので、集客に問題を及ばさないでいれば、売り上げや利益率に対しても問題はなさそうです。

asatteで導入が順調な理由3点

まだ完全に成功したと言うわけではないと思いますが、asatteさんのダイナミックプライシングは順調なようです。飲食業界はダイナミックプライシングの導入が進んでいない業界です。その中でasatteさんのダイナミックプライシングが順調な理由を考えてみましょう。

1つは、顧客との強い関係が作られていると言う点です。
ダイナミックプライシング導入のリスクとして、導入した事実による不信感から顧客離れにつながりやすいことがあります。ダイナミックプライシングを導入した事実が顧客離れにつながり、利用者が減少して長期的な収益を減少させてしまった企業も存在しています。しかし、価格面以外でコアなファンを抱えている企業ではダイナミックプライシングの導入が受け入れられやすいです。独自の価値を顧客に提供している遊園地である、ユニバーサルスタジオジャパンはダイナミックプライシングを導入しましたが、顧客離れが起きることはありませんでした。

asatteさんは、

  1. 毎日日替わり定食を提供するというシステム
  2. 生活の一環で利用しやすいランチ飲みに絞っていること

など、日常で利用されることに注力したモデルとなっていたため、コアなファンがついていたと思われます。そのために導入しても顧客離れがあまり起きていないのでしょう。

また、顧客との強い関係性は、混雑緩和のダイナミックプライシングが商売として利益を上げるための前提になります。

そもそも客の集中を防ぐためにある時間帯に値上げをした結果、他の時間帯に利用してもらうのではなく、他店舗を利用されてしまうのでは、商売として成り立ちません。

強い選ばれる理由のない飲食店の場合、顧客は需要が小さい時間帯での利用ではなく、他のお店に流れてしまいます。しかし強い選ばれる理由がある場合、顧客は店を変えるのではなく、時間帯を変えて安くなる時間帯に利用していただけるでしょう。このように、顧客との関係性の強さが混雑緩和に経済性をもたらすのです。

そしてそもそも、ダイナミックプライシングは、時間帯ごとの価格を顧客に認知されないと混雑緩和の価値を発揮しません。「安い時間に商品を購入したい」という顧客の思いを利用して来店タイミングを分散させるのですから当然ですよね。顧客に時間帯ごとの価格を知らせるためには、どうすれば良いのでしょうか?ここでも顧客との関係性の強さが重要になるのです。

asatteさんは、Instagramで3,000人ほどのフォロワーを獲得しており、そこで毎日のメニューを投稿しているため、顧客とのつながりを強く持てています。そのアカウントでダイナミックプライシングの導入と、時間帯ごとの価格を知らせることができたため、顧客の来店時間をコントロールできているのです。

こちらasatteさんのInstagramアカウントです。

asatteのダイナミックプライシングについてのインスタグラムの写真

2つ目は、値上げが「密集回避」という顧客のメリットにつながることです。
ダイナミックプライシングの導入は「儲け主義」だとみなされてしまうことがあります。心理的に値上げの方が顧客にインパクトがあるためそう思われてしまいがちなのです。そこから顧客離れに繋がってしまうケースも少なくありません。

しかし、値上げに顧客のメリットに繋がるような理由を示せれば、納得感は向上し、顧客離れは起きにくくなります。asatteさんの事例だと、ダイナミックプライシングによる値上げには「顧客の集中を防ぎ、密集を回避する」という理由があります。これがダイナミックプライシングが好意的に受け入れられている理由でしょう。

3つ目は、販売している商品が少ないことです。
飲食店のダイナミックプライシングが難しいとされる理由の1つに、商品点数の多さがあります。多くのダイナミックプライシングでは、商品ごとの需要予測を行い、それを元に収益最大化につながる価格変更を行います。しかし飲食店の場合、商品点数が多く、一つの商品の価格が変わると別の商品の需要にまで影響を及ぼすことが多いため、価格変更が収益最大化につながるように管理するのが難しいのです。さらに、ただ多くの商品を販売するわけではなく、多くの飲食店はハンバーガーとポテトのように商品をセットで販売することがあります。単品ではなく、セットで購入されることで利益をあげるような計画も練っていますが、ダイナミックプライシングはそれに支障をきたしてしまうかもしれないのです。

そのため、通常の飲食店ではダイナミックプライシングの導入は難しいと考えられています。
しかし、asatteさんのような、1つのメニューしか存在しないお店では、商品の需要というよりも、店全体の需要を元にして価格設定を行えるため、来客数といわかりやすい変数を元に価格変更が実施できます。つまり、効果的なダイナミックプライシングを簡単に設計しやすいのです。この単純なプライシングモデルなために、特に機械学習や自動化のツールを用いずとも、人力でダイナミックプライシングを行えているのです。

実際に、海外でダイナミックプライシングが効果を発揮している飲食店の多くは、品数の少ない完全予約型のコース料理店となっています。

ダイナミックプライシングの成功につながったasatteさんの特徴

  • 顧客と強い関係性が作れていること
  • 顧客にメリットがあること
  • 品数の少なさ

ダイナミックプライシングが飲食店で効果を発揮することは簡単ではありません。まさに、このような特徴を持つasatteさんだから実行できるシステムなのです。

こちらの記事では、ダイナミックプライシング導入に適している企業の特徴をまとめております。

asatteが抱える課題と解決策

asatteさんはダイナミックプライシングによって、これまでのピーク時間に人が殺到することを防ぐことができました。

しかし、現在の価格設定の結果、値下げした時間に人が殺到するという状態ができてしまっています。このような状況は、下の画像でいうところの、「高くても買う層」が少なかったことが原因だと考えられます。その層には「一般的に都合の良い時間帯での購入」「密集回避」という価値を提供するはずなののですが、顧客にとっては値下げの魅力が強く、安く購入できる時間に人が殺到し過ぎてしまっているのでしょう。

ダイナミックプライシングでの販売

このような状況下では、混雑緩和も実現できないうえ、単価が安い商品の販売になるため収益拡大にもつながりません。この課題を解決するには、少し値下げの幅を小さくしたり、値上げの幅を小さくしたりする調整が有効だと考えられます。それにより、価格の安い時間帯に集中しすぎることを防ぐことができるのです。asatteさんは週に1度ほどのペースで価格改定を行っていくらしいので、徐々に調整していけるかと思います。

飲食店でのダイナミックプライシングの今後

asatteさんは

  1. 顧客と強い関係性が作れていること
  2. 顧客にメリットがあること
  3. 品数の少なさ

という特徴を持っていたために、ダイナミックプライシングが活用できました。それでは、飲食店にとってダイナミックプライシングは当然のものとなるのでしょうか?

結論としては、「前進していくが今は一般的には難しい」状況だと言えるかと思います。

そもそも、ダイナミックプライシングを行える飲食店向けツールがまだ存在しないため、科学的なアプローチでダイナミックプライシングを行うことが難しいです。科学的でない方法で無闇に価格を変動させると、多くの商品を扱う飲食店は、予測不可能な商品需要の変動が起きて、収益減退に繋がってしまう可能性もあります。

また、小売店のダイナミックプライシングのように、競合価格との価格競争に勝つための価格設定をすることも効果を発揮しません。小売店ほど、細かい価格差が客の購買意欲に影響を及ぼしにくいのです。

そして、商品価格の提示に紙のメニュー表を利用している場合、リアルタイムの価格変更を反映することもできません。

このような状況からも、現状飲食店がダイナミックプライシングを導入することは難しいと考えられます。

しかし、オンラインのレストラン予約サービス「TableCheck」でダイナミックプライシングの仕組みが導入されるなど、今後飲食業界にダイナミックプライシングの導入が広がっていく可能性はあるでしょう。

まとめ

飲食店にとって、集客数を減らすことは避けたいものです。withコロナで混雑回避が求められる中、asatteさんはダイナミックプライシングを活用して集客数を減らさずに密集を回避する店舗運営を可能にしています。

また密集を避ける目的以外にも、収益最大化のツールとしてもダイナミックプライシングは注目されるでしょう。しかし、現状飲食店ではダイナミックプライシングの導入により、収益最大化に対して高いパフォーマンスを発揮することは難しいと考えられます。

特に、飲食店のダイナミックプライシングはツール化もなされていないため、もしも導入をお考えの場合は、専門家へ相談することをおすすめします。

参考記事
Jタウンネット東京都
日本経済新聞

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシング失敗!?自動販売機でのダイナミックプライシング事例に迫る!

ダイナミックプライシングは様々な業界に、新しい風を吹かせています。しかし、そんなダイナミックプライシングも導入が失敗に終わってしまったことがあります。

この記事では、失敗事例を1つ取り上げて事例を解説し、ダイナミックプライシング導入の失敗要因を見つけていきたいと思います。

そもそもダイナミックプライシングとは何かを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。



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ダイナミックプライシングの導入失敗

「ダイナミックプライシングを自動販売機に導入する」

アメリカの大手飲料メーカーのコカコーラ社は、20年ほど前に自動販売機でダイナミックプライシングの導入を検討したことがります。しかし、実際にそれが実装されることはありませんでした。先進的な取り組みだと思えた、コカコーラ社のダイナミックプライシング。なぜ失敗してしまったのでしょうか??

以下の記事に、コカコーラのダイナミックプライシングについての記載がございました。これらの情報をもとに、コカコーラ社のダイナミックプライシングの沿革と、失敗に終わる結果となった原因について迫っていきます。

参考記事
Variable-Price Coke Machine Being Tested
why variable pricing fails at the vending machine

コカコーラ社のダイナミックプライシング

ダイナミックプライシング導入の背景

アメリカ合衆国で、コカコーラ社が自動販売機でダイナミックプライシングを導入しようとしていたのは、1990年代後半でした。当時のCEOのダグラスイベスター氏は、喉が乾くような暑い日と、涼しい日だと飲み物の需要が変わると判断し、自動販売機で販売する商品の価格を、気温に応じて価格が変動するダイナミックプライシングにしようと思ったのです。

コカコーラ社のダイナミックプライシングの仕組み

主にダイナミックプライシングでは、変動する商品需要に合わせて価格変更を行うことで、収益最大化につながる値段での商品販売を可能にします。ここで鍵になるのが、変化する需要を予測することです。多くの場合、直前の販売状況や、季節、曜日などによってこの需要予測を行うケースが多いですが、コカコーラ社は、気温が需要予測の指標として利用できると判断したのです。当時の計画では、自動販売機に気温計をつけることで、それによって測った気温に応じて自動販売機の価格が変動するという形になっていました。日ごと、および1時間ごとの価格変更を行い、気温が高い夏の日、気温が高い真昼には価格が上昇する設計だったのです。

確かに、暑い日の方が冷たいジュースが飲みたくなりますよね。少し高くても購入してしまうかと思います。これだけでは、ダイナミックプライシングが失敗するとは思ません。なぜ導入は失敗してしまったのでしょうか?

コカコーラ社のダイナミックプライシング導入が失敗した理由

このコカコーラ社のダイナミックプライシングは、適切な需要予測モデルを利用しており、導入も拡大していけるかと思われました。しかし、実際に導入が拡大することはありませんでした。

その理由は、顧客離れのリスクが大きすぎたためだと考えられます。

とあるインタビューで、当時のCEOダグラス・イベスター氏が開発中だったダイナミックプライシングについて言及したところ、それは大きな波紋を呼びました。インターネット上や、マスコミ、そして競合のペプシなど、世間から大量の批判を浴びてしまったのです。その結果、自動販売機のダイナミックプライシングは、顧客離れを引き起こすと認識せざるを得なく、導入を中止したと考えられます。

それではなぜそのように批判が殺到してしまったのでしょうか?そこには三つ考えられる理由があります。

  1. ダイナミックプライシングによる値上げが顧客に価値を提示できていないこと
  2. 商品の価値自体は変わっていなかったこと
  3. 業界の常識から外れていたこと

批判の原因①ダイナミックプライシングによる値上げが、顧客に価値を提示できていないこと

一つ目の問題点は、コカコーラ社のダイナミックプライシングは、値上げによる顧客へのメリットを提示できなていない点です。そもそも需要の高まりに応じて価格を上げることは、「儲け主義」との不審をいだかれやすいです。欲しい時に商品の値段があげられたら、顧客からしたらムッとしますよね。そのため、ダイナミックプライシングを実施するときは、顧客に「自分たちの利益にもつながる」と納得してもらえるような設計をする必要があるのです。

例えば、配車サービスのUberは、需要が高まった地域、時間帯の価格を向上させるのですが、それによりドライバーの労働インセンティブを刺激し、需要に見合うだけの供給を確保するのです。これは、顧客のサービス満足度向上につながっているため、社会に受け入れられています。

コカコーラ社は、需要が多い時に値上げをすることで、買う人を減らし、自動販売機に並ぶ時間を減らすことができると主張していましたが、そこに魅力を感じる顧客は少なかったようであり、納得感を作ることはできませんでした。

批判の原因②商品の価値自体は変わっていなかったこと

たしかに、コーラの需要は気温によって変動しますが、商品そのものは変わっていません。そのため、「同じ商品を高く買わされる」という印象が強く、批判が起きてしまったと考えられます。

例えば、気温が高い日にはコーラを冷やして高く提供し、そうでない日にはあまり冷やさず安く提供するなど、商品の価値自体が変化したのなら、顧客の納得度は一定高まっていたでしょう。商品の価値の変動に納得感がないと、顧客が商品価格の変動に納得しにくいのです。

批判の原因③業界の常識から外れていたこと

当時、ダイナミックプライシングを導入する飲料メーカーはありませんでした。そのため、顧客が慣れの面から受け入れられなかったうえ、競合からの批判もあったのです。有力な競合他社であるペプシが、

「気候に応じたダイナミックプライシングは、暑い地域に住む消費者の搾取につながる」

「ペプシは、コーラを買いにくくするのではなく、革新を目指す」

といった声明を出していた中でダイナミックプライシングを実行すると、大きな顧客離れにつながりかねません。これはダイナミックプライシングを中止する大きな理由となったでしょう。このように、業界で最初にダイナミックプライシングを導入することはリスクを伴うのです。

 

ダイナミックプライシングには「顧客離れ」のリスクがあります。このケースは、導入した事実によって顧客離れが起きかけた、わかりやすい例です。ダイナミックプライシングが、「企業のもうけのためだけに行われる施策」だととられてしまうと、それを導入する事実によって顧客離れは発生してしまうのです。

このリスクもあり、コカコーラのダイナミックプライシング導入計画は失敗に終わったのです。

こちらの記事では、ダイナミックプライシングと「顧客離れ」という観点から、導入デメリットを解説しています。

まとめ

コカコーラ社のダイナミックプライシング導入計画は失敗に近い形で終わってしまいました。たしかに、コーラは需要に変動性があり、気温に応じて価格を上下させることは、収益最大化に繋がりそうなモデルです。しかし、それが顧客離れにつながってしまう場合、長期的な利益を失うことになってしまうのです。

ダイナミックプライシングは企業の収益最大化に有効な手段ですが、それが顧客の利益にもつながるのか、受け入れてもらえるのかどうかを考えることは不可欠です。今回の事例から得られる教訓を一言でまとめるとこのようになるでしょう

「ダイナミックプライシングは、顧客に価値を感じてもらえないと難しい」

そのため、ダイナミックプライシングに失敗するリスクを回避するには、事前にどんな企業ならダイナミックプライシングを失敗せず導入を成功させられるかを把握することが重要です。

こちらの記事では、ダイナミックプライシングを導入すべき企業の特徴を紹介しています。是非ご覧ください

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ダイナミックプライシングとは?

コロナ禍でダイナミックプライシングが大幅促進!?ニュースと事例を総まとめ!

新型コロナウイルスの脅威が続く中、ダイナミックプライシングが様々な業界でニュースになっています。

この記事は、コロナ禍で耳にしたダイナミックプライシングに関わるニュースをまとめ、五つの業界のダイナミックプライシングについて解説しています。是非ご覧ください。

ダイナミックプライシングとは何かを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください



プライシングスプリント

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。主に需給の変動に合わせて価格変更を行う形で活用されており、企業の収益最大化や混雑緩和など、多くの価値を発揮しています。

人々の需要が高まった商品や、供給が足りていない商品に対しては、価格を上げて利益を最大化します

一方、人々の需要が小さくなった商品や、供給過多な商品に対しては、価格を下げることで、販売数を増やします
これがダイナミックプライシングの基本です。

新型コロナウイルス拡大によってダイナミックプライシングの浸透が進んだ!?

そんなダイナミックプライシングは、withコロナの現在、導入が拡大されているのです。

これから、3月ごろから7月現在までの、国内のダイナミックプライシングにまつわる話題をまとめて紹介いたします。そして、新型コロナウイルスの脅威がダイナミックプライシングの拡大にどのように影響したのかを解説していきたいと思います。

電車のダイナミックプライシング

電車 ダイナミックプライシング

7月7日、JR東日本がダイナミックプライシングを検討していることが、定例会見で伝えられました。

JRがダイナミックプライシングの導入を検討したことには、二つの背景があるかと思います。

一つ目、直接的な要因は、乗客が減ったことによる減収です。4月に発令された緊急事態宣言により、各社はテレワークを推進し、電車通勤をする人が減りました。これにより、4~6月の鉄道事業の売上高は定期券販売を除くと前年同期比で2640億円落ちるという危機的な状況になってしまいました。この中で、経営状態を改善する施策として、ダイナミックプライシングは検討されました。需要が非常に高くなる時間帯の価格をあげることで、収益増加をおこなうことができると期待されています!

二つ目の要因として、世論の後押しが挙げられるでしょう。もともと、満員電車の混雑問題は、人々にとってかなりストレスフルなものでした。それが新型コロナウイルスの拡大により、ただストレスなだけではなく、解決を求めたい大きな課題となったのです。そこで、ダイナミックプライシングによって、乗客を分散させることが期待されているのです。ダイナミックプライシングにより、需要の週ちゅすうる通勤、帰宅時の料金が上がった場合、企業がもつサラリーマンの交通費負担がかなり大きくなり、時差出勤制を採用する会社が増えることも考えられます。このように、ダイナミックプライシングは電車の混雑緩和につながる可能性があるとされています。5月末に発売された、堀江貴文氏の『東京改造計画』や、都知事選での堀江氏の政策提案などでも、電車のダイナミックプライシングは話題になり、共感を集めました。JRにとって、ダイナミックプライシングが好意的に受け取られやすい土壌ができたのです。

現在検討段階ですが、日本最大規模の鉄道会社であるJR東日本が導入したとあれば、他の鉄道会社が検討し始めることでしょう。導入の形としては、最初はリアルタイムに価格が変動するのではなく、時間帯に応じて異なった料金になる時間帯別価格制として導入されるかと思われます。

また、ダイナミックプライシングを実装する中で、乗客の価格感度の分析も期待されます。それによって改めて乗客の価格への意識を企業が掴めると、互いにとってより良い価格設定がされそうですね!

このような顧客理解というメリットについても↓の記事で解説しています。

参考記事

レイルラボ

特報web

Yahooニュース

飲食店のダイナミックプライシング

飲食店 ダイナミックプライシング

表参道に店を構えているasatteという飲食店は、唯一のランチメニューである日替わり定食をに、ダイナミックプライシングを取り入れました。「三密」を回避することが飲食店にも求められる中、席数を減らさずに密集を回避することを目指して導入したそうです。

  • 需要の集中する時間帯→価格を上げることで、需要を抑える。
  • 需要が小さな時間帯⇨価格を下げることで、需要がピークの時間帯の顧客を呼び寄せる。

このように、一つの商品の価格を、時間帯に応じて複数の値段に変動させることで、混雑状況をコントロールしようとしているのです。asatteさんでは、30分ごとに商品の価格が変わるようで、最も高い時間と、最も安い時間では700円もの価格差があるようです。これにより、導入を開始してまだ間もないですが、これまでのピーク時間にお客さんが集中することはなくなったそうです。

飲食店は、ダイナミックプライシングと相性があまり良くない業界と考えられています。しかし、コロナ禍により、ダイナミックプライシングは混雑緩和のツールとして活躍したのです。

asatteさんでダイナミックプライシングが成果をあげているのは、彼らの独特な特徴が関わってきます。それらについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください

スポーツのダイナミックプライシング

スポーツ ダイナミックプライシング

新型コロナウイルスの感染拡大により、無観客試合が続いたプロスポーツ業界ですが、7月ごろより、入場者数を限定した上でのスポーツ試合のチケット販売が開始されました。

ダイナミックプライシングは、そこで活用されました。新型コロナウイルスを受けて導入したのではなく、コロナ以前からダイナミックプライシングで行うことは発表されていたものではありますが、現在やはり観客や世間の話題を呼んでいます。

Jリーグは、新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインを設けて営業を再開しました。ここで、密集を避けるために、7月10日から8月1日ごろまでは、集客の上限が5000人と定められました。2019年のJ1リーグの一試合あたりの平均集客数が20751人であるため、J1リーグのチームにとっては、1/4ほどしか集客できないのです。

このように供給可能量が少ない状況なため、収益を得るには、価格を上げて利益を最大化することが重要です。そこで、収益改善の手段としてダイナミックプライシングは注目されているのです。清水エスパルスは、セレッソ大阪戦でダイナミックプライシングをチケット価格に適用させました。価格の変動については、供給可能量が少ないこともあり、値上げが主となったようです。

清水エスパルスは、これでできるだけ高い値段で売り切り、収益の最大化を実施できると考えていたのでしょう。しかし、実際には、値段を高くしすぎたことも関係したのか、チケットは売れ残ってしまったのです。

やはり、販売する側に供給量が少ないという事情があったとしても、消費者が「今回の試合は見に行かなくて良い」と感じてしまうような価格設定になると、売り切ることは難しくなってしまうのでしょう。

このようなスポーツチケットのダイナミックプライシングは、Jリーグだけではなく、プロ野球でも導入され、千葉ロッテが実施するというニュースも話題になりました。

また、ダイナミックプライシングは、試合のチケット以外にも活用されていました。それはドライブインでの観戦イベントの価格です!

名古屋インパルスは、7月12日のセレッソ大阪戦で新型コロナウイルスの影響で、アウェーチームである名古屋インパルスのファンが応援にいけない中、試合を楽しんでもらうために、別会場にてドライブインで映像を通じて試合観戦ができるイベントを開催していました。素晴らしい試みですよね!実はこの参加費用が、抽選で名古屋市民にあたる場合をのぞいて、ダイナミックプライシングによって決定されていたのです。おそらく、パーキングのダイナミックプライシングのように、入場している車の量に応じて価格変動が起きていたのでしょう。

これは、ダイナミックプライシングが、スポーツ業界に根付くであろうことを示す事例です。

参考

FOOTBALL ZONE

名古屋グランパス

朝日新聞デジタル

BASEBALLKING

高速道路のダイナミックプライシング

高速道路 ダイナミックプライシング

高速道路でのダイナミックプライシングは、混雑緩和に活用できるとして近年注目が高まっています。

高速道路の料金にダイナミップライシングを導入することができれば、需要の大きい日や時間帯の料金を高く設定することにより、ドライバーに、時間帯をずらした利用や一般道の利用を促すことができるのです。

そんなダイナミックプライシングを促進するようなニュースが先日出されました!それは、全国の高速道路の全ETC化を国土交通省が検討し始めたことです。これは、混雑緩和のためにも以前から検討されていた事項でしたが、料金所の料金受け取り担当者を経由しての感染拡大を防げることが後押ししたようです。

ETC化が進めば、高速道路でのダイナミックプライシングの実現可能性が高まります。実際、ETC化が今まさに進められようとしているのは、これから東京五輪・パラリンピック開催時などに想定される渋滞対策として、ダイナミックプライシングが求められていることからも

新型コロナウイルス感染爆発前の2020年2月の段階では、五輪期間中の首都高速道路の料金をダイナミックプライシングで行うことが許可されていたのです。時間帯別料金として、競技に影響する6時から22時までは千円割高になる一方、深夜0時から4時までは半額になる予定でした。それを予め告知することで、選手の移動にも使われる、昼の首都高の利用者数を減らし、一方で利用者の少ない夜は利用者が増えるように設計していたのでしょう。

朝日新聞デジタル

日本経済新聞

テーマパークのダイナミックプライシング

遊園地 ダイナミックプライシング

テーマパークは、一部ですが、ダイナミックプライシングが既に導入されていた業界です。国内の例としては、ユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)が有名ですね。繁忙期と閑散期や、平日と休日といった需要に差がでる日に応じてダイナミックプライシングを行っていました。それにより、顧客が不快になるほどの混雑を防ぎ、一方で需要が小さい日に人が流れることを可能にしたのです。

こんな遊園地のダイナミックプライシングに変化が起きるかもしれません。コロナ禍により、東京ディズニーリゾートなどのテーマパークで入場制限が起きています。それらの入場制限があるテーマパークでは、異なった手法でのダイナミックプライシングの可能性が高まっていると考えられるのです。

6月23日、東京ディズニーリゾートが7月1日より営業再開することが発表されました。しかし、密集を避けるために、入場者数は50%以下と制限されてしまいました。チケットがオンラインで発売されると、すぐに上限に達して売り切れるようになってしまう状況があります。

顧客が半分ほどしか来ない状態では、収益があまり望めません。その中で、収益最大化のツールとして、USJのモデルに近いダイナミックプライシングを導入することも効果がなさそうです。今の価格では需要が供給(入場者数の上限)を下回るタイミングがないため、値下げが効果を発揮しません。需要が低い日の集客数を増やす、ということができないのです。

この中で、収益を拡大するためには、イールドマネジメントと呼ばれるダイナミックプライシングの手法が役に立つと思われます。それは、ホテルや飛行機のダイナミックプライシングで利用されている手法で、予約状況、チケットの残り枚数に応じて段階的に値上げ、または値下げを行うことで、できる限り高い価格で売り切ることを目指せるのです。この手法を使うことで、限られた入場者数で最大の収益をあげることができるのではないでしょうか。

ディズニーランドを筆頭に、入場制限のある遊園地で、イールドマネジメント型のダイナミックプライシングが広がるのかもしれませんね。

トラベルボイス

パッケージツアーのダイナミックプライシング

ツアー ダイナミックプライシング

航空輸送事業などを行うANAグループは、「ANAダイナミックプライシング」として、国内線の航空券とホテルの料金をまとめたパッケージツアーのダイナミックプラシングを開始しました。355日前から、出発前日までツアーチケットを購入することができ、その買うタイミングによってリアルタイムに値段が変動するのです。

これは昨年から発表されており、コロナに合わせて作ったプランではないようですが、7月のタイミングでYouTubeなどで広告を活発化させたのは、Go toキャンペーンにあわせてのものかと思われます。また、今は旅行に行きたくない顧客からもキャッシュを確保するという文脈からも、この355日前から予約可能という点から顧客に訴求しようと思った可能性も想定できます。

ANA

新型コロナのダイナミックプライシングへの影響まとめ

新型コロナウイルスにより①企業の収益減②密集回避が求められるようになる という状況が作り出されました。

この中で、ダイナミックプライシングは

  1. 収益最大化
  2. 密集回避

のツールとして注目されるようになったのです。さらに、コロナ関係でダイナミックプライシングが話題になると、コロナ収束後のダイナミックプライシングや、密集回避に関係ないものに対してのダイナミックプライシングも、社会がそれを受け入れやすくなります。これによりダイナミックプライシングはさらに拡大していくことが予想されます。

また、ダイナミックプライシングを導入する際は、顧客との対話を忘れてはいけません。企業の都合で値上げしたとしても買ってもらえないうえ、顧客離れを起こしてしまう危険性もあります。ダイナミックプライシングは強力なソリューションだからこそ、徹底して顧客のことを意識する必要があるのです。

今回紹介した事例以外にも、マスクの高騰など、私たちの日常にダイナミックプライシングは大きく関わっています。

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この記事でも紹介した、「ダイナミックプライシングが混雑緩和に果たす役割」に関しては、下の記事でより詳しく解説しています。

またダイナミックプライシングの導入を検討しているかたは、下の記事をご覧ください。

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ダイナミックプライシングとは?

【ビックカメラ】リアル店舗でのダイナミックプライシング|導入事例を徹底解説

ECなどでの活用が取り上げられることの多いダイナミックプライシングですが、実は近年、リアル店舗を持つ小売店でも導入が進んでいます。例えば家電量販店のビックカメラは、2020年内の全店舗導入を目指し、ダイナミックプライシングの導入を拡大しています。

この記事ではビックカメラを事例に取り、小売店でのダイナミックプライシングについて考えていきます。

ダイナミックプライシングについてまず詳しく知りたいと思う方はこちらの記事をご覧ください。


プライシングスプリント

ダイナミックプライシングとオフライン小売

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。

ECの小売業界で長く導入されていましたが、近年リアル店舗を持つ小売店でも導入されるようになってきているのです。リアル店舗での価格変更で問題となるのは、「どうやって価格変更を値札に反映させるのか」です。この問題を解決し、ダイナミックプライシング導入を実現したビックカメラの導入事例について、解説していきます。

小売業界の現状

そもそもなぜ、ビックカメラはダイナミックプライシングの導入を検討する必要があったのでしょうか?この理由を理解するためには、まず小売業界の現状を把握する必要があります。

価格が重要な小売業界

もともと、小売業界は同じ商品を複数社が扱うという性質上、価格競争が激しくなる業界です。さらに近年、価格.comなど価格比較サイトの出現により、客の商品購入の意思決定における価格の重要性が高まってきました。

加えて、オンライン業者との競争も激化しています。オンライン業者の競争優位の理由の一つに、ダイナミックプライシングがあります。EC小売店は、ダイナミックプライシングによる頻繁な価格変更によって、商品価格を消費者に選ばれる値段に随時調整できていたため、価格的な優位性を保ちやすいのです。

これらの要因から、リアル店舗を持つ小売店は、価格戦略を十分に考える必要があったのです。

EC小売店のダイナミックプライシングに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

リアル店舗の価格面での苦悩

このような環境下でリアル店舗を持つ小売店は、価格面での競争力を維持するために人力で商品の値札の差し替えを頻繁に行っていました。

しかし、扱う商品点数が多い大手小売店において、値札の差し替えを伴う価格変更を行うことは非常に工数のかかることでした。また、どうしてもオンラインの販売ほど素早く正確に価格変更ことはできませんでした。価格変更の意思決定を本部が行ってから、実際に価格を差し替えるまでの間に、時間差があり、リアルタイムの価格変更を実現できなかったのです。

このように、競争力のために価格変更を頻繁に行うものの、非常に工数がかかるうえに、時間に応じた競争力の高い価格で商品を販売することも難かしい状況がありました。

しかし、現在この状況が改善される兆しが見えてきているのです。それは、電子棚札(データを元に価格を自動反映できる電子機械のタグ)の実用化により、近年オフラインの小売業界でもダイナミックプライシングが可能になったことです。

現在、小売業界の中でも大手のコンビニエンスストアや家電量販店で電子棚札の導入が進み、ダイナミックプライシングが利用され始めています。

小売業界の状況

・小売業界の価格競争は激化している

・価格変更が価格競争の肝だが、リアル店舗では難しい

・電子棚札によって、リアル店舗でもダイナミックプライシングが可能に・・・?

ビックカメラのダイナミックプライシング導入

小売業界の状況がわかったところで、ここからビックカメラの導入事例を見ていきましょう。

ビックカメラが抱えていた価格の課題

まず、ビックカメラはどんな企業なのでしょうか?

・家電量販店 業界2位

都市圏駅前での大型店舗の展開がメイン

・家電だけでなく、自転車や日用品など多様な商品を扱う

このように、ビックカメラは知名度・業績ともに家電量販店のトップクラスの企業だといえます。

しかし、実はこのビックカメラもAmazonなどEC小売店との競争に疲弊していました。というのも近年、消費者はビックカメラに来店しても、スマホでECとの価格比較を行い、値段によってはその場で購入せずに別途ECで購入するケースが増えているからです。

そのため、ダイナミックプライシングで頻繁に価格変更を行うECサイトに対抗すべく、競合の商品価格や曜日に応じて1日最低でも2回は数千もの商品の価格を人力で張り替えていたそうです。業務の3割ほどがそこに割かれているほどハイコストだったうえ、その結果、本来オフラインの強みである接客業務が疎かになってしまう状況もありました。

しかし、消費者に選んでもらうためには、頻繁な価格変更をやめるわけにはいかなかったのです。

ビックカメラ課題まとめ

・頻繁な価格変更をしないと消費者に選んでもらえない

・価格変更に非常に大きな工数がかかる

・価格変更に工数が割かれ、接客が疎かになる

ビックカメラにおけるダイナミックプライシング導入の成果

このような状況下で、ビックカメラはEC小売店に打ち勝つべく、ダイナミックプライシングの導入に踏み切りました。そしてダイナミックプライシング導入のために、電子棚札の導入を進めたのです。電子棚札、ひいてはそれにより可能になるダイナミックプライシングの導入に、どのようなメリットがあったのでしょうか?

それは、価格変更の超効率化です。これまでも、ビックカメラでは曜日や競合価格をもとに価格変更を本部にて決断、店頭に伝達するシステムは存在していましたが、ダイナミックプライシングとして自動化することはできていませんでした。ビックカメラ本部が価格変更を店舗に伝達し、店員が新しい値札を印刷し、一枚ずつ差し替えるという大きな作業が発生していたのです。

しかし、電子棚札を導入してからは、本部から直接商品価格の一括変更が可能になりました。

日本経済新聞より ビックカメラの価格変更オペレーション(日本経済新聞 『家電の価格、随時上げ下げ ビックカメラが「電子棚札」』より引用)

これにより、価格変更の頻度も向上させられ、価格面での競争力も向上しました。さらに、価格変更にかかる大量の工数を大幅に削減でき、これまで2〜3時間かけて行なっていた値札の差し替えの作業時間がほぼなくなったそうです。そして、その分店員が接客に集中できるようになり、オフラインの店舗をもつからこその強みである接客の質が向上したと思われます。導入店舗の担当者の方によれば、実際に商品を買わずに帰る客を減らすことができたそうです。

この導入結果を受けて、ビックカメラはダイナミックプライシングの導入拡大を意思決定し、2020年中の全店での導入を目指しています。さらに、2020年8月期第2四半期決算説明会では、これからの店舗戦略において、天候やエリア性を考慮した、より高度なダイナミックプライシングを検討していくと言及されました。

ビックカメラは電子棚札を導入することで、自動で商品の価格を適正価格に変更するダイナミックプライシングを、オフライン店舗でも実現したのです。これからもダイナミックプライシングはビックカメラの店舗戦略に大きく影響していくでしょう。

ダイナミックプライシング導入による改善点まとめ

・価格変更の工数の大幅な削減

・店員が接客に集中できるようになり、顧客体験の改善

・より頻繁な価格変更が可能になり、競争力向上

ダイナミックプライシング導入のメリットはこちらです。

まとめ

ダイナミックプライシングは小売店においてもはや必須のシステムだといえます。電子棚札が実用化した現在、オフラインの小売店でも、導入は検討すべきです。

この記事で解説したビックカメラだけではなく、ノジマなど他の家電量販店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアでもダイナミックプライシングが導入され始めています。

しかし、ビックカメラは導入に成功したものの、実際に自社のみでダイナミックプライシングをで導入することは容易ではありません。導入を検討する場合は、一度専門家へご相談することをお勧めいたします。

ダイナミックプライシングの導入をお考えの場合はこちらの記事をご覧ください

参考記事リンク

マネセツ

日本経済新聞

ITmedia ビジネスオンライン

CREiST.inc

日経ビジネス

logmiFinance

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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングで混雑が緩和される?専門家が考察します

ダイナミックプライシングは、企業の利益最大化だけではなく、顧客満足度の向上につながる「混雑緩和」という価値を持っています。この記事では、ダイナミックプライシングと混雑緩和について解説します。

ダイナミックプライシングとは何かを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


プライシングスプリント

混雑緩和とダイナミックプライシング

混雑って嫌ですよね。テーマパークに遊びに行こうと思っても、混雑していると知っただけで利用する気がなくなってしまうこともあるのではないでしょうか。混雑はサービスの満足度を低下させうるのです。また、withコロナで叫ばれている”密集”の回避も難しくなってしまいます

実は、混雑緩和を実現するシステムとして、ダイナミックプライシングに近年注目が集まっています。この記事では、「ダイナミックプライシングがどのように混雑緩和に役立つか」「混雑緩和が期待できる業界はどこか」を解説します。

ダイナミックプライシングが混雑緩和につながる理由

混雑の原因とダイナミックプライシング

そもそもなぜ極端な混雑が起きるのでしょうか?

それは商品やサービスの需要が、社会生活の中で一定の日時に集中しているからなのです。遊園地の休日の来場者数が平日を大きく上回っていたり、飲食店が朝昼晩の食事時に混雑することを思い浮かべると、直感的におわかりいただけるでしょう。

ここでポイントとなるのは、日時によって「サービス内容」「価格」が変わらないがゆえに、人々の社会生活リズムに合わせて需要が集中する、ということです。値段も得られる体験も変わらないのであれば、自分のスケジュールの都合がいいタイミングで商品/サービスを利用したいと思うのは、当然のことでしょう。そして得てして、その”都合のいいタイミング”は、皆さんの間で大差ないものであるのです。
この混雑の問題を解決すべく、「価格」に注目したのがダイナミックプライシングのアプローチなのです。

ダイナミックプライシングによる需要のコントロール

ダイナミックプライシングは、時間と共に変動する人々の需要に合わせて、商品/サービスの価格を変更します

需要が大きい=混雑している時間には、値上げをすることで、集中する需要を抑えることができます。

また、需要が小さい=空いている時間には、値下げをすることで、混んでいる時に利用しようとしていた客を、空いている時間に誘導することができるのです。

混雑緩和例

ポイントは、日時によって「サービス内容」は変えずに「価格」を変える点です。提供するサービス内容が変わらないなら、できるだけ安いタイミングで利用したいと思うのが自然でしょう。

このように、ダイナミックプライシングは価格を変化させて需要をコントロールすることで、商品/サービスの利用タイミングを分散させ、混雑を緩和できるのです。

 

ダイナミックプライシングの詳しい仕組みを知りたい方はこの記事をご覧ください。

DPのメリットについて知りたい方はこの記事をご覧ください。

ダイナミックプライシングによる混雑緩和が期待できる業界

なぜダイナミックプライシングがサービスの混雑緩和に役立つのかは理解していただけたかと思います。ここからはより具体的なイメージが持てるように、混雑問題を解決できそうな業界を紹介していきます。

1.テーマパークでのダイナミックプライシング

遊園地 ダイナミックプライシング

テーマパークは混雑が問題になっている業界の一つです。テーマパークにとって顧客満足度は非常に重要な指標となりますが、混雑はその顧客満足度に大きな悪影響を及ぼします。実際、テーマパーク業界ではファストパス制度の導入や、空き時間を把握できるアプリの開発など、混雑問題解決への取り組みがなされています。

例えば、日本最大級のテーマパークであるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)には、繁忙期にUSJのキャパシティの限界とされる10万人ほどの来場者が訪れます。ここまで人が集まってしまうと、来場者はテーマパークを落ち着いて回ることすら難しくなってしまいます。一方で、1月などの閑散期の平日には、来場者数は非常に少なくなり、売り上げが落ち込んでしまっています。

このような状況下で、USJは2019年1月からダイナミックプライシングを実際に導入しました。閑散期や平日の料金を低く設定することで来場を促して収益を拡大し、一方で繁忙期や休日の料金は高く設定して来場者数を抑えることで混雑を緩和したのです。

このようにテーマパークにおいて、DPは混雑緩和の有効な手段といえるでしょう。

参考

日経XTREND

2.高速道路でのダイナミックプライシング

高速道路 ダイナミックプライシング

混雑、つまり渋滞は高速道路にとって避けて通れない問題となっています。この原因は様々ですが、その一つが高速道路を利用したいと思う時間が、人々の間で被ってしまうことです。遊園地と同じように、平日か休日か、1日の中のどの時間帯かによって交通量は大きく異なります。特定の日時に交通量が集中し、それが渋滞につながるのです。

高速道路にダイナミックプライシングを導入することができれば、需要の大きい日や時間帯の料金を高く設定することにより、ドライバーに、時間帯をずらした利用や一般道の利用を促すことができます。

東京の主要な高速道路アクアラインでは、AIによる需要予測を通じ、需要が拡大するタイミングに合わせて高速道路周辺のショッピングモールのクーポンを発行しています。これは高速道路の需要が高まる、即ち混雑が予想されるタイミングでショッピングモールに立ち寄ってもらい、混雑を緩和する仕掛けです。道路料金の変更には至っていませんが、道路需要を予測できていることから、今後、料金にダイナミックプライシングを導入できる基盤が整っていると言えます。

また、高速道路でのダイナミックプライシング導入は国内でも実証実験が進んでおり、実装される日も遠くないかもしれません。

参考

日経XTREND

乗り物ニュース

3.公衆浴場/銭湯でのダイナミックプライシング

銭湯 ダイナミックプライシング

公衆浴場も混雑が問題になる業界の一つです。来場者が多くなりすぎると、入浴中にくつろぐことができず、顧客満足度に大きく影響します。公衆浴場の混雑状況を把握するためのウェブサイトまで存在しており、混雑度合いが顧客満足度に与える影響の大きさがうかがえます。テーマパークと同じく顧客満足度が非常に大切な業界だからこそ、需要の集中を防ぐ取り組みが期待されているでしょう。

公衆浴場でダイナミックプライシングが導入されている事例はまだ見受けられませんが、導入によって混雑を緩和できる可能性は大いにあります。

公衆浴場の利用客には一定数、地元住民がいます。彼らは自宅からの距離も短いため、来場する時間帯をコントロールできます。ダイナミックプライシングで混雑する時間帯の料金をあげると、そうした来場時間帯を調整できる人々が需要の小さな時間帯にうまく流れてくれると期待できるのではないでしょうか。

特に温泉地でないエリアであれば、周辺に公衆浴場が点在していることもまれでしょうし、需要が大きい時間に利用しなかった顧客も、他の浴場に流れることなく、別の時間帯に無事利用してもらえるでしょう。

このように銭湯が抱える混雑問題の解決にもダイナミックプライシングは利用できると考えられます。

まとめ

いかがでしたか?混雑問題が起きる要因である、需要の過度の集中を、ダイナミックプライシングは防ぐことができます。実際に遊園地や高速道路などで導入の検討が進んでおり、いずれ混雑問題の解決に貢献する可能性も低くないでしょう。

ダイナミックプライシングは企業にとってもメリットの多いシステムですが、行政、そして消費者にとっても恩恵のあるシステムだと言えます。今後もダイナミックプライシングの導入動向から目が離せませんね。

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ダイナミックプライシングとは?

EC小売業界で注目されるダイナミックプライシングの事例をわかりやすく解説

EC小売業界はダイナミックプライシングが長い間導入されてきて、実際に多くの成功事例が見られている業界です。この記事ではそんなEC小売業会のダイナミックプライシングの活用状況や機能、事例について解説します。

こちらの、ダイナミックプライシングについて網羅的に解説している記事もご覧ください。



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ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。主に需給の変動に合わせて価格変更を行う形で活用されており、企業の利益最大化や混雑緩和など、多くの価値を発揮しています。

例えば、祝日のホテルや帰省ラッシュ時の航空券の様に、人々の需要が高まった商品や、供給が足りていない商品に対しては、価格を上げて利益を最大化します。また、これが混雑緩和に生かされることもあります。

逆に、人々の需要が小さくなった商品や、供給過多な商品に対しては、価格を下げることで、販売数を増やします
これがダイナミックプライシングの基本です。

それに加え、競合の価格を監視し、それを元に自社の価格を動かすアプローチや、売れる最大の値段に設定し続けながら商品を売り切るアプローチなど、業界によって多彩な手法が採られます。

EC小売におけるダイナミックプライシングの活用状況

EC小売 ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングが有力な領域の一つが、EC市場です。

消費者が特定の商品を購入する際の店舗選びは、その商品の販売価格が主要な基準となります。競合価格より安いことを売りにしている小売店はよく見かけられるかと思います。ビジネス構造上、価格が非常に重要な要素である小売業は、競合の価格や変動する需要に応じて価格を変動させることと非常に相性が良いのです。しかし、大量の商品を扱う小売店でそれを行うには、大量のデータと、データを元に正確な価格設定が行えるアルゴリズムが必要でした。これら可能になり、実用化されるようになったのが、海外では2000年代になってからした。

ダイナミックプライシングを導入している代表的なEC小売企業としては、10分ごとに商品の価格が変更されるAmazonと、オンラインストアで月に約50000回価格を変えるWalmartが挙げられます。Amazonがオフライン小売店との競争に勝利し現在の立ち位置を確保できた理由として、オフライン小売店よりも安い価格で商品を販売できたことが挙げられますが、この背景にはダイナミックプライシングによるスピーディーな価格変更があります。そしてオフライン小売で有名なWalmartは、オンラインストアで、もともとのEDLP(Every Day Low Price)戦略からダイナミックプライシングでの販売に移行し、現在はオンライン小売でも世界2位となりました。

EC小売においてダイナミックプライシングが非常に重要なシステムとなっていることが、これらの事例から見て取れます。そして現在はEC小売向けに多くのSaaS(Software as a Service)が世に出され、海外では個人店から大企業まで、大小問わずEC小売企業はダイナミックプライシングを導入するようになりました。一方日本国内では、まだ数は少ないのが現状ですが、小売向けのツールは少しずつ出てきています。

EC小売向けダイナミックプライシング 機能紹介

EC小売業界は、ダイナミックプライシングが導入される業界の中でもとても多くのSaaSが存在しています。ツールごとに固有の機能もあれば、サービス間で共通している機能も存在しています。今回は、ツールに広く搭載されている機能を4つ紹介します。

価格の自動変更

小売業者が扱う商品の数は、他の業種と比較すると、非常に多いです。数千から数万に及ぶ商品の価格を変動させることは容易ではありません。

オフライン小売店の中でも、最安値を売り文句にしている会社の場合、頻繁に商品価格を変更する必要があります。そしてそれは従業員が手で値札を入れ替える作業となり、勤務時間を圧迫するほどの作業です。

EC小売の場合、価格変更をオンラインで行なうことができるため、実際に店舗の値札を変えなければならないオフライン小売と比べて簡単ではありますが、ダイナミックプライシングツールを導入していない場合は、人間の手でPCを操作し、価格設定を変更する必要があり、これも大きな作業になります。またEC小売店は、Amazonマーケットプレイス、楽天市場、Shopifyなど多数のプラットフォームで販売を行っている場合があります。その場合、全てのプラットフォームで同様の価格変更を行なう手間は計り知れません。

そこで、自動価格変更機能を持つダイナミックプライシングツールを使用すれば、高速かつ簡単にに大量の商品の価格を変更できるようになります。ツールによっては、提案される価格にワンタップや自動で価格を変更することができ、大幅なコストカットにつながります。

もちろん、ダイナミックプライシングを導入せずとも、小売業者がよく売れる商品にフォーカスして値付けを行なうことで、あまりコストをかけずに価格変更をするケースはありますが、ニッチであるがゆえにあまり売れない多くの商品(ロングテール)の値付けは放置されます。しかし、ダイナミックプライシングツールの導入で、ロングテールまで適切な価格設定ができるようになれば、大きな収益向上が期待できます。

また、自動で価格が変わるために、社会情勢の変化などにより、需給のバランスが唐突に崩れた際に、速いスピードでそれに対応できるという利点もあります。

需給に応じたプライシング

ECの大量の商品の中で、全く売れない商品と、すぐ品切れになってしまう人気の高い商品は少なからず存在します。売れない商品は在庫処理のために値下げして販売量を増やし、人気商品は値上げして利益率を高めます。これは、変動する需給に応じて、売れる商品は高く、売れない商品は安く販売するという、ダイナミックプライシングの基本的な考え方です。

EC小売は、品数が膨大なうえに、価格変更タイミングが多いという特性上、天気などの複数の変数をもとに需要を予測することが困難です。そのため、EC小売向けダイナミックプライシングツールでは、商品の価格変更履歴と販売実績データを収集し、データに基づいて最適な価格を提示する機能が搭載されている場合が多いです。

競合他社のデータを元にしたプライシング

EC小売ならではの特徴として、価格設定時に競合他社の価格を参照することが多い点が挙げられます。競合他社の価格を自動で確認し、それを元にした価格変更を行う機能は、EC小売のSaaSによく見られます。また、その発展形として競合他社の供給量、在庫量を元にして、自社の価格を変更するプライシングモデルも存在します。

競合他社のデータを参考にしたダイナミックプライシングがEC小売業界で盛んな理由として、「消費者がEC店舗間で容易に価格を比較できる」というEC小売の特徴が考えられます。同じ商品や似た商品を取り扱うことが多い小売業において、「他社の価格よりも少し安くする」という他社価格を参考にしたプライシングが重要になるのです。また、前日の売り上げや当日の天気など複数の要素から値決めをするアルゴリズムは、ECの品数の多さを考えると導入が難しく、競合価格という単一の要素から値決めするシンプルなアルゴリズムを利用しているとも考えられます。

人間の手で価格を調整する余地がある(ルールベース)

小売向けダイナミックプライシングツールでは、AIにプライシングを任せきるのではなく、利用する小売業者が価格設定のルールや前提条件を定めることができます。
その例としては、

  • ・目標販売数
  • ・価格を変化させる商品の条件
  • ・価格変動の上げ幅、下げ幅
  • ・最高価格と最低価格

などが挙げられます。

こうしたルール/条件の設定のメリットとして、最低価格の設定による価格崩壊防止が考えられます。EC小売のダイナミックプライシングの黎明期、「設定した競合他社の価格より常に100円安い価格にする」などの競合他社の価格ベースに値段を設定するだけのオートプライシングという手法が存在しました。しかし、オートプライシングだけだと、価格競争どころかアルゴリズムによって商品の価格が崩壊してしまうケースがあります。例えば、二つの競合している企業が互いに、他社よりも100円安く価格設定を行う、というアルゴリズムでプライシングを行った場合、自動で値段が互いに下がっていき、値段は0円になってしまいます。このようなケースを防ぐためにも、最低価格や最高価格を定義できる「人間による調整余地」は重要となるのです。

 

これら4つの機能が搭載されているダイナミックプライシングをEC小売業者が導入するメリットとして、

  • ・需給のバランスが崩れた時に迅速な対応ができるようになること
  • ・価格設定にかかっていた時間を他の部分に当てられるようになること
  • ・利益率と売り上げの増加
  • ・在庫処理が簡単になること
  • ・競合他社の価格を確認する手間を省けること
  • ・顧客の価格の捉え方についての情報が集められること
  • ・競合他社に対する競争力を得られること
  • ・人間がプライシングに介在する余地もあるため、納得感のある値付けができる。

が挙げられます。

EC小売向けダイナミックプライシングツールは、この記事で紹介しています。

EC小売店のダイナミックプライシング導入事例

北アイルランドの大手独立系電気小売業者の「Donaghy Brothers」という企業が、イギリスのダイナミックプライシングSaaS企業「Black Curve」のサービスを導入したケースを見てみましょう。

Donaghy Brothersは、約6,000の製品の在庫を管理し、オンラインと実店舗の両方で販売していたのですが

  • ・少数の人気商品以外の売り上げが小さい
  • ・競合の迅速な価格変更に対応できない
  • ・競合の価格をどの程度参考にすれば良いのかわからない
  • ・値段を引き上げたいが顧客の反応が怖い

という課題を抱えていました。同社はBlack Curveのサービスを3ヶ月間、一部の商品に試験導入し、これらの課題の解決が見込めるかテストしました。

Black Curveのサービスは、これまで売れていなかった商品の在庫販売を目的として、競合他社の価格と自社の販売履歴データを活用し、人力で価格変更条件を設定したプライシングを行いました。

その結果、試用期間の3ヶ月で、これまで売れていなかった93点の商品の在庫を販売することができ、90000ポンドの収益増加を果たしたそうです。

参考 「Black curve

小売業界のダイナミックプライシングの展望

EC小売の黎明期には、単純に競合価格を参照にしたダイナミックプライシングがほとんどでしたが、現在は需給に応じたダイナミックプライシングをするツールなど、機能が多様化してきています。現在EC小売向けツールでは競合価格だけを参照して値付けするものよりも、競合価格と共に需給など複数の変数を参考にするツールの方が正確とされています。今後は後者のようなサービスを中心に、日本でもオンライン小売のダイナミックプライシングは広がっていくと思われます。

また、EC小売だけではなく、オフラインでの小売も、ビックカメラなどの家電量販店を中心に広がりつつあります。

オフライン小売のダイナミックプライシングについては、こちらの事例解説記事の一部で紹介しています!

EC小売業界は、ダイナミックプライシングが早くから導入された業界です。現在は様々なツールが存在しており、個人業者でも様々なメリットを享受することができます。高い投資利益率が見込める業界でもあるため、ECで小売を行っている方は導入を検討してみてはいかがでしょうか?