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PSMの分析の交点の取り扱い方について解説

(この記事は、PSMの分析の交点の取り扱い方について解説の解説記事です)

【質問】
PSM分析を行いました。最高価格や最適価格など、どれを選べば良いのでしょうか。基準など様々だと思うので具体的な事例などがあれば教えて欲しいです。
【回答】
4つの交点の中から価格を選ぶというプロセスは間違っています。ターゲット層やビジネスの目的を踏まえた上で価格を決定しましょう。

PSM分析を用いた価格決定のやり方

PSM分析では、まずアンケートを用いて4つの質問を行います。以下の4つの価格を回答者に答えてもらいましょう。
・高すぎて検討に乗らない価格
・高く感じる価格
・安く感じる価格
・安すぎて品質が低いと感じる価格

注目するべき価格

この4つの中で特に大切なのが「高すぎて検討に乗らない価格」と「安すぎて品質が低いと感じる価格」の2つです。前者よりも高い価格で売ってしまえば、高すぎてお客さんに買ってもらえません。同様に、後者よりも安い価格で売ってしまえば品質に不安を持たれてお客さんに買ってもらえません。これらのことから逆に、この2つの価格の間の金額で売ればお客さんは買ってくれるだろうと考えられます。PSM分析の結果を見るときは、この仮定を置くことが大切です。

数量(客数)と売上の推計

先ほど挙げた2つの価格に注目することで、それぞれの価格にした場合どのくらいのお客さんが買ってくれるか推測できます(数量の推計)。売上は「単価×数量」で求まるので、この方法で推計した数量を用いることで売上の推計も行えます。
このとき注意が必要なのが、お客さんの数が最大になる価格と売上が最大になる価格は一般的に異なるということです。事業戦略を踏まえてどちらを優先するべきか考えましょう。その上で価格決定を行う必要があります。

PSM分析の落とし穴

アンケート回答者の結果すべてを用いて数量や売上の数量を推計してはいけません。セグメント分けをした後で、推計を行いましょう。

あるサービスを同じ価格で売っても、購入してくれるペルソナと購入してくれないペルソナが発生します。購入してくれないペルソナが自分達のターゲットであるならば、その価格設定は間違えていますし、ターゲットでないのならば問題ない場合もあります。つまり売りたいセグメントを決めて、そのセグメントごとに購買推計を行うことが重要です
セグメント分けは複数条件の掛け合わせによって行います。例えば、toCであれば収入・性別・居住地・同居人の人数など。toBの事業であれば、その会社の従業員規模・業界・部門・経済インパクトなどです。これらを掛け合わせて「男性×30代×東京在住」のようにペルソナを設定します。
PSM分析は1度行うだけではありません。掛け合わせる条件を変えてみるなど、何回も行ってみる必要があります。それを行うことで最終的に、ターゲットとするペルソナに買ってもらえ、顧客数の確保ができる。そして、目標とする売上も達成できる。といった価格を見つけることができるはずです。

まとめ

今回はPSM分析における交点の扱い方について解説しました。4つの交点を見て価格を決めるというのはあまりレベルの高いプライシングではありません。今回説明した方法を用いることでプライシングが上手くいくので、是非チャレンジしてみてください。

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PSM分析について解説します。(Pricing Sensitivity Meter)

(この記事は、PSM分析について解説します。(Pricing Sensitivity Meter)の解説記事です)

今回のテーマは「PSM分析」です。以前竹内社長のYouTubeのチャンネルでも触れましたが、これはプライシングのプロである私たちが最も信頼している分析の手法です。この記事ではPSM分析の用い方、正しい使い方について細かく解説していきます。

【この記事の結論】
・PSM分析により、顧客が支払える金額を知ることができる!
・アンケートでは「いくらなら買ってくれますか?」とは質問しない!
・セグメント毎にPSM分析を行うことが成功の秘訣!

PSM分析とは?

PSM分析は「お客さんがいくらで買ってくれるか」を知るための価格分析方法です!

PSMとはPricing  Sensitivity  Meter の略であり、これらの頭文字をとってPSM分析というネーミングとなっています。オランダの経済学者 Van  Westendorp によって開発されたモデルであることからVan  Westendorp モデルと呼ばれることもあります。PSMはお客さんの支払い意欲を特定するために開発されたモデルです。値段を下げようと考える時や値上げを模索する際、PSM分析を用いることによって「お客さんがいくらで買ってくれるか」を知ることができます。

PSM分析の手順

実際にPSM分析を行う際の手順について解説します。アンケート調査を行いそれをグラフで表現するというのが大まかな流れです。それぞれの手順について詳しく説明していきます。

1.アンケート調査

アンケートを行う際のポイントは「いくらなら買ってくれますか?」と聞かないことです!

お客さんには安く買いたい心理があります。この心理のせいで「いくらなら買ってくれますか?」と直接的に聞くと、実際に買ってくれる価格よりも安い価格をお客さんは答えてしまいます。そのため、この質問で得られた結果は精度が悪いです。
これを避けるためにPSM分析では間接的にいくらで買ってくれるかを聞き出します。
具体的には以下の4つの項目を質問に混ぜ込むことでバイアスの無い答えを聞き出すことができます。

1.高いと感じ始める金額
2.これ以上高いと買いたくなくなる金額
3.これ以上安いと品質や効果に不安を感じ始める金額
4.やすく感じ始める金額

2.グラフの作成・読み取り

アンケートを取り終えたら集計をして、次のようなグラフを作成します。図を見ると交点が4つあることがわかります。4つの中で左にあるのが下限価格、上にあるのが妥当価格、下にあるのが最適価格、右にあるのが上限価格です。

PSM分析では、グラフの交点に着目してはいけません!交点をそのまま価格に反映するのは間違いです。

実はPSM分析のグラフから得られた交点には根拠がなく、「交点に全く意味がない」という弱点があります。そのため、グラフ上の最適価格をそのまま価格として選べば良い訳ではありません。同じサービスを購入している人の中でも新規の顧客やリピーター、所得の大小など様々な属性の人が存在します。異なる属性を持つ人々がアンケートに回答しているため、すべてのアンケート結果から得られた最適価格は回答者全員の平均的な答えであり、それが売り手の設定したターゲットに刺さるとは限りません。従ってPSM分析の交点をそのまま価格にすると精度が低下してしまいます。

3.価格決定

セグメント毎に分析を行い、ターゲット層にあった価格を決めることが大切です!

先ほど弱点について触れましたが、PSM分析をセグメントごとに行うことは非常に効果的です。お客さんには様々な属性の人がいます。サービスによってお客さんの支払い意欲が変わる要素や条件が存在しており、その条件ごとにお客さんをセグメント分けし、そのセグメントごとにPSM分析を行なっていきます。それぞれのセグメントについて分析すると、お金持ちの人はいくらくらいまで払ってくれる、そうでない人はこれくらいまで払ってくれるというように分析することができます。
セグメント毎の支払い意欲を見た後は、誰に合わせて価格を決めるのか について考えます。例えば、今後はお金持ちの層を中心に売っていきたいという経営戦略を取るのであれば、そのお客さんのセグメントに合わせて価格を決めることになります。

まとめ

今回はPSM分析について解説しました。

【この記事の結論】
・PSM分析により、顧客の支払える金額を知ることができる!
・アンケートでは「いくらなら買ってくれますか?」とは質問しない!
・セグメント毎にPSM分析を行うことが成功の秘訣!


これら3つのポイントを抑えることが重要です。特にセグメント毎にPSM分析を行うことで分析の精度が向上します。正しくPSM分析をすることができれば、強力な武器となりますので皆さんもぜひやってみてください。

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精度の高い価格調査分析の設計方法

(この記事は、【アンケートの作り方】アンケート調査で精度の高い設計方法について【PSM分析】の解説記事です)

【質問】
PSM分析などのアンケート調査の信憑性が不安です。アンケートで正しい価格を決めることはできるのでしょうか?

【回答】
アンケートでも高い精度の情報を得ることができます。信憑性を向上させるためには、アンケートの取り方を改善しましょう。

その理由について、例を用いながら説明していきます!

アンケートの信憑性について

アンケートで正しい答えを得ることができないのはアンケートそのものが悪いのではなく、アンケートの取り方が悪い可能性があります

私たちは価格分析の方法としてPSM分析を推奨していますが、「アンケートでは回答者が本当のことを答えてくれないのでは?」と懐疑的な方もいるのではないでしょうか。「回答者が本当のことを答えてくれない」というのがアンケートの弱点だと私も思っています。ですが、これはアンケートの取り方を工夫することでカバーできるものであり、アンケートによる調査の精度は高いと思っています。

アンケートの精度を上げるアンケートの取り方

アンケートをとる際には「具体的な要件設定」、「どの課金の単位で金額を聞くのか」、「回答者の所属する属性」の3つを明確にすることで精度が向上します。

アンケートの精度を上げる方法について説明します。例として、まずは寿司の価格のPSM分析を紹介します。

アンケート調査の工夫~お寿司屋さんの例~

寿司と聞いて思い浮かべるお店は人によって違います。聞き方や顧客の属性に注意しましょう。

「寿司を食べにいく時、安いと感じる金額はいくらですか?」という質問に対し、皆さんはどのように答えますか?100円など回転寿司の一皿あたりの金額を考えた方もいれば、1万円、2万円など高級寿司のコース金額を想像した方もいると思います。このように「寿司の価格はいくらなら安いと思いますか」と尋ねると、結果がぶれてしまう可能性があります。
また、寿司に対して1万円、2万円払える人と、1,000円、2,000円しか払うことができない人はそもそも属性が違います。これが性別によるものなのか、年収によるものであるのか、居住地によるものなのかはサービスによって異なりますが、属性によって支払える金額が異なるため、収集したデータをそのまま分析すると失敗の原因となります。

アンケート調査の工夫~Slackの例~

アンケートを取る際には具体的な要件設定や、どの課金の単位で金額を聞くのかという部分を明確に定める必要があります。1アカウントなのか会社単位なのか、具体的な要件設定を行ってください。

「Slackがいくらであれば適正な価格であると思いますか?」と尋ねた場合、1アカウント800円と認識している個人と100アカウントで8万円と認識している企業では回答が異なる恐れがあります。具体的な要件設定をしなかったり、どの課金の単位で金額を聞くのか明確に定めなかったりするとアンケート結果がブレてしまいます。

アンケート結果を扱う際の注意

アンケートの回答結果を分析する際は、外れ値などに注意しましょう。


要件や聞く単位を明確にし、聞く対象も絞り込んだとしても、どうしてもアンケートに適当に回答する人は発生してしまいます。これはアンケートの回答結果を見て整理しましょう。明らかにおかしい回答を弾き、綺麗なデータのみでPSM分析を行うと、それなりの精度で結果が出てきます。

まとめ

アンケートをとる際には「具体的な要件設定」、「どの課金の単位で金額を聞くのか」、「回答者の所属する属性」の3つを明確にすることが大切です。これらを適切に実行すると、アンケートを基にしたPSM分析でも精度の高い結果が得られます。

重要なのは、アンケートを正しく取ることです。アンケートに懐疑的になるのではなく、アンケートの取り方をまずは考えることで、いい価格を見つけることができ るのではないでしょうか。

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価格調査方法まとめ|適切な方法を紹介

あなたは価格調査に最適な方法をご存知でしょうか。この記事では、様々な価格調査方法を紹介します。

価格調査に適切な方法

結論を先に言ってしまうと価格調査方法で最も効果的な方法はアンケートを使った方法です。

価格調査でアンケートを使用することに懐疑的な方もいるかもしれません。

しかし、業界内ではアンケートが価格調査の最も有力な分析手法として知られています。実際に、BCGやマッキンゼーなどのコンサル企業やディズニーなどプライスハックが調査する限り、国内外問わずプライシング戦略で成功している企業で調査時にアンケートを使用していないところは聞いたことがありません。

では実際、アンケートをどのようにおこなって、どうやって分析すればいいのでしょうか。次はアンケートを使った様々な分析手法を5種類紹介します。

PSM分析

価格調査の分析でプライスハックが最適だと思う分析はPSM分析です。PSM分析以前は単純質問と言われる方法が一般的な調査方法でした。

単純質問は、「この製品やサービスが〇〇円だとしたら、どれくらい買いたいと思いますか」や「この製品やサービスがいくらなら買いたいと思いますか」と言った質問を回答者にします。

そして、そのアンケート結果に基づいて企業は製品やサービスの価格決定をするというものです。

しかし、次第にアンケート回答者である消費者が価格に敏感になり製品やサービスが安くなるかもしれないと考えたり、自分が思っている価格よりも低く回答したり、建前で価格を高く答えることが多くなりました。

これにより価格に対する直接的な質問をしていく単純質問では正確な分析をすることが困難になってしまいました。こういった理由によりPSM分析という新たな手法が取り入れられるようになっていきました。

PSM分析とは

PSM分析とはバリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するため使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受けいられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。

PSM分析の方法・手順

一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。

まずは、アンケート調査を行います。PSM分析では、アンケートで4つの質問をすることで、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

次に、アンケートの結果を集計し、以下のようにグラフに回答を累積してプロットします

PSM分析説明1

グラフはX軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合を表します。
価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

このグラフから価格設定の参考となる4つの交点がわかります。

・最適価格
「高すぎて買えないと感じ始める価格」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点で顧客が望む理想的な価格

・妥協価格
「安く感じる」と「高く感じる」の交点で消費者に「このくらいの価格なら仕方ない」と感じてもらえる価格

・上限価格
「安く感じる」と「高すぎて買えないと感じ始める価格」の交点でこれ以上高くなると、消費者に購入されなくなるとみられる価格

・下限価格
「高く感じる」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点でこれ以上安くなると。消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる
」と感じる価格

交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。

PSM分析の不足点

PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。

最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。

交点の取り扱いがそのまま売り上げの最大化につながるわけではないので、売り上げの最大を目指すフェーズと顧客数拡大を目指すフェーズによってPSM分析の見方を変えなければいけません。

また、売り上げの最大化や顧客数を最大化することどちらの見方においても製品やサービスのターゲットセグメンテーションをすることが必要になります。ターゲットセグメンテーションをするときは製品やサービスに関するどの変数がターゲットの支払い意欲を変えているのかを調査し、適切にターゲットを切り分けなければいけません。

この辺りの作業は、専門的な知識やノウハウが必要となってくるため、正確に調査し実行するには外注することも選択肢になり得ます。

PSM分析に関する詳しい記事はこちら。

コンジョイント分析

コンジョイント分析の方法とは

コンジョイント分析はB2Cマーケティングでよく使われ、消費者が製品・サービスを選ぶ際の、購買主要因(KBF:Key Buying Factor)を数値化する分析手法です。

主にここで数値化されるのは、商品・サービスの構成要素(価格・機能・デザインなど)です。

コンジョイント分析の方法

分析方法としては、まず商品の属性と水準を組み合わせた複雑な条件のカードで好きな方を回答者に複数回選んでいただきます。そしてその結果を統計解析することでKBFを数値化します。

この分析によって、顧客が特定の製品構成にどのくらい支払うのかを定量化し、実際の販売数量の予測に変換することかできます。これは価格決定に有効な示唆を与えてくれます。また、対象のセグメントによって商品設計の際に優先すべき属性と水準も決定しやすくなります。

コレスポンデンス分析

コレスポンデンス分析とは

コレスポンデンス分析は、顧客の心の中の自社と競合ブランドの位置関係を知り、イメージの強みと欠けている要素を分析する手法です。散布図として結果を出すため、項目が多い時や一目で見たい時に用いられることが多いです。

コレスポンデンス分析の方法

分析方法としては、まず表側、表頭を用いてアンケートを行い、クロス集計をします。そしてその結果を用いて表側の要素と表頭の要素感の関係性をそれらの相関関係が最大になるように低次元空間のマップ上に散布図としてプロットして多変量解析を行います。その際に散布図の縦軸、横軸の意味を分析者が考える必要があります。

これによって企業のブランドイメージのポジショニングを明確化できます。

ポケットプライス分析

ポケットプライス分析とは

ポケットプライスは、本当の意味で企業がポケットに入れている価格と、内部コストまでも計算して本当にその取引からマージンが稼げているのかどうか、実態把握する分析手法です。

ポケットプライス分析の方法

分析方法としては、メーカーが商品をチャネルの多段階に渡って流通させている場合、まずそれぞれのステップで発生するリベート*やアローアンス**を商品ごと、顧客ごと、注文ごとに分析して実態を把握します。その後に不適切なプライシングをあぶり出してその発生理由を分析し、それを食い止めるための対策を講じます。

*リベート:メーカーや卸売業者などが商品の売上高や取引高など一定の条件をクリアした流通業者に対して支払う報酬

**アローアンス:販売店の販促活動を援護するために奨励金的な活動の総称

この分析によって収益改善と収益獲得を目標として、考えて売る仕組みと癖を営業に組み込むことができるようになります。

価格弾力性分析

価格弾力性の分析とは

価格弾力性分析は、価格の変化に対して需要量が変化する程度を経済的に測定した需要の価格弾力性(Price elasticity of demand、PED)を求める分析手法です。

価格弾力性とは、価格が変化した際に、どのくらい需要が変化するかを測定し、数値化したものです。

価格弾力性の分析方法

分析方法は2つあります。

1つ目は、アンケート調査やコンジョイント分析で価格弾力性を推察する方法です。

2つ目は、市場実験による方法です。メーカーであれば実際の店舗を数店実験的に経営することがあり、アンテナショップを経営している企業は数多くあります。いくつかのメーカーでは繋がりの強いチェーン店舗で価格変更による弾力性のテストや販売促進の実験させてもらい、小売りのFSPのデータを購入してリアルタイムでPDCAサイクルを回しています。また、ネットで実験的に顧客セグメント毎に異なる割引率を提示して反応を見ることも可能です。

需要の価格弾力性を知ることで、価格設定時や値下げ・割引戦略をとる際に活用できます。

まとめ

ここまで価格調査に関するいろいろな分析手法を紹介してきました。

しかし、分析者がアンケートをしてその結果から何を求めたいかによって使いたい分析は変わります。

目的によって分析を使い分けるのは難しさがありますので、価格調査に関してお悩みの事業者様は一度、プライシングスタジオにお問い合わせください。

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PSM分析とは|適正価格を見つける調査方法と手順

PSM分析とはどのような分析手法なのでしょうか。この記事では、適正価格を見つける価格調査である、PSM分析について解説します。

PSM分析(価格感応度分析)とは

PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。1976年にオランダの経済学者VanWestendorpによって開発されたことから、PSM分析は「Van Westendorpモデル」と言われることもあります。

PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。

また弊社代表の高橋が執筆したnoteでは、日本国内向けサービスの料金変更を行ったネットフリックス(Netflix)の事例を取り上げて解説しています。こちらも合わせて参考にしてみてください。

なぜ支払い意欲を調査すべきなのか

顧客に対して支払い意欲を調査することで、根拠をもって価格設定ができるようになります。

価格設定は、事業成功のために重要な要因ですが、多くの事業で価格設定の確信を持つことができません。いくらなら顧客が購買するかの予測ができず、見当による価格設定となってしまうためです。特に自社の製品が他社の製品と類似でなく革新的な価値を持つ製品であればあるほど、価格設定は困難になります。

PSM分析と他の調査手法との比較

支払意欲の調査で最も一般的な方法は、潜在的な購入者に、製品に支払う金額を聞くことです。これは直接質問法と呼ばれ、簡単に実行することができますが、いくつかの欠点があり支払意欲調査として不足です。

購買可能な金額は点ではなくレンジであり、単一な価格を聞くことでは勘案しきれません。

また、直接質問では、潜在的な購入者が実際の支払意欲よりも低い価格で回答が集まると言われています。これは、基本的に購入者が企業に対して、価格を下げるように交渉したい心理が働くためです。

PSM分析では、直接質問と異なり、間接的な質問を複数おこなうため、間接的に支払意欲を測定し、バイアスの少ないレンジを持った支払意欲を測定することができます。

PSM分析の方法・手順

一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。

1.アンケート調査

2.可視化

ステップ1.アンケート調査

PSM分析では、アンケートを通じて、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

PSM分析で実際に使用されるアンケート項目は次の4つです。

PSM分析のアンケート項目

  • その製品・サービスについて、あなたが高いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたが安いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上高いと検討に乗らない金額はいくらくらいですか?
  • その製品・サービスについて、あなたがこれ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額はいくらくらいですか?

直接的に購入したい価格を尋ねるのではなく、製品・サービスの価格に対する顧客の感覚を把握します。

ステップ2.可視化

次に、価格調査の結果を集計し、以下のようにグラフに回答者を累積してプロットします。
PSM分析
X軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合をあらわします。

価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

価格設定の参考となる4つの交点がわかります。

・最適価格
最も価格拒否感がないと見られる価格

・妥協価格
高い・安いの評価が分かれる価格

・上限価格
これ以上高くなると、消費者の購入されなくなると見られる価格

・下限価格
これ以上安くなると、消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる」と感じる価格さ

交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。

PSM分析の不足点

ここまで一般的なPSM分析について説明しましたが、実際の価格設定では、PSM分析だけだと不足な点もあります。

交点の取り扱い

PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。

最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。

PSMで収集したデータをプロットするだけでなく、集計して価格ごとの購買人数を推計した方が正確な結果となります。

Pricing Sprintとは?

プライシングスタジオでは、PSM分析をもとに価格戦略の策定を提供するサービス「Pricing Sprint」を提供しています。

Pricing Sprintでは、PSM分析で顧客の支払意欲を把握するだけでなく、支払意欲をもとに顧客数、売上のシミュレーションをおこなえます。価格決定で重要な価格戦略の策定や価格策定サイクルの定着も専属のコンサルタントが伴走しますので、価格に課題を抱える企業の皆様ごとに最適なサービスを提供します。

「Pricing Sprint」サービスページはこちら

まとめ

PSM分析は、製品・サービスの適正価格を導くために用いられる分析手法です。顧客のアンケートにもとづき適切な価格を導くため、顧客価値から価格を算出可能です。バリューベースの価格設定を実現したい事業者様は、まずはお気軽に、プライシングスタジオにお問い合わせください。

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WTP(Willingness To Pay・支払意欲)とは|重要性・影響する要因・把握する方法

WTP(Willingness to Pay)とは支払意欲・支払意思額のことです。

価格戦略を検討する際に、よく出てくる言葉ですが、複数の意味があるためどういった意味で使われる言葉なのか、またなぜWTPを考えることが重要なのかを、ご紹介します。

WTP(支払意欲)とは

WTPとは、「Willingness to Pay」の略で、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額のことを指します。日本語では、支払意欲・支払意思額と呼ばれることもあります。

製品・サービスを販売するビジネスではより良い価格設定のためにWTPの概念が用いられています。また、経済学では環境など実際に価格がついていないが便益金額を計算する必要がある場合にWTPを用いることがあります。

WTPはビジネス側面と、経済側面で使われ方や扱いが異なるので、本記事ではビジネス側面のWTPについて解説します。

WTPの重要性

 

ビジネスでは、潜在顧客の支払意欲は大切です。潜在的な事業価値を収益可能性から考えると、「WTP(支払意欲) – コスト」と考えることができるでしょう。事業者側は、事業価値を上げるために、コストを低くできるようにオペレーションを最適化するか、WTP(支払意欲)を上げるために製品・サービス価値を上げるための投資をする選択肢があります。

実際に企業で行われている価格決定では大抵の場合、顧客が購入してくれる価格かつ自社の利益が出る価格を選択しますが、これはWTPとコストの間の任意の価格を決定していることになります。WTPは顧客ごとに違うため、選択した価格に対して、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多ければ購買者が相対的に増えることが想定されますし、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が少なければ購買者が相対的に減ることが想定されます。

顧客獲得観点では、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多い金額を選ぶことが大切になります。

また利益観点では、WTPに近づけば近づくほど利益が増えるため、いかにWTPに近い価格を設定するかの観点が重要になります。

このように価格決定で重要なWTPですが、コストは自社内で算出することができる一方、WTPに関しては顧客調査を行わなければ把握することができないため、顧客調査を実施せずに価格決定をされている企業が多いという現状があります。

WTPに影響を与えるもの

WTPに影響を与えるものは、現在の市場環境から顧客の個人的な好みまでさまざまな要因があります。

経済状況

経済状況に応じて顧客のWTP・支払意欲は変化します。好景気の場合は増加傾向にありますが、一方不況の場合は減少します。価格設定をする場合、一般的な市場の変化に注意しなければなりません。

季節性や流行

季節性の高い商品・サービスの場合、WTPは時々により変化します。季節性による変動は、毎年のものであるため、過去にどのように変化しているかを把握することで、事前の予測が可能です。

ただし、流行はかなり多様であり、流動性の高いものであるため、追うことは非常に困難です。流行は産業・分野によって固有なものであるため、変化が起こったときに常にそれを把握することが重要です。

顧客の金銭感覚

すべての顧客が生まれ育った環境・生活する居住区などの違いにより様々な金銭感覚を持っています。これらの全てを把握することは不可能ですが、業界ごとに顧客に対してどのような影響があるかを調べることは可能です。

例えば、年収の高い顧客はWTPが高く、価格が高くても便利なものに対して好意的に感じる可能性があります。都内の年収の高い人が、地下鉄などの公共機関での移動よりタクシーでの移動を好むことなども一例としてあげられます。

これらの傾向をデータ化し、WTPをセグメントにわけると、より適切な価格帯を作成することができます。

顧客の状況的なニーズ

顧客が価格について個人的な感情を持っているように、個々の状況もWTPに直接的な影響を及ぼします。顧客の状況も場所・目標・役職など様々ですが、その時々によってニーズは変化します。

商品・サービスの品質

品質に対する顧客の認識は、WTPに直接影響を及ぼします。品質が高ければ高いほど、支払意欲も高まります。

商品・サービスの希少性

希少性の高いものは、それだけで価値のあるものになり、顧客のWTPにも影響します。

希少性を武器に顧客の支払意欲・商品価値・価格をあげることは可能ですが、高すぎると一部の顧客にとっては購入不可能のものになってしまいます。

そのため、事業としてのターゲットを明確にして価格設定することが大切になります。

WTPを把握する方法

支払意欲を把握するためには、直接買いたい金額を尋ねる直接質問法や、間接的な質問を行うことで交渉バイアスを抑えて支払意欲を測るPSM分析という手法があります。

実際に調査を行う際は、どちらの手法を用いるにしても、支払意欲調査の目的(価格改定、新商品開発等)を明確にして、調査を行うことが大切です。

PSM分析についてはこちらの記事を参照してください。

まとめ

WTP(Willingness to Pay、支払意欲)とは、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額です。

製品・サービスを販売するのに最適な価格を見つける際に、売り手・買い手の両方にとって、WTPは重要な要素となります。

価格・プライシングに関するお悩みがある事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。

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価格感応度(Price Sensitivity)とは?把握することが重要な理由

顧客の購買行動に対して価格がどのように影響しているかを定量化した価格感応度とは何か・価格感応度を把握することが重要な理由・測定方法を解説します。

価格感応度とは

価格感応度は、「Price Sensitivity」の日本語訳であり、顧客の購買行動に対して価格がどのように影響しているかを数値化する尺度のことです。製品の価格感応度を把握することにより、収益を最大化する価格帯と、価格変更が販売数に与える影響を明らかにできます。

なぜ価格感応度が重要なのか

価格感応度は、顧客の支払意欲を明確にし、製品が生み出している価値を定量化することができます。価格感応度を知ることで、価格変更を実施するときに価格を最適化することや、製品開発・改善にあたり顧客に価値のあるモノを作り出すことが可能です。この価格感応度を知らなければ、本当に製品開発・改善が顧客にとって価値のあるものなのかを知ることはできません。

価格感応度の測定方法

価格感応度の測定をするためには、ターゲット市場と顧客をしっかりと把握しなければいけません。顧客は、製品の価値に対してそれぞれが違う認識で捉えています。つまり、各顧客毎に価格感応度は異なります。例えば、ある顧客が「この価格なら払ってもいい」と渋々支払いをしているのに対して、ある顧客は「この価格なのはお得すぎる」といったように、価格に対しての感じ方は人それぞれです。

そのため、収集するデータは市場全体で収集するのではなく、自社の顧客を対象に収集しなければ、正確な価格感応度を把握することはできません。顧客の価格感応度を知ることは、販売量に対しての価格上昇の影響を予測し、最適な価格を知ることが可能です。

また、価格感応度を知るためには、顧客に単に「製品Aに対していくら支払うか」だけを聞くだけでなく、以下の4段階の質問をしなければいけません。

・製品の価格が高すぎて、購入の検討をしない価格
・製品の価格が安すぎて、品質に疑いを感じる価格
・高いと感じ始める価格
・安いと感じ始める価格

最初の2つの質問は、回答者に許容可能な価格範囲を固定するのに役に立ち、次の2つの質問は、最適な価格帯を狭めるのに役に立ちます。統計的に優位な数の回答数を得られたら、回答をグラフ化して、より具体的な最適価格を設定することができます。

詳しくはPSM分析(価格感応度分析)として紹介しているので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

まとめ

価格感応度(Price Sensitivity)とは、顧客の購買行動に対して価格がどのように影響しているかを数値化する尺度のことです。製品の価格感応度を定量的に把握することで、収益最大化や販売数増加に繋げられます。

価格戦略・プライシングについてお悩みの事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせ・相談してください。