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2021年10月よりディズニーチケット値上げ!これまでの値段推移を踏まえて考察

(この記事は、プライシングスタジオ 高橋 嘉尋のnoteを再構成して転載しています)

2021年9月24日、東京ディズニーチケットの最大700円の値上げが発表されました

ここ最近、短いスパンでチケット価格が値上げされているので、「またか!?」と思った方も多いと思います。いったい改定後の値段はいくらになるのでしょうか?

また、これだけ値上げしても大丈夫なのでしょうか?

徹底解剖することにしたので、是非お付き合いください。

<この記事の結論>

・これまでの値上げが大きな収益に繋がっている

・1-2年のスパンで価格を見直している

・値上げは正しくやれば何も問題にならない


プライシングスプリント

新価格の概要

今回の値上げで、チケットの値段はいくらになったのでしょうか。

新しい価格表はこちらです。

東京ディズニーリゾートでは、2021年3月から変動価格制が導入されており、これまで1デーパスポートの大人料金は、平日用料金(8,200円)と休日用料金(8,700円)の2パターンになっていました。

それが今回、7,900円/8,400円/8,900円/9,400円の4パターンに改定され、最大700円の値上げが実施されました。

では変動価格はどのように設定されているのでしょうか。次のグラフは現在公開されている10月から2022年1月までの価格変動を表しています。

(出典:YAHOO!ニュース)

このグラフを見ると土日と祝日、クリスマスと年末年始は最も高い価格設定となっているようです。また、日曜日の価格設定が土曜日より抑えられており、平日だと水曜日と木曜日が最も安く設定されているようです。

今回の値上げは、なぜ行われたのでしょうか。これまでの変遷から紐解いていきたいと思います。

チケット価格の変遷

まず、ディズニーチケットの価格の推移です。

【ディズニーチケットの値段推移】

(参考:CASTEL)

驚くことに、このデータを見ての通り当初は3,900円で、今の半分以下の価格だったのです。

このグラフからディズニーチケットについて、これまで合計15回、直近は1-2年のスパンで値上げをしていることがわかります。

来場者数の変遷

これだけ高頻度かつ短いスパンで値上げを行なっていますが、来場者数はどうなっているのでしょうか。来場者数の推移についてみていきましょう。

東京ディズニーランド・ディズニーシーの年間入園者数の推移はこのようになっています。

(参考:CASTEL)

このグラフをみてわかるように、ディズニーは何度も値上げを実施しましたが、来場者数に直接影響していません

ここから、いくつか学べるように思えます。

値上げが収益に与えたインパクト

これまで、値上げで一体どれだけの収益インパクトがあったのでしょうか。

例えば2016年のディズニー来場者数は、30,000,000人です。来場者数に大きな変化はないため、この一回の値上げ(+500円)によって1年間で約150億円の利益増加に繋がったことになります。

逆を言うと、このタイミングで値上げをしていなかったら利益150億円の機会損失が生まれていたことになります。そのため、もし2011年から値上げをしていなかったら、、、と考えるだけで恐ろしいです。

つまり、数百円の値上げは数百億円の利益に直結する強力な収益ドライバーになるということを学ぶことができます。

短期スパンでの価格変更

このように1-2年のスパンで値上げをすることには、賛否が分かれると思います。実際のところどうでしょうか。

ディズニーチケットに限って言うと、むしろこのスパンでやったからこそ、これだけ値上げできているともいえます。

顧客には内的参照価格というものが存在しており、現在支払っている金額が大きく影響します。(内的参照価格:消費者が商品を購入する際の基準となる価格「参照価格」のうち、過去の経験などから形成された消費者の記憶の中の価格)

実際、私たちが調査しているサービスでも、NPS(顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標)のスコアより、契約日による支払額の差異が、支払い意欲に対し、より影響を与えている場合が多いです。

つまり、2011年、2014年、2015年に値上げを行わず2016年にまとめて1,600円の値上げをしていたら結果は違ったはずです(前回の価格次第で、値上げ可能幅が変わるということ)。なので、1-2年のスパンで価格を見直したからの成功といえます。

値上げは1-2年という短いスパンでも、正しく調査して行うと、顧客数に影響を与えることなく実施することが可能です。

今回のディズニーチケットの値上げは、調査の結果、値上げ可能だったため実施したにすぎず、今後も調査していく中で、顧客の支払い意欲上がったら値上げしていくと考えています。

調査に関してはこちらの記事が参考になります。

また余談ですが、ディズニーは値上げで得た利益をアトラクションやスタッフ研修に投資して、顧客の満足度を高める戦略を行なっているようです。これが継続的な値上げに対する顧客の許容や、揺るぎないコンテンツ力に繋がっていることはいうまでもありません。

まとめ

今回はディズニーチケットの値上げについて考察しました。数百円の値上げは大きな収益ドライバーになる上、短いスパンでも正しくやれば顧客は離れません。

プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。

 

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Netflix値上げの意図は?-ガチ考察してみた

(この記事は、プライシングスタジオ 高橋 嘉尋のnoteを再構成して転載しています)
2021年2月5日、Netflixが最大13%の値上げを発表しました。日本での料金変更は2018年8月に次いで2度目となるようです。

巣ごもり消費が需要拡大への追い風となり、さらに「愛の不時着」、「梨泰院クラス」などのオリジナルコンテンツが多数追加され、ユーザー満足度が高まりました。それらによって、絶好の値上げ機会となっていたのではないでしょうか。

ネットでは様々な意見がみられますが、どういう背景でこの値上げは行われたのでしょうか。その意図を徹底解剖することにしましたので、是非お付き合いください。

この記事の結論

・バリューベースプライシングを用いており、今後とも定期的に値上げを行なっていくと推測

・顧客数を維持できる範囲内で、売上が最大化する価格を選択している


プライシングスプリント

値上げの狙い

まず、どういう意図でこの値上げは行われたのでしょうか。

Yahoo!ニュースでは以下のように解説がなされています。

“値上げの理由としてNetflixは、「素晴らしいエンターテイメントへ投資を継続し、映画やドラマの作品数を着実に増やしていけるよう、サービス料金の見直しを適宜行なっている。日本のメンバーにより多くの選択肢を提供し、継続的にNetflixの価値を高めていくことが不可欠であり、同時に、メンバーに手頃な価格でご利用いただけることが重要であると考えている」とコメント。”
このコメントと真意に間違いはないように思えます。

『コンテンツの追加⇨ユーザー満足度の向上(支払い意欲の増加)⇨値上げ⇨収益拡大⇨コンテンツへの投資⇨ユーザー満足度の向上(支払い意欲の増加)⇨値上げ⇨収益拡大⇨コンテンツへの投資…』の様な循環をプライシングにより実現させようということでしょう。

この考え方の根底にあるのは、バリューベースプライシングの概念です。

バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定することです。バリューベースプライシングは他のプライシングと異なり、販売数、売上の推計をおこなうことができ、計画性をもった事業運営が可能になります。このことからも、グローバルでは非常に頻繁に使われている手法になります。

余談になりますが、東京ディズニーランドのプライシングも同じような方法がとられており、アトラクションの追加やパフォーマンスの向上に伴って、過去13回の値上げが行われています。

このようにNetflixでも、定期的に価格を見直し、値上げ可能なタイミングで積極的な値上げを行い、コンテンツに投資していくスタンスで経営をしていくのではないかと予想します。

なぜこの価格になったのか

次になぜこの価格になったのかを突き止めるため、普段弊社で実践している価格分析のほんの一部ではありますが、PSM分析をはじめとするプライシング分析に用いられるアンケート調査や分析を実施してみました。

細かい調査・分析内容の詳細は長くなるので、結果だけ書きます。

分析に用いたアンケートデータ

Pricing Sprintのアンケート機能を用いて、およそ100名の「実際にお金を支払って利用している」ユーザーにアンケートを収集しました。

アンケート対象:実際にお金を支払って利用しているNetflixユーザー
アンケート実施期間:2021/02/06~2021/02/07
サンプル数:106件
価格感度設問:現行のプランの月額料金
顧客属性設問:性別、年齢、居住人数、など
利用動態設問:オリジナル作品の視聴有無、月間視聴時間、視聴デバイス、など
サンプルの内訳は以下の通りで、ある程度は年齢や性別などに偏りがないようになっています。

分析をしてわかったこと

上記のデータを用いてシミュレーションを行い、料金プランごとに各価格の許容ユーザー比率を可視化しました。

結論からお話しすると、今回の値上げは、各プランそれぞれのユーザー数を維持できる範囲内で売上を最大にできる価格を選択していました。

ベーシックプラン(880円→990円)から見ていきましょう。このグラフを見ると、ベーシックプランの値上げ前価格(880円)に対する価格の許容ユーザー比率が94%ということがわかります。これが値上げ後価格(990円)にあげたとしても、許容ユーザー比率が92%とほとんどユーザーが離脱することなく値上げを実現することが可能になります。

ちなみに、さらに100円あげた1,090円にすると許容ユーザー比率が82%と10%も減少してしまいます。このようにある一点を超えたら大幅に顧客が離れるポイント(価格の閾値)の限界を攻め、ユーザー数を維持できる範囲内で売上を最大にできる価格にしています。

スタンダードプラン(1,320円→1,490円)でも同じことが言えました。


値上げ後価格である1,490円の場合の許容ユーザー比率91%が、1,590円にしてしまうと77%となってしまいます。スタンダードプランでも価格の閾値の限界を攻めた価格を選んだと言えるでしょう。

プレミアムプラン(1,980円を維持)はどうでしょうか。


プレミアムプランの場合、現在の価格が許容ユーザー比率およそ90%のラインです。しかし、2,080円に値上げをしてしまうと、78%と大幅な顧客離脱(またはプランのダウングレード)が起こってしまいます。値上げをしなかったというより値上げができなかったと言えるでしょう。

さらに細かく分析しましたが、20円の値上げも、どうやら許容されないようです。

このように価格に対するアンケート調査を行い、それを用いたシミュレーションを実施することができれば、「顧客数が最大化する価格」と「売上が最大化する価格」、「顧客数を維持しつつ売上増加が可能になる価格」などを発見することが可能になります。

値上げ実行の際に行われていた工夫

いざ最適な価格がわかっても、いきなり価格変更を強行するとユーザーの強い反感を買うことになります。ではNetflixではどういう工夫がされているか見ていきたいと思います。

Yahoo!ニュースの記事ではこのような記載がありました。

5日以降、Netflixに新規で登録する際には新たな料金体系が適用される。既存メンバーは来週以降、順次サービス内のポップアップやメールで料金改定を案内。翌月以降の支払い時から新しい料金が適用される。パートナー経由で加入している場合は、今後順次適用される予定で、適用のタイミングはパートナー毎に異なるという。

公式サイトのQAにもしっかり記載があります。

Q:自分のプラン料金が変更されるかどうかはどうやってわかりますか?
A:お客様のプラン料金が変更される場合には、変更された料金が適用される請求日の1ヵ月前にNetflixからメールをお送りすると共に、Netflixへのログイン時にメッセージを表示することでプラン料金の変更をお知らせいたします。

このように値上げの際は、新規ユーザーのみ新規価格を適応し、既存ユーザーに対する値上げは事前通知をし、後ほど実施することで反感を買わないような工夫をしています。定期的な値上げを実行可能にするためには、このようにQAページで事前に説明たり、利用規約に明記しておくのが好ましいいと言えます。

余談ですが、このようなケースの他に、値上げが実行されても、既存ユーザーは同じ価格で利用することができる「GRANDFATHERED PRICING」を実施する企業もあります。

まとめ

Netflixは、バリューベースプライシングを実施し、値上げによる収益増加分をコンテンツへ投資し、さらなる顧客満足度の向上を狙っているといえるでしょう。そして今回の値上げは、ユーザー数を維持できる範囲内で、売上を最大にできる価格を選択したのではないでしょうか。

このように、グローバルで圧倒的な成長を実現する企業は定期的な価格の見直しを行い、収益の増分をコンテンツへの投資にまわしています。定期的な価格の見直しをご検討されている方はぜひ一度、弊社にご相談ください。

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超低価格戦略とは?意味、成功した企業事例、6つの成功要因について解説

近年、新興国市場では超低価格セグメントが形成されています。これは極めて巨大なセグメントで「21世紀の最大の市場機会」ともいわれます。
では、どのようにしたら超低価格セグメントを獲得できるのでしょうか。今回は、その答えとなる超低価格戦略について解説していきます。


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超低価格戦略とは

超低価格戦略とは、新興国の超低価格セグメントの獲得を目的とした戦略のことです。この戦略では、低価格戦略よりもさらに50〜70%安い価格で商品やサービスが販売されます。

新興国の貧困層の人は、先進国では当たり前になっている一般的な製品に手が届きません。そのため、価格を極めて低く抑えることが必要になってくるのです。

また、人類の86%の年間世帯所得が1万ドル以下であるという事実から分かる通り、超低価格セグメントは無視のできないほど巨大で、「21世紀の最大の市場機会」ともいわれています。

超低価格戦略で成功した企業の事例

超低価格戦略で成功した企業について紹介していきます。

タタ

インドの大手自動車メーカーであるタタは、超低価格戦略で成功している例として有名です。
特に、2008年から販売された「タタ・ナノ」は、日本円で1台約20万円ほどで、世界中から注目を浴びました。

ドイツの自動車サプライヤー9社がこの車に部品や技術を提供したのです。
そのため、超低価格にもかかわらず、西欧の主要サプライヤーの持つテクノロジーが驚くほど大量に用いられていました。

タタ・ナノ(出典:Tata Motors)

ホンダ

日本の大手自動車メーカーであるホンダも、超低価格戦略で成功している例として有名です。
安さが求められるベトナムの市場にて、ホンダは「ホンダウェーブ」を日本円で約8万円で販売し、中国の競合企業からシェアを勝ち取りました。

安価のホンダウェーブ(出典:バイクブロス)

6つの成功要因

超低価格戦略で成功している企業には共通する戦略があります。ハーマン・サイモンは自身の本「Confessions of the Pricing Man: How Price Affects Everything 」の中で、超低価格戦略における成功要因を次のように述べています。

シンプルだがしっかりと考える

企業は製品を分解して必要最低限のものに留めなくてはならないが、単純化しすぎて不具合が生じるようではいけません。そのため、最低限の品質を考慮する必要があるのです。

現地で研究開発する

現地のニーズに応えるため、企業は研究開発を新興国市場で行う必要があります。研究開発、調達、製造を含むバリューチェーン全体を新興国市場に置くことが望ましいです。

最低コスト生産にロックインする

超低価格を実現するためには、コストをできる限り削る必要があります。そのため、適切な設計と製造能力を持つ最低賃金拠点を選ぶことが大切になります。

新しいマーケティングと営業手法を用いる

たとえ従来の手法を諦めることになっても、なるべく低コストを維持しなければいけません。そのため、新しいマーケティングと営業手法が必要になる可能性もあります。

使いやすくて修理しやすい

サービスや商品が複雑で顧客が機能を理解できないということがないように、使いやすくする必要があります。加えて、サービス・プロバイダが修理に必要なリソースを持っていない可能性があるので、基本的な修理や調整を行いやすい商品にする必要があります。

バラツキのない品質を提供する

超低価格品の品質がただ十分なレベルにあるだけでなく、ばらつきをなくすことも大切です。そうすることで顧客から支持され、持続的成功が可能になります。

まとめ

今回は超低価格戦略について解説しました。

企業が超低価格戦略で適切な利益を持続的に生み出せるかは依然として不透明です。それでも、巨大な超低価格セグメントを獲得するには、抜本的な方向転換、リデザイン、大々的な簡素化、現地生産、極度のコスト意識が求められるということは明白でしょう。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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低価格戦略とは?意味、成功した企業事例、11つの成功要因、実施する際の注意点

企業のポジショニングを決める上で、低価格と高価格のどちらを選ぶかは最も重要な意思決定になります。低価格と高価格について、どのようにして判断するのが良いのでしょうか。

今回は、低価格戦略で成功した企業事例、成功要因を紹介していきます。

高価格戦略の詳しい記事はこちら。


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低価格戦略とは

低価格戦略とは、競合他社よりも相対的に低価格で製品やサービスを提供し、マーケットシェアを獲得する戦略のことです。コストリーダーシップ戦略ともいわれます。この方法は製品が大量に生産でき、かつコモディティ化が進んだ製品によく使われる戦略です。

一般的に、低価格で提供すると利益率は低くなってしまいます。そのため、短期的には利益を得ることはできませんが、長期的に利益を得ることができます。

低価格戦略で成功した企業

H&M

スウェーデン発のアパレルメーカーであるH&Mは、低価格戦略で成功している例として有名です。

例えばH&Mでは、基本的にTシャツは1000円から2000円程で、かなり低い価格設定となっています。賃金が安い国に生産拠点を置くなどの工夫をし、徹底的にコストを削減することによって低価格を実現しています。

(出典:WWD)

アマゾン

ECサイトで有名なアマゾンも低価格戦略で成功を収めた例として有名です。

出品業者の膨大なデータから、売れ筋商品をあらかじめ判断し、その商品を大量に入荷して直販するというやり方で低価格を実現しています。

現在日本国内ではEC業界トップの売り上げを誇っています。

(出典:amazon)

QBハウス

ヘアカット専門店のQB ハウスも低価格戦略が成功している例として有名です。QB ハウスではカット一回1200円という価格が設定されています。

従来の理髪店とは違い、カットのみ行い、シャンプーや髭剃りを行いませんが、低価格や短時間などの手軽さで、顧客満足度を高く維持しています。

(出典:千代田より)

10つの成功要因

低価格戦略で成功している企業には共通する戦略があります。ハーマン・サイモンは自身の本「Confessions of the Pricing Man: How Price Affects Everything 」の中で、低価格戦略における成功要因を次のように述べています。

最初から低価格で始める

成功している低価格企業はいずれも、最初から低価格と大量販売に専念しています。多くの場合、根本的に新しいビジネス・モデルを作り出しているのです。高価格帯や中間帯の価格ポジションから低価格へ転換して成功した企業はほとんどありません。

効率性を重視する

成功している低価格企業はいずれも、コスト効率やプロセス効率に極めて優れており、低価格にしながら、申し分ない利益率や利益総額を享受できています。

妥当なレベルでかつバラツキのない品質を約束する

低価格で提案しても、粗悪でバラツキのある品質だったならば、おそらく成功しないでしょう。持続可能な成功には、妥当なレベルで一貫性のある品質が求められます。

コア製品に特に集中する

格安会社に対してよく「ノーフリル」という言葉が使わます。付帯サービスがなく、基本的なサービスのみを提供することです。重要な顧客価値を危険にさらすことなく、コストを節減することが重要です。

高成長と高収益を重視する

高成長と高収益を重視することは大切です。これによって企業の規模が拡大することによって生み出される利得を最大限に活用できます。

借金を避ける

銀行借入れや金融市場からの資金調達を検討するのはごく稀で、それよりも自己資金やサプライヤーズ・クレジット(輸出延払金融)に依拠します。

できる限り自社でコントロールする

これは自社ブランドしか扱わないことを意味し、アルディなどは品揃えの90%以上を自社ブランドが占めています。バリューチェーン全体にも強いコントロールを利かせています。

広告宣伝は価格に特化する

低価格戦略ではコストを持続的に削減して行く必要があります。そのため、広告宣伝は価格に特化する必要があるのです。また場合によっては、広告すらしないこともあります。

メッセージを混在させない

「低価格と高収益」で成功しているほぼすべての企業が、一時的なプロモーションを多用する「ハイロー(High&Low)戦略」ではなく、「エブリデー・ロープライス(EDLP)戦略」を堅持しています。

自社の役割を理解する

ほとんどの市場は「低価格と高収益」で戦える企業の数は限定されており、わずか1,2社ということが多いのです。そのため、自社のポジションを理解して置く必要があるのです。

低価格戦略をとる際の注意点

持続的にコスト削減を行わないと、長期的な収益が見込めなくなってしまいます。企業が低価格で一貫して高い利益を達成することは可能ですが、それは競合他社に対して、明確かつ顕著かつ持続可能なコスト優位を持つ場合に限られるのです。

まとめ

今回の記事では低価格戦略について解説しました。低価格戦略は持続的にコスト削減をおこなって行く必要があります。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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高価格戦略とは|成功要因について事例を紹介しながら解説

高価格戦略をご存知でしょうか。高価格戦略とは、商品やサービスの質を限りなく高め、それに伴った高い価格設定を行うことで売上を上げる価格戦略です。

この記事では高価格戦略について、事例を紹介しながら解説します。


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高価格戦略とは

高価格戦略とは、iPhoneのように高いサービス価値の商品やサービスを、高価格で販売し、売上を上げる戦略です。

ラグジュアリー価格戦略と少し似ていますが、この戦略では威光効果はあまり発揮されません。威光効果とは、高価格の商品を所有・サービスを享受すること自体がステータスとなり、買い手に付加的レベルの社会的心理効用を与える効果です。

威光効果、威光価格に関する詳しい記事はこちら。

次は高価格戦略で成功した企業について紹介していきます。

高価格戦略で成功した企業の事例

Apple(アップル)

 iPhoneやAirPodsで有名なアップルは、高価格戦略で成功している例として有名です。例えば2020年に発売された、iPhone12は一番安い機種でも8万円程で、他社のスマートフォンと比較すると、およそ二倍の価格設定になっています。

しかし強いブランド、デザイン性の高さ、利便性などの理由から、高値でもスマホシェアトップを争うほど高い人気を誇っており、高価格戦略として成功していると言えます。

BOSE(ボーズ)

音響機器開発製造をしており、ノイズキャンセリングヘッドホンを世界で初めて開発したことでも有名な、ボーズも高価格戦略で成功している例と言えます。

例えば、ボーズのイヤホンは基本的に3万円ほどで、他にも多様な製品ジャンルを展開しています。どの商品も高い価格設定がなされていますが、音質、完成度、使いやすさなどで高いレベルの商品を提供し続けているため、高い人気を誇っています。

高価格戦略の成功要因

25カ国に39の拠点をもつマーケティングコンサルティング会社、サイモン・クチャー&パートナーズを創設し、Confessions of the Pricing Manの著者でもあるハーマン・サイモンは、高価格戦略において成功する要因を次の7つであると述べています。

提供する価値が優れている

顧客は価値に見合った物が手に入る時にのみ、その商品やサービスに高い価格を支払います。そのため提供する価値が優れていることは必須条件となってくるのです。

商品そのものの価値で勝負する

高価格戦略では、商品そのものの価値で勝負する必要があります。ラグジュアリー価格戦略では主に、高い価格を設定し、商品を所有・サービスを享受すること自体をステータスにするという戦略をとります。

しかし、そのような高価格戦略でそのようなやり方をしてしまうと、顧客は感じている価値に見合っていないと判断してしまうため成功しない恐れがあります。

イノベーションを途切らせない

高価格戦略において継続的に高価格ポジジョンを取る場合、提供する商品やサービスの価値を高いと感じ続けてもらう必要があります。そのためイノベーションを途切らせないことにより、商品やサービスの改善を繰り返していくことが大切なのです。

商品やサービスが一貫して高品質である

商品やサービスの一部が高品質であっても、バラツキがあると、顧客の近く価値を上げることは難しいです。そのため、商品やサービスが一貫して高品質である必要があるのです。

ブランド力が強い

高価格戦略では、商品力の高さが購買につながるため、高い技術を持っていることを認知されることはとても重要です。ブランド力が強いと、一時的な技術上の優位性を長期的なイメージにすることができるのです。

商品の価値やメリットを顧客に理解してもらう

仮に商品やサービスが優れていたとしても、顧客がそれを認知していなかったり、うまく理解できていないと価値を感じてもらうことは難しいです。そのため、商品の価値やメリットを顧客に理解してもらうよう努めることは大切なのです。

特別提供など値引きを避ける

売上をあげたいからといって、頻繁に値引きを行ったり、大々的なプロモーションを行うと、顧客の価格に対する信頼が薄くなってしまいます。そのため特別提供など値引きやそのプロモーションはむやみに行わないことが大切です。

高価格戦略の注意点

価格が高すぎると、販売量が伸びない

仮に高い価値を提供できたとしても、高すぎる価格設定をしてしまうと、販売量が伸びず利益が出ないことがあります。そのため、自社の商品に対して顧客が高いと感じる価格や安いと感じる価格を知っておく必要があるのです。

顧客の支払意欲を調査するために使われる手法としてPSM分析という手法があります。

PSM分析について詳しくはコチラ。

商品の価値が認知されていないと、低価格のものが売れる

高価格戦略を成功させるために、高い価値を提供できる商品を作ったとしても、顧客がその価値を理解していないと低価格のものが売れる傾向にあります。

例えばある企業が、従来の3倍長持ちする洗濯機を開発したとします。そこで価格は従来の物の2倍で販売しました。コストパフォーマンスの面でいうと、従来の物より圧倒的に良いはずですが、顧客は従来のものを選ぶことがあるです。

それは顧客はどのくらいの期間で損益が分岐するかという計算をせず、表面的な価格を見て決めることが多いからなのです。そのため高価格戦略を行う場合、顧客に商品の価値やメリットをより具体的に伝え、理解してもらうよう努める必要があるのです。

まとめ

今回は高価格戦略について解説しました。顧客は価値に見合った物が手に入る時にのみ、その商品やサービスに高い価格を支払います。そのため高価格戦略を行う際は、特に提供する価値が優れていることが重要になります。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

 

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ラグジュアリー価格戦略とは|成功要因について事例を紹介しながら解説 

ラグジュアリー価格戦略をご存知でしょうか。ラグジュアリー価格戦略は主にハイブランドに用いられ、高価格戦略の中でも価格に上限がないのが特徴です。

この記事ではラグジュアリー価格戦略について、事例を紹介しながら解説します。


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ラグジュアリー価格戦略とは

ラグジュアリー価格戦略とは、主に高級時計や高級車など、高価格戦略よりもさらに高い価格を設定する戦略です。
高価格戦略と明確な違いはありませんが、大きな特徴として、この戦略には価格の上限がないことが挙げられます。

後述しますが、ラグジュアリー価格戦略では威光価格が用いられます。威光価格とは、所有・サービスを享受すること自体がステータスなるような商品につけられる高い価格のことです。価格は、品質指標になるだけでなく、顧客に付加的レベルの社会的心理効用を与えるのです。

威光価格についての詳しい記事はこちら。

ラグジュアリー価格戦略で成功した企業の事例

PRADA(プラダ)

高級アパレルブランドのプラダは、ラグジュアリー価格戦略で成功している例として有名です。

例えばプラダで売られているシューズは、基本的に一足13万円ほどでかなり高い価格設定となっています。しかし、有名人・有名企業とのコラボした限定品、デザイン性の高さ、流通量の少なさなどの理由から、高値でも売れるためラグジュアリー価格戦略として成功していると言えます。

(出典:PRADA)

ロールスロイス

高級車ブランドのロールスロイスは、ラグジュアリー価格戦略で成功している例として有名です。ロールスロイスでは最低でも、一台3,000万円ほどとかなり高い価格設定となっております。

上質なレザーやウッドの選定、加工や組み付けが手作業で行われており、最高級の品質となっています。そして所有・サービスを享受すること自体がステータスなるブランド力により、高額でも人気を維持し続けているのです。

(出典:ロールスロイス)

ラグジュアリー価格戦略の成功要因

25カ国に39の拠点をもつマーケティングコンサルティング会社、サイモン・クチャー&パートナーズを創設し、Confessions of the Pricing Manの著者でもあるハーマン・サイモンは、ラグジュアリー価格戦略において成功する要因を次の8つであると述べています。

常に高性能な商品を提供する

高価格から顧客は品質が高いことを連想するため、原材料や品質などは常に高いものである必要があります。またこれは全てに当てはまりサービス、コミュニケーション、流通なども含まれます。

威光効果を生かす

ラグジュアリー価格戦略と高価格戦略の大きな違いとして威光効果が挙げられます。
威光効果とは「一つの領域でのイメージが全体のイメージに影響を及ぼす現象」のことを言います。具体的にいうと、高価格というイメージが、その商品や企業の全体の品質やステータスとしての評価に良い影響を与えるということです。

ラグジュアリー品は、商品を所有・サービスを享受すること自体がステータスとなるため、高い価格設定にし続ける必要があります。

価格は品質指標になることを理解する

先述しましたが、価格は品質指標になります。普通は価格が高いほど、需要が減ることが多いですが、時にそれとは逆になることがあります。あまり買ったことがない商品に対しては、顧客は価格が高いほど品質が良いと感じるのです。

数量と市場シェアを厳しく制限し続ける

ラグジュアリー品市場では商品を所有・サービスを享受すること自体がステータスとなるため、市場に商品が溢れかえっていると、それを崩しかねません。
そのため、限定版など数量と市場シェアを制限することはとても大切なのです。

割引や特売、それに類する行動を絶対に避ける

ラグジュアリー価格戦略では基本的に威光価格が設定されているため、価格は品質の指標になるだけでなく、社会的なステータスにもなります。そのため、割引や特売を行なってしまうとステータスや社会的名声のシグナルを崩してしまう恐れがあるのです。

トップ人材を起用する

会社員が最高の水準を満たし、高いレベルで職務を遂行する必要があります。特に販売員の場合、普段から高いレベルの接客を受けている顧客を相手にすることが多いため、要求されるスキルも高くなってくるのです。

バリューチェーンをコントロールする

ラグジュアリー品企業は、高付加価値を維持し続け、ブランドマネジメントを行っていく必要があります。そのため、販売や流通など、バリューチェーンを最大限コントロールするように努めることが大切です。

顧客の支払い意欲を理解して価格設定する

通常は価格が高くなるほど需要が減るのですが、ラグジュアリー品の場合逆になり、価格が高くなるほど需要が上がります。故に自社の需要曲線を知らない企業は、手探りで最適価格を探すことになってしまいます。そのため、価格ごとの顧客の支払い意欲を知っておくことは大切です。

その際の分析手法としてPSM分析があります。PSM分析に関する詳しい記事はこちら。

まとめ

今回はラグジュアリー価格戦略について解説しました。

冒頭でもお話しましたが、ラグジュアリー価格戦略には価格の上限がありません。しかし、むやみに価格を上げてしまうとせっかく手に入れた顧客が離れてしまうことがあります。そのためこの価格戦略を使うには、分析を行って自社の需要曲線を理解しておく必要があります。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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Hi-Lo(ハイロー)価格政策、EDLP(Everyday Low Price)政策とは|小売業で代表される低価格戦略


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あなたは、Hi-Lo価格政策をご存知でしょうか。

スーパーマーケットでは商品の特売や値引きセールがよく行われますが、これはHi-Lo価格政策という低価格戦略のうちの一つなのです。

低価格戦略はスーパーマーケットなどの小売業で多く用いられ、他に代表的なものとしてEDLP政策があります。

この記事では、低価格戦略の代表的な二つであるHi-Lo価格政策、EDLP政策について、実際の事例を交えながら解説します。

Hi-Lo価格政策とは

Hi-Lo価格政策とは、一時的に商品を特売価格で販売することで集客をする低価格戦略です。High-Low Priceの略であり、一定の期間に価格がHigh、Lowするためそのように名付けられました。

Hi-Lo価格政策を行う際、原価割れの価格設定をした商品のことを目玉商品(ロス・リーダー)と言います。

小売店は目玉商品を作り、プロモーションを行うことで、来店頻度の少ない顧客や見込み顧客の増加を図る他、衝動買いの誘発により、客単価を上げることを目的とします。日本の多くのスーパーはHi-Lo価格政策を行なっています。

Hi-Lo価格政策のメリット

Hi-Lo価格政策のメリットは主に次の3つです。

・来店頻度の少ない顧客や見込み顧客など、顧客の幅を広げることができる

・値引き対象以外の商品が売れることで、収益が期待できる

・低価格のプロモーションにより、即効性のある集客ができる

このようにHi-Lo価格政策では、来店頻度の少ない顧客や見込み顧客の増加を図る他、特売商品を買いに来た際に衝動買いを誘発することができます。

Hi-Lo価格政策のデメリット

Hi-Lo価格政策のメリットは主に次の4つです。

・顧客が特売価格に慣れると、通常価格で売れにくくなる

・価格表示カードの張り替えなど、店のオペレーションコストが大きい

・売れ残り在庫など、在庫管理が難しい

・頻繁に価格が上下するため、価格に対する信頼感が失われる

このようにHi-Lo価格政策では、短期的には効果を発揮するものの、長期的な利用はむしろ逆効果になってしまう恐れがあるのです。

EDLP政策とは

EDLP政策とは、Everyday Low Priceの略で、「毎日、低価格で商品を販売する」価格戦略です。この価格戦略を行なっている際は、Hi-Lo価格政策のように一時的な値引きはしません。

先述しましたが、Hi-Lo価格政策では顧客が慣れてしまうと、値引き期間しか店に来てもらえなくなったり、値引きされた商品しか買わなくなることがあります。

その点、EDLP政策では常時安い価格で商品を提供するため、それらを防ぐことができます。

EDLP政策を行なっている事例

EDLP政策を行い業績を伸ばしている例として、食品スーパー「OK」が挙げられます。OKとは「高品質・Everyday Low Price」をコンセプトにし、関東を中心に展開されているディカウントスーパーです。

(出典:OK)

OKでは「万一、他店より高い商品がございましたら、お知らせください。値下げします。」という表示があるように、地域一番の安値を目指しています。EDLP政策を継続して、業績を伸ばすため次のような工夫がなされています。

割り切り商法

売場では、品揃えが特定のメーカーに偏った商品が存在します。それは安売りできないブランドの取引は縮小したり、条件が合わない場合品揃えから外しているからなのです。

仮にトップブランドであったとしてもし入れ条件が合わないと、品揃え時から外すという割り切りにより、低価格を実現しているのです。

オネスト(正直)カード

低価格の理由や、品質に関わる理由を正直に開示することで、消費者に納得してもらう手法です。具体的には次のようなものです。

「長雨の影響で、レタスの品質が普段に比べ悪く、値段も高騰しています。暫くの間、他の商品で代替されることをお薦めします。」(出典:OK)

このように顧客に対して、店にとって都合の悪い商品情報でも、正直に開示することによって店の価値を上げているのです。同時に消費者の期待値をさげるという効果も果たし、ワケあり商品を安く仕入れることにも繋がっています。

EDLP政策のメリット

EDLP政策のメリットは、主に次の4つです。

・常に一定の価格なため、店舗間の買い周りが減少する

・特売日を設定する必要がないため、チラシの配布回数が減る

・価格表示カードの張り替えなど、店舗のオペレーションコストを削減できる

・毎日安定した需要が見込めるため、在庫管理が容易である

このように、EDLP政策では毎日低価格であるという安心感から、商品価値の低下を防止できるだけでなく、一つの店舗だけで買い物を完結させることが可能になるのです。

EDLP政策のデメリット

EDLP政策のデメリットは、主に次の4つです。

・特売日を設けないため、一時的に売上を増加させることが難しい

・常に商品を低価格で維持する必要があるため、ローコスト経営ができないと、政策の継続が難しい

・チラシを配らないため、来店のきっかけを作るのが難しい

・メーカー直仕入などの原価の低減が必要である

このようにEDLP政策では、様々なメリットがありますが、ローコスト経営や商品の原価の低減ができないと、思うように利益が出ない可能性があるのです。

まとめ

今回の記事ではHi-Lo価格政策とEDLP政策について解説しました。日本では、Hi-Lo価格政策からEDLP政策に変更する企業が徐々に増えて来ていますが、まだ「完全なEDLP政策」をとっている企業は数少ないです。

それぞれのメリットとデメリットを把握し、自社に合った価格戦略を立てることはとても大切です。

プライシング・価格戦略にお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

 

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バリューベースプライシングとは|顧客価値に基づいた価格設定・価格戦略をおすすめする理由

顧客の価値にもとづいて価格を設定する、バリューベースプライシングについて、定義・採用すべき理由・気をつける点・実行方法を解説します。


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バリューベースプライシングとは

バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定することです。

バリューベースプライシングにより、商品・サービスの価格を原価や競合の価格にとらわれずに、値段を決められます。

バリューベースプライシングをすべき企業

顧客の購入起点で、売り手と買い手の関係は始まるので、一部の場合を除き顧客起点のバリュープライシングから始めることが、どのような事業においても有効です。

また、バリューベースプライシングは他のプライシングと異なり、調査を行うことで顧客の購入可否を予想できるため、理想的な状態での販売数、売上の推計をおこなうことができ、計画性をもった事業運営が可能になります。

一方、バリューベースプライシングが有効でない一部の場合とはどのような時でしょうか、それは下記のようなケースです。

・製品カテゴリに差別化要因がない
差別化要因のない製品カテゴリでは、廉価なものが顧客に選考されるため競合ベースの価格設定が有効となります。

・商習慣により該当製品群の平均売価が顧客の知覚価値より高い
コストベースの価格設定を業界全体で行っており*、実際の売価が顧客の知覚価値より高い場合(売価>知覚価値)は、バリューベースの価格設定は単価の引き下げを生み、売上を毀損することが考えられます。

*業界内で「競争回避のための、意思の連絡」を行い価格設定を行うことは、独占禁止法の不当な取引制限で禁止されています。

バリューベースプライシングのを採用すべき理由

バリューベースプライシングの採用すべき理由は次の3点があげられます。

商品・サービスに対しての正しい利益を得られる

バリューベースプライシングでは、自社の顧客の支払意欲に基づいた価格設定を行うため、顧客にとって高すぎて検討に乗らない価格を設定することや、顧客にとって安すぎて品質が低いと感じる価格が設定されることが減り、商品・サービスに対しての適切な対価を得られるようになります。

また、商品・サービスの開発・改善を繰り替えし、顧客が感じている価値が上昇した場合、それに応じた値上げも可能です。

例として東京ディズニーランドは開園以来、顧客の価格に対する感度を参考に10回以上の価格改定を行っていますが、顧客価値が向上しているため値上げが可能になっている考えられます。

顧客価値起点の製品・サービスの改善

バリューベースプライシングは価格に顧客価値という観点が入るため、顧客価値を満たす製品・サービス開発をおこなえます。

顧客価値のある製品・サービス特性を把握することで、より強みを強化する製品・サービス改善が可能になるだけでなく、バリュープライシングの調査で明らかになった顧客の支払意欲と現在の製品にギャップがある場合においても、それを埋めるためのサービス改善を行うことが可能になります。

結果として顧客満足度をあげることができ、長期的な顧客との関係性を作ることが可能です。

効果的な価格戦略を構築できる

バリューベースプライシングの最大の利点は、顧客の支払意欲の把握により、価格変更による顧客数の変化を推定できることになります。

価格変更による顧客数の変化を推定することで、事業戦略上必要な顧客の離脱を起こす価格改定を避けることができ、戦略的な価格戦略を実行できます。

バリューベースプライシングで気をつけるべき点

バリューベースプライシングは、顧客の感じる価値に基づいて価格設定がおこなえますが、実行フェイズにおいては2点の注意が必要になります。

専門的な知識と十分なデータが必要になる

バリューベースプライシングを実際におこなうためには、それに対応した専門的な知識と十分なデータが必要になります。特に、顧客の価値を価格として表すために、顧客調査を行うには価格と調査に対する専門性と時間を要します。

このことから、多くの企業は原価に基づいた価格設定や競合他社ベースの価格設定を採択しているのが現状です。

継続的な実行の必要性

バリューベースプライシングによる価格設定は、顧客が感じている価値を価格として反映させたものになります。事業活動による改善、ターゲット・市場の変化で、顧客が感じる価値は変動します。

そのため、1度だけ設定したら終わりでなく、継続的に顧客の価値を調査し価格設定をし続けることで、継続的に顧客価値を反映した価格設定が重要になります。

バリューベースプライシングの実行方法

バリューベースプライシングは、価値を勘案して価格設定することですが、より確度の高い事業運営を行うために、顧客調査を行うバリュープライシングの実行方法をご紹介します。

顧客セグメントを定義する

製品・サービスに感じる価値は、顧客セグメントごとに異なります。

顧客調査を実行する前段階として自社の製品・サービスを利用する顧客セグメントを仮定することが必要です。

顧客価値を仮定する

自社の製品・サービスに対して、顧客セグメントごとに価値を感じているであろうポイントを仮定します。

調査の前段階として価値を仮定することで、顧客調査の段階で価値と支払意欲の関係性を把握することができるようになります。

顧客調査を実施する

顧客セグメントとセグメントごとの価値を仮定できたら、PSM分析などの支払意欲を調査する手法を用いて顧客調査を実施します。

調査段階では、誰に何を調査するかの調査設計が必要になります。

他の調査と比較してバリューベースプライシングの調査の特徴として、価値を定量化するために価値を想定できる状態の対象に調査をおこなう点があげられます。

自社の顧客に対して調査をおこなうか、自社製品・サービスを調査の前段階として伝えるなどの工夫が必要です。

価格を設定する

顧客セグメントに対して得られた支払意欲のデータをもとに価格を設定します。

顧客調査による支払意欲の把握により、価格変更によって生まれる顧客増減、売上増減を推計できるため、事業目的に合わせて顧客最大化、売上最大化の価格を選択します。

ここで、適切な調査が実施できている場合は、価格変更によりどういった属性の顧客が離脱するかもしくは増えるかといったこともわかるため、事業戦略と相反していないかの確認もここでおこない、事業戦略に適した価格設定を決定します。

事業戦略に適した価格設定については、こちらの記事もお読みください。

まとめ

バリューベースプライシングは、顧客の価値に基づいて価格を設定することです。

顧客価値に応じて価格を設定することは、よりよいサービス改善や効果的な価格戦略に繋がります。

バリューベースプライシングを行なった価格戦略が自社の商品・サービスに適しているか相談したい事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。

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競合ベースプライシングとは|価格設定方法・メリット・デメリット

価格を決める際に、競合他社と比較し、いくらにすべきかを考えることもあると思います。この記事では、競合ベースプライシングの定義・価格設定方法・メリット・デメリットを解説します。


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競合ベースプライシングとは

競合ベースプライシングは、競合他社の価格をベンチマークとして、独自の商品・サービスに対して価格を設定する方法です。価格を市場の一般的な傾向に即して、商品・サービスに対して価格を調整します。

これは、顧客価値に基づくバリューベースプライシングや生産コストに基づくコストベースプライシングなどの他の価格戦略と比較されます。競合ベースプライシングは、顧客価値や生産コストではなく、競合他社の価格に関する公開情報のみに焦点を当てています。

競合ベースプライシングでの価格設定方法

競合ベースプライシングは、調査が重要になります。自社の価格設定をする際に、既に市場にある競合他社の商品・サービスの価格がどのように設定されているか、その価格が顧客に対してどのように影響しているかを理解しなければなりません。

競合ベースプライシングは、以下の流れで価格を決定します。

競合他社を特定する

市場調査でもおこなわれているかもしれませんが、まず同様の性質を持つ商品・サービスを提供する競合他社を選定することが重要です。

価格設定とポジショニングを調査する

競合他社を特定したら、ポジショニングを分類して、現在市場にある価格傾向のマップを作成します。この中で、自社ブランドに最も近い会社を最有力ベンチマーク企業とします。

また、単純な価格だけではなく、どのような見せ方をしているか、どのような価格体系を用いているか、価格に対しての差別化ポイントはどこか、などを確認することも重要です。

これにより、顧客が期待している価格と自社のポジショニングを理解することができます。

競合他社の平均価格を算出する

競合他社の個別の価格設定を理解することも重要ですが、競合他社の平均価格を算出することも重要です。

平均価格を知ることで、自社の価格を比較するために指標とするベンチマーク価格がわかります。

価格を決定する

競合他社の価格を調査した後、商品・サービスが市場のどこに適合するかを判断し、自社の価格を決定させます。

・平均より高い価格:潜在的な顧客に競合他社よりも豪華(多機能・高性能)であることを知らせたい場合
・平均よりも低い価格:競争を避けて顧客を迅速に獲得したい場合
・平均と一致した価格:価格戦略が競合他社と一致する場合

選択した価格は、市場に参入したばかりの場合や、現在の地位を固めている途中に問わず、顧客がブランドをどのように認識しているかを示します。

ただし、競合ベースプライシングは、会社が長期的に成長していくために最適な価格戦略ではないと考えられます。

競合ベースプライシングのメリット

競合ベースプライシングは、以下のようなメリットがあげられます。

価格設定が容易

競合ベースプライシングは、価格を決定する際の計算と算出方法が簡単です。競合相手を調査し、ポジショニングと平均価格を分析することで、既存市場に沿った価格を決められます。

リスクが低い

競合他社の価格に近づけることで、顧客が商品・サービスに対して支払う可能性が高くなります。

市場とともに変化する

競合ベースプライシングでは、価格を調整する際に当てずっぽうに決める必要はありません。競合他社の価格変動を常に追うことで、同じ割合で値上げ・値下げをすることが可能です。

競合ベースプライシングのデメリット

競合ベースプライシングは、以下のようなデメリットがあげられます。

独自の価格戦略を作れない

競合他社の価格変動を見ながら自社の価格を変更していては、独自のプライシング戦略をとれません。プライシングはビジネスの根幹であり、利益・売上・販売数・ブランディングなど全てに直結するものであるのにも関わらず、外部の価格変動に流され、コントロール下におけないのは危険です。

競合の設定を適切にできない場合がある

企業は競合としてみなしていない場合でも、顧客が購入する際に比較検討の対象になっているものがあります。顧客調査をしなければ、比較検討の対象を正確に捉え逃してしまう可能性が高いです。

意味のない値下げを強いてしまう場合がある

競合ベースプライシングは、競合他社よりも低い価格設定をする戦略をとる場合が多いです。その場合、常に自社の価格は「低い」状態をキープしなければならなく、また競合他社との値下げ合戦が起きてしまうと、業界全体で価格が低下してしまいます。

顧客がお金を払って商品・サービスを享受したいと考える価格よりも低くなってしまうと、結果として品質に疑問が生じ、販売数を下げてしまう恐れがあります。

まとめ

競合ベースプライシングは、競合他社の価格にもとづき、自社商品・サービスの価格を決定する方法です。

価格設定が容易・市場価格に基づくためリスクが低いなどのメリットがあげられる一方、自社としての価格戦略が行いづらいというデメリットもあります。

価格戦略・プライシングについてお悩みの事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせ・相談してください。

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コストベースプライシングとは|原価から利益を計算する価格決定方法

ビジネスの基本的である「価格=生産にかかるコスト+利益」という考え方を実践しているコストベースプライシングの定義・代表的な業界・メリット・デメリットを解説します。


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コストベースプライシングとは

コストベースプライシングとは、名前のとおりコスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

利益をあげるために、商品やサービスを作ったときにかかった費用以上の金額で提供する点で、ビジネスをおこなうための基本的な考え方といえるでしょう。

多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。

コストベースプライシングの仕組み

コストベースプライシングの計算方法は、1製品単位あたりの総コスト(製造費・開発費・人件費・輸送費など)と、得たい利益を計算して、利益率を上乗せします。

この方法では、市場調査をする必要はなく、消費者の需要や競合他社の価格を考慮しなくてよいため、非常にシンプルに価格を決定できます。

コストベースプライシングで価格設定をおこなっている業界

コストベースプライシングを利用する場合、製品に関するコストが容易に定義しやすいことが重要です。

コストベースプライシングをおこなっている業界は様々ですが、代表例として製造業があげられます。

製造業は、コスト(原材料費・人件費・機械にかかる費用など)が比較的予測可能なため、ビジネスを維持するための利益率を上乗せすることが容易です。

さらに製造業の中でも、既存の顧客と契約を結び、一括で販売している業態のモノの価格は、値上げや値下げを必要としない場合が多く、長期的な収益予測を可能としています。

コストベースプライシングのメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のメリットがあります。

価格設定に時間や知識を必要としない

コストベースプライシングは、コスト(原価・人件費など)に対して一定の利益率を上乗せするだけであるため、コストの総数を把握すれば計算が簡単です。

また、市場調査や競合調査、顧客の支払意欲を考慮する必要もありません。そのため、市場に直接の競合他社がいない場合は特に役立ちます。

基本的に、価格を設定するために必要なデータは、コスト計算のみです。そのため、ほぼすべての商品・サービスに迅速に実装できます。

一貫した利益率をあげられる

商品・サービスの1単位あたりにかかるコスト計算が正しくおこなわれている限り、コストベースプライシングは、すべてのコストがカバーされているため損失を生むことはなく、一貫した利益率をあげられます。

しかし多くの場合、価格設定時には予期していなかった追加コストがあるため、その分利益率は当初の想定よりも減少します。

コストベースプライシングのデメリット

コストベースプライシングによる価格設定は、以下のデメリットがあります。

すべてのコストを把握するのは難しい

商品・サービスの開発・マーケティングなどにかかるすべてのコストの把握は非常に難しいです。

商品やサービスを改善していけばいくほど、コストは時間とともに変動するため、実際にサービス改善をおこなわなければ想定額を算出できません。

常に一定の利益率を確保しようとするならば、このような変化に応じて、価格を変動させなければいけません。コストをもととした価格変動は、購入する顧客にとってかなりストレスを与えるものになるでしょう。

顧客が商品・サービスに抱く価値と価格に乖離が起きやすい

コストベースプライシングでは、顧客の支払意欲(=サービスに対して価値を感じ支払いたいと考える価格)を価格に反映していません。顧客は商品・サービスに対してのコストを気にして購入している場合は少ないです。

必ずしも利益を最大化できるとは限らない

コストベースプライシングでは、顧客や市場の変化に合わせて価格を調整することは難しいです。そのため、顧客単価をあげる施策を取りづらく、必ずしも利益を最大化できるとは限りません。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値、顧客の支払意欲は高まります。コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

コストベースプライシングがおすすめな業界

コストベースプライシングは、物理的な製品を販売している業界に有効な手段です。

製品原価よりも人件費などの割合が高い商品・サービスを提供している企業には、コストベースプライシングは推奨しません。例えば、インターネットを経由したSaaSやサブスクリプションサービス、テーマパークなどのエンタメ産業などがこれにあたります。

商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値が高まっていきます。そのため、コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。

そのような場合は、顧客価値に基づいた価格設定をおこなうバリューベースプライシングがおすすめです。

まとめ

コストベースプライシングは、コスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。

商品・サービスを販売するのに必要なコストのみを計算し、利益を上乗せして価格設定ができるため非常に簡単というメリットを持つ反面、顧客価値に基づく価格設定ではないため収益を逃す可能性をもつというデメリットもあげられます。

自社がコストベースプライシングによる価格戦略が良いのか、他の価格戦略をとるべきか相談したい事業者様は、一度プライスハックにお問い合わせください。